テレビマンの企画開発法|太田勇の5分で読めるテレビの裏側日記

 

保育園の、「体験パパ保育」をやってきました。子どものクラスで半日間、先生体験をするのです。体験する前は、「うちの子も大変だけど、よその子も大変だな」と思うのかなと思ってましたが、うちの子は、どう冷静に見ても手のかかる子どもだと改めて気づかされました……。

 

 

●企画書について

 

2月ですね。寒いですか? そんな寒くないですよね…。やや暖冬気味の冬に不安になります。今月も撮影のない月ということで、色々しています。「色々」の中で大半を占めるのが企画開発です。テレビマンの企画開発ってどうやってしているのか?人それぞれだと思いますけど、僕はこんな感じだと思います。

 

① 1人で考える

 

② 原作を探す

 

③ 誰かと考える

 

④ 事務所のマネージャーさんと話す

 

⑤ 誰かからお題をもらう

 

 

今日は、「企画書の書き方」について書いていきたいと思います。

 

① 1人で考える

 

・1人でノート(Goodnotes)と向き合って何かが降りてくるのを待つ。

・パソコンをいじりながら、AIも使いながらアイデアを確かめる、考える、膨らませる

・行き詰まったら、気分転換に、漫画、ドラマ、映画、Podcastなど触れる。

 

僕の場合、この繰り返しです。少し補足しますと、GoodnotesというのはiPadで使っているアプリです。映像業界で一番使われているアプリな気がします。ここにアイデアを書いていきます。

 

 

これはある日の平日午後の、ひとり企画会議のメモです。

たとえば、「メルカリでユーレイを買う」というアイデアです。

 

なんでこれを思いついたか? 

きっかけは最近観た黒沢清監督の「Cloud」という作品だと思います。その映画で、転売ヤーが出てくるんです。

 

「転売」って面白いなぁ。これ、ドラマの設定になりそう。

けど、転売って法律的にグレーで企画にしづらいか……

転売じゃないとすれば、ネットオークション、あ、メルカリかな。

メルカリで、何を売っていたら面白いだろう…?

変わったもの…けど、凶器とかは売っちゃダメそうだな…。

犯罪系じゃないけど、売っていたら気になるものってなんだろう?

思い出の品?誰かの秘密? 

たとえば、誰かの卒業アルバムとか?そこに秘密のメッセージがあるとか?

…うーん、イマイチか。

じゃあもし、その卒業アルバムが有名人のモノだったら成立するかな?

…うーん、なんか予想を超える展開はなさそうだ。

もっと変なモノ……(自分の視界の先に、子どもの上着が目に入り)

あ、たとえば幽霊とか?(5歳のわが子は、幽霊が怖いので)

 

そこで、「メリカリでユーレイを買う」と書き、パソコンの出番です。

実際に、メルカリで幽霊を売っている人がいないか調べたり(いませんでした)、

過去に、「通販で幽霊を買った」みたいなドラマや映画はないか調べます。

(この設定は特になく、『居酒屋ゆうれい』という映画がありました)

あとは、AIに「通販で幽霊を買った主人公のドラマを考えています。なんで買ったでしょう?」とかキャッチボールを始めます。

AIを使うようになったのは、ここ2年の話です。

人それぞれ、色々なAIの使い方があると思いますが、僕の場合は、こんな感じが多いです。

ラフに自分で考えたアイデアの膨らますツールです。

あとは、「もしこのドラマにタイトルをつけるとしたらどんなタイトルにしますか?」と聞いて、ひたすら色んなタイトルを考えてもらうとかもあります。

僕の感覚だと、AIは0→1は苦手で、1→100もそんな得意ではなく、掛け算のヒントをくれる相手みたいな感じです。この時もキャッチボールを続け、最終的に面白いと思ったアイデアは、

「幽霊の正体は、未来の自分」

「幽霊を返品しようとしたら、出品者がいなくなっていた」

です。

 

まあ、このアイデア、ここで煮詰まりました。

「掛け算のヒント」と書いたのは、そういう意味です。

掛け算になりそう…けど、なんか足りない…教えてAI…

となってもそのヒントはないんで、自分で考えるしかない。

うーん…煮詰まりました。

個人的に、説明のつかないSF的なホラーは好きじゃないですし、このテーマだった時に、わかりやすいコメディも苦手なのです。

ちゃんと説明できるオチが欲しいのです。

 

