💾平成レトロカフェで発見!|太田勇の5分で読めるテレビの裏側日記

今月のP日誌です。今月は撮影もなく、主に準備期間です。どれも撮影はまだちょっと先で、脚本を作る段階とか、プロットとか、が多いです。あとタレント事務所に行って、お話したり。やっぱりどのお仕事もそうかもですが、ビジネスって人ですよね。まあ、アメリカの大統領だって代わったらあんな風になるわけだから、人ですよね。というわけで、時間のある時は、なるべく会ってお話をしたほうがいいのだなと感じる今日このごろです。

 

 

●「平成レトロ」勉強中

 

 

今、とある企画のために“平成レトロ”と“平成女児グッズ”を猛勉強中。色々と調べていたら、なんと渋谷に「平成女児レトロ」に特化したカフェを発見。その名も――「平成レトロカフェRETOPO」。

「これは行くしかない!」と、シナハン(=シナリオハンティング)を兼ねて、家族3人で突撃してきました。

入場料は1人2000円ちょっと。大人2人はまあ想定内なんですが、うちの5歳児も同じ料金。はい、合計6000円。しかも飲み物1杯だけ。いや、強気の価格設定!と思いつつも「体験も勉強のうち」と自分に言い聞かせて入店。

 

 

お客さんは案の定、女子だらけ。キラキラした目で写真を撮りまくっている女子たちに対し、明らかに場違いな3人家族。特に5歳児にとっては「平成レトロ?なにそれ?」状態。カルピスを一気飲みして、ひと言――

「かえろう。」

いや、ちょっと待て。パパとママは6000円払ってるんだよ。元を取らなきゃ!と必死でスマホを構え、インスタ女子に混ざって写真を撮りまくる我々。

 

 

ただ、確かに内装は「平成」がぎゅっと詰まっていて、フォトスポットだらけ。プリクラ風の壁紙、キラキラシール、ガラケー型の小物……女子たちが集まるのも納得。写真好きなら制限時間の90分はあっという間でしょう。

で、こちらも「何かアイデアの種はないか」と目を凝らして探していたら――ありました。胸が熱くなる展示。

 

ここは、「平成あるあるを言おうのコーナー」。思わずテンションが上がりました。まさかこんなところで再会できるとは。当時、番組に関わっていた自分にとっては、まさに青春の1ページ。こんな風に人々の“平成の記憶”に刻まれていたなんて、本当にありがたいし、幸せだなあとしみじみ。しかも「全国区じゃない」ってところがまたいいですよね。

 

勉強のために来たつもりが、最後には感傷的になっている、という入口と出口が違うオチ。いや、6000円払った甲斐はありました 笑。

●「俳優のギャラは安い」発言

 

さて、ここからちょっと真面目な話。今月は、山田孝之さんの発言がやっぱり気になりました。Netflixのイベントで「日本の俳優はギャラが安い」と仰った件です。これ、記事の見出しだけ見た人は「そうなんだ〜」で終わっちゃうかもしれないけど、実はすごく根深い話なんですよね。僕も数年前までちゃんと理解できてませんでした。

で、なぜ安いのか。もちろん「日本の俳優が軽んじられてる」わけじゃなくて、システムの違いなんです。山田さんもお話していましたけど、日本の俳優は低いギャラをCMで埋め合わせてる。でも海外はその必要がない。じゃあなぜか?ここで「プロダクトプレイスメント(PPL)」って仕組みが出てきます。

 

プロダクトプレイスメント(PPL)とは…映画やドラマの中で企業の商品を“自然に”登場させ、その対価として企業から資金提供を受ける仕組みのこと。

 

有名なのは映画『007』のボンドカー。BMWとかアストンマーティンが何十億円単位でプロダクトプレイスメントの契約して、堂々と映画の中に車を出す。そのお金が制作費になって、俳優のギャラも上がる。俳優はそれだけのギャラをもらえるからCMをやる必要がない。むしろCM契約をしちゃったら映画がプロダクトプレイスメントをできなくなるからやらない。

