新ドラマ「自転車屋さんの高橋くん」撮影の裏側|太田勇の5分で読めるテレビの裏側日記

11月ですね。秋です。

テレビ東京の太田です。

今月のテーマはいよいよ『自転車屋さんの高橋くん』です。

 

 

今夜第一話です。

こんな真っ直ぐな恋愛ドラマはキャリア初でして、クランクイン前は怖くて怖くて仕方なかったです。

けれども3週間の岐阜県・大垣市でのロケを経て、結果、とても良いドラマができました。

いよいよ今夜第一話なので「こんなとこに注目してほしい!」という見どころを書かせていただきます。

 

 

 

1「遼平の部屋」

 

第一話、ドラマのトップシーンは、遼平の部屋から始まります。

これがカッコいいんです。

なんせ遼平を演じるのは劇団EXILEの鈴木伸之です。

伸くん演じる遼平に見合った部屋でなければいけません。

 

部屋の一部お見せしますと……。

 

 

どうですか…?

カッコいいの伝わってきますよね。

 

実はこの部屋、全部作りなんです。*作り:ドラマのセットとして一から作ること。

今回、お借りしたのは岐阜県大垣市にある「岡田自転車店」。

遼平の部屋となる3階は物置部屋でした。

 

 

 

それを中の物を出し、ガッツリ作り込みました。

これを提案したのは、セカンド監督の八重樫君です。

 

実は、元々はここが遼平の部屋になる予定でした。

 

 

住むとなったら素敵な部屋です。

ただ八重樫くんが「ドラマのトップシーンとしては弱すぎる」と言ったのです。

 

たしかに彼の言い分もわかります。

実際、26歳の若者がお祖父さんと住む家の部屋としてはリアルですが、そこはやっぱりドラマ、ちょっとファンタジーが欲しくなります。

 

ちなみに八重樫くんは笑っちゃうくらいのイケメンで、ロケ先では彼のことを本番直前まで俳優だと思っている人もたくさんいました。

 

 

イケメン八重樫監督です。

 

そして彼が「この物置を遼平の部屋にできないですかね?」と美術部に相談したのです(正確には、制作会社のPの後藤さんにですが)。

「そんなんできたらめっちゃ良いよね。そうしよう!」と思う監督の自分と、「テレ東深夜ドラマの予算でそれは厳しいんじゃない…」と思うプロデューサーの自分が脳内で格闘します…。

そして、長い話し合いの結果…「ドラマの第一話のトップシーンは一番大切だ!」という結論に至り、八重樫くんの主張を取り入れ、物置部屋を作りにすることにしました。

 

ここでも再三書いてますが、ドラマ飽和時代の今、第一話を観てもらえなかったら観てもらえないですからね。

美術費だって八話あるからといって、八等分するのではなく、第一話に比重をかけるべきなのです。

そんな英断の末、生まれた自信の部屋は、ぜひドラマで観てほしいです。

 

 

 

2「パン子の制服」

 

 

漫画だと、可愛らしい、ちょっとレトロなデザインのピンクの制服を着ています。

スタイリストの望月さん渾身の再現具合、ぜひ見てみてください。

 

ちなみに、漫画だとパン子は制服を着て出勤しています。

東京では見ない光景なので、東京出身の僕的には少し違和感でした。

けれども地方出身のスタッフなどにヒアリングすると、けっこうある話だそうで、その設定も活かしてます。

3「パン子の会社」

 

パン子の会社も要注目です。

パン子にとって会社とは、憂鬱でイヤな空間です。

視聴者にもその気分を味わってもらう必要があります。

なので空間全体から、鬱屈とした雰囲気を感じ取ってもらうように美術部さんにはお願いしましたし、照明の方向性もそっちで、寒色系で作ってもらいました。

 

 

逆に、遼平といる空間は暖色系が多いです。

そういった目線で見ても面白いと思います。

 

そして何よりも田中課長の存在です。

「ザ・男尊女卑」というか「ザ・昭和の価値観」というか…そんな田中課長を漫画以上にイラッとする存在にするにはどうしたらいいか…僕の答えは「うちわ」でした。

田中課長は、うちわをいつも仰いでいて、しかも自分の胸にうちわをぶつけるので音が出ます。

苦手な人から出る音って、イラッとしますよね。

 

 

パワハラ上司の田中課長。

演じるのは山口森広さん。

 

逆に、パン子の同僚のキミちゃん。

彼女はパン子にとってオアシスのような存在です。

演じるのは長井短さん。

長井さんは身長172センチもあるので迫力があります。

あと、顔つきが良いです。

あの嫌味な課長がいても、キミちゃんがいたらなんとかなる、そんな気持ちにさせてくれます。

あ、制服のデザイン、ここでバレちゃってますね。。。笑

 

 

ちなみに長井短さんが書いた『ほどける骨折り球子』という小説、オススメです。

現代社会への問題提起もありつつ、しっかりエンターテイメントな小説で、ロケ中の移動車であっという間に読んでしまいました…!

