”大人の秘密基地”車中泊の楽しみ方教えます! 俳優・濱津隆之×「カーネル」編集長・大橋保之対談:絶メシロード

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日々の生活の中でさまざまなストレスを感じている、ごく普通のサラリーマン・須田民生。そんな彼の唯一の楽しみは、絶滅しそうな絶品メシ"絶メシ"を求めて旅に出ること。期限は、1週間の仕事を終えた金曜の帰宅後から、妻と娘が大好きなアイドルグループのライブ遠征から帰ってくる土曜日の夕方まで! 「誰も誘わない」「誰も巻き込まない」「予算はお小遣いの範囲内で!」をモットーに、"絶メシ"を求め日本全国を車ひとつで駆け回る!

中年サラリーマンの週末限定一泊二日の小さな大冒険を描いたドラマ25「絶メシロード」(毎週金曜深夜0時52分放送)が、1月24日(金)スタートする。主人公の民生を演じるのは、一昨年大ヒットした映画「カメラを止めるな!」で主演し、一躍時の人となった濱津隆之。

そこで、今静かなブームとなっている"車中泊"の達人で、車中泊専門誌『カーネル』の大橋保之編集長をお迎え。車中泊ビギナーの濱津とともに「車中泊×グルメ」の楽しみ方をお聞きしました。これから車中泊に挑戦したいおじさん(もちろん、それ以外の人も!)必読です。

車中泊を楽しむキーワードは"大人の秘密基地"


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──長年にわたって地域で愛され続け、失うには惜しすぎる飲食店などを紹介する群馬県高崎市のローカルグルメサイト「絶メシリスト」から着想を得たドラマ「絶メシロード」が、いよいよスタートします。

濱津「主人公の須田民生を演じています、濱津と申します。本日はよろしくお願いします」

大橋「大橋と申します。これまで何年か車中泊を専門にした雑誌を作ってきまして。少しずつ積み上げてきたものが、世の中に広がり、ついにはドラマに。一報を聞いた時には編集部内で歓声が上がりました。どうもありがとうございます」

濱津「いいえ!(恐縮)、僕はドラマに呼んでいただいただけなので何も(していないです)」

──本日は、ドラマのお話はもちろん、大橋さんに車中泊の楽しみ方をご教授いただきたいのですが。

濱津「そもそもなんですが、"車中泊"という言葉は昔からあったんですか?」

大橋「厳密にいつから......とは言えないのですが、現在のようにレジャーと結びついたのは、'80年代後半~'90年代前半のバブル期。スキーブームの際、週末の夜に車で出掛けて、ゲレンデの駐車場で仮眠をとっていたのが、最初に車中泊が広がった要因なんじゃないかと思います。当時はスキー場がものすごく混んだので早めに行って、開場を待つという」

──ほかにも釣りをする人とか、サーファーの人とか。

大橋「そうですね、趣味と関連して車中泊される方も多くて。劇中の民生さんのように"車中泊が目的で出掛ける"というのは、ここ数年のキャンプブームの影響が大きいんじゃないでしょうか。キャンプ場では、(食事や談話をする)リビングは屋外で、宿泊は車中という方も増えています」

濱津「僕は遊びで遠くまで出掛ける......という経験があまりなかったのですが、民生役で車中泊を疑似体験させてもらって、実際やってみたいな、やってみようかなと思いました。何だか男心をくすぐりますよね」

──子どもの頃に作った秘密基地を思い出します。

大橋「まさに! 車中泊を楽しむキーワードのひとつは、"大人の秘密基地"なんです」

濱津「車という、こじんまりとした空間に自分の好きなものを並べて、好きなことをやって。寝られる車と、車で宿泊してもいい場所さえあれば、自由な時間を過ごせて。そこの景色を独り占めしている気分になれると言いますか。これって贅沢だな、最高だなー、男の憧れだなと。さらには基地と違って移動できますからね」

大橋「そこ、ですよね! 車中泊をする一番の理由は、きっとみなさん"自由に、自分のタイミングで、いろんな場所に行きたい"というところにあると思いますので」

濱津「また民生には、期限は金曜の帰宅後から妻と娘が追っかけてるアイドルグループの遠征から帰ってくる土曜日の夕方まで。誰も誘わない、誰も巻き込まない、予算はお小遣いの範囲内で......という自分で決めたルールがあって。あえて制約を設けているのもいいんじゃないかなと思いました」