めちゃシンプル。

ところが日本だと、俳優さんの個人CM契約があるから、それとバッティングしちゃう。「映画の車はA社、でも本人のCMはB社」みたいなことになると大問題。だから日本の映画やドラマは「架空の企業」「架空の商品」ばっかりになるんです。プロダクトプレイスメントによる制作費の上積みもないから予算もタイトになり、結果、俳優のギャラが安くなるわけです。(俳優に限らずスタッフもですが…)

 

テレビも同じで、ここがさらにややこしい。海外はケーブルテレビ中心だから基本は有料。だからCMが少ない分、番組内でのPPLをバンバンやる。というかPPLがやれる。 『アメリカン・アイドル』の審査員の机に置かれてた赤いコーラのカップとか有名ですよね。あれって番組スポンサーと連動してるから「二重に儲かる」仕組みになってる。海外では「PPLをやってます」って表記すればOK。

日本は完全な広告放送だから、CMと番組をきっちり分けるルールがある。だから同じことはできない。PPLよりもCMを重視する考え方です。これだけ聞くと、「CMが悪」みたいに思う人もいるかもですが、全然違います。日本はCMのおかげであれだけ多くの番組を無料で観られることができるんです。これは世界的にも稀有で、視聴者にとってはとても恵まれた環境です。

ざっくり言うとそんな感じなんですが、僕の下手な説明でわかっていただけたでしょうか?言うなれば、海外と日本とだと基本方針が、右側運転か左側運転かくらい違うんです。つまり、ちょっとずつ直せないんですよね。(このエリアは右側運転、こっちのエリアは左側運転なんてやり始めたら、めちゃ混乱しちゃいますよね。それに近いイメージです。やるとしたら、「今日から左側運転で!」みたいな大方針転換が必要なわけです)

 

僕もドラマ制作をしている人間として、日本のドラマの制作費は潤沢になってほしいし、テレビ局員という願うだけの立場ではないので潤沢にするにはどうしたらいいか、考えているんですが、中々難しいです。

 

あと、これもよく言われますが、日本のエンタメ産業の最大の長所であり短所が、この問題の根本にあるんです。

なんだと思いますか? 

ヒントは、韓国のエンタメにはない点で、だから韓国のエンタメ産業は世界進出できたと言われてます。

3,2,1…。

正解は、日本は国内市場が大きいという点です。日本は、日本の国内市場だけで十分リクープできるんです。けど韓国の場合は、国内市場が十分に大きくないため、リクープするには海外でのヒットが必須です。日本と韓国の国民の人数を比べたら一目瞭然です。そうなると、韓国はシステムも海外に影響を受けてきます。どうやら昔は韓国も今の日本みたいなシステムだったようです。とはいえ、日本は国内市場でやっていけるので、中々ドラスティックな変革をしようという声が上がらないんですよね。

 

僕は7,8年前に、内閣府のコンテンツワーキンググループ勉強会(みたいな名称だったと思います……)の委員を3年くらいやっていましたけど、よくその話題になってました。放送業界のお偉いさんたちが集まって話してました。けれどもその時も良い解決策までは思いつかなかったように思います。だから、山田孝之さんのその発言を見た時、色々と考えてしまったんです。

 

 

●今月の『チェイサーゲームW』

今月も特に動きがなく、です。なので、思い出を少し。

いつも色々なお菓子をくれる菅井さんに、たまにはお礼を、と思い、去年、プレゼントしたTシャツです。

 

こちら、FOVEROというパレスチナの若者たちによるストリートファッションブランドです。パレスチナはずっと困難な状況が続いてますが、当たり前ですけど普通に生活は続いてます。僕も去年、ラジオでこのブランドのことを知って以来、購入しては誰かにプレゼントしています。寄付ももちろん大事ですけど、買い物であれば継続的に「したい」とより思える行動ですよね。もしご興味あるかたがいらっしゃったら、サイトを見てみてください。パレスチナから直輸入で買えます。

 

 

●今月のオススメエンタメ映画①『国宝』

 

今さら?と言われそうですが、今さらです。でも語らずにはいられない。すごい映画でした。3時間の超大作。感想は、体重100キロと聞いていたけど、会ってみたら無駄な脂肪ゼロの完璧な身体だった、みたいな感じですかね。3時間あっという間というのが、嘘じゃなく当てはまる、けど、命をかけて生きている何人かの人生を詰め込んでるんで当たり前か、みたいな感じでした。

