「世の中のそういう男性を全員成敗したいなと思いで物語を書いている」脚本家・岸本鮎佳インタビュー:水曜日、私の夫に抱かれてください

妻の“公認不倫”という奇妙な三角関係を描く、ドラマNEXT「水曜日、私の夫に抱かれてください」(毎週水曜深夜24時30分)の脚本を手掛ける岸本鮎佳にインタビュー。

「水曜日、私の夫に抱かれてください」脚本家・岸本鮎佳インタビュー【前編】
演劇ユニット「艶∞ポリス」主宰として脚本・演出・出演すべてを担い、主演・松本まりかの怪演も大ブームとなったドラマ「夫の家庭を壊すまで」(テレ東にて2024年9月クール放送)などテレ東ドラマのみならず各局の話題作を手掛ける脚本家としても活躍、さらに「二軒目どうする?~ツマミのハナシ~」「伊集院光&佐久間宣之の勝手にテレ東批評」出演時の歯に衣着せぬ発言が痛快で、佐久間宣之が「今年売れるバラエティタレント」として名前をあげたことでも関心を高めている。一体、どのような人物なのか…脚本のこだわり、活動のきっかけなどについて話を聞いた。

【動画】岸本鮎佳が脚本を担当する「水曜日、私の夫に抱かれてください」

執筆時“オープンマリッジ”が話題に


――「テレ東批評」出演時に、「水曜日、私の夫に抱かれてください」のオファーの際「またテレ東のこの枠だと思った」とおっしゃっていましたが(笑)、今作のオファーが来た時の率直なお気持ちは?

「嫌だという意味での発言ではなくて、テレ東の方が“夫シリーズ”枠とおっしゃっていたので『あの枠か』と(笑)。今回は、まず内容や見せ方は『夫の家庭を~』と同じようにはしたくないという思いがありました。もちろん原作は違いますが、脚本にする際のネタ的なところは自分で埋めなければいけない。それが被らないよう考えなければならないのですが、切り口が新しい作品なので面白くできるんじゃないかと思いました」

「水曜日、私の夫に抱かれてください」脚本家・岸本鮎佳インタビュー【前編】「水曜日、私の夫に抱かれてください」第1話より

――この“夫シリーズ”のように夫婦問題がテーマの作品が続く中で、過去作とは違いを出しながら脚本にするためには、どのように考えていくのですか?

「こうした作品は、最初に全体的なところをイメージすると書きやすいんです。今回は、大きな事件が起こるわけではないので、じんわりじんわりと進んでもおかしくない仕掛けとして“ホラーっぽく”見せられたら、と。そこから、例えばBGMをイメージしたらどんな展開になるんだろう、など考えながら書き進めていきました。また、一章、二章、三章と話が展開していった方が面白いだろうと思い、プロデューサーの了解を得て、全体を考えながら三部構成になるよう意識して書き上げました。後半は、原作にはない、ほぼオリジナルです。

脚本を書いていた頃に、ちょうどYouTuberの“オープンマリッジ”が話題になっていて。改めて、女性って“嘘が上手い”というか“本心を隠すもの”なんだと思ったんです。今作の怜(入山法子)は、序盤ではミステリアスで気取った感じに見えるけれど、回が進むにつれて人間味が出るような人物にしました」

「水曜日、私の夫に抱かれてください」脚本家・岸本鮎佳インタビュー【前編】「水曜日、私の夫に抱かれてください」第7話より

――確かに(笑)。女性は本心を上手く隠すところがありますよね。男性はそれになんで気付かないだろう、と思うこともあります。

「女性の上手な嘘に、男性はコロッと騙されるんですよね。逆に、男性がつく嘘ってライトだから、女性は絶対にわかるものなんです。あと、こういう作品を書いている時にいつも考えるのが、女性って“第六感”が働くことがあるな、と。以前付き合っていた彼氏に、『あ、今浮気してるな』と突然感じたことがあって。すぐに電話したら別の女性とホテルにいたらしくて、後から『え…見てた?』と言われたんです。自分からゲロってますよね(笑) 私は、世の中のそういう男性を全員成敗したいなと思いで物語を書いているところもありますね」

「水曜日、私の夫に抱かれてください」脚本家・岸本鮎佳インタビュー【前編】「水曜日、私の夫に抱かれてください」第6話より

――ぜひ成敗してほしいです!(笑) テレ東のドラマ脚本をたくさん手掛けられていますが、“テレ東ドラマ”ならではの特徴などはありますか?

「テレ東のプロデューサーの方は“学歴のあるはみ出しもののオタク”という感じの人が多いですね。各局ごとに違うイメージがありますが、テレ東は極端に頭がいい人が多い。私もどちらかというとオタク気質なので気が合うし、メジャーな方向にいかない、マニアックなところを攻めていける感性が似ているのかなと思います。ご本人たちは『ヒットを出そうと思ってるよ』と言うんですが、なぜかマニアックな方に行っている気がして。結果、周りからの“テレ東らしさ”に繋がっているんだと思います」

――だからこそ、岸本さんなりの視点やエッセンスも活かしやすい?