…と、ここでこのアイデアを一旦、保留。

気になるエンタメを観て、このアイデアのヒントがないか、探します。

ちなみにこの時観たのは、映画『関心領域』(←ずっと観たかったアカデミー賞作品で、先日ようやくU-NEXTで配信が始まりました)と、漫画『真ん中で会いましょう』と『死にたい人妻と溺愛強盗』(←両方とも、知り合いのスタイリストさんから「ドラマ向きです!」とオススメされた漫画です。どっちもとてもおもしろかったです)

 

そうこうしているうちに、夕方6時過ぎになります。子どもの保育園のお迎えの時間です。お迎えに行くときには、Podcastでラジオを聴きます。

Podcastもここ2年の話です。

コンテンツの数が増えたことも大きいですし、例えば子どもを公園で遊ばせている時に、目は子ども、耳はPodcast、みたいな時間もけっこうあります。この時に選んだラジオは、『週間ワシントン』という主にアメリカのトランプ大統領の動きについて話しているラジオです。さっきのメモに書いてある「トランプ報道官は27歳」というのは、このラジオで得たヒントです。

「日本の◯◯史上最年少の◯◯」

で、何か考えつかないかなと思ってのメモです。

説得力を持たせる導入として、この報道官の話が使えるのでは、と思ったわけです。

あとは

「性別は男と女しかない」

は、トランプ大統領が最初にした発言のひとつですよね。

こんな感じで、色々考えて、良い線いったかな、と思っては、つまずき、また新たに考えてつまずき、かと思ったら前のアイデアの突破口が思いついたり、その繰り返しで、企画書にまで落とし込んでいきます。企画書になったところで、落選するものが大半なので、本当に無駄の多い作業ですよね。まあ、でもどの業界でも扱うモノが違うだけで、そんな感じですよね。

●少し脱線……アメリカの多様性問題と『チェイサーゲーム』

「性別は男と女しかない」

引っかかりました。特に『チェイサーゲーム』をやるようになってからは。この発言自体は表面の言葉だけが全てではなさそうですが……。とはいえ、アメリカ政府やアメリカの大手企業がDEI(多様性・公平性・包括性)推進を止める動きなのは気になります。もしも続編があった場合、どのような世界観を描くのがいいのか、本当に悩ましいです。

 

 

② 原作を探す

 

今のがオリジナルの企画の考え方ですね。では②の「原作を探す」はどうするか? 僕の場合はオリジナルを考える合間に、オススメの漫画や小説を読みます。特に少女漫画やWebtoon系の漫画を読む習慣が自分にはないので、人頼みです。オススメされた漫画の1巻を読み漁り、面白ければ読み進みます。

「映像化したい」と思ったら、出版社に問い合わせます。出版社も慣れたもので、ライツ担当の方がすぐにお返事をくれます。返事の種類はだいたい二択です。

「映像化決定しています」

「問い合わせはありますが、まだ決定はしていません」

ただ、過去に3回、「映像化決定はしていませんが、テレビ東京さんは全国ネットではないので、著者からNGがきています」と言われたことはあります。

ですよね。

せっかく自分の作品が映像化されるなら、全国ネットがいいですよね……。

わかります。

東京ローカルですいません。

けど、TVerや配信PF(プラットフォーム)のおかげで、ここ3年は言われたことないですね。

ありがたいです。

本当に、電光石火で常識が変わっています。

 

 

③ 誰かと考える

 

③の「誰かと考える」の「誰」は、90%、作家さんですかね。ただこの頻度はバラエティ番組時代より圧倒的に減りました。バラエティ番組の場合は複数人数の構成作家がひとつの番組にいるのが一般的で、台本の作り方もまず、一番若手の作家が叩きとなる台本を作って会議に持ってきて、文字通り、その台本をみんなで叩きまくります。 

ドラマの脚本の場合はたいてい、ひとりの脚本家さんが書き上げてきて、それを元にディスカッションをします。 

バラエティ番組の構成台本の場合は、初稿と完成台本が別モノになってることはよくありますが、ドラマの脚本の場合はあまりありません。もちろん、「みんなで話し合いましょう!どんどん意見ください!」みたいな脚本家さんもいます。が、少ない印象です。そのため、バラエティ番組をしている時は、定期的に作家さんたちとしていた企画打ちも、ドラマになってからはなくなりました。むしろ、「企画打ち」というよりは、久しぶりに会ってお茶して、最近観た映画やドラマの話になって、そのまま終わることもあれば、「こういうのやりたいですね」と企画の話になる場合もある、みたいな感じです。

