町田啓太のダンス、ヤバかった|太田勇の5分で読めるテレビの裏側日記
『ダメな男じゃダメですか?』のプロデューサー/演出の太田です。
今日はいよいよ第3話です。
今夜はとても素敵な回です。
自画自賛して気持ち悪いって…?
いや、違うんです。その理由をご説明します。

●僕が思うプロデューサー像
第3話の監督は、片山雄一さんです。
自分が監督している回だと、自画自賛しているみたいで恥ずかしいのですが、人の監督回だと客観的になれます。
僕は、自分が監督をする回としない回の、ドラマを観る目の差がすごい激しいです。
自分が監督する回は、1カット1カット気になりますが、監督しない回はほぼ視聴者目線になります。
プロデューサーによっては、いちいち細かい人もいるみたいですが、僕はそういうのはあんまり好きじゃありません。
それは若い頃に先輩に教わった、良いプロデューサーの定義を大切にしているからです。
と、ここで問題です。
「良いプロデューサーとは、どんなプロデューサーでしょう?」
シンキングタイム、5,4,3,2,1,終了!!
正解は、
「良いプロデューサーはな、金は出すけど口は出さないんだ」
なるほど!
以来、これが僕のポリシーです。
基本、現場を仕切るのはディレクターですからね。
僕自身は今もディレクターの方がメインなので、いちいち口うるさいプロデューサーが嫌いなのです。
的確なアドバイスをしてくれるのであればいいのですけどね。
この業界には、たいして理解してないくせに何か一言言わないと気がすまないタイプのプロデューサーがたくさんいるんで…。
これも時々話しますが、もし、僕らの目標がお金を儲けることであれば、「ここでこうしたほうが利益でるよね」とか「経費削減できるよね」とか、生産的なアドバイスをすることは可能だと思います。
しかしエンタメは基本「こっちのほうが面白いよね?」と判断の基準がすごい曖昧なんですよね。
だからアドバイスされた時に反論もしづらい。「面白い」って主観ですし。
ちなみにテレ東だと有名Pに、伊藤Pと元テレ東の佐久間Pがいますが、伊藤Pは、お金は出すけど中身には口を出さないタイプのPだと思います。
一方、佐久間Pは、しょうもないアドバイスをしてくるプロデューサーがいるくらいなら自分でプロデューサーも兼ねてやる、というタイプで、僕は佐久間さんの影響を受けています。
船頭が多い船はたいてい沈みますからね。
と、ドラマに関係ない話をしているようですが……この『僕ドラ・プロジェクト』は、船頭は少なかったんで、上手いこといっている、はずです。
ちなみに町田啓太君も、会議で無駄なことは言わないタイプです。
会議とかで必ず、自分の存在感を示すために無駄な意見を言う人っていませんか?
会議の趣旨を理解してないのか、会議の資料を読み込んでないのか、わかりませんけど……(は、愚痴ですね、すいません)。
町田君は、主演だから何か意見言っておこう、とか、今日一言も発言してないから言っておこう、とか、そういう気のない人です。
●素敵なマジックアワー
いきなりちょっと硬めの話から入ったので、柔らかい話をします。
「マジックアワー」という言葉、聞いたことあるでしょうか?
三谷幸喜さんの映画で『ザ・マジックアワー』という作品があったので、それで知った人も多いかと思います。
まあ、僕もその一人です……笑。
で、マジックアワーというのをすごいざっくり説明すると、日の出直後か、日の入り直前、魔法がかかったみたいにキレイに撮影できる瞬間のことを言います。(ちゃんとした説明はネットで調べたらたくさん出てきますので、ちゃんと学びたい方はそちらをどうぞ!)
しかもこのマジックアワー、晴れてないとダメなんです。雨はもちろん曇りでもダメ。
なので、時間に追われて撮影している深夜ドラマで「このシーンはマジックアワーで撮影しようぜ」は、「この宝くじで100万円当てようぜ」と同じくらいの戯言(ざれごと)です。
しかし、第3話では、マジックアワーの奇跡が、2回も起こりました!!
その写真がこちら。



1日は、テレビ東京で撮影したオフィスシーンの日、もう1日は田町の元彼女の葛西家での撮影の日。
写真で見てもキレイなのが伝わってきますよね。
もうね、照明部の人が「これには勝てない」と仕事放棄してました。
むしろ、マジックアワーの短い時間の間に、1カットでも多く撮影できるように撮影部のお手伝いをしてモニターとか運んでました。
上の写真の右に映っている長髪の男性が第3話の監督であり、チーフ助監督である片山さんなんですが、
片山さんが大車輪の活躍を見せてくれました。真冬なのに上着脱いでますからね。
これがドラマのカメラで撮影したらどれくらいキレイに映っているか、
ぜひ放送で確かめてください!
●ダンスシーン
第3話の見どころといえば、町田君のダンスシーンです。
アイドルになることを決意した田町(中身はカツヨ)はオーディションを受け、その審査で踊るのです。
とにかくカッコいいです。台本にはこんな風に書いてます。

