1月クールNo. 1ドラマ|太田勇の5分で読めるテレビの裏側日記

春になりました。
テレビ東京の太田勇です。
少しずつ暖かくなってきました。
出会いと別れの季節です。
僕にとっては「2階とのお別れです」。
2階とは、「保育園の2階」です。
子どもがもうすぐ進級します。次は3才クラスです。
0才から2才クラスまでの3クラスは2階で、3才からは1階になるんです。
つまり、4月以降、子どもはもう二度と2階に上がることはないわけです。
そんな訳で、毎朝、毎晩、保育園の送り迎えで階段をのぼるとき、なんともさみしい気持ちになります。
0才クラスに子どもを届けに行く日々のことを今でも思い出します。
あの頃は、1才クラスも2才クラスの子たちもお兄さんお姉さんに見えました。
下のクラスの3才以上の子どもたちなんて、歩くし、走るし、話すし、笑うし、人間です……。
うちの子にそんな日が来るなんて来世くらい先のことじゃないかと思っていたほどです。
それが、いよいよ1階になるわけです。
とはいえ、子どもと話せるようになって楽しいことも増えました。

うちの息子はとにかく電車が大好きで、寝ても覚めても電車で遊んでいます。
お風呂からあがっても着替える時間も惜しんで、裸のまま電車で遊んでます。
「パパもきてくださーい。 どのでんしゃがすきですか?」
と、聞いてきます。
正直、電車に対して1ミリの興味もないので、面倒くさいです。
パソコンを開こうものなら、
「こどものいうこときかないとダメ」
と怒られます。
困りますが、こんな風に子どもが一緒に遊んでくれるのもあと10年もないわけですよね。
あと10年もしたら、スマホでゲームとかしちゃうんですもんね。。。

写真は『ムーミンパーク』に行った時です。
これも『ムーミンパーク』が目的地ではなく、子どもが特急『ラビュー』に乗りたかったので乗って、たまたま降りた駅に『ムーミンパーク』があったので行きました。
息子はムーミンママが近くにきても喜ぶでもなく、「なにせんできたの?」とムーミンママの通勤経路を気にする電車ボーイでした。
●最近観た映画と、企画の話と、悩み
最近も撮影はないので、次の作品の準備をしています。
準備とは大きく2つあって
1,「決まっている作品の準備」
2,「作品を決めるまでの準備」
です。
1,「決まっている作品の準備」というのは、脚本作りにはじまり、キャスティング、スタッフィング、社内調整などなど、いわゆるドラマの準備です。
こちらは明確な“To Doリスト”があって、そのひとつひとつの作業を精査していくイメージです。
ただ作品ごとに特徴があるので、「決まっている」と言いつつ、全体の20%くらいはファジーで、その都度対応が変わってきます。
それでも"To Do”通りに進めていけば、進んでいってる感触は得られます。
一方、
2,「作品を決めるまでの準備」は、明確な“To Doリスト”はありません。
その人ごとにアプローチも違います。
僕の場合は、スポンサーを探す/面白い企画を自分で考える/面白い原作を探す/俳優事務所と話して情報を得る とかでしょうか……?
こちらは、「決まらなかったらゼロ」なので、進んでいく感触は得にくいです。
特に最近、僕が力をいれているのは、『面白い企画を自分で考える』ということで、そのアプローチとして『過去の名作映画を観て』、それを『現代設定にしたらどうなるか』考える、というひとり企画会議をひらいてます。
ちなみに最近観た映画を羅列しますと…
洋画)
『あなただけ今晩は』『チャイナタウン』『裏窓』『深夜の告白』『イヴの総て』『グランドホテル』『麗しのサブリナ』『バニーレイクは行方不明』『サンセットブルバード』『スティング』『十二人の恐れる男』『第三の男』『知りすぎていた男』『めまい』『情婦』『お熱いのがお好き』『ニュー・シネマ・パラダイス』『アパートの鍵貸します』『ゴッドファーザー』シリーズ1〜3
邦画)
『生きる』『赤線地帯』『ゆきゆきて神軍』『秋刀魚の味』『人間の証明』『ホーホケキョ となりの山田くん』
こんな感じです。基本、アカデミー賞をとったような昔のメジャー作品ばかりです。
「えっ? 観たことなかったの?」
と叱られそうな有名な作品ばかりです。。。汗
やっぱり過去の名作は勉強になります。
個人的に一番勉強になるのは、「物語の展開」と「人物配置」です。
話を考えるとき、『主人公がいて、ライバルがいて、ヒロインがいて、親友がいて、上司がいて…』と人物相関図も平行して考えていきます。
ただその時に「作ったは良いものの物語上いらなくなる人物」や、逆に「物語がうまくまわらず、その原因は、あるキャラクターが足りなかったからだ」なんてことがあります。
名作映画の場合は、その正解が書いてあるのです。
その人物配置のまま現代設定に置き換えれば、少なくとも人物相関図としては正解です。
これは発見でした。
ちなみに、この中のマイベスト5ですが…
『あなただけ今晩は』『お熱いのがお好き』『イヴの総て』『十二人の恐れる男』『生きる』ですかね。
けど、当たり前ですが、どれもめちゃ面白かったんで、お時間ある人はぜひ観てください!
