💻ドラマは新時代へ|太田勇の5分で読めるテレビの裏側日記
●『チェイサーゲームW』最終回について

テレビ東京の太田です。
第8話、放送終わりました。
ご視聴してくださった皆様、本当にありがとうございます。
まだ観ていない方は、TVerやU-NEXTなどで観られるのでぜひ観てみてください。
最終回に関しては、いろいろなご意見を頂きました。
たくさんお褒めの言葉も頂きましたが、厳しい言葉も同じくらいいただきました。
X(旧ツイッター)、僕は2011年から使ってまして、時々キツい言葉を頂いたりもするんですが、今回が一番キツかったです。
メンタルは強いほうですし、終わったことはすぐ忘れるタイプなのですが……「脚本つまんない」とか「演出がダメすぎる」とか、ストレートな言葉はやっぱりグサッときました。
別のドラマの脚本の打ち合わせが立て続けにあったんですが、もうすっかり自分の脚本に自信を失っていて、おそるおそる脚本を提出する日々が続きました。
打ち合わせで「面白いです」という言葉をもらう度に、その言葉が薬となって傷口に優しく染みてきて、ちょっとずつ癒えてきています。
でもリアルな感想ですし、ドラマを真剣に観てくださったからこそ出てくるお言葉です。
英語、中国語はもちろん、ベトナム語やタイ語や韓国語……まさか『チェイサーゲームW』がこんな世界に広まるとは思ってなかったので、とってもありがたいと思っています。
厳しめの言葉は「良薬、口に苦し」だと思って、次に活かしたいと思います。

そんなわけでファンイベント、やります。
とても嬉しいです。
チケットは売れ行き好調のようでして、抽選になってしまいます。
もう少し大きいキャパのハコを抑えれば良かったのかもしれませんが、自信がなかったので…。
ただ配信もあるので、そちらでもぜひご参加ください。
自分の担当したドラマでイベントを開くのなんて初めてです。
バラエティ番組時代に『ピラメキーノ』という子ども番組で定期的にイベントはしていましたが、それ以来です。
イベントって楽しいんですよね。
直に番組ファンの方と会えると元気をもらいますし、ヒントをもらえたりします。
『チェイサーゲーム』に関しては以上になります。
●次のドラマの準備中です
次は夏にオンエアのドラマを担当しています。
それはプロデューサー/監督・脚本で参加します。
ジャンルは、なんでしょう……青春?コメディ?社会派?ちょっとサスペンス?
あまりまだ話せませんが、とある俳優さんから相談されたのがきっかけでした。
その人は、こんな話を僕にしてくれました。
「群像劇をやりたいんです。SNSで「結婚しました!」って幸せ全開の人がいて、同じタイムラインで「会社をクビになりました」とか「愛犬が死にました」と嘆いている人がいて、「推しが尊い」という人もいれば、今食べたランチの写真をアップしている人がいるじゃないですか。それが全部、同じ時系列で起こっていますよね。そういう群像劇をやりたいんです」
面白そうだな、と思いました。その人は続けます。
「ついこの間、SNSでコンビニで年齢確認をされた外国籍の中年の人が店員にブチギレている動画を見たんですよ。たしかにその人は絶対未成年じゃないんです。けど、店員もマニュアルにあったから従っただけなんです。その中年の人は、年齢を聞かれたのは自分が外国人だからだ、とも怒ってるんです。絶対そんなことないのに。けど、その外国の中年の人の気持ちも想像はできるんですよね。きっと自分の見た目で苦労してきたんだと思います。じゃあ、この一件、悪いのは誰?怒っている外国人?年齢を聞いた店員?そのマニュアルを作った店長?仲裁に入らずこの動画を撮っている人もどうなんだ?…なんか、そういう感じの、単純な勧善懲悪ではないドラマをやれないですかね?」
面白そう!
そんなわけで、去年の夏からちょっとずつ準備してきました。
今作品で、試したいことがあります。
●ドラマの流行り
一昔前までのドラマの基本的な流れといえば、
・1話完結
・大きな山があって解決してハッピーエンド
・次に向けて、気になる前兆がある
だったと思います。
30分ドラマだろうが、1時間ドラマだろうが関係ありません。
なんか事件が起こって、必ず解決する。見心地は良いです。
ただこの手のドラマの作りにはひとつ大きな欠点があります。
それは……どれも話が似通ってくるということです。
30分の中で、人が出てきて問題を起こして、解決するわけですから、そんなバリエーションは作れません。
人物造形や、ストーリーもシンプルになってきます。なおさら似通ってきます。
しかし。
僕は今、ドラマは新時代に入ろうとしていると思っています。
いつもお話しておりますが、今の時代、とにかくドラマの数が増えました。
なので、僕の仮説です。
「1話ですっきり完結してしまうと、満足して2話以降観ない視聴者」が増えている。
今の時代、リアルタイムで観る人は減っています。TVerや配信プラットフォームで観る時代です。
30分ドラマなぞ、CM除いた実尺が24分くらいなので、倍速で見たら12分です。
1時間あれば5話観られるので、もしも1話が気になれば、連続視聴をすると思ってます。
だから1話ではあえて完結せずに、面白い伏線をいっぱい張ったり、中途半端に事件を解決させたりして、視聴を止めるきっかけを与えないことが大切だと思っています。
しかしこの台本作りは難しいです。
作り手サイドに視点を戻すと、30分の1話完結ドラマというのは作りやすいです。
たとえば、僕が作ってきたドラマですと『おしゃ家ソムリエおしゃ子』というドラマがあります。
数年前のドラマで、コロナ禍明けで、新作ドラマが少なかった時代なので、今の僕の説はあてはまらないです。
このドラマのあらすじはシンプルです。
オシャレな家に住む男性としか付き合えない主人公おしゃ子(矢作穂香さん)が、積極的に男性にお持ち帰りをされて、家を見に行くが、おしゃ子のお眼鏡に叶うようなおしゃ家に住む男子はおらず、おしゃ子は毎回ダメ出しをして帰る。
実尺は23分くらいです。
そうすると、こんな尺配分になります。
●3分 女子友だちとトーク 「こんな男と出会いたい」など
●3分 新しい男と運命的な出会い 家に「お持ち帰り」される
●4分 男の家にいく。一見、おしゃれな家に見える
●7分 家のダメ出しをしまくる
●2分 おしゃ子、家を出ていく
●3分 女子同士で反省会
●1分 次回への伏線
ざっくり言うと、こんな感じです。
台本を作る上で難しいのは「どんな家に住んでいる男なのか?」です。
「タワマン男子」とか「全部無印良品男子」とか「観葉植物男子」とか色々考えました。
そこを考えるのは大変でしたけど、それさえ乗り越えれば、フォーマットは決まっていたので、そこに当てはめていくので比較的、簡単でした。
今準備しているドラマはそのフォーマットがないので、けっこう大変です。
よく「制限や縛りのあるほうが考えやすい」というクリエイターの言葉を聞くかと思いますが、まさにその逆です。
「30分×12話を自由に使っていい」
その難しさと直面してます。。。。
●今週のエンタメ 映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』(1997年)

