TXドラマ#1こんな風に見てました💭|太田勇の5分で読めるテレビの裏側日記
テレビ東京の太田です。
遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
では今月の日記ですが…。
前に、僕は毎クール、地上波の全ドラマの1話は観る、という話をしたと思いますが、どんなことを考えながら観ているのか、ちょっと分析も踏まえて、いくつかの作品の第一話をピックアップしたいと思います。

なので今月の日記は、テレビ評論家とディレクター目線の間みたいなマニアックな感じになると思います。
まあ、毎月けっこうマニアックですが…。
『それでも結婚したいと、ヤツらが言った。』第一話の感想
https://www.tv-tokyo.co.jp/sorekon/
水曜25時に始まったドラマです。
なんでこれを選んだのかと言うと、まず主演の鈴木ゆうかさん。
彼女の初主演作品の『JKからやり直すシルバープラン』は僕が担当した作品でした。
あと、1話のゲストが前原滉くんに、筧美和子さんと、僕がよくお仕事している人でしたし、あとはカメラマンの藤本さんも『チェイサーゲーム』のカメラマンさんなんで、気になってました。
このドラマ、まずタイトルがいいですよね。
そして1話を観た感想は、脚本が良い作品だと思いました。
1話の脚本家の大歳さんも何回かお仕事してました。(だから褒めてるワケではないです)
正直、観る前は半信半疑でした。
だってあらすじを読むと「ネズミのチュー子(鈴木ゆうかさん)がウェディングプランナー」なんて書いてるわけです。
正直、そこだけ読むと滑ってますよね。
ただチュー子がネズミである設定もうまく活かしてました。
脚本の良かったとこ1つめ。
まず、ドラマの序盤に2つあるあるが入ってることです。
1つ目は「結婚式が減ってきている」という状況の説明。
コロナでここ数年間、減ってますよね。
2つ目は、新郎(前原滉くん)が「結婚式、新婦(筧美和子さん)の好きなようにしていいよ」と非協力的な態度を示すとこ。
これも、結婚式の悩みの大定番です。
こういう多くの人が「そうだよねえ」と思うことを序盤に入れて、「これはあなたに向けたドラマですよ」とより多くの人を取り込むワケです。
これがもし「今はハワイで結婚するのが大ブーム!」とか、旦那さんがノリノリで結婚式の準備をしている、だと共感できず、ドラマ離脱する人が多くなるワケです。
そんなワケで、最初は結婚式に非協力的な新郎に疑惑の目がいきます。
たとえば忘れられない元恋人や気になる人がいるんじゃないのか…とか…。
しかし中盤で、それが反転します。
新郎には確かに気になる人がいました。
ただそれは意外な人物なワケです。
これがわかるのがドラマが始まって13分30秒くらいのとこです。
ドラマの尺が24分で、OP曲が1分あるんで、実質12分30秒くらいのとこ、そうです。
ちょうどドラマの折り返し地点で、脚本の教科書だと「ミッドポイント」なんて言われるとこです。
中盤以降は、新郎が気になっている人に焦点が移ります。
ラーメンでたとえると、まず序盤はラーメンそのもの味わって、途中でラー油とか調味料を入れて味変を楽しむ、みたいな感じですかね。
この味変もポイントです。
もしも新郎の気になっている人が、自分の元恋人だとしたら安直過ぎます。
「それ最初に思いつくヤツじゃん」とがっかりする視聴者も多いと思います。
かと言って、「実は僕は人間じゃなくて、宇宙人なんです」みたいな展開だと、ぶっ飛んでます。
2時間の映画なら成立するかもしれませんが、30分ドラマで(あとこの予算で…汗)それを収容できるキャパはないです。
そしてこのドラマでもう1つ良いのが、チュー子のネズミ設定。
チュー子にはいくつか人間より秀でた能力があるんです。
たとえば、序盤で「新郎に悩みがある」とチュー子は言い切るのですが、そこはネズミの本能で嗅ぎ分けるんです。
その能力を発揮した瞬間につく効果音もまたいいです。
これがあることで、ドラマ独自の世界観ができていきます。
たとえば『孤独のグルメ』で五郎さんが心の声ではなく、饒舌に店主に味の感想を語っていたら…?
それはもう全然孤独じゃないし、『王様のブランチ』のおじさんバージョンです。
五郎さんの心の声があのドラマの特徴です。
こういう風に、ドラマ独自の設定と脚本が馴染んでいると、良いドラマになるな、と改めて痛感しました。
脚本以外で上手だな、と思ったのは、ネズミの家。
オシャレでいいですよね。
これは「テレ東深夜=低予算」の宿命を逆転の発想にしたと思います。
倉庫なんですよね。
倉庫を家っぽくするメリットってなんだと思いますか?

