「クランクアップ」について思うこと|太田勇の5分で読めるテレビの裏側日記
テレビ東京配信ビジネスセンターの太田勇です。
『おしゃ子!2』ついにクランクアップしました。


前にバラエティ番組だと「クランクイン」という概念がないと話しましたが、
こちらも同じで、「クランクアップ」という概念はバラエティにはありません。
だからバラエティ番組出身の僕は、初めて監督した連続ドラマのクランクアップの瞬間、とても感動してしまいました。
『太鼓持ちの達人』という手塚とおるさん主演のドラマで、今から6年前でした。
僕はクランクアップの瞬間、いつもうらやましいと思ってしまいます。
「うらやましいってどういう感情…?」と疑問を持つかもしれませんが、後ほどご説明します。
クランクアップの流れはこんな感じです。
現場を仕切る助監督さんが、
「今のシーンを持って、●●(←作品名)、クランクアップとなります!」と大きな声を出し、スタッフが拍手をして盛り上げる。
自然と円ができて、監督が主演の俳優に花束を渡し、主演が一言、話します。
「この作品に関われて幸せでした」とか、
「良いスタッフに恵まれて楽しく撮影できました」とか、たまに泣いちゃう人もいます。
6年前にそのシーンに最初に遭遇した時、「丁寧で、素敵だな」と思いました。
ここまで読んで、
「……ん?バラエティ番組だって最終回の収録ってあるじゃん」と思った人、仰る通りです。
ただ、バラエティ番組の最終回は、ドラマと大きく違う点が一つあります。
●バラエティ番組にとってのクランクアップとは?
なんだと思いますか?
それは、どんな人気のバラエティ番組も、バラエティ番組が終わる理由の99.9%は「低視聴率」ということです。
ドラマであれば視聴率が良い状態で最終回を迎えたり、作品によっては放送が始まる(視聴率が出ない)前にクランクアップを迎えることもあります。つまり、みんな「ウェーイ!!」みたいな状態で撮影最終日を迎えられるのです。
ところがバラエティ番組は違います。
人気番組の最終回の収録の後に打ち上げがあると、こんな挨拶がされます。
「この番組は◯年前に◯◯という企画で一世を風靡しました」
「この番組は◯年前に、最高視聴率◯%を記録しました」
「一時代を築き上げたこの番組は、番組としての役割を終えました」
とかとか……
いろんな褒め言葉が出てきますが、それらはすべて過去形で語られるんです。
まるで故人の栄光を称えるお葬式ですね。
ドラマのクランクアップの時の挨拶には未来があります。
「パート2でお会いしましょう」
「映画版でまた集まりましょう」
バラエティ番組がお葬式とするなら、ドラマは結婚10周年パーティとか、銀婚式、金婚式みたいなものかもしれません。
前に、『笑っていいとも』の最終回で、中居正広さんが似た話を仰ってました。
「バラエティ番組は悲しい」と。
そして中居さんは、
「だから僕はジャニーズの中で、バラエティ番組をやるんです」と。
とても印象的でした。
僕も似た想いを持っています。心のどこかでバラエティ番組をやり続けたいと思ってます。
人を笑わせるのが目的のバラエティ番組の最後の収録はどこか悲しく、泣かせる話もあるドラマの最終日の撮影は明るく終わるのです。
もちろんバラエティ番組の最後の収録も、雰囲気は明るいままです。ただそれは強がりの笑顔で、小沢健二さんの『さよならなんて云えないよ』の歌詞のように、みんな無理して明るく振る舞うのです。
●1番思い出深いバラエティ番組『ピラメキーノ』の最終回について
僕にとって、一番思い出深いバラエティ番組の最終回は『ピラメキーノ』です。合計6年間続きました。
『ピラメキーノ』は、2010年に、夕方の帯30分番組として始まりました。
番組1年目、MCのはんにゃ、フルーツポンチの人気も相まって、小学生の間でブームとなり、イベントを開けば2万人集まり、番組から出したCDはオリコン初登場2位(累計30万枚の大ヒット!)、毎週のようにいろんな雑誌の取材を受けました。圧倒的な人気が出たのは1年目で、その後はジリジリと後退していきました。
そして番組開始4年間で、夕方の帯30分番組としては終了し、朝の5分帯番組となりました。それから2年で朝の5分帯番組としても終了。合計6年間、『ピラメキーノ』は放送しました。
その初回から最終回までずっと居続けた唯一の局員が僕でした。
開始当時は佐久間さんがプロデューサーで、濱谷さんが総合演出でしたが、2人とも抜け、自分が総合演出兼プロデューサーとなっていました。
最後の収録の時、MCのはんにゃ、フルーツポンチとも6年間ほぼ毎週会っていたので、だいぶ仲は深まっていました。
「はんにゃとフルポンの人気がなくなったせいで番組終わるんだよ」
「太田さんが社内でえらくならないからでしょ」
そんな軽口をたたきながら、なるべく湿っぽくならないように最後の収録を終えました。
その後、簡単な打ち上げをタレントロビーでやることになりました。そこには『ピラメキーノ』に今まで関わった局のスタッフも来てくれていました。イベント関連の部署や、商品化を担当した部署、アニメ部、映画部、スポーツ局など、マルチ展開をしていたこの番組ならでは、予想以上に多くの人が集まっていました。お疲れ様の挨拶を局長からもらい、しばしの歓談、そしてメンバーの挨拶です。
「いつかまたこのメンバーで一緒に番組をやりましょう。絶対ですよ!絶対に、絶対ですよ!」
というテレビのバラエティ番組の最後の収録でのお約束の、けど絶対叶わない挨拶(同じメンバーで番組をやるということが、です)を、フルポンの村上君が強調することで笑いに変えた後、最後に僕の挨拶となりました。
6年間、たくさんの小学生に笑いを与えてきた番組です。
最終回で、番組マスコットのピラメキパンダを爆破させてしまうような、そんな子ども番組です。
だから、最後も笑いで終えたいな、と頭では思ってましたが、気持ちは真逆でした。
こみあげてくる涙をとめることができず、ろくな挨拶はできませんでした。誰々に感謝の言葉を述べてから「あのコーナーが楽しかった」、「あのイベントが思い出深いです」、とか話そうと思ってましたが言葉は全部ぶっ飛んで、口から出てきたのは、
「30代の青春が終わっちゃうんだな、という気持ちでいっぱいです」だけでした。
あとは何も言えず、30秒くらい僕が泣き続けて、それを佐久間さんと浜谷さんがフォローして、拍手で終わる、そんな最後でした。笑いで終えられなかったことをしばらくの間、悔やんでましたが、今は、30代の大人が涙をこらえきれなくなるまで本気で打ち込んでいたんだな、と懐かしい気持ちになります。
スポーツ選手の引退でたとえるなら、サッカーの中田英寿選手のように余力を残したままスマートに去るのがドラマのクランクアップの儀式だとしたら、バラエティ番組の最後は、ケガをしてボロボロになっても、ピークとは程遠いパフォーマンスしかできなくなってもなお現役にしがみつづけて引退していった選手、最近だと松坂選手とかでしょうか…。
ただ、それでも、それだからこそ、僕はバラエティ番組が好きです。バラエティ番組の宿命が好きです。
と、『おしゃ子!2』のクランクアップを迎え、そんなことを考えてました。
●おまけ
『おしゃ子!2』の最後のシーンは、なんと、後輩社員、正井さんのイメージカットでした。美人幽霊役として出演してもらうのです。
照れながらもやりきる正井さんがとてもかわいかったです。

『おしゃ子!2』の最終話の肝となるシーンででてきますので、要注目です!