映画『チェイサーゲームW 水魚の交わり』の反響|太田勇の5分で読めるテレビの裏側日記
こんにちは。P日誌です。
●『チェイサーゲームW 水魚の交わり』映画絶賛公開中
映画、絶賛公開中。自分も少しでも足しになればと暇さえあれば映画館に足を運んでいます。
さて、映画の評判です。たくさんの良い意見も頂いてます。この作品は、大事件が起こりません。 人も死なない、大金も盗まれない、不倫もしない……結婚7年目の倦怠期を迎えた女性カップルの話です。ちょっと地味なテーマですが、そこは受け入れられているようでよかったです。
チェイサー民の皆さまも、本当に、本当に、何回も観てくださっている。SNSを見ていると、
「仕事終わりに3回目」「今週だけで5回目」「生涯ベストなので10回行きます」
みたいなポストが流れてきて、本当に頭が下がります。中には、公開からまだ半月なのに「13回目」「15回目」という猛者もいて、今すぐ出向いて土下座をして感謝をしたいくらいです。そしてそれくらいこの作品に時間とお金を使ってくれていることが、作り手としては何よりのご褒美です。
しかも、すごい解像度で観てくれている。「娘・月の視線の動きだけ追って3回目を観た。親のすれ違いを一番早く察しているのが彼女だと分かって、画面の端でずっと心が重くなった」「自分のパートナーとの関係を見直した」「同性カップルじゃなくても“分かる痛み”だった」とか……。本編尺84分なので色々省いてるんですが、その省いた部分も全部汲み取ってくださっていて、本当に有り難いです。
一方で、否定的な意見もちゃんと届いています。「ドラマを見ていないと人物関係の前提が分かりづらくて、完全新規にはハードルが高いファンムービーに感じた」「いい話なのは分かるけど、とにかく地味。もっと分かりやすい事件やカタルシスを期待していた自分には合わなかった」「映画でやる理由がない」などなど……。
けれども好きの反対は無関心。上映時間84分を使って、この世界に付き合ってくださった上での「合わなかった」なので、それも含めてありがたいご意見だと思っています。
ただ、ここからは冷静な話です。客観的に数字だけを見ると、まだ“ファンムービー”の域から脱し切れていない動員数です。Filmarksのスコアは4点台で、とても高い評価をいただいているのに対して、動員数はまだまだ。プロモーションの打ち出し方、公開館数、タイミング……反省すべき点はいくつもありますし、「こうすればもっと届いたかもしれない」という仮説もたくさんあります。
でも、だからこそ「ここからまだできることがある」とも思っています。せっかく、ドラマファン以外の方が観ても楽しめる内容になっているので、一人でも多くの方に観てもらい、一回でも多く上映してほしい。そのために、P日誌を読んでいて映画を観てくださった皆さんにお願いです。
・感想をまだSNSに書いていない方は、一言だけでも書いてもらえると嬉しいです。
・近くに上映館がない方は、ダメ元で劇場にリクエストを出してみてください。
実際にそういう声から追加上映が決まるケースもあります。大きな広告よりも、一人ひとりの「良かったよ」の積み重ねでしか広がっていきません。「こんな映画がちゃんと劇場にかかる世界であってほしい」と思いながら、もう少しあがいてみようと思います。
●放送中『産まない女はダメですか? DINKsのトツキトオカ』佳境です
いよいよ来週月曜に12話の放送です。実はこのドラマは全13話。フツーは12話ですし、最近だと8話完結のドラマも多いですよね。その中で13本は初めての経験で、「中だるみしないか?」が一番の不安でした。結果的には、中身も再生数も中盤で息切れすることなく走り切れていて、ホッとしています。あと、13話でお願いされたというのは、期待されていた証拠でもあります。その期待にも応えられて一安心です。
12話の見どころは、やはり哲也の過去でしょうか。哲也という人間が、なぜああいう人間になってしまったのか。彼のキャラクターに関しては、自分の考えがけっこう強く反映されている気がします。ドラマのキャラ造形をするときに、いつも意識していることです。
それは2つあります。
ひとつは、
「人は一枚のキャラクターシートじゃなくて、光の当て方で全然違う顔が出る多面体だ」という前提です。
つまり、人というのは、単純に良い人/悪い人みたいなラベリングはできない、ということです。わかりやすいのは、殺人鬼が誰かの優しい親だったり、いつもニコニコしているおじさんがSNSではすごい攻撃的だったりとか、正義感の強い人だけど子どもの頃はいじめっ子だった過去があって、しかもそのことを忘れていたり、とか……。