大橋「奥さんと娘さんがいて、立派な分譲住宅に住んでいて、きっとローンもあって......そうなるとルールも必要になってくるでしょうね。家庭内の平和を保つためには(笑)。

濱津「実際のところ、車中泊の費用はどれくらい掛かるものなんですか?」

大橋「車中泊というと貧乏旅行のイメージがあるかも知れませんが、民生さんのように予算を決めて、その中でどう遊ぶか。その組み立てを楽しんでいる方も多くて。小遣いの範囲内でリーズナブルに抑えつつも、みなさんそれなりに楽しんでおられると思います。ほかにもキャンピングカーをお持ちの方がいらっしゃったり、一般の車をDIYしたりする方がいらっしゃったり、楽しみ方の幅は広がっています」

濱津「そんな中、民生は車中泊の初心者で、車の改造はもちろん道具もままならなくて」

zetsumeshi_20200124_03.jpgドラマ25「絶メシロード」第3話より。

──駐車場に停めた隣の車の装備を、うらやましそうに眺めたり。

濱津「民生はまだまだ何も揃っていない状態ですが、今後は少しずつ使いたいグッズを集めて。自分だけのスペースを作っていって。そういう過程も楽しいんだろうなと思いました」

大橋「うちの編集部も"簡易グッズで、お金をかけずに車中泊仕様にする"をモットーのひとつにしていますので、民生さんの姿勢には共感します。最初のうちは劇中に出てきたLEDのランタンと目隠しのシェード、あとマット、それくらいで十分。運転もあるため、個人的にはゆっくり眠れるように寝具だけはこだわった方がいいかなと思いますが、今では100均でも便利なアイテムがたくさんありますから。それぞれ工夫すると、より楽しくなります」

──アイテムといえば、昨年も全国的に異常気象に見舞われましたが、被災時に車中泊避難の準備があれば心強いと思います。

大橋「おっしゃる通りです。事前に車に積んで準備をしておく。車中泊をしながら、いろんなシミュレーションしておくと、いざという時に慌てずに済むかと」

濱津「今のところ民生は、とりあえず車で寝て、起きて。行く先々の景色を眺めて。そこで気になったものを食べる......という感じなんですけど、こういう楽しみ方はどう思われますか?」

大橋「すごくいいな、と思いました。『カーネル』では、最新の車事情や車中泊で役立つ道具などを紹介してきましたが、目からうろこと言いますか。本来、車中泊ってそういうシンプルな旅でいいと、初心に帰りました。大勢でワイワイもいいですが、キレイな景色を見て、ひとり静かに、あわただしい日常を忘れる。そして、ご当地グルメに舌鼓を打つ。それが一番ですよね」

濱津「僕は喫茶店巡りが好きなので、グルメに加えてコーヒーを味わいたいですね」

ブラックマークをチェック! 車中泊の際の注意事項


zetsumeshi_20200124_04.jpg大橋さんの車中泊の様子。娘さんも一緒に。

──今回のドラマでは、関東甲信越・北陸地方を中心に11県12ヵ所でロケを。印象に残った食べ物はありますか?

濱津「登場するグルメは本当に全ておいしかったですし、お店の雰囲気も店主さんの人柄もすてきな方々ばかりでしたが、中でも群馬県高崎市で食べたラーメンが印象に残りました。建物は古くて年季が入ったお店だったんですが、昔ながらのシンプルな醤油ラーメンがすごくおいしくて、僕好みの味で。

あと場所は富士山はじめ、どこもよかったんですけど......ダムですかね。都会で暮らしているので、そういう非日常な景色には圧倒されますね」

──民生のような冴えない中年がひとりダムに佇んでいると、何だか誤解されそうですよね。

濱津「『大丈夫ですか?』って心配されそうですよね(笑)」

大橋「でも、ダムに限らず車中泊をする場所はちゃんと選ばないと、トラブルの原因にもなりかねないですから、注意が必要ですね。うちの雑誌でも啓蒙していますが、やはり地元住民のみなさんの理解あっての車中泊。ルールやマナーはきちんと守って、決められた場所で楽しんでいただきたいです」

