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きっかけは日活ロマンポルノ!? 今、日本映画界で最も注目される監督・白石和彌の素顔に迫る:前編

ドラマ

テレ東

2019.3.7 【ドラマ24】フルーツ宅配便

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――それまでは助監督をしながらも監督になることが目標だったわけではなかったんですね。


「27、8歳くらいまでは監督をやれるとは思ってなかったですね。若松さんや行定さんを見ていると、頭のおかしい人が監督として名を成していて、ああはなれないなと。僕はすごい常識人なので(笑)。30代半ばくらいに辞めるんだろうなと思っていました。ただ、30代目前にして、辞めるにしても監督として1本撮ってから辞めようと」

――今は監督になられましたが、やっぱりご自身にも“頭のおかしい”ところがあったと思いますか?

「ないですね(笑)。超常識人です」

――確かに! いろんなタイプの変わった監督の超優秀な助監督だったということは、白石監督ご自身が常識人だからなんでしょうね(笑)

「そうです。黒沢清監督だったと思うんですが『映画人に必要なものは?』と聞かれて『常識です』と答えられてるインタビューを読んだことがあって(笑)」

――1本撮ってから辞める、その作品の構想はあったんですか?

「監督の準備をしようとしたとき、他の企画の手伝いをしながら自分の企画を立ち上げたらいいと声をかけてもらって。そんな中で、気に入った原作があって、1年くらいかけて脚本を15稿くらい重ねて、お金も集まって、デビュー作にも関わらず7~8000万円で撮れることになったんですが……そのタイミングで原作者が直木賞をとって映像化を断られたんです。

監督には運も必要なので、『俺には運がない』と、辞めることを決意して。会社との契約も終わって、子供も生まれて、『これは真面目に働くタイミングなんだ』と履歴書買ってきて……というところで、プロデューサーから『今回はこっちのミスだから、少ない額(予算)だが自主映画で好きなものを1本撮れ』と言われて撮ったのが『ロストパラダイス・イン・トーキョー』だったんです」

――『ロストパラダイス~』を撮ってから、どんどん道が開けていったのでしょうか?

「『フルーツ宅配便』のプロデューサーでもある赤城(聡)さんが、『ロスパラ』を気に入ってくれて『僕と一緒に映画を作ってほしい』と声をかけてくれたんです。赤城さんもフリーの人でどこか怪しいし(笑)、『本当に成立させてくれるんですか?』なんて言いながら、何度か打合せをしてできたのが『凶悪』です。

その間2、3年くらいは年収100万円いってなかったですからね。『凶悪』でいただいた新藤兼人賞の賞金100万円も、報知映画賞監督賞の賞金50万円も、全部生活費として家に入れました。それでなんとか家族も『もう1本くらいいいよ』と(笑)」
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――そのあたりから監督としてやっていけると?


「いや、全然なかったですね。今もそんなに思ってないです。いつか飽きられるんだろうなと」

――先ほど、監督に必要な「運がない」とおっしゃいましたが、結果的に「運があった」のではないですか?

「そう思うと、運があったのかもしれないですね。その時々は気付いていないけど、題材として『凶悪』に出会えたり、今回の『フルーツ宅配便』もそうですし、いろんなタイミングで好きな題材を見つけられたり、声をかけていただいたり。『凶悪』の後は、テレビ東京プロデューサーの濱谷(晃一)さんと五箇(公貴)さんに声をかけていただいて『怪奇恋愛作戦』に参加することができたり。ちょっとずつ広がっていった感じですね」

弱い人間がいい。人間はミスはするけど、そこに愛おしさを感じる

――『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』などの実録モノ、『孤狼の血』のような任侠モノ、また『止められるか、俺たちを』などの青春映画など様々ですが、作品の題材の発想はどこから得るのでしょうか?