●1月クール一番おもしろかったドラマは…?
過去作品と同じくらい最新の作品も観ます。
今クールのドラマも面白いのがたくさんありました。
個人的1位は日テレの『ブラッシュアップライフ』がダントツでした。
メジャーリーグでたとえると大谷選手くらい抜きん出て面白かったです。
皆さん一緒だと思いますけど、あの女子3人の会話が面白くてずっと観ていられますし、懐かしいあるあるも毎回全力で同意しちゃいますし、麻美が人生を繰り返す度にどんどん応援したくなるし、ふくちゃんの歌声が何回聞いてもちょうどいいし、後半、笑いながら泣いちゃうシーンの連発でしたね。
あと、最初から自分の欲のためにがんばらないタイムリープって珍しいですよね。
あのドラマが優れていた点はいっぱいあると思うんですが、僕が一番すごいと思ったのは、「あのテーマを選んだこと」です。
あのドラマは確実に勝てる保険が少ない中、スタートしていると思うんです。
わかりやすく言えば、今の時代、ボーイズラブやドロドロ不倫をテーマにすればある程度、話題になりますよね。
キャストでアイドルを使えばファンが観てくれる計算ができます。
『エルピス』のような作品は現代社会を反映をしているので、「今やる意義」が強くあります。
その理屈で考えた時に、『ブラッシュアップライフ』は、何も保険のきいてない状態で始まっています。
あ、決まったテーマ曲がないのもそうですね。
「silent」もドラマも良かったですけど、Official髭男dismのあの歌も強かったですからね。
もちろんバカリズムさんが脚本を書いてますし、超豪華なキャストが出ているので、それを「保険」と呼ぶことはできます。
けれども毎クール40作品以上のドラマが放送していて、配信ドラマもたくさんある中、それだけで「保険」とは呼べないと思うんです。
実際、世の中には、豪華な出演者が出て、一流のクリエイターが作っても失敗するドラマもいっぱいあります。
なので圧巻の作品です。
正直、僕も最初は「どうだろう」と思いながら見始めました。
「タイムリープものか…」くらいの気持ちでした。
けれども序盤は「会話がおもしろいな」で気になり、タイムリープがはじまって、すぐにただのタイムリープものとは違う事に気づき、いつのまにかハマってました。
「ここ十年で一番おもしろいドラマかもしれないね」
と、奥さんに話したほどです。
しかしそんな僕に奥さんが言いました。
「『鎌倉殿の十三人』の時も、『ここ十年で一番おもしろかった』って言ってなかった?」
……そうでした。。。
しかし、両方のドラマを観ていた奥さんも同じ意見です。
「正直、どちらも十年に一度、生まれるか生まれないかのドラマだよね」
なんて、一時期のボジョレーヌーボーの宣伝文句みたいな結論になってしまいました。
たぶん僕は2年前は『おいハンサム!!』のことを「十年に一度の名作だよ!」と奥さんに話していたような気がします。。。笑
●舞台が、観にいけない。。。涙
さて、最近の悩みは、やはり、舞台を観に行きづらいということです。
これは、小さい子どもを持つ業界人はみんな思ってることじゃないでしょうか。
平日は、朝8時30分から夕方6時30分までしか仕事ができないので、移動時間を含め3〜4時間も身体をあけるのは難しいです。
独身のころは、早起きしたり、夜中まで仕事ができたのに、今はできません。
朝なんて、子どもが朝ごはん食べてくれない、着替えてくれない、保育園行ってくれないで、仕事を始めるころには、クタクタです。
平日は舞台に行けない……。
なので、土日にベビーシッターをお願いして、とかになるわけですが、子どもと相性の良いベビーシッターさんを見つけるのも大変ですし、見つけてもスケジュールがあわないことも多いですし、お金もかかりますし、子どもへの罪悪感もあります。
だから、KAAT(神奈川芸術劇場)で観に行きたい舞台があった時に、驚きました。
KAATには託児サービスがあるので、舞台の直前に子どもを預け、舞台が終わった直後に子どもを迎えに行けます。
『舞台の尺+10分くらい』、子どもを預ければいいので、罪悪感も少ないですし、費用も抑えられますし、ベビーシッターさんを探す手間も省けます。
子どもは電車が好きなので、そこまでの道中が電車旅になっています。
