💻ドラマ制作のプレッシャー|太田勇の5分で読めるテレビの裏側日記

●痛い、ない、震える。
胃が痛い。食欲がない。手が震える。キリキリ、ブルブル。
風邪じゃないです。変な薬に手を出したわけでもありません。
『錦糸町パラダイス』のプレビューを終えた直後です。
プレビューとは、監督が編集を終えて放送用に尺もある程度整えたVTRをみんなで観る会議です。
今日は第一話、第二話のプレビューでした。第一話、第二話の監督は廣木さんなので、僕は観させていただく側で、プロデューサーとして参加でした。
面白かったです。
面白かったのになんで体が不調になるのかというと、第三話、第四話の監督が自分だからです。
わかりますよね。優秀な人から仕事を受け継いで苦しむ気持ち、「前任者は優秀だったのに」と陰で言われるやつ。
駅伝でたとえたら、第一走者でダントツの一位になった今、第二走者、ちゃんと頑張れよ、みたいな状態です。
今日は朝から気が重かったです。
たぶん、廣木さんの第一話、第二話をプレビューで観ちゃったら、落ち込むだろうなと思ってたからです。
自分はダメだって自信喪失し、自己嫌悪に陥るのが目に見えていたからです。
そして、今まさに予想通りに落ち込んでて、食べ物が喉を通らなくなり、タリーズでハニーミルクカフェラテとクッキーなんて写真だけ見たらハッピーそうなものを食べてます。
違います。おにぎりもサンドウィッチも喉を通らないんです。

●プレビューについて
第三話、第四話のプレビューのことを考えると、プレッシャーで気が重くてイヤになります。
プレビューがこんなにプレッシャーになるなんて久しぶりです。
ドラマだとあんまり記憶にないです。
バラエティ番組の時はプレビューの度に胃が痛くなってました。
バラエティ番組の場合は編集もディレクター自身でやるのですが、ドラマの場合は編集マンが別にいるので、冷静になれるし相談しながらできるから心理的負担が減るんだと思います。
でも今回は違います。
映画業界の第一線で40年活躍している映画監督が第一話、第二話をやったあとです。
しかもプレビューには、プロデューサーであり俳優である柄本時生と今井隆文もいます。
それもまたプレッシャーです。
1年前から3人で話してきた企画がいよいよ映像となるわけです。
期待を裏切りたくありません。
●バラエティ番組時代のプレビューの思い出
そんなワケで、バラエティ番組のディレクター時代のプレビューのトラウマ(?)がフラッシュバックしてきました。
「そんな大げさな…」と思う人もいるかもしれませんが、プレビューを楽しみにしているディレクターなんて見たことありません。
あ、ひとりいました。
若い頃の佐久間さんです。佐久間さんだけは「面白いのもってきました!みんな早く見てよ!」みたいな感じでプレビューにのぞんでいました。
けど、そんな変人はごく一部で、まあ、プレビューは怖いです。
とあるプロデューサーの人はプレビューのことを「処刑」と呼んでいて、プレビューを受けるディレクターのことを指して、
「今日、処刑台に上がるのは誰?」
なんて言ってる人もいました。悪趣味過ぎて笑えなかったです。
ADの子たちもロケでディレクターを見ると、「早くディレクターになって現場仕切りたいな、芸能人と対等な立場で話して、カッコいいな」とか思うのですが、プレビューでボロクソ言われている姿を見て「ディレクターになるの怖いな」と思うワケです。
もちろん全バラエティ番組のプレビューが怖いわけではありません。
怖くないのもたくさんあります。
情報番組の類は、情報を入れていけばいいので、そんな難しくありません。
グルメ番組はグルメ情報を入れればいいし、コント番組も基本、芸人さんのコントが面白いので簡単です。どのカメラを使うか決めるだけなので。
トーク番組も、どのトークを使うかの判断なので、比較的簡単だと思います。