僕は彼女が10年後、芥川賞とってるんじゃないかと思ってます。

 

 

 

4「水」

 

今回の舞台の大垣市は「水の都」として有名だそうです。

街のあちこちに井戸があって、街の人たちはひっきりなしに汲みにきていました。

飲み水としても飲めるそうです。

なので、今回のドラマ、水辺がたくさん出てきます。

そこもプチ注目してみてください。

 

 

大垣名物・みどり橋。ドラマでも出てきます!

 

 

 

5「ファーストコンタクト」

 

さて、今まで遼平とパン子、別々で話していましたが、これは2人の恋愛ドラマ。

どっかで出会うわけです。

ではどんな風にどこで出会い、それをどんな風に撮影するのか。

監督の腕の見せ所です。

 

とはいえ、原作を読んでいる方はわかると思いますが、けして一目惚れの話ではないんですよね。

高校生のキラキラ恋愛モノであれば、最初の出会いで一目惚れまでいくわけなんで、そこに全力を注ぎます。

ただ今回は段階があるんです。

まず出会って、徐々に惹かれていく。

そこがこの漫画の良さでもあります。

どういう段階を踏ませていくか…どれくらいのキラキラ具合、ドキドキ度をここで演出するか…けっこう迷いました。

 

 

 

6「自動販売機」

 

と、「5 ファーストコンタクト」をちゃんと書き終えずに、次の「6」について書かせていただきます。

なんでそうしたのかと言いますと、結局こっちが決まらないと「5」が決まらなかったからです。

 

この「自動販売機」のシーンも原作ファンにはおなじみだと思います。

喉の渇いたパン子が炭酸ジュースを買おうと思ったら、売り切れていて「あ〜」としょげている…するとスーッと缶ジュースが差し出される。

ふと顔をあげると、缶ジュースの先に遼平の顔が見える。

 

 

そこで初めて会話らしい会話を交わす2人。

遼平「自転車、ウチ持ってき」

パン子「なんでですか?」

遼平「オレん家これ」

見上げると、遼平の自転車屋だった、というめちゃ大切なシーンです。

 

ドラマ第一話では、さっきの「5」がドキドキ第一形態、「6」がドキドキ第二形態となっています。

これも、ロケハンでとにかく悩みました。

『自転車屋さんの高橋くん』は大垣市が舞台の話で、実在するお店・場所もいくつかあるんですが、自転車屋は特定のモデルがあるわけではないんです(と松虫先生が仰っていました)。

そんな中、たまたま岡田自転車店という原作に近い自転車屋さんが奇跡的に大垣市にあって、それだけでも奇跡なんです。

さすがにその自転車屋さんの近くに都合よく自動販売機なんてあるわけないんです。

「うーん、どうしよう…」

僕は悩みました。

 

もちろん美術部にお願いして架空の自販機を作ることはできます。

ただそうなってくると、飲み物も架空のモノになってしまいます。

ただこのシーンって、架空の飲み物よりも実在する人気商品のほうが魅力的に見えるシーンです。

(この段階では、パン子と遼平には面識がないのです。知らない人に知らない飲み物を渡されるとちょっと怖いですよね?だからここは、誰もが知ってる飲み物がいいのです)

 

悩んでいる僕を横目に、イケメン八重樫くんが言いました。

「これ、本物の自動販売機を置いてもらえないですかね?」

えっ…?なんだその発想…??そんな事できるの?できたとして、、、お金がいくらかかるんだろう…?僕の頭をめぐるのはお金のことばっかりです……汗

 

実は八重樫くんが『高橋くん』の前にいた現場は海外配信系制作のドラマで、おそらく僕が撮影していた『チェイサーゲーム』とゼロの数が1つ違う予算で撮影していたはずです。

だから発想もダイナミックなんでしょうか。

まるで、まるちゃんたちでドラマを撮影していたら、花輪クンが急にやってきたみたいな感じです。

 

あと、問題はお金だけではありません。

そんな面倒くさい提案、制作部も制作会社のPの後藤さんも嫌がるに違いないと思ったんです。

しかし、「そうっすね。聞いてみますね。なんとかします」

後藤さんは軽やかに返事しました。

その瞬間、僕はこの人はちょっとバカなのか、ウソつきなのか、どっちかに違いないと決めつけました。

僕は半信半疑ですらなくて、信じる心は微塵もなかったです。

 

しかしロケハンが終わって2週間後。

後藤さんから連絡がありました。

「自販機、置けることになりました。アサヒさんが協力してくれます」

おぉ…!!!マジっすか!?