「そうですね。こうした作品には女性プロデューサーが入ることが多いんですが、女性もちゃんと毒がある。どちらかと言うとクラスの隅っこにいる感じというか。私もそうだからこそ、お互い冷静にキラキラとした人たちのことを見られるので話しやすいです。『こういう人っていますよね』と共感し合ったものを台本に落とし込むことができるのかもしれないですね」

ドラマ脚本に関しては「ずっと自信がなくて」


――劇団を主宰し脚本・演出・俳優として活動される中、「まさかドラマの脚本で注目されるとは思わなかった」とおっしゃっていましたが、ドラマの脚本を描き始めたきっかけは?

「元々、役者をやっていて、小劇場の舞台に出たいけど出たい作品がないなと感じていたんです。別になめていたわけではなく、『これよりは面白いものが書ける』となんとなく自信みたいなものがあったんです。仲の良い女優さんを誘って二人芝居をやることになって、初めて脚本を書いたら好評で、『続けたほうがいいよ』と言われて続けていたら、あれよあれよという間に劇団になって。今の事務所の当時副社長だった方が劇団の公演を観に来てくれて…何か手違いがあって来たらしいんですけど(笑)…それが縁で『脚本を書いてみない?』と言われて連ドラの脚本(『健康で文化的な最低限度の生活』関西テレビ 2017年7月クール放送)を担当しました。いきなりゴールデン枠に抜擢されて右も左をわからず始めたものなので、未だに楽しいという感覚はないです。ずっと自信がなくて『これ面白いのかな?』と思いながら書いているところはあります」

――切れ目なく脚本を担当されていますが、自分の書いた作品にもっと役者として作品に出たいという思いは?

「正直なところ二人芝居をやった時点で、演じることにはあまり興味がなくなってしまったんです。脚本を書くようになって『役者って楽だったんだな』と思って。私は“役者は駒だ”という意識で役者をやっていたからそう感じたのだと思いますが。一方で、脚本は作品全体に関わっていますし、『面白くない』と言われたら自分の責任だと思えた。それくらい背負っているものを感じるとやりがいがあります。『面白い』と言われたら嬉しいですし、『夫の家庭を~』のようにキャストやスタッフのみなさんのおかげで棚ぼた的にでもヒットしたらしたですごく嬉しい。脚本を書くことに、役者の数倍の喜びを感じたんです。だから今は自分の劇団に出られればいいやと思っているんです」

――そうなると、監督も自分でやりたいとは思わないんですか?

「何度かやったことがあるんですが、映像作品は関わる人が多い分、意見がまとまりにくくて大変だなと思ってしまって。例えば、舞台なら毎日一緒に稽古するから、どんなにぶつかっても話し合うことができますが、映像の場合は1日だけ参加の人もいますからね。これは私は無理かも…と思いました。クーラーが効いた快適な部屋で、お菓子食べながら書く方がいいな、と。で、やりたいことは自分の劇団でやろう、と」

――今は劇団と脚本家といいバランスなんですね。今後、書いてみたいテーマはありますか?

「ずっと言っているのはプロレスのレフリーの物語。作品の中にプロレスラーを象徴として出したりはしているのですが、“プロレス”は書いてみたいテーマのひとつです。コメディが好きなので、オリジナルでコメディを書いてみたいとは思います。ただ、笑いって結構シビアで、間とかが大事なので、もし実現できるなら納得できる座組でやりたい。その作品ならば監督もやってみたいですね」

今夜放送、ドラマNEXT「水曜日、私の夫に抱かれてください」(毎週水曜深夜24時30分)第8話は?

「水曜日、私の夫に抱かれてください」脚本家・岸本鮎佳インタビュー【前編】
第8話「不倫相手の実母は超毒親!」
怜(入山法子)、一凪(山本弓月)と共に神栖(稲葉友)の実家を訪れた蓉子(菅井友香)は、初めて神栖の母・秀美(山下容莉枝)と対面する。異様な緊張感に包まれる嫁姑の会話、さらに秀美はなぜか弟の史奉(柾木玲弥)と比較しながら神栖を異様な勢いで蔑み始めて…。一方、神栖は後日、怜が蓉子を連れて実家を訪れたことを知り、態度が豹変。かつてないほど激しく感情を爆発させると、遂には怜を暴力的に追い込んでいく。

「水曜日、私の夫に抱かれてください」脚本家・岸本鮎佳インタビュー【前編】
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【プロフィール】
岸本鮎佳(きしもと・あゆか)
1984年3月22日生まれ。神奈川県出身。劇作家・脚本家・演出家・俳優。演劇ユニット「艶∞ポリス」主宰。ドラマ脚本は「替え玉ブラヴォー!」(NHK)、「こないだおばさんって言われたよ」(FOD)、「健康で文化的な最低限度の生活」(関西テレビ/フジテレビ系)、「夫の家庭を壊すまで」「ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~」(ともにテレ東)など多数担当。ドラマ「劇団スフィア 血塗られたブラジャー」(TOKYO MX)、「だから私はメイクする」(テレ東)では監督を務める。ドラマ「ひとりで死にたい」、「有罪とAIは宣言した」(NHK)などに出演。2026年7月28日(火)より、艶∞ポリス番外公演 北香那×岸本鮎佳 二人芝居「バッグの中からスフィンクス」を上演。
X:@kishimotoayuka
演劇ユニット「艶∞ポリス
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