 

 

④ 事務所のマネージャーさんと話す

 

逆にバラエティ番組時代は皆無だったのがこのケースかもしれません。若手のタレント、アイドル、芸人であれば基本は、「なんでもやります」というスタンスですし、売れっ子さんのマネージャーから「うちの●●が、地方を旅するロケグルメ番組やりたいんですよね」とか、具体的なジャンルをお願いされたことは、ほぼないです。(思い返したら、生涯で3回ありました)。 

なんでこうなるかというと、バラエティ番組の場合は、2週間に1日、数時間の拘束で収録するのが通常なので、超売れっ子になっても、レギュラー番組の数を増やそうと思えば、同時に20本くらいできるからだと思います。それに引き換え、ドラマや映画の場合はそうはいきません。本数に限りがあるので、明確にやりたいジャンルの話や、仕事の空いている時期の話などをするのです。特に俳優さんの場合、手前から仕事が埋まっていくというよりは、「再来年撮影の連ドラと映画は決まっているけど、来年は1つも決まってない」みたいな状態も起こるのです。なので、ドラマの場合は、事務所と密にコミュニケーションを取る気がします。

 

 

⑤ 誰かからお題をもらう

 

これは、バラエティもドラマもありますね。けど、ドラマのほうが多い印象です。「誰か」とは、編成や配信プラットホームだったり、スポンサーだったりします。 

バラエティ番組であればテレ東の編成から言われるのは「一行で番組内容がわかる番組」ですね。あとは少し変わった感じだと、「他局で●●さんのレギュラー番組がひとつ終わるから、新しい番組をお願いできるチャンスだから、●●さん用の企画書を考えよう」みたいなこともあります。 

ドラマの場合は、「◆◆さんの冬のスケジュールが空いたらしい」とか「▲▲さんが親子モノをやりたいそうだ」とかそんな感じです。

もちろんスポンサーの場合は、もっと具体的に「■■業界を舞台にした話」みたいなのこともあります。ただテレビドラマは、広告とは違うので、色々なルールもあるので、本当にケースバイケースです。

 

以上、企画書の書き方についてでした。

 

 

●今月オススメのエンタメ ドラマ『御上先生』

 

今月はもうこれです!現在放送中のドラマ、『御上先生』です。すごいです!今までに観たことのない学園ドラマです。1話の御上先生の「ただの上級国民予備軍だ」の一言で鷲掴みされました。 

まず御上先生。 

理路整然に淡々と、社会の本音を生徒に語るんですが、社会に怒っている熱血タイプでも、諦めているドライなタイプでもない。先生の話す本音は、大人や社会に向けただけではなく、染まりかけている生徒たちにも投げかけるものです。そして先生役を演じている松坂桃李さんが素晴らしい。目は死んでるけど熱はあるんです。 

次にそれを受け取る生徒たち。この学校は一流の学校なので、生徒たちもみんな頭が良いんです。ただ「良い大学に行って、良い仕事について、人生勝ち組になる。だから今は勉強だけしよう」みたいなステレオタイプではなく、もっと多面的なんです。でも学歴至上主義が時代遅れになりつつある今、リアリティがあります。

だから今までのドラマより少し複雑なテーマを取り上げられます。3話では、中学校の学校指導要領の話が出てきます。一部では、「高尚過ぎて話についていけない」みたいな批判もあるみたいですけど、全然そんなことありません。

謎もあらゆるところに散りばめられていて気になります。

学園の話はもちろんですが、御上先生の思い出に出てくる男性の正体(3話で明らかになります)や、御上先生と官僚時代の同僚の槙野(岡田将生さん)との関係、というか官僚サイドの話もしっかり気になります。ミッチーっていつから王子様じゃなくて、悪代官様みたいな役が合うようになったんだろう……。

ONE OK ROCKの歌う主題歌もドラマのテーマに合ってますし、カメラワークも照明もカッコいいし、あとロケーションが素晴らしい。どこの学校で撮影しているんだろう。

ぜひ、TVerで観てください!

 

※もちろんテレビ東京のドラマは全部面白いです。手前味噌になってしまうので、テレ東以外の作品について語るルールにしています‼️

 

今月も自分の拙い文章を最後まで読んでくださってありがとうございました!

※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。
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