今月は圧倒的にこの映画。面白かったです!カッコよかったです!
自分の「生涯ナンバー1映画」を更新したかも、のレベルです。
【あらすじ】
脳腫瘍で残りの命わずかのマーチンと、末期がんで残りの命わずかのルディが、最終病棟で出会って、
「海を見たことがない」
「天国ではみんな海の話をしてるんだから見ないとだめだ」
と話して、車を盗んで、海を見に行く
こんな感じの話です。
映画のタイトルは聞いたことがありましたし、「面白い!」という感想も見たことがありました。
けど、まさかここまでとは……。
もっとハードボイルドな映画かと思っていたんです。だって
「もうすぐ死ぬ2人」「車を盗んで」「逃走」「目的地は海」。
カッコいいキーワードだらけ。
けど『ラブ・アクチュアリー』が生涯ベスト1の僕のような人間の好みではない気がしてました。
いや、侮ってました。ぶっ飛びました。
ジャンルは、ロードムービーの逃走劇だと思うんですが、この手の映画って、『シド・アンド・ナンシー』みたいなシリアス系か、逃げている2人をエディ・マーフィーとかウィル・スミスとかが演じていそうなドタバタコメディ逃走劇かの二択だと思っていたんです。
けど、この映画は違います。
この映画は、オシャレでクールで、主人公2人が魅力的で、そしてそれ以上に彼らと出会う人たちがまた面白いんです。
まず出てくるのが間抜けなギャング2人組です。
マーチンとルディはこのギャングの車を盗むわけですが、盗んだ車に乗った状態で駐車場でギャング2人組に話しかけます。
「出口はどっちですか?」
「あっち」
「ありがとうございます」
「カッコいい車だな」
「ですよね」
そして、車が去った後のギャング2人組は、
「同じ車種で色まで同じなんてすごい偶然だな」
「そうだな」
間。顔を見合わせるギャング2人。
「……あっ!」
ここでようやく、気づくわけです。
次のシーンでは、お金がないのにガソリンスタンドで給油して、マーチンがピストルで脅すんですが、ルディが「それじゃ強盗だろ」と咎めてケンカを始めるんです。
そのケンカがしばらく続くので、手を上げていた店主がしびれを切らして「計画は強盗する前に話し合えよ」と注意するんです。
その後、見回りの警察が来るんですが、そこもまたしびれるカッコよさです。
さらに別のシーンでは、マーチンが銀行強盗に入るんですが、ピストルをかまえて全員手を上げさせた後、しばらく言葉が出ないんです。
すると女性の銀行員が「あなたが何か言わないと進まないから」と言って、マーチンもようやく「金出せ!」というわけです。
これだけ読むと「コメディ?」と思うんですが、違うんです。
マーチンとルディは全然ふざけていないんです。
常に「死」と隣合わせの緊張感が映画全体に走っているんです。
でも2人は明るいです。だから笑ってしまうんです。
ストーリー展開としては、盗んだ車のトランクに100万ドルの入ったスーツケースがあって、ギャングたちは必死になって2人を探すし、強盗しているから警察も追いかけてくる。
マーチンとルディは100万ドルを持っていても仕方ないから、いろんな人に配ろうとするんです。だから、観ていて気持ちいいです。
後半、ギャングに捕まって「殺すぞ」と脅されるんですが、2人は笑いだします。
「どうせ死ぬしな」みたいな笑顔です。そこもまたカッコいいです。
これはたぶん、邦画ではたどり着けないカッコよさです。
ヤクザの映画をアメリカ人のキャストでやったら、トム・クルーズだろうがブラッド・ピットだろうがうまくいかないと思うんですが、それに近い感覚です。
こういうカッコよさは、僕ら日本人には出せない、そんな完敗な映画です。
たった100分弱でこんなステキな気持ちになれる映画、本当にオススメです。
今月も自分のつたない文章を最後まで読んでくださりありがとうございます。