「漫画はほぼ読まないし、小説も映画化しようと思って読むことがないから……ニュースとかじゃないですかね。

ルポルタージュは結構読みます。『凶悪』以降は題材になりそうなものを送ってきてくれることも多く自然と集まってきて。そんなにアンテナを張っているわけではないですが、事件のネタは豊富です(笑)。台湾の映画祭に行ったときなんて、アテンドしてくれた現地の人が、『監督、ここで人が殺されたんです』とか教えてくれて。いやいや、台湾まで来て、そんなこと聞きたくないから(笑)」

――作品には暴力描写と性描写のイメージが強いですが、それはご自身の表現の上で必要不可欠なものなのでしょうか?

「いやいや、そんなことはなくて。『凶悪』という題材をやる上で、園子温さんの『冷たい熱帯魚』が先にあって、プロデューサーも同じ日活のチームで、あの路線が当たるという考えが日活側にあって。『凶悪』は面白いし、そういう描写を大事にしてほしいということもあったので、仕事として突っ込んでいったということです。もちろん自分としても好きですが。『日本で一番悪い奴ら』『孤狼の血』もそうじゃないかな。振り切ってやってくれと言われたから『本当にいいんですか? 普通じゃなくなりますけど』と(笑)」

――ご自身として、やりたいという思いもあるんですね(笑)

「やりたいかどうかと言えば、やりたいです(笑)。
助監督時代がVシネマ全盛期で、やくざモノには最後に“ラス立ち”という立ち回りがあるんですよ。助監督も血糊まみれになって、徹夜してクランクアップ。その後、朝4時くらいに、まだやってる飲み屋で1杯だけ飲んで帰る。その頃、大久保に住んでいたんですが、必ず職質されてました。ジーパンとかに血糊はついてるし、徹夜明けで殺し屋みたいな顔してるから(笑)。

その経験があるから、『監督になったら、こんな血まみれな映画は撮るもんか!俺は青春映画を撮るんだ!』と思っていたんですが、『凶悪』でいざやり始めたら血が騒いじゃって(笑)。一度封印した分、湧き出るものがあるんですね(笑)。やる以上は、見たことのないようなシーンを撮りたいと思いますし」

――登場人物に関しては、以前「不完全な人間を題材にしたい」というお話をされていましたが、それは今も変わらず?

「弱い人間がいいですよね。人間ってミスはするけど、そこに愛おしさを感じるんです。

『フルーツ宅配便』に出てくる女性たちもまさにそうで。そういう境遇に陥ったのは自業自得かもしれないけど、それでも生きていこうとしている人たちが愛おしくてしょうがないんです。それはもうずっと変わらず。どうしようもないヤツを映画にしていきたいという思いはありますね」

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“超常識人”の白石監督は、凶悪な作風とは正反対の(?)穏やかな語り口で、苦労した道のりも面白いエピソードを交えながら聞かせてくれた。次回の「後編」では、「僕の映画の中で最大級にどうしようもないヤツが主人公」という今年公開予定の『凪待ち』などの最新作、これまで見てきた役所広司、山田孝之、松坂桃李らの役者としての魅力、さらにプライベートについても語ってもらう。


【白石和彌監督】
2013年、史上最悪の凶悪事件とその真相を描いた衝撃作『凶悪』で「第37回日本アカデミー賞」優秀監督賞など映画賞を総なめに。2017年には『彼女がその名を知らない鳥たち』、2018年には『孤狼の血』『止められるか、俺たちを』など話題作を立て続けに発表し、史上3人目の快挙となる「ブルーリボン賞」監督賞を2年連続で受賞。今年は、4月5日(金)には斎藤工主演『麻雀放浪記2020』、さらに香取慎吾主演の『凪待ち』の公開も控える。

ドラマ24「フルーツ宅配便」(毎週金曜 深夜0時12分放送)は、3月15日(金)放送の第10話より最終話まで再び白石監督が演出。お見逃しなく。

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番組情報INFORMATION

【ドラマ24】フルーツ宅配便

【ドラマ24】フルーツ宅配便

主演 濱田岳×監督 白石和彌!フツーの男がデリヘル店長に転身!?痛くて切ない、ワケあり人間ドラマ!

放送日時:テレビ東京系列 毎週金曜 深夜0時12分

出演者

濱田岳、仲里依紗、前野朋哉、原扶貴子、徳永えり、山下リオ、北原里英、荒川良々、松尾スズキ

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