正解のないドラマ撮影|太田勇の5分で読めるテレビの裏側日記
「#僕ドラ」あらため「ダメな男じゃダメですか?」のプロデューサー/演出の太田です。
来週からいよいよドラマが放送するわけで、
今日の放送はドキュメンタリーブロックの最終話。
ドキュメンタリー自体が、ドラマができるまでを追いかけていて、
このプロデューサー日誌は「その裏側を書く」みたいなコンセプトなので、裏側の裏側になってしまうんですよね。
裏側の裏側ってなんだろう……苦労したこととか……?
そうだ、苦労したことを書こう。
皆さんの貴重なお時間を頂いているわけですから、1分に1回くらいは「へえ」とか「なるほど」とか「面白い」と思ってもらえることを目指します!
●「読み合わせ」について
先週の放送でも触れていた『読み合わせ』について書きたいと思います。
町田君も言っていましたが、
「70歳のおばあちゃん、カツヨと入れ替わる。しかも自分がイメージしたカツヨではなく、宮崎美子さんの演じるカツヨと入れ替わることが難しい」
たしかにそうですよね。宮崎美子さんもその想いは全く同じ。
読み合わせを始めると、町田君がセリフを言う度、宮崎さんはレコーディングをしていました。これを聞いてあとでまた勉強をするわけです。
勉強熱心で尊敬します。地味にすごいなと思うのは、宮崎さんが自ら毎回レコーディングをしていることです。
普通、これだけのベテラン女優さんだったら、若い付き人がいてその人がそういう細かい作業をしてそうなものです。ところが宮崎さんは当たり前のように自分でやる。そこもまた尊敬です。
読み合わせも、手探りです。
監督がそんなこと言うなよと思われるかも知れませんが、すいません、正直な気持ちです。
僕がドラマって難しいなと思うのは、バラエティ番組より正解がわかりづらいところです。
バラエティ番組の場合は、基本、自分の本能に「どっちが面白い?どっちが笑える?」と問いかけて、面白いほう、笑えるほうを感覚で選べばいいのですが、ドラマの場合は、たとえば今回で言うと「どっちが田町っぽい?」「どっちがカツヨっぽい?」と問いかけるしかないのです。
これが実在した人物であれば史実に沿って考えればいいですし、連載が長く続いた漫画であれば、キャラクターもしっかりできているので、みんなが浮かべる正解があると思います。
ところが、今回は違います。
僕らがこんな風に考えている裏で、原作者の大盛のぞみ先生も「カツヨって?」「田町って?」と考えているわけです。
ドラマのキャラクターに関しては、僕らで正解を作らないといけないわけです。

ちなみに、脚本打ちをはじめて初期の段階で、脚本家の小寺和久さん、我人祥太さんにキャラクターシートを作ってもらいました。
それをお見せします。
何回か読み合わせをして、どうもしっくりこない……となり、キャラクターシートをもとに、田町とカツヨについてみんな(宮崎さん、町田君、僕、山田能龍監督、片山雄一監督の5人です)で話しました。
キャラクターシートは、台本打ちの初期で作られることが多いので、若干の変更は起こります。なので、今ここに書かれていることが全部ドラマに反映しているかというとそんなことはありません。


●杉野遥亮君の役作りの話
ちなみに俳優さんと演じる役について、毎作品打ち合わせをします。
短い打ち合わせもあれば長いのもあります。
ちょっと変わった打ち合わせになったのは、1年前に放送した『直ちゃんは小学三年生』『東京怪奇酒』の主演の杉野遥亮君とです。


