もうやりたい放題!?”深夜”の概念と可能性を広げた「勇者ヨシヒコ」YouTubeで一挙配信

2022.12.29

「私は一刻も早くリエンとチューがしたいんだ!」

山田孝之演じる「勇者」ヨシヒコは、真っ直ぐな目をしながらそう叫んだ。困惑した「戦士」ダンジョー(宅麻伸)が、「魔王を倒すこととチューと、どっちが大事なんだ?」と問いただすと、ヨシヒコは一点の迷いもなく断言する。

「チューです!」

その「勇者」らしからぬ答えに「村娘」ムラサキ(木南晴夏)も「魔法使い」メレブ(ムロツヨシ)も口を開けて唖然として佇んだ。

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これは、2011年7月から放送されていた福田雄一監督による『勇者ヨシヒコと魔王の城』(テレビ東京)の一場面。『勇者ヨシヒコ』は、その後、2012年に『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』、2016年に『勇者ヨシヒコと導かれし七人』とシリーズ化された。大根仁監督の『モテキ』と並び、「テレ東・深夜ドラマ」をブランド化させた作品といえるだろう。

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福田監督自身によれば本作は『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』のオマージュ。アーサー王伝説をモチーフにした本家に対し、日本人が誰もが知るRPGの金字塔『ドラゴンクエスト』をパロディにしている。

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本家同様「予算の少ない冒険活劇」と銘打っているように、登場するモンスターが張りぼてやぬいぐるみだったり、突然、雑な紙芝居風のアニメになったりとチープ。一方で、菅田将暉、片岡愛之助や中村倫也、安田顕、古田新太など思わぬ大物がゲスト出演したりもするのも見どころのひとつだ。勇者ヨシヒコ一行は仏(佐藤二朗)に導かれ、「魔王」を倒すために旅をしているというストーリーだ。そんな中で悪ふざけのように遊びまくった笑いが展開されていく。

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ムロツヨシや佐藤二朗は、本作でコメディ俳優としての実力を天下に知らしめた。また、ゴールデン・プライムタイムのドラマの主演を張っていた山田孝之が挑戦的でニッチな作品にも積極的にも出演するようになった記念碑的な作品でもある。

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冒頭にあげたシーンの前は、こんな場面だった。
戦いの中で傷を負ったヨシヒコは診療所で可憐なリエン(中村静香)から治療を受けていた。ヨシヒコは3人の仲間が先に戦いに向かったと聞くと「私も行かなければ」と立ち上がる。まだ傷が癒えてないヨシヒコを「いけません、ヨシヒコ様!」と止めるリエン。彼女が「一目お目にかかった時から、ヨシヒコ様にゾッコンLOVEでございました」と言うと突然音楽が鳴り出し

「君こそ僕の天使~、戦いの日々の中で突然僕の前にあらわーれたー♪」
「偶然じゃなーいの、きっと神様のおはからい たとえどこにいても出会ってた~」

とそれぞれが歌い合うミュージカルが始まるのだ。
やがて2人声をあわせ

「愛していれば~どこまでもーとーもに歩けるー山超えて~」

と歌い上げる。

もうやりたい放題である。

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3作目の『勇者ヨシヒコと導かれし七人』でもそのやりたい放題っぷりは加速した。


第3話で訪れたのは「エフエフの村」。どこかオシャレ感の漂う、いつもとは違う雰囲気の村だ。そこで一行は、長身で細身のスタイリッシュなイケメンに出会う。

もちろん「エフエフ」といえば誰もが『ドラクエ』と並ぶRPGの名作『ファイナルファンタジー』を思い浮かべるだろう。ライバルであるふたつの世界観が相まみえるとどうなるか。そんな夢の対決が実現したのだ。なぜかドラマで。

その村で出会った男・ヴァリー(城田優)はこう自己紹介する。

「バリーではなく、唇を噛んでヴァリーだ」

カッコいい名前のこだわりもハンパない。「モンク」「白魔道士」「黒魔道士」という聞きなれない職業を名乗る「エフエフの村」の人々。「モンク」が武闘家と同じだと聞くとムラサキは「武闘家は武闘家でよくねえ?」と悪態をつく。

「どうやら我々の世界とエフエフの村は地続きらしいよ。たとえば、作っている会社が一緒的な」などと言いながら「エフエフの村」を旅する一行に、仏は「そういうチャレンジはさ、プロデューサーが苦しむだけだからさぁ」と愚痴るのだ。

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さらに「ダシュウ村と5人の神々」と題された第5話。ジョウ、マッツー、グッチ、ナガサ、ターチというどこかで見たことがある5人組と出会う。頭にタオルを巻いた彼らは「朝目が覚めると身体の自由を奪われ勝手に農作業を始めてしまう」という。

その「呪い」を解くために、ヨシヒコ一行は、「5人の神々」に会いにいくのだが、そこにいたのはシエクスン、テレアーサ、テブエス、テレート、ニッテレンという、あきらかに民放各局を擬人化にしたようなキャラクターたち。シエクスンを見て「死んでいる」「もう蘇らないのか?」と言ってみたりするのだ。

このシーンについて福田は筆者によるインタビュー(「マイナビニュース」2017年3月18日)で「そういうことを一番喜んでやってきたのがフジテレビだから」と語っている。「ちゃんとおもしろものをおもしろいままに発信出来てた頃のテレビはあんなこと平気でやってました」と。だから、「『ヨシヒコ』でやってたことは、"攻撃"とか"抵抗"というようなことではなく、"回帰"」なのだと。

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深夜ドラマという予算の限られたフィールドで、どこまでかつてのように自由に遊べるか。
その戦いこそが『勇者ヨシヒコ』シリーズの冒険だった。そして『勇者ヨシヒコ』は、「深夜」という概念と可能性を大きく広げたのだ。

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【著者】
てれびのスキマ
1978年生まれ。テレビっ子。ライター。テレビに関する著書やコラムを多数執筆。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。
Twitter:@u5u

「勇者ヨシヒコ」シリーズ無料配信中


テレビ東京公式YouTubeチャンネルでは、「勇者ヨシヒコ」シリーズを無料配信中! 本日より「勇者ヨシヒコと魔王の城」#1~6の配信スタート。#7以降、「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」「勇者ヨシヒコと導かれし七人」も順次配信。


勇者ヨシヒコ完全図鑑」もチェック!

※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。
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