このト書き、作家陣も含め僕らは軽い気持ちで書いてました。
「LDHさんだから踊りは得意ですよね。振付も自分でできますよね」くらいに思ってました。
しかし町田君に、
「『稲刈りの動きを取り入れた、ユニークでキレのあるダンス』ってどんなイメージですか?」
と聞かれました。。。。え、まったくイメージないです。。。汗
というか、LDHの方にダンスについて語るって、松本人志さんにお笑いについて語るのとか、大谷翔平選手に野球について語るのと同じくらい失礼なことかと思っていました。。。
しかし、まったくイメージないです、と言うわけもいかず、
「逆にどう思う?」
という、安いビジネス書に書いてありそうな返しをして、時間稼ぎをしました。
すると、
「ユニークだけどカッコよく見えるダンスってとっても難しいんですね。これは振付の人に入ってもらったほうがいいですね」
「なるほど。そうしましょう」
と即答しました。
しかしその時はまだ、町田君の言葉の意味はわかっていませんでした。
僕は自分の監督回ではなかったので、当日まで町田君のダンスを見る機会はありませんでした。
そして正直、ちょびっとだけ、心のどこかで、思ってました。
「町田君、もしかしたらダンスそんな自信ないのかな……。踊っていたのは随分前だし、しかも振付師も入れたいっていうし。そもそもドラマで踊っているところ見たことないしな…。まあ、中身はおばあちゃんだからそこまで上手じゃなくてもドラマとしては成立するし、カメラ割でごまかすことも考えたほうがいいのかな……」
ちなみに踊りがそんな上手じゃない人を撮影する時、たいていカメラも手持ちにして一緒に動いたりします。そうすると色々ごまかせるのです。
これは逆に言うと、ルーズショットのフィックスカメラで撮影できるのは、ダンスがめちゃうまい人に限ります。三浦大知さんのダンスとか、マイケル・ジャクソンとかそうですよね。カメラはあんまり動いたりしないです。
なんて、そんな風に思っていた自分を恥じます。
町田啓太のダンス、ヤバかったです。
その前に踊っていたゆうたろう君も十分上手かったのですが、世界が3つくらい違うのがわかりました。野球にたとえると、ゆうたろう君が140キロの速球を投げて「速いね!」と思ったら、その後に大谷選手がきて165キロ投げて、ホームランを打っちゃうくらいの衝撃でした。
町田君がダンスを踊る位置に向かいます。背筋はピンと張り、前だけ見ています。まばたきもしません。顔つきが、目つきが今までとは違います。緊張が僕たちにも伝わってきます。
田町権太の役に入りきっているのか……
僕には、町田君が町田啓太として様々なオーディションを受けていた時代のことを思い返しているようにも見えました。
まさに全集中です。
イントロが流れるとゆっくり目をつぶり、息を吸いながら少し上に首を傾けると、曲のリズムに合わせて目をあけます。
挑戦的で、余裕のある、今から踊れることが嬉しくてたまらないというキラキラした目です。
最初の動きはぎこちなく、ちょっとコミカルです。ただ一度(ひとたび)リズムにのって踊りだすと、その場の空気も華やかに舞いはじめて、徐々に熱を帯びていきます。
その場にいる全員が町田くんの一挙手一投足に釘付けになり、思わず僕の涙腺はゆるみました。おぉ、44歳の男が恥ずかしい、と思ったのですが、あとで聞いたら、ドキュメンタリーブロックのプロデューサー(36歳・男性)も町田君の踊りを見て思わずウルッとしたそうです。
ダンスはプロ級にうまいのですが、振付にはコミカルな部分がたくさんあって、本当に70歳の農家で働いていたおばあちゃんが考えたような振付になっています。
そこもまた良いです。
これを見てようやく、町田君の言っていた「ユニークだけどカッコよく見えるダンスは難しい」の意味がようやくわかりました。
真逆の2つの要素なんですね。
「味付けは濃いけどさっぱりした料理をお願い」とか「誰もが共感できる今までに見たことない話をお願い」とか、そういう類のやつです。。。。本当にすいませんでした。。。
では、その時の写真です。


はい、踊る前と踊った後の2枚だけです。。。
肝心の踊りはオンエアで!
僕の文章にも飽きてきた人も多いと思うので、ここでクイズです。
さあ、次の2枚の写真で、僕はまた町田君のことを尊敬しました。
一体、なぜでしょう…?


正解は……
カメラが町田君を映してないにも関わらず、町田君が本気で踊っていたから、でした。
そうなんですよ、色んなアングルからとらないといけないので、おそらく10回は踊ってもらいました。
そして最後に、町田君を見ている人たちのリアクションを撮影しました。
町田君は映っていません。大抵、こういう時は、軽く動いてもらうだけです。
そりゃそうです、なんせ映ってないんですから全力でやる必要はないのです。
見ている人たちもプロの俳優なんで、見ているテイでリアクションはとれます。
ただ、たしかに、本気で踊ってもらったほうが、より良いリアクションはとれます。それはやっぱりそうです。
だから、町田君はこの時も全力で踊りました。手を抜きませんね、町田啓太。
というわけで、今週はここまで!
また来週よろしくお願いします。

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