僕が思うに、“世界観を作るのに無駄な飾り込みをしなくて済む”ということです。
これがもし普通にハウススタジオでネズミ感を出そうとしたら、相当な手間がかかります。
まず普通の家の飾りこみをして、次にネズミっぽさを出していくわけです。
たとえばあのネズミの家にはベッドはあったでしょうか?食卓はありましたか?食器をしまう棚は?
てか、そもそもネズミだから食器って使うの?……とか。
つまり普通の家をアレンジした場合は、自分の家がみんなの想像のベースにあるので、色々気になってしまうんです。
ところが倉庫の場合はそもそもが非日常な空間で、どうアレンジしても「これがネズミ一家の家です!」と言い切っちゃえば、納得できちゃうとこです。
なので、もし普通のハウススタジオでした場合は、まずネズミが住む家としての整合性をとるのに手間と予算がかかってしまいますが、倉庫をベースにしているので世界観を作ることに手間と予算を使えるのです。
途中で出てくるチーズの小道具も効果的に使えていて良いですよね。

『来世ではちゃんとします3』
水曜24時30分に始まったドラマです。
お仕事をしたことあるのは主演のだーりおちゃんと、小関くん。だーりおちゃんは前クールに放送した『自転車屋さんの高橋くん』という作品ででヒロインで出てもらいました。
小関くんは『おしゃ家ソムリエおしゃ子』というドラマのシーズン2の第1話のゲストで出てもらったことがあります。
あとはゆうたろう君はいくつかの作品でご一緒してます。
https://www.tv-tokyo.co.jp/raisechan3/
シーズン3まで放送している人気ドラマのことを語るなんておこがましいのですが、本当に世界観が良くできているドラマだと思います。
その世界観と今のトレンドがマッチしているからヒットしてるんですよね。
正直、45歳・既婚・子持ち・男性の自分と『来世ちゃん』の登場人物には距離があって、分析になってしまうんですが、どこかしら拗らせている女子(と男子)が出てくる拗らせ人間デパートみたいなドラマで、これを観ている人たちは多かれ少なかれ、ドラマの誰かしらに重なる要素があるってことなのかなと思います。
桃ちゃん(内田理央さん)をはじめ、ドラマの登場人物たちはみんな、悩みにド正面から向き合って玉砕して、けどまた復活したり結果オーライだったり、みたいな印象があります。
だから愛せるんでしょうかね。
コメディ・ドラマって難しいと思うんですが、そこに堂々トライしていて尊敬ですし、しかも時々、ぶっ刺さるメッセージも入っていて、笑って泣けて、感情が忙しくなるドラマです。
とはいえ今回は桃ちゃんに松田くん(小関裕太くん)という恋人ができた後の話なので、今までのセフレ5人のいる状態とは違う展開になるので、いつもの奔放さが消えるのかな、どうなるのかな、と思ってました。
ただ1、2話を観たら全然いつも通りでしたね。
個人的には、1話の後半で松田くんの葛藤が出てくるのが良かったです。
『今夜すきやきだよ』
「金曜24」枠のドラマです。
前情報で僕が知っていたのは、女性2人が主人公で、ほんの少しガールズラブか、アロマンティックの要素がある、若い女性に人気の原作であること、くらいでした。
つまり、ほぼ情報ゼロで観はじめました。
https://www.tv-tokyo.co.jp/konyasukiyakidayo/
これまた素敵なドラマでした。
知識ゼロで観る場合、最初の10〜15分は肝心です。
そこまでに出てきた情報で続きが観たいかどうか決まります。
『今夜〜』は完全に掴まれました。
ドラマは最初、あいこ(蓮佛美沙子さん)が爆買いをしているシーンから、ともこ(トリンドル玲奈さん)に抱きついて泣き出すシーンで始まります。
すぐに1週間前に巻き戻り、あいこは職場ではデキる女で、恋人もいて婚約中で、けれどもちょびっと不穏な空気が漂っていて…。
泣いている時点で、おそらく婚約者とうまくいかないんだろうなと予想できるんですが、答え合わせをしたくなります。
答え合わせがしたくなるのは、もう1人の主人公、ともこの存在です。
彼女は伸び悩んでいる絵本作家で、ちょっと不思議ちゃんです。
ともことあいこは高校時代の同級生で、同級生の結婚式で久しぶりに再会し、帰り道一緒に帰ります。
そこで2人は本音を話します。
話し終えた時に、ともこは「本音告白ポイント同点」と言います。
そのセリフに引っかかりました。
もし飲み会でこんなセリフを言う人がいたら、変わった人センサーが働いて興味津々になります。
つまりドラマ最初の15分を観て僕は、「あいこという王道に、ともこという変わり種が合わさるとどんな化学反応が起きるのか?」が気になったんです。
その後は、ともこが踊りだすシーンが好きでした。
ともこ、相当変わっています。
が、トリンドル玲奈さんが日本人離れした顔立ちなので、もう全然オッケーです。
このシーンのカメラワークも好きです。

