「惡の華」漫画家・押見修造、ドラマ化に「かなり食らっちゃって。“今日は壊れたいな”と思った」

「惡の華」押見修造インタビュー【前編】
鈴木福×あのW主演、ドラマ「惡の華」(毎週木曜深夜24時放送)が話題を呼んでいる。

原作は2009年9月より「別冊少年マガジン」(講談社)誌上で連載され、電子コミックを含め全世界で累計発行部数325万部を突破、アニメや映画、舞台などさまざまなメディアミックスが展開されてきた伝説漫画。作者は、本作をはじめ「血の轍」など思春期の鬱屈感や心の闇をえぐるように描く漫画家・押見修造。同作に込められた思い、創作の原動力とは? 押見先生に話を聞いた。

【動画】教室はクソムシの海と化す…ドラマ「惡の華」見逃し配信中

今の中・高校生にも、かつて“14歳”にも感想を聞いてみたい


「惡の華」押見修造インタビュー【前編】
――ドラマ「惡の華」をご覧になった際の感想はいかがでしたか?

「試写で第1話から3話まで一気に拝見しましたが、いや~……(感慨深い様子で)、何と言いますか、とにかく興奮しましたね。原作者なのに、かなり食らっちゃって。“今日は壊れたいな”と思ったので3駅くらい歩いて帰りました(笑)。

その後、プロデューサーの涌田(秀幸)さんが『8話まで完成』とSNSでつぶやかれていたので“早く見てぇ~!”となって(笑)、すぐに頼んで見せていただいたくらい。それくらい続きが気になりましたし、ドラマとしてすごく面白かったです」

――押見先生も試写後すぐに「漫画の感触にすごく近いと感じました」とSNSに歓喜の投稿を。

「“ここ(のシーンやセリフ)はどう再現されているのかな?”と原作者目線で見るのではなく、視聴者と同じ気持ちで“次の回はどうなるんだろう?”と新鮮にドラマを楽しめたことが嬉しかったです。

同時に“主人公と同じ今の14歳が見たらどう思うんだろう?”という興味も湧いてきて。連載時からずいぶん時が経って……『惡の華』を描いていたのは20代終わりから30代半ばくらいで、まだ自分も思春期側の目線ではいたんですけど、それとはちょっと違う気持ちでドラマを見ていました」

「惡の華」押見修造インタビュー【前編】
――本作は、14歳の少年少女たちが苦悩と歓喜のはざまで繰り広げる禁断の青春譚(2009年9月~2014年5月に連載)。現在40代半ばに差し掛かり、俯瞰して見られるようになったということでしょうか?

「今こうして45歳になって映像化されると、子どもでもない……かと言って“迷える10代たちよ!”という大人の目線でもない、不思議な気持ちでドラマを見られたことが新しい発見でした。今、思春期にいる中学~高校生に見てほしいですし、早く感想が聞いてみたい。リアルタイムで連載を読んだ、かつての“14歳”にも“今見てどう感じたのか?”聞きたいですね」

ドラマによって「自分が思春期の頃に抱いた感情を更新してくれた」


「惡の華」押見修造インタビュー【前編】
――例えば、ミュージシャンが10代の頃に作った曲を大人になって歌えなくなるという話をたまに聞きますが、そうした感情はなかった?

「ミュージシャンのように“歌詞が青いな、今歌うと照れくさいな”というような感情を過去の作品に抱いたことはありませんが、自分が若い頃に描いた作劇の稚拙さみたいなところは恥ずかく思います。

ただ、今回のドラマでは、あの頃を振り返って“ちょっと露悪的すぎたかな……”と反省するシーンを出しすぎず、出さなさすぎず、ちょうどいい塩梅でヤングポール監督・井口昇監督が表現してくださって。ちゃんと令和の時代の『惡の華』として昇華されていたので感激しました」

「惡の華」押見修造インタビュー【前編】
――井口監督は、押見先生ご自身も大ファンの監督で、2019年9月に公開された実写映画版「惡の華」でもメガホンを執りました。

「井口監督は自分自身すごく好きな監督さんで、『惡の華』を描く時も多大なる影響を受けたんですけど、こうして再び、ご一緒できるとは思っていなかったので、ドラマ化の喜びもひとしおでした。