濱津「車中泊するのに適した場所はどんなところですか?」

大橋「いろいろありますが、オススメは最近増えてきた"RVパーク"ですね(※注1)」

※注1:道の駅や日帰り温泉施設などと提携して開設している車中泊のための場所。駐車場の一角に有料の車中泊エリアが設けられていて、その施設公認で車中泊が可能となっている。

zetsumeshi_20200124_05.jpgドラマ25「絶メシロード」第2話より。

濱津「参考にさせてもらいます。ロケをやっていても、普通に深夜の駐車場って怖いなと思いましたし。スタッフのみなさんがいたからいいですけど、山奥もひとりじゃ絶対に無理だなーと(笑)。実際、絡まれるとか......ありますか?」

大橋「私はないですけど、注意するに越したことはないですね。例えば、路面のブラックマークなどを目印にして」

濱津「ブラックマークというのは?」

大橋「車をドリフトさせた時などにできるタイヤ痕のことです。最近は暴走族なんかも減ってはきましたけど、そのへんに注意を払って。『静かな場所で車中泊したい』という方もいらっしゃると思いますが、シェードで窓をふさげば明くても快適に眠れるので、駐車場などでは人けのない暗い場所は控えましょう。逆にトイレなどの共用スペースの近くが落ち着かないという方もいます。何度か試して自分に合ったちょうどいい場所を選んでいただけたらと思います。

また、この季節は積雪にも注意していただきたいです。防寒対策も忘れないように。あとは『どこどこの駐車場はちょっと斜めってるから少し歩いてもこっちがいい』など、車中泊好きなみなさんが情報交換されていますので、SNS等をチェックしてみてもいいと思います」

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濱津「どれくらいの頻度で車中泊に行かれているのですか?」

大橋「すみません、ここ最近は忙しくてプライベートではあまり行けていないですけど(笑)、取材時の宿泊は基本的に車中泊です。場所は、先ほど申し上げた"RVパーク"も多くて。電源も使えるので、非常に便利です。年々増えていて、今では全国に140ヵ所以上のRVパークがありますから、ぜひ!」

──濱津さんはプライベートで車中泊してみたい場所はありますか?

濱津「河口湖の湖畔が素晴らしい景色だったんですけど、あいにくの空模様だったので、もう一度どこかの湖畔に行きたいです。そこで民生じゃないですけど、食べたいものを食べる。家庭では妻や娘に押され気味で仕事でも頼まれたらNOと言えない、言いたいことも遠慮して言えないところ、情けないところ、自分の中にため込むところなど民生と似ている部分も多いので、発散したいです(笑)」

──先ほどスキーや釣り、サーフィンという話が出ましたが、濱津さんも趣味と絡めて行かれてみては?

濱津「そうですね、趣味は......音楽を聴くことくらいしかないんですけど、車にターンテーブルを積んで、いつかフェスに行けたらいいなと思います。高校の修学旅行とか舞台挨拶以外は遠出したことがないので、2020年は新しい自分に出会ってみたいですね(笑)」

(取材・文/橋本達典)

【プロフィール】
濱津隆之(はまつ・たかゆき)
1981年8月25日生まれ。埼玉県出身。大学卒業後、お笑い芸人、DJを経て俳優に。2019年、映画『カメラを止めるな!』でブレイク。映画『透子のセカイ』(2020年公開予定)、テアトロコントSpecialミズタニーのベストセレクション『米つぶサイズの地球』(3月25日~29日上演)が控えている。
Twitter:@Atmicfun

大橋保之(おおはし・やすゆき)
1972年生まれ。愛知県出身。カーネル(株)代表取締役社長。車中泊を楽しむ雑誌『カーネル』(年4回発行予定)の編集長。アウトドア情報メディアサイト「SOTOBIRA」も運営。車中泊、キャンピングカー、キャンプ、登山など、アウトドアに関するオリジナル記事を展開中。

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ドラマ25「絶メシロード」1月24日(金)深夜0時52分放送)からの放送は?

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第1話
「たかちゃんうどん」
須田民生(濱津隆之)は、どこにでもいるごく普通のサラリーマン。妻・佳苗(酒井若菜)と娘・紬(西村瑠香)が家にいない週末、民生は一人だけの時間を満喫するため車で旅に出る。小遣いの範囲内で納めるため、かかせないのは車中泊。

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誰にも邪魔されず好きな時間を過ごせる民生は、快適なひと時を過ごしていた。翌日、昼食をとるためスマホで調べたうどん屋へ向かう。しかし、たどり着いたのは、うどん屋とは思えないプレハブの建物。困惑しつつも入店した民生は......。

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