あいこ、ともこの2ショットを、ふすま越しでゆっくりズームアウトしていきます。
ここは王道だと、2人の心がつながった瞬間なので、どちらかというとズームインしたり、最後は2人の顔のヨリとか入れて、心が通じ合った2人を表現したくなる気がしますが、あえてそうせず。
これは、本間Pの好みなんでしょうかね。
彼女が担当した『チェリまほ』や『うきわ』も共通した雰囲気を感じました。
こういう引き算っぽい演出は、バラエティ番組を長くやっている身としては中々難しいです。
「わかってくれないんじゃないか」という不安が先立ってしまうのです。
少し話が逸れますが、僕が引き算をすごい意識したのは『自転車屋さんの高橋くん』という作品です。
主演の2人の空気感や、街の雰囲気そのものを伝えたかったんで、台本に「ヒキを大事に」と書いて、自分に言い聞かせてました。それくらい苦手です。
逆に、今、YouTube、Paraviで配信中の『何かおかしい』というサスペンス・ホラードラマは、バラエティ番組の延長線みたいな感覚で作ってます。
顔芸につぐ顔芸、演技もリアリティっぽさよりは濃さ重視です。
ひと目見た瞬間に「何かおかしい」と思ってもらえるのを意識しました。
さて、話を『今夜〜』に戻します。
いいな、と思ったシーンをもう1つ。
彼女の口から「アロマンティック」という聞き馴染みの薄い言葉が出てきますが、それもリアリティを持って視聴者の耳に残ります。
ここまでのともこの描写が丁寧だからです。
ちなみに、このシーンであいこがワインを飲んでるんですが、そこも好きです。
彼女のコップです。ワイングラスじゃありません。

「ワイングラス=高級」ではありません。百均だって買えますから。
なのに普通のコップというとこが、ともこの物への価値観と生きる姿勢を表現していていいな、と思いました。
ドラマの世界観って、こういう小さい積み重ねでできているんだと改めて思いました。
あとはこのドラマの注目の俳優さんをピックアップしますと、ともこの友だちのフリーライターのしんた(三河 悠冴くん。三河くんは町田啓太くん主演の『ダメな男じゃダメですか?』でも腰巾着のサラリーマン役ででています)です。