映画は時制をシャッフルして中学~高校時代が混ざり合う構成でしたが、ドラマは時系列的にも漫画に近い形なので、主人公たちが取り返しのつかないことに進んでいく様子がより心に突き刺さる。『映画では時間の都合上、泣く泣くカットした』と監督が語っていたシーンもたくさん入っているので、すごく見ごたえがありました」

「惡の華」押見修造インタビュー【前編】
――主人公は、フランスの詩人、ボードレールの「惡の華」を心の拠り所にして「自分は他のクラスメートとは違う」と根拠のない自信を持ちながらも、都合の悪い状況からは逃げようとする春日高男。そして、自分の考えや感情に忠実であるがゆえに、本能や欲望を隠して生きる人間(=クソムシ)たちに苛立ちを隠せない。それ故に周囲からは理解不能に見え、怖がられてしまう存在・仲村佐和という中学2年生の2人。それぞれを演じる鈴木福さん、あのさんはどう映りましたか?

「第3話、プリントを届けに行くシーンで『プ、プ、プ、プリント』って言う春日の挙動不審ぶりとか、福さんの演技が本当に素晴らしくて。こう言うと何ですけど、今ヘタレ役を演じさせたら右に出る者はいないな(笑)、さすがキャリアのある俳優さんだなと感心しました。あのさんも、冒頭で仲村さんが発する『クソムシが』の発声から何から、すぐに心をつかまれて。試写会場で、すぐに福さんとあのさんに思いの丈を伝えましたね。

「惡の華」押見修造インタビュー【前編】
あと今回のドラマによって、自分が思春期の頃に抱いた感情を更新してくれたと言いますか、描いた当時の春日や仲村さんの解釈は間違っていたのかもな……と思ったんですよ。福さんやあのさんの方がもっと深く考えてくれているなと思うところが多々あって考えさせられました」

「惡の華」押見修造インタビュー【前編】
――第1話は、春日が憧れの女神・佐伯奈々子(井頭愛海)の体操着を盗んでしまい、それを仲村に見られたところから物語が始まります。

「最初のうちはすぐ(連載を)終わるつもりで、主人公の男の子が体操着を盗んだところをクラスの変わり者の女の子に見つかって、脅されて……というところまで考えて見切り発車したので(笑)、自分でも“この先どうなるんだろう?”と思っていて。

「惡の華」押見修造インタビュー【前編】
そんなタイミングで教室をぐちゃぐちゃにする回を描けたことで(※単行本第2巻収録の第12話『われとわが身を罰するもの』)、どんどん話が進んでいきました。今回のドラマでも楽しみにしてもらいたいシーンの一つです」

「惡の華」押見修造インタビュー【前編】
――あのさんは、ano名義で主題歌「愛晩餐」も担当。「惡の華」をイメージしたご本人書き下ろしの楽曲なだけあって、作品にピッタリです。

「御見それしました、という感じで、ポップソングとして素晴らしいことはもちろん、漫画の精神性も描いてくださっているので嬉しくなりました。好きすぎて、自宅と仕事場を行き来する際、いつも車で聞いているくらい気に入っています。めちゃくちゃ最高です!」

明日公開のインタビュー【後編】では、創作の源泉、原動力について聞く。

「惡の華」押見修造インタビュー【前編】
今夜放送、ドラマ「惡の華」(毎週木曜深夜24時放送)第4話は?

第4話
春日(鈴木福)と仲村(あの)によってクソムシの海と化した教室。達成感に満たされた仲村と春日は明日が楽しみだねと別れる。翌朝、教室ではクラスメイトが大騒ぎの中、床に描かれた華の絵を見た佐伯(井頭愛海)は、すべて春日のした事だと察知する。仲村から春日との秘密の契約について聞かされると、いてもたってもいられず、春日をさらに追い詰めてしまう。春日は、逃げるように仲村にすがり、2人はあの山の向こうへと向かう。

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【プロフィール】
押見修造(おしみ・しゅうぞう)
1981年3月19日生まれ。群馬県桐生市出身。大学在学中の2002年に漫画家デビュー。代表作は電子コミックを含め全界で累計発行部数325万部突破のヒット作となった「惡の華」をはじめ、「漂流ネットカフェ」、「ぼくは麻理のなか」、「血の轍」、「ハピネス」など。多くの作品が映像化されている。映画「毒娘」(2024年公開)では、謎の少女“ちーちゃん”のキャラクターデザインを担当し、漫画「ちーちゃん」で映画の前日譚を描いた。
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