「蟹を食べて、一緒に死ぬのよ!」物語はついにクライマックスへ...:雪女と蟹を食う
ついに蟹料理店にやって来た2人。いけすで動く蟹を凝視しながら「いよいよか…」とつぶやく北。
「ついにこの日が来ましたね」
「そういえば、まだ聞いてなかったよ。彩女さんが生まれ変わったらなりたいもの」
「そうでしたね。実はあまり考えてなかったんです。じゃあ…死ぬ間際までに教えますね」
優しく微笑む彩女。
個室に案内され、そわそわしながら座っている北。すると女将がやってきて、蟹汁を2人の前に置く。椀の中には蟹の爪が入っていて、不思議そうにそれを見つめる。
「蟹、これだけ?」
「まさか」
ふふふと微笑む彩女。
女将が再びやって来て、立派な本ズワイ蟹の姿茹でをテーブルに置く。
圧倒されたように、ぼんやりと蟹を見つめる北。「人生最後の日は、北海道で蟹を食べる」と決意した日のことを思い出す。
「どうですか? 初蟹の感想は?」
「思ってたよりグロい…っていうか、迫力があって。どうやって食べるんですか? これ」
「ふふ、ちょっと待ってくださいね。まずは足を全部切り離して…」
蟹用ハサミで足をチョキチョキと切り落としていく彩女。北はその様子を「ちょっと残酷ですね」と笑いつつ、じっと見ている。
彩女が殻から足の身をきれいに引っ張り出すと、「出た出た!」とはしゃぐ北。彩女はむいた部分を皿に乗せ、「はい、どうぞ」と差し出す。
北はしばらく観察し、意を決したようにゆっくりと口に運ぶ。微笑みを浮かべながら、その様子を見守る彩女。
もぐもぐと蟹を噛みしめながら、驚いたように目を見開き、味わいながらゴクンと飲み込む北。
「うん…海の味がする」
「え?」
「すっごいおいしいです」
北の笑顔にホッとする彩女。「じゃあ全部むいちゃいますね」とハサミを手に取るが、「ちょっと待って、俺にもやらせて」と北。彩女は驚きながら、北にハサミを手渡す。
北は足の殻をむいてみるが、うまくいかず、蟹の身がぼろぼろになってしまった。
「どうぞ」と皿に乗せると、彩女は「これ、私の分ですか?」といたずらっぽく笑う。
「やっぱりダメでしたかね。案外いけるかなと思ったんですけど…」
「いただきます」
一口食べて、じっくり味わう彩女。ドキドキしながら見ている北に、「おいしいです、ありがとう」とうれしそうに笑う。そんな彩女を見て、今までの自分を省みる北。
「いや…。俺、優しくしてもらわないと優しくできないって…情けない話です」
姿勢を正し、真剣な表情で彩女を見つめる。
「俺、彩女さんには迷惑かけてばかりで…その…」
北が何か言おうとした瞬間、「大変お待たせしました!」と女将がやって来る。
「冷水にくぐらせて花を咲かせた、ズワイ蟹の洗いでございます」
白い花が咲いたようなカニ刺しに、興奮する北。
「これ、すごいですね!」
「いただきましょう」
その後も、蟹しゃぶ、焼きタラバ蟹、蟹の天ぷらなどを堪能する。
(今俺たちがここにいるのは、偶然や運命や、ましてや…俺が強盗を決行したからでもない)
(全部、彩女さんのおかげだ。出会った頃、優しくて女神みたいな彩女さんは、こんなどうしようもない俺と一緒に死んでくれると言った)
(彩女さんが望むことを遂げることが、彼女への償いだと思っていた…。でも、死ぬことは簡単じゃないか。蟹をほじったくらいじゃ、何も償えてない。俺は…まだ何も…)
蟹のフルコースを全て食べ終え、お茶を飲む2人。北は「いや~食った食った」と満足そうに言う。
「北さん」
「はい?」
「…そろそろ行きましょうか」
彩女の意味深な表情に固まる北。
車で海辺にやって来た2人。日が徐々に傾き始めている。彩女は車から降りると、「誰にも迷惑がかからない方法にするわ」と冷淡な表情で言う。
ついに蟹を食べるという目的を果たしてしまった2人。北は、死へ向かう彩女を止めることができるのか…!?
【最終話】
死ぬ前に蟹を食べようと北海道まで旅をしてきた北(重岡大毅)と彩女(入山法子)。北の想いは届かず、彩女は自ら海に入っていった。北はなんとか彩女を浜に引き上げるが彩女の意識は戻らないまま…。残された北は彩女から託された日記を読み、彼女の本当の想いを知る。そして、彩女を訪ねてきた一騎(勝村政信)がホテルへやってくると、北は一騎を海へ連れていき…。北と彩女の不思議な二人旅はどんな結末を迎えるのか…?