 

映画自体は、シンプルなストーリー。歌舞伎の世界で、“サラブレット”と“外様”の2人が切磋琢磨していく話。“シンプルだけど唯一無二のストーリー”って本当に名作の証ですよね。憧れます。

以下、微妙なネタバレあるかもなので、知りたくない方は読まないでください。

 

冒頭から素晴らしかったです。「君は才能がある!素晴らしい!」ということを伝えたいわけですが、その伝え方として最高です。インパクトありで、セリフも少ない。けど十分伝わる。

 

以降ずっとそんな感じです。良い映画というのはセリフが少ないですね。セリフを削りまくってます。なんなら、普通の言葉ですし、繰り返しも多い。だけど深いんです。「逃げるんじゃない」というセリフが途中出てくるんですけど、あそこなんかもそう。繰り返します。逆に、その前のシーンで「結婚しよう」というセリフがあるんですけど、この「結婚しよう」は最初と最後に2回言っていたら、全部変わっていたと思います。坂元裕二さんみたいなオシャレな言い回しも素敵ですけど、こういう平易な言葉でドキッとさせるのも良いですよね。

 

そしてテーマは「血」。とにかく「血」。最後まで「血」です。 歌舞伎界のサラブレッドの血、極道の血、糖尿病の血、もう「血」です。しかもセリフでも「血をガブガブ飲みたい」というセリフも出てくるんです。「血」の後ろ盾があるかどうか、けど、「芸を磨け」とアドバイスをしてくる人もいる。実際、片方は「血」のおかげで戻ってこれて、もう片方は「芸」のおかげで戻ってこれる。けども、「血」だなぁって。

 

もう1つすごいと思ったのが、舞台のシーンでわかりやすい失敗とかないんです。普通の映画なら、挫折のシーンでわかりやすいミスとかやると思うんですけど、そういうのが一切ない。「数年後」みたいな感じで時間を飛ばして、状況を伝えるんです。けどその飛ばし方もまた絶妙なんです。良い映画・ドラマって、決定的なシーンをあえて描かないですよね。『虎に翼』もそうでしたけど、結婚式のシーンとか飛ばしてるんですよね。結婚式のシーンって、ドラマとしては感動させやすいですけど、視聴者が想像で十分補填できちゃうんですよね。だから描く必要ないんですよね。

 

あと、みんな言ってますが、吉沢亮さん、横浜流星さん2人の歌舞伎の芝居が上手という点。これは完全に同意です。歌舞伎はほとんど見たことないんですけど、2人の歌舞伎のシーンに見入ってた時点で上手いんだと思います。見てるこっちの背筋がピンとしました。緊張感しかない。

 

最後も良かったなー。あー、だから、「国宝」ってタイトルなのかなって思いました。「人間国宝」ではなく「国宝」です。

 

やっぱり本気で作られたエンタメを観ると考えさせられます。自分に問いかけられているような気がします。時間だったり、予算だったり、何かしらの制約をいいわけに妥協してないか?自分も頑張らねばと思えた名作でした。

 

 

●今月のオススメエンタメ映画②『サブスタンス』

 

すいません、グロいのが苦手な人にはオススメしません。妊婦さん、気持ちが弱っている人、ご飯前の人にもオススメしません。 

強い刺激が欲しい人だけにオススメです。 

話題の映画でずっと観たかったんですが、ようやくU-NEXTで観られるようになったんで早速観ました。

うーん、スゴかった。スゴかった。スゴかった。グロかった。グロかった。グロかった。けどスゴかった。でもグロかった。すごい勉強になりました。勉強になった点は、エンタメの勝ち筋に2パターンあるとして、

 

1,想像しない話である

2,想像通りの話だけど、その想像を遥かに超える話である

 

この映画は、完全に「2」でした。『国宝』との対比がすごくて、2作品挙げさせて頂きました。

 

今月も自分の拙い文章を最後まで読んでくださってありがとうございました!

※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。
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