『直ちゃん〜』は、杉野君に小学三年生役を演じてもらうドラマでした。
杉野君はこの企画にノリノリでした。
企画の話をした時、杉野君は嬉しそうにこう言いました。
「最近、年齢的にも大人になって、大人っぽく振る舞うことを求められているなということもわかっちゃうんです。だから、あ、これおかしいな、と思う瞬間も飲み込んでしまうことが多いんです。小学生の時って違ったなって。本来は小学生のその感覚が正しいはずなのに。だから僕はこの役を通じて言いづらいこととか言いたいですね」
しかし『東京怪奇酒』の時は逆でした。
ちなみに『東京怪奇酒』は、清野とおるさんの原作漫画でして、心霊スポットに一人で行って夜通しお化けを肴にお酒を飲む、というだいぶ変わったルポ漫画です。(どちらも各配信サイトでも観られますのでぜひ!)
この企画を説明すると、杉野君は困った顔をしていました。言いたいことを言うべきか、まさに大人の振る舞いをして飲み込もうか考えているのが伝わりました。
なので、
「今回は杉野君が主演のドラマなんで、杉野君の想いを全部聞かせて。他の人が主演の作品であれば、自分の気持ちを殺す必要もあるだろうけれど、このドラマは杉野君が主演だから、まず杉野君がやりやすい環境を作りたいんだよね。仮に杉野君が言うことが、僕らが用意していることと真逆だとしても、別に杉野遥亮は生意気だ、1ミリも思わないから」
すると、杉野君は安心したみたいでこう言いました。
「正直、僕は心霊スポットでお酒を飲む人の気持ちはわからないです。言えるのは、お化けを茶化すようなことはしたくないです」
たしかに悪ふざけで心霊スポットでお酒を飲む人はいそうですよね。
ただ原作者の清野とおるさんは一切霊をバカにしていません。
むしろ、霊の存在を感じることで生きていることの素晴らしさを味わいたい、と思って怪奇酒をしているのですから。
それを杉野君に説明をすると納得してくれました。ただ、
「僕は「楽しい」というセリフは言えないと思うので、変えてもいいですか?」
と言われ、台本上にあった「怪奇酒が楽しい」というニュアンスのセリフは全部変えました。
現場でも「すいません、こんなこと言ったら生意気だって言われるかもしれないんですけれど、この現場では思ったことを言ってほしいって言ってもらえたんで、言わないで心に留めておくほうが失礼かもな、と結論にいたり、話したいんですけどいいですか?」
という長い前置きがあって、台本の話をすることが何回もありました。
杉野遥亮君はめっちゃピュアな人です。
昨年、『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』のヤンキー役で一層注目されていましたが、あの役は杉野君まんまだなと思いました。
●演出の手法について ピッチャー型?キャッチャー型?
……と、すいません、『僕ドラ』全然関係なくなってましたね。
しかし、なんでそんな話を書いたのかというと、自分が監督する作品の現場の空気が伝わるかと思ったからです。
バラエティ番組にしろ、ドラマにしろ、演出(監督)には2パターンいると思ってます。ピッチャー型と、キャッチャー型です。
ピッチャー型は、自分の荒削りなアイデアを投げつけて、それをみんなに受け止めてもらう。
キャッチャー型は、みんなの意見を受け止めて、そこから面白そうなアイデアを選び、形にしていく。
僕は基本的にはキャッチャー型です。なんで、自分のアイデアと真逆のことでも、悪口でも、ネガティブな意見でもなんでも言ってほしいと思うタイプです。
僕が思うに、ピッチャー型は閃きの天才タイプで、キャッチャー型は考える秀才タイプだと思います。
ただキャッチャー型だからと言って、アイデアがゼロというわけではありません。
今回の読み合わせに話を戻しますと、僕なりの考えは出ていました。
クランクインする前に入れ替わり系の映画、ドラマを邦画、洋画問わずにけっこうたくさん観て、面白くないなと思った作品にある共通項がありました。
何だと思いますか?
それは面白くない作品は「『ザ・あるある』を多めにいれている」ということです。
『ザ・あるある』というのは、例えば、40歳のおじさんと18歳の高校生が入れ替わる、40歳のおじさんになってしまった女子高生は毛むくじゃらな自分に驚き、パンツの中を見て「気持ち悪い!」と泣く。
逆に、18歳の女子高生になったおじさんは自分の胸を触ってテンションがあがったり、スカートやヒールでの生活のしにくさに辟易したり、という、いわゆる一般的に最初に想像する「おじさんになったら…」「女子高生になったら…」をやるのです。
ただ実際問題、40歳のおじさんだって、全員がおじさん臭いわけじゃなく、西島秀俊さんみたいなおじさんもいるわけです。18歳の女子高生だって、色々います。
つまり、人それぞれだということです。
田町みたいなSNSで虚像ばかり追いかける20代もいれば、大谷選手みたいな20代もいるのです。
「もう自分は婆さんだから」と完全に隠居している70歳もいれば、カツヨみたいにエネルギーあふれる70歳もいるのです。
だから僕の中では「20代だからこう振る舞う」「70歳だからこう振る舞う」という発想は捨てて「田町だからこう振る舞う」「カツヨだからこう振る舞う」とマインドを設定すれば、正解に近づくのでは、と思っていました。
●あとはフォトギャラリーです
今日は長々と書いてしまいましたね。キャラクターシートまであるんで、文字渋滞ですね。
帰りの電車でナナメ読みしようと思っていたのに、写真がないから読みにくいじゃんと思われた方すいません。
ここからはさらっといきます。

衣装合わせにて。カツヨのカツラです。
コロナの関係で、輸出入も動きが鈍く、手に入るカツラが少ないそうです。


町田君がなぜ袴…?結婚でもするの…?それとも…?
正解は、オンエアを観てのお楽しみで。
衣装合わせのついでに、劇用の写真(ドラマ内で使用する写真)を撮影することもよくあるんです。


大盛り!!!
NTVさんの「オモウマい店」のイメージです。
田町の両親(堀部圭亮、山野海)が経営する食堂シャン村の料理はどれも大盛り。
息子の権太に優しいように、店に来るお客さんにも「腹いっぱい食わせてやりてえなあ」と優しい店主と妻なんです。

そして、そのご飯を田町が食べるシーン。さあ、完食なるか…!?

そんな日のお弁当は、めっちゃライト。
余った大盛り飯がありますからね。とはいえ、「豆腐ステーキヴィーガン弁当」です。
僕が入社した20年前だったら考えられませんでした…。

リハーサルのシーンです。
リハ中は、こんな風にコートを着て、マスクorフェースガードをしてやります。
楽しげな空気が伝わりますね。
現場からは以上でした!