ただグルメ番組と言っても『大食いバトル』はストーリーを作らないといけないので難しいと思いますし、トーク番組というジャンルでも討論番組は難しいと思います。
当たり前ですけど基本、台本のある番組は編集が簡単です。
僕で言うと一番難しかったのは『YOUは何しに日本へ?』でした。
あの番組こそ台本がありませんからね。
毎回、プレビューの度に緊張して、フリスクをずっと噛んでました。
あまりにすぐフリスクがなくなるんで、3つ買ってプレビューにのぞんだのに、プレビューが終わる頃には3つとも食べきっていて口がスーハーして痛くなっていたなんてこともありました。
僕もプレビューが怖くて、入社5年目くらいの時に、ディレクターじゃなくてプロデューサーの道にいこうかと思ったこともありました。
そうすれば、プレビューで処刑されることもないしな、と思って。
ただその頃に、岡宗さんというフリーの演出家の方に出会い、『とにかく金がないTV』という番組のディレクターをやったんです。
その時も、もう自信を喪失していたので、プロデューサーとして参加したんです。
ただその番組のディレクターが病気になってしまい、僕が急きょディレクターをやることになったんです。
その時に、「ディレクターやるのもこれで最後かな」と思いながらやったんですが、その番組が終わった後に岡宗さんに「君、ディレクター向いてるからもうちょいやってみたら」と言われたんです。
※このDVDは本当に面白いです。演出家に岡宗さん、作家にオークラさんとせきしろさんが入ってます。本当にお金がなかったんで、何泊も会社に泊まって少人数でロケの準備をしたのを覚えてます。
その言葉に勇気をもらい、あと数年は続けてみようと思い、その直後に『ピラメキーノ』という子ども番組が始まって、その番組と自分の相性が良くて、ディレクターを続けていくことになり、今日に至ってます。
なんなら、入社23年目の46歳でまだディレクターをしています。
もしあのタイミングで岡宗さんと出会ってなければ、ディレクターが病気になっていなければ、『ピラメキーノ』という番組と出会ってなければ、全然違うテレビマン人生になっていたと思います。
調整に命をかけ、タレント事務所に出向いてヘコヘコして、夜は毎晩飲み歩いていたかもしれません。岡宗さんに感謝です。
●プレビューあるある
色々と思い出してきました。
テレビのディレクターをやったことある人以外、共感できないことだらけでしょうけど、せっかくなんで、あるあるを書いてみます。
・プレビューが近くなると、ストレスで食べ過ぎるか、一切食べられなくなる(僕は後者です)
・プレビュー当日に「ハードのデータが飛びました」とプレビューをリスケする。(最近はハードの性能が良くなり、この言い訳は通じないことが増えてきました)
・プレビュー中、大切な部分が黒味(真っ黒な画面)になって表示されない
(プレビューは自分が編集で使っているのと違うパソコンにモニターをつないですることが多く、自分のパソコンにだけ入っていた素材が表示されないので)
・プレビュー中、笑いが起こると思ったところで笑いが起きないと不安になる
・自信がないVTRの時は、仮ナレを読む声が小さくなる
(仮ナレとは、ナレーターさんに読んでもらう想定の原稿をディレクターが仮で読むこと)
・自信がないVTRの時は、音楽をつけてごまかす
(音楽の力は偉大です。ただ、この目論見は大抵失敗して、むしろ「音楽つける時間あるんだったらもっと編集粘れよ」と怒られることが多いです)
・人気番組のほうが編集が楽
人気番組のほうがルールがたくさんあって、それ通りに編集すればいいので簡単なことが多いです(ただし、ドキュメンタリー要素のある番組は除きます。『オモウマい店』とか編集めちゃ難しいと思います)
・大物芸能人が出ている番組のほうが編集が楽