ありがとうございます。天下のアサヒ飲料さん、最高です!!

しかも自販機に置ける飲み物も日本人なら誰でも知ってる人気のドリンクです。

 

もう、これで一気に解決です。

後藤さんを疑ったことを心の中で謝罪しました。

ロケハンの時に「ここに自販機あったら良いよね」と夢物語のように話しながら、理想のカット割りをしていた場所に、本物の自動販売機が置かれることとなったのです。

 

 

イケメン八重樫監督と、撮影の堀部さんでスタンドインしてもらいました。

 

それがわかると、逆算ができます。

「自販機のシーンがこんだけ素敵になるんだったら、「5」もこれくらいにするといいよね」と、具合がわかってきました。

どっちのシーンも素敵な仕上がりとなりました。

「ハンバーガーとお寿司どっちが好きですか?」「どっちも好きです。日によります」みたいな感じです。

どっちもお楽しみにしてください!

 

 

 

7 お弁当

 

と、一話の見どころいっぱい書きましたが、『高橋くん』の現場はとにかく良かったです。

真夏の暑さの中、殺人的なスケジュールでしたけど、本当に楽しく撮り切れました。

大垣市の方々が親切だったので、ロケがとてもしやすかったんです。

 

そして何より、お弁当が美味しかった…!

これは、制作部の22歳のキャリアまだ半年の金子くんのセンスです。

こんなお弁当の美味しい現場は初めてでした

 

 

飛騨ということで、飛騨牛のステーキ弁当。

 

 

大垣では有名な盛田屋さんの出前蕎麦と親子丼。

食べログの高さにビックリする名店です。

 

 

台湾風混ぜご飯という変化球も。

 

 

まさかのケータリング。

値段も普通のお弁当とそんな変わらなかったそうです。

 

 

 

8 主演「鈴木伸之」くんについて

 

僕のこの日誌を読んでくださっている方の中には、僕が1月クールに担当した『ダメな男じゃダメですか?』(町田啓太くん主演)から読んでくださっている方も多いと思います。

 

やはり町田啓太くん、鈴木伸之くん、同じ事務所で年齢も近いですし、ファンの方々は気になると思います。

僕も楽しみでした。

 

ご一緒してみて思ったのは、町田くんも鈴木くんも、「太陽みたいだな」ということ。

ただ太陽の種類が違います。

町田くんは6月の太陽で、鈴木くんは8月の太陽です。

梅雨の合間に、ひょこっと顔をのぞかせて紫陽花を鮮やかに照らす穏やかな太陽が町田くんで、8月の夏真っ盛りの晴れた日にまっすぐに咲くひまわりを元気に照らす太陽が鈴木くんという感じですかね。

どっちも太陽のように現場を明るくしてくれました。

せっかくなんでこれを機に『ダメな男じゃダメですか?』も見直してみてください…笑。

 

最後に、今回、とにかく雨に降られる現場でしたが、これまた奇跡的に撮影する直前に晴れてくれたんです。その時に見えた虹の写真です。

 

 

そして、もう一枚。

夕休中なのに、もう完全にパン子と遼平になっている2人、特に会話もなくもぐもぐ食べている姿が素敵でした。

ピントが合ってなくてすいません。。。

 

 

 

 

今はMEGUMIさんプロデュースドラマ『完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの』の撮影を、原宿のラフォーレの6階にあるスタジオでしています。

 

 

 

朝7時集合だったんですが、ラフォーレの向かいにはすごい行列があって、なんでも転売ヤーの人たちだそうです。

ラフォーレ前にも若者がたくさんいて、整理券を配っているので聞いてみると、とあるYouTuberユニットの展示会だそうです。

今、整理券をもらっても、展示会に入れるのは夕方らしいです。今、朝7時です…。

なんだなんだ、自分がドラマを撮影している間に、世の中では自分の知らないとこで、自分の知らないことが色々起こってるみたいです。

※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。
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