本当に素晴らしいサービスです。
今、心から思うのは、託児サービスのある劇場が増えると嬉しいなということです。
そうしたらもっとたくさん舞台も観に行けるのに……。
●最近学んだこと
つい先日、社内で勉強会がありました。
アメリカのTVドラマ制作について詳しい方をお招きして、日米のドラマ制作の違いについて教えていただきました。とても有意義でした。
一番の驚きは、アメリカのTVドラマシリーズの場合、ドラマ作りのトップ、いわゆるプロデューサーがメインの脚本家になる、ということでした。
そのポジションは「ショーランナー」と呼ばれるそうです。
みなさんも、日本のドラマは一人の脚本家が書くことが一般的で、アメリカのドラマはチームで書く事が多い、というのは聞いたことがあるかもしれません。
その通りでして、アメリカではこの「ショーランナー」の下にライターズルームというのが設けられ、そこに複数人の脚本家が入り、一緒に脚本を考えていくそうです。
ただ最終的にチェックするのはショーランナー。
言われてみれば自然なことでドラマの「0→1」を考えたのがショーランナーですからね。
なのでキャリアアップの方向としては、
1 ライターズルームの一員(脚本家)になる
2 そこから、ショーランナーになる
だそうです。
つまり、ワンオブゼムの脚本家から、トップの脚本家(ショーランナー)になり、制作総指揮(プロデューサー)も兼任する、というわけです。
僕の知識が偏っているだけかもしれませんが、日本の場合は、ドラマのプロデューサーとチーフ脚本家が一緒というケースは聞いたことがないように思います。
ただ、アメリカのTVドラマではそれが一般的だと知り、自分もそこを目指したいと思いました。
と、同時に、僕にはこんな疑問がわきました。
「なんで日本はアメリカと違うのか…?」
これは僕の憶測ですが、知っての通り日本は「漫画」文化が強く、「漫画をドラマにする」文化もとても強いです。
「漫画として存在している」作品の場合、その作品の「0→1」を作ったのは漫画の原作者と考えるのが一般的です。
かといって、漫画の原作者が、制作総指揮をやるわけありません。
そこで、日本ではプロデューサーと脚本家のポジションが完全に分離したのではないでしょうか。
そして日本ではその考え方が、漫画原作ドラマ、オリジナルドラマ、関係なしに浸透していったのではないでしょうか。
僕はバラエティ番組のディレクター時代も、自分で最終的にはロケ台本を書きたい人間だったので、そっちのほうが性に合ってます。
ただ、日本のドラマ事情を知れば知るほど、そういったケースがなかったので、自分の考えがおかしいのかと思っていました。
ただどうやらアメリカでは僕の考えのほうが一般的なようです。
そのことを知れて、とても勇気をもらいました。
もうひとつ面白かった話は、アメリカのTVドラマがドラマ開発にかける予算の話です。
『パイロット版』を作るまで2〜6億円かけるそうです……!
『パイロット版』ということは、放送前のお試しドラマです。
それだけお金をかけて、グリーンライトに至らない作品は、お蔵入りして陽の目を見ないまま終わることもあるそうです……!
ちなみにその制作費を負担するのは制作会社だそうです。
アメリカの場合は、テレビ局は作品を放送にかけるだけで、権利も持たないそうです。
なるほどぉ。。。日本とは全然違いますね。。。
ちなみにお隣韓国も、アメリカのドラマの作り方に近いようです。
だから世界的にヒットする韓流ドラマが多いのかもしれません。
日本の場合は、国内市場がメインなのでそこまでの予算をかけてパイロット版を作るわけにはいかないです。。。
だったら日本もパイロット版に2〜6億円かけて、海外で売らないとリクープできないくらいの予算規模にしてしまえば、自ずとシステムが変わるのでは、などとも思います。
しかし、それって「今の10倍の家賃の家に引っ越せば、自ずと仕事も頑張ってもっと稼ぐよね」というのと同じくらいの荒療治ですよね。。。
とはいえ、お隣韓国の勢いに押され気味の日本のドラマが、どうやったら世界レベルになるか、考えないといけないですよね。。。
今月もツラツラと色々書かせていただきました。最後までお読みいただいてありがとうございます。
来月もまたよろしくお願いいたします。