大物芸能人自体が面白いので、基本、短くするだけなので。ただ、両親、親戚、友だちには自慢できますけどね。有名な番組をやっているほうが自慢できるけど、実力は身につかないというのが定説です。
以上、ディレクターあるあるでした。なんて、現実逃避してます。
頭をもたげる『錦糸町パラダイス』の編集のことです。
大丈夫かな、怖いな、大丈夫じゃないだろうな、でも別に死ぬわけじゃないし、でも面白くしたいし、どうしよう……そのループの地獄にいます。
脚本を提出する時ももちろん緊張するんですけどね、やっぱりプレビューの緊張は別ですね。
脚本は直せますけど、プレビューは直せないですから。
いや、直せるんですけどね、けどもう撮影はしちゃってるんで。
撮影する前のものを直すのと、撮影したものを直すのじゃ、できる範囲が違います。
とにかく今、緊張中なんですよね。結果で報われればいいのですが、今のとこわからないです。
じゃあ、なんでこんな思いをしてまでディレクターをやるんだと言われると、うまくいった時はその努力が一気に報われるからですよね。
●緊張することについて
ここまで書いてみて、今月のテーマは「緊張」だな、と。
前回書きましたけど、廣木監督もクランクイン前にボソッと「緊張するな」とおっしゃっていましたけど、前にベテランの俳優さんで同じことを仰っている方がいました。
宮崎美子さんです。
3年前にドラマでご一緒した時に「緊張で寝られなかったわよ」と仰ってました。
「新しいドラマの初日の前はいつもそう。寝られないの」と。
そしておもむろに手書きのノートを取り出したので「なんですか?」と聞くと「台本の台詞を書いてるの。そうしないと覚えられなくて」と恥ずかしそうに笑いました。
尊敬です。こんなベテランの方ですら、そんな気持ちで毎現場入っていらっしゃるんだと驚きでした。
僕が思うに、俳優さんがいつまでも若くて、見た目が美しいのはもちろん元がいいのもあるんでしょうけど、それ以上に緊張する場面に多く遭遇するからだと思います。
もちろん良い方の緊張です。パワハラ上司に何をいつ怒られるかドキドキしている、みたいな悪い緊張は違います。
今回の現場、僕もずっと緊張しています。良い方の。
毎朝、「今日も緊張してんな」と思いながら錦糸町に通ってます。
今回は群像劇ドラマなので、いろんな登場人物がいて、いろんなお話が展開するので毎日、撮影初日みたいな緊張感があるんです。毎朝、早く目が覚めます。
●『チェイサーゲームW』の続編について
こちら中々続報をお伝えできず申し訳ありません。
けれども続編ができるように頑張って動いておりますので、もう少々お待ちください…!
僕自身も前回のシリーズを見直して「これだけ面白いドラマが演出できたんだから大丈夫」と励まして、今『錦糸町パラダイス』の編集をしています。
こちらが落ち着いたら、もっと真正面から取り組めると思います。
もうちょい、お待ちください…!
●『錦糸町パラダイス』
撮影も絶賛続行中です。
今回はお弁当がとても美味しいので、たくさん写真を撮ってます。












錦糸町で発見した賃貸住宅の広告です。さすが両国の隣です。セキュリティは安心そうですね。
●今月のエンタメ
そんなわけで撮影中と編集中で心も頭もいっぱいなので、新しいエンタメに接する時間がありません……。
そんな中、ラジオでオススメされていた漫画が面白かったです。
『ふつうの軽音部』です。
タイトル通り、普通の高校生の女の子が軽音部に入ってバンドを組むだけの話なんですが面白いです。
どの登場人物も魅力的で、面白いストーリーに非日常の出来事はいらないのだなと改めて思いました。
『錦糸町パラダイス』にも通じるところがあります。
個人的には、厘ちゃんが良い仕事してます。
Hump Backの『拝啓、少年よ』を自分のテーマソングにして錦糸町までの通勤電車で毎朝聴いています。
今月も自分の拙い文章を最後まで読んでくださってありがとうございます。