フェミっぽい雰囲気を醸し出してますが、一人称は「俺」なんで、ともこを恋愛対象として見ているのかな、とか勘ぐっています。
彼がゲイでも、ロールキャベツ男子でもどっちもありえそうなんで、良いキャスティングだなと思いました。
やっぱりそれも、ともこが自分をはっきり「アロマンティック」と明言しているのが効いてるんですよね。
もう1つは、感想というか、最近の傾向かなと思ったことです。
途中、あいこの話から回想にいくシーンがあるんですが、ぬるっと回想にいきます。
画の色味もほぼ同じでした。
つまり「ここから回想です」とわかりやすい説明がないんです。
『サイレント』でもそうでしたし、最近の韓流ドラマは時系列を明確にしない作品が多い気がします。
これは世界的なトレンドなんですかね。
これも「わかりやすさ命」で育てられたバラエティ番組のディレクターからすると怖いことです。
この傾向の理由は分析できてませんが、映像コンテンツに触れる機会が増えて、観る側の理解のスピードが上がったということか、それとも、ドラマの登場人物たちに起こった出来事であるなら、それが過去なのか今なのかは大切ではないということなのか……いずれにしろ、面白い傾向だと思いました。
日が変わりまして。
原作漫画のあるドラマの楽しみの一つは、ドラマを観た後に原作漫画を読むことです。
さっそく漫画も読みました。
驚きました!こんな感じの漫画だったんだ…!
もっとしっとりした漫画かと思ってました。
好きな歌の元ネタが洋楽だと知って、元ネタを聴いてみたら全然違ったけど、どっちも好きだった、みたいな感じです。
本間Pは、この漫画を読んでドラマにしようと思って、あの世界観で行こうってすぐに決まったのかな、それともめちゃ悩んで何周もしたのかな……そんなことが気になりました。
『夫を社会的に抹殺する5つの方法』
火曜24時30分に始まったドラマです。
このドラマもタイトルが気になっていたんで、(あと、前クール一緒だった野村周平くんがクズ夫で出ていると聞いていたので)、早速1話を観ました。
このドラマも原作未読です。
僕が楽しみにしていたのは、妻がいつ、どんな形で”抹殺する”と決断するのか?でした。
ドラマのタイトルがその通りですからね。
https://www.tv-tokyo.co.jp/otosatsu/
この手のタイトルのドラマはわかりやすさが強みである一方、弱さもあります。
弱さ、なんだと思いますか?
僕も『ヒヤマケンタロウの妊娠』という作品の時、同じ問題にぶつかりました。
正解は、「タイトルの状態にいくまで、どれくらいお話を引っ張るか?」です。
『ヒヤマケンタロウ〜』でいうと、男性が妊娠する話なのはタイトルでわかると思いますし、わかっちゃいます。
となると、主人公のヒヤマ(斎藤工さん)が妊娠してない状態は前フリです。
「男が妊娠を経験してどれだけ苦労するか、そこが観たいんです」と思う視聴者にとって、その前フリは短いほうが良いに決まってます。
一方で、ヒヤマが女性の妊娠を軽くみていたり、いわゆるホモソーシャルな社会で「ザ・男」として生きている姿が長ければ長いほど、ひっくり返った時の反動も大きくて、「自業自得だよね」と視聴者は溜飲を下げるのです。
だから、この作品ではどれくらい引っ張るのかなぁ、というのが純粋な疑問でした。
#オトサツ、僕的には気持ち良いとこで、納得する形で殺意が生まれてました。
面白いと思ったのは、劇伴音楽です。控えめな印象を持ちました。
こっち系のドラマ(とざっくりジャンルわけをしてしまうと失礼ですが、いわゆるドロドロ系)だと、多いのは激しめの音楽をつけて、気持ちを盛り上げるのが多い気がしますが、#オトサツは静かでした。
妻の茜(馬場ふみかさん)が家に1人でいるシーンなんてほぼ無音だったような印象すらあります。
あと、茜の心の声も少なめですよね。それも印象的です。
手法としては、彼女の心の声を入れて、彼女の夫への怒り・悲しみをもっと強めることもできるのに、それもしてないんですよね。
けれどもだからこそ怖い。
静けさこそが彼女の狂気です。
なんだか、ジョーダン・ピールの映画や『ゴーン・ガール』を思い出しました。(『ゴーン・ガール』が実際にそんな静かな映画だったかは記憶は曖昧ですが、印象として、です)

僕的な注目ポイントは、序盤に出てきたYouTuberの”酔っ払ッパー”の存在です。
去年の「M-1」のウェストランドさんの漫才ネタじゃないですけど、YouTuberから感じる危うさをビンビン感じます。。。笑

今月はテレ東で始まった新ドラマの1話の感想について書かせていただきました。
最後まで読んで頂いてありがとうございます。
もしこれを読んで気になるドラマがあった方はぜひ観てみてください!
TVerかParaviで観られるはずです。
現在僕は撮影中の作品も、直近で撮影する作品もありません。
逆に、奥さん(出版社・編集)が忙しいので、自分が子育てをけっこうやっています(のつもりです…)。
昨晩の子どもとの夕飯は、蕎麦、はんぺん、ブロッコリー、きゅうり、焼き海苔。
僕の好きなものと一緒なので楽ちんです。
