「もうすぐ死ぬんです、彼女」彩女にウエディングドレスを着させようとする北は...:雪女と蟹を食う
試着室に移動した彩女と空知。
「すみません。彼が変な嘘ついちゃって…ご迷惑でしたよね」
「北海道にはご旅行で?」
「ええ…」
「じゃあ、次に来るのは当分先かもしれませんね。良かったんじゃないですか? 今このタイミングで。今あるものが未来にも必ずあるなんて保証は、どこにもないですからね」
「……」
「普通、なりふり構わずあんな嘘つけませんよ。愛されてますね」
彩女は恥ずかしそうにうつむく。
明るい光が差し込む階段の下で、不安そうに彩女を待っている北。するとバタンと扉が開く音がし、ウエディングドレスを身に纏った彩女が階段から下りてくる。
「……!」
あまりの美しさに、言葉が出なくなる北。彩女はゆっくりと階段を降りると、北に歩み寄る。
「ど、どうでしょうか?」
「え、あっ…」
「やっぱりこの歳でウエディングドレスは無理がありますよね…」
「違う、そうじゃない! すみません、すごい緊張してて…俺、彩女さんは世界で一番白い服が似合うと思う。いや、どんな色も似合うけど、もちろん…だからすごく…」
ドギマギしながら、必死で気持ちを伝えようとする北。
「きれいです…とても」
うれしそうに微笑む彩女。北は、我慢できずにキスしてしまう。階段から空知と森が見守っているため、彩女は「人が見てますから」と真っ赤になって北を押し退ける。
「た、旅の恥はかき捨てですから!」
彩女を強く抱きしめる北。だが空知は、虚しそうにうつむく彩女に気付く。
「どうかしました、空知さん?」
「う、うん…。一瞬ね、なんだかあの男の人の嘘が…あの女性が死んじゃうって話、嘘じゃないような気がしたの…」
ドレスから着替え、宿泊する部屋に入った2人。コーヒーを淹れている彩女と、それを見ている北。
(ああ…大したことは何もしてないのに、なんだかとても幸せだな)
そんなことを思いながら、北は窓際に立ち、外を眺める。
(世界に2人しかいないようで、お互いがいるだけで、特別な何かが起こらなくても。今になって俺は、いろんなものを取りこぼしながら生きてきたのだと、ようやく気付いた)
(幸せは、既にたくさん目の前にあったのに。大切な人と過ごす日常、この何気ない瞬間の中に…)
コーヒーを飲みながら、何か考え込んでいる彩女。北は彩女の手をぎゅっと握る。
(彩女さん…彩女さんもそうじゃないの? 案外蟹食って、幸せを感じられたら、死ぬことなんかどうでもよくなったりしないの? ねぇ、彩女さん…)
日が暮れ、レストランで料理を食べている2人。生気がない彩女は、食べるのをやめて、死んだ目で外の風景を見ている。その様子を注視ししながら、北は胸が苦しくなり…。
「生」に思いを巡らせる北と、「死」を強く決意する彩女。北は物語の結末を変えることができるのか?
【第11話】
彩女(入山法子)の死への決意を変えることができず葛藤する北(重岡大毅)。「明日、一緒に蟹を食べて、そして一緒に死ぬのよ」と言った彩女を思い出していると、彩女から特選蟹フルコースの予約が取れたと報告される。北は、彩女を救うため、自ら命を絶とうとしていた時のことを思い出すが、その中で自分は彩女によってとっくに救われていたことを実感し…。そして2人は、遂に“蟹を食べる日”を迎えてしまう。