もうひとつは、“壊れ方”。
「人が狂うとき、大事件一発でスイッチが入るというより、小さなストレスや選択の積み重ねだったり、育ってきた環境で変わる。しかもそれは特殊である必要はない」ということです。例えば……なんでもしてくれるお母さんがいて、それを受け入れているお父さんがいる、世間的には普通の家族にしか見えないけど、ある一面だけピックアップすると変わっている、けどその「変わっている」もひとつひとつは大したことない。けど、積み重なった時に、異常を生む、みたいなことです。
積もり積もって人を少しずつ狂わせていく。その“積み重ね”をどう画面に滲ませるか、ということを、哲也というキャラクターではかなり意識しました。
4月クールの注目ドラマとして取り上げていただく機会も時々あって、本当に喜ばしいかぎりです。宮澤エマさんも浅香航大さんも、魂を削って挑んでくださったので、その想いをなるべく多くの人に届けるという意味では、多少なりとも報いることができたのかなと思っています。やっぱり、ひとりでも多くの方に観てもらうことが、テレビドラマの理想ではあるので……。
13話の最後の最後までジェットコースターのような展開が続きますし、最終話は、おそらく賛否が分かれる終わり方になると思います。賛否どちらでもいいので、もし感じたことがあれば教えて頂けたら嬉しいです。
●子育てで思ってること
4月半ばに撮影が終わって、子ども2人の育児も多少手が回っています。長男は小1で、次男は保育園の0歳組。
まず小1のほうから。小学校ってとにかくやることが多いんですね。まず大変なのが連絡ツール。紙で配られるものと、アプリで確認するものがそれぞれあるんですけど、そのルールがイマイチわからないんですよね。
「お子さんと一緒に読んでください」って書いてあるものがスマホのアプリできていたり、逆に重要度の低いものが紙で配られていたり…。アプリに届く情報も、来週の時間割みたいな大切なものと、急ぎではない生活のお役立ち情報などが並列に届くんです。あと名前を書くものが多いですね。体操着とか教科書は理解できますけど、絵の具の場合は各色のチューブにまでだし、数百枚ある足し算カードも一枚ずつ名前を書くんです。これ、本当に必要ですかね……。そして、登校時間も、8:10から8:20の間とだいぶ区切られていて、それも地味にプレッシャーです。たまに早く着くと校門の前で待たされるんです。
放課後は、放課後クラブに行くんですけど、それも毎日、翌日「何時」に「誰が」迎えに行くかの連絡が必要なんです。それも口頭ではダメで、アプリで。目の前に放課後クラブのスタッフさんがいるのに……。
ちなみに長男の行き渋りもすごいです。朝も中々起きないし、起きても何かあって機嫌を損ねると「今日、やすむ」と駄々をこねます。なんとか連れ出して学校の門の前まで行った挙句、「今日はいかない」と言って、そのまま家に帰って休みにしたこともあります……。
一方、次男の保育園は、楽ではあります。まだ0歳児なので、意思もないので連れて行くだけです。ちなみに保育園の制度で、ここ6年で一番大きく変わったのは、オムツのサブスクサービスです。長男の時は、オムツに名前を書いて毎日補充していたんですけど、その手間がなくなりました。これが大きいです。あと、毎日スマホで送る子どもの記録もより簡素になってて、「進化してる…!」と驚いてます。(特に小学校の、紙とアプリの併用に比べると…!)
そっちは良い驚きですが、悪い驚きもあります。それは、保育園のことではなく、洋服の数。ユニクロの赤ん坊の服のラインナップが明らかに減っています。考えてみれば、上の子の時はまだ年間の新生児が90万弱とかだったと思うんですが、今は70万弱でしたよね…?市場が小さくなっているから仕方ないですよね。たしかキューピーのベビーフードも製造中止になるんですよね。困ります。たった6年でこれだけの変化があるとは…。
よく、「2人目の子どもができても、2倍にはならない」と言いますけど、我が家の場合は2倍、むしろ、2.5倍くらいの大変さです。下の子がようやく寝たら上の子が騒ぎ出したり、上の子の準備をしている間、下の子がずっと泣き叫んでいたり……。6歳差ですし、奥さんと2人だからなんとかなっていますけど、ワンオペ育児をしている全ての人を心から尊敬します。そしてもうすぐ撮影が始まるので、