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スポーツ界を中心に、監督・コーチによる選手へのセクハラ(セクシャルハラスメント)、パワハラ(パワーハラスメント)が大きな注目を集めた今年。職場や学校、家庭でも多種多様な「ハラスメント」が話題にのぼり、今もまた、雑誌やインターネット上で新しいハラスメントが生まれている。
「私が知るだけでも30数種類、同業者に聞くと現在40数種類のハラスメントがあるようです」
そう語るのは、社会保険労務士で産業カウンセラーを務める栗原深雪さん(みゆき社会保険労務士事務所代表)。
「妊娠・出産した女性に、業務に支障をきたすとの理由で精神的、身体的苦痛を与えるマタハラ(マタニティハラスメント)。香水、体臭、口臭、加齢臭など強い臭いを発する人に向けたスメハラ(スメルハラスメント)。アルコール摂取の強要、酩酊状態の者からの嫌がらせを指すアルハラ(アルコールハラスメント)。職場の中高年者に対するエイハラ(エイジハラスメント)。逆にエイハラは、経験不足などを理由に、若い社員を不当に低く評価したり、仕事を与えなかったりすることも含みます」(栗原さん 以下同)
メルハラ、フォトハラってナニ?
ここまでは、まだなんとなくわかる。1989年(昭和64年・平成元年)に、「セクシャルハラスメント」(セクハラ)が新語・流行語大賞の新語部門の金賞に選ばれて、来年で30年。「○○ハラ」という言葉がそれほど多くなかっただけで、その昔から、それに近いハラスメントがあったからだ。
「時代の変化という意味では、IT機器の操作が不慣れな人に嫌がらせをするテクハラ(テクノロジーハラスメント)、喫煙者が非喫煙者に対して喫煙することを強制したり、たばこの煙にさらされる状態であることを指すスモハラ(スモーキングハラスメント)、勝手にSNSに写真を投稿したり、投稿者だけ可愛く加工してから投稿するフォトハラ(フォトハラスメント)、Facebookなどの友達申請を強要したり、許可なくタグづけするなどのソーハラ(ソーシャルメディアハラスメント)、複数のCCが入っているメールでわざわざミスを指摘するメルハラ(メールハラスメント)などがあります。30年前には想像がつかなかったハラスメントが、日々生まれているのです」
たしかに! '80~'90年代に高視聴率を誇った連続ドラマの再放送では、勤務中でもたばこをくゆらせ、酒席では上司や先輩が部下や後輩にアルコールを強要(ついでにお酌も)。職場では女性に対するセクハラのオンパレード。中には、営業成績の悪さをしつこく叱責され、パワハラの末に自ら命を......なんて悲劇的なドラマもあったほど。30年前と現在を比べると隔世の感がある。
「この30年でハラスメントの種類が細分化されてきたと思います。例えば、真剣であったり、和やかな雰囲気を壊す発言や態度を取ったりすることを指すエアハラ(エアーハラスメント)はまだわかるとして、同じ"エアハラ"でもエアコンの設定を低く過ぎる設定
をしたり、エアコン使用を禁止するエアコンハラスメント。仕事の調整をすることなく、成果目標を変えないのに『労働時間を減らせ』と号令をかけるだけで、退社時刻になると電気を消したりするジタハラ(ジタンハラスメント)。独身者に対し、結婚しないことについて執拗に理由を詮索したり、責める迷惑行為マリハラ(マリッジハラスメント)。"就活終われハラスメント"を意味し、自社に来てほしいがために、面接者に対して甘い言葉をかけたりプレッシャーを与えるオワハラ(就活終われハラスメント)など、次々と生まれている状態です」
さらには、セクハラを受けた女性に「大変だったね。でも、そんなに露出の多い服装をしていた君にも責任がある」と言えばセカハラ(セカンドハラスメント)になるなど、「○○ハラ」は多種多様。よかれと思って声をかけても、ちょっとした不注意や受け取られ方次第で、相手を傷つけることがある。
「今の時代、誰でも被害者になりますし、加害者にもなる可能性があります。最近まで"KY"と呼ばれていたいわゆる空気が読めない人も、天然なだけかも知れないのにエアハラと言われてしまう。そうならないためにはハラスメントについて正しく理解することが必要です」
大切なのは、働く人々の承認欲求を満たすこと
厚生労働省が公式サイトで定義しているハラスメントは、セクハラ、パワハラ、モラハラで、その他は造語ではあるものの、十分に注意したいところだ。
「マネハラ(マネーハラスメント)などという言葉があるかどうかはわかりませんが、上司に食事をねだる。出張の土産やバレンタインデーのあと、その見返りを過度に期待するのもセクハラになりえます。すべてがハラスメントになり得る世の中ではありますが、『こんなことを言うとセクハラになるかも、パワハラになるかも......』と考え過ぎて何も喋らなくなる。その結果、職場でのコミュニケーションがなくなってしまうのは危険なサインだと思います。会社への定着が悪い今の時代、大事なのは社員の承認欲求を満たすことなのかもしれません。"会社にいてくれてありがとう"という気持ち。その人がまだ気づいていない、その人なりの持ち味を引き出してあげることも大切ですね。コミュニケーションがなくなれば、職場の士気はおのずと下がっていきますし、会社の力も落ちていきます」
増加の傾向をたどる新種のハラスメント。上司や先輩が予防することはもちろん必要不可欠だが、逆に何でもかんでも「ハラスメントだ!」と騒ぐ部下側の"ハラハラ(ハラスメントハラスメント)"も問題。経営者側はもっと根幹の部分を考え、上司・部下、先輩・後輩に関係なく、働く人たちが信頼関係を結べる環境作りに注力するべきなのかもしれない。
※本記事のハラスメントにまつわる内容はすべて「テレ東プラス」としての見解です。
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テレビ東京開局55周年特別企画 ドラマBiz「ハラスメントゲーム」
10月15日(月)夜10時放送スタート!(※初回15分拡大)
唐沢寿明主演、原作・脚本 井上由美子でお送りする! 7年前、スーパーの店長として地方に左遷された男が、コンプライアンス室長として様々なハラスメント問題に挑む痛快ヒューマンエンターテインメント。
【第1話】
業界大手の「マルオースーパー」練馬店に、1円玉がメロンパンに混入していたとのクレームが入る。コンプライアンス室の高村真琴(広瀬アリス)曰く、売場主任・佐々部(尾上寛之)が昨夜不審な電話を受けたといい、その内容から女性社員によるパワハラ絡みの犯行を疑う。だが、新店舗への影響を恐れた社長・丸尾(滝藤賢一)は、警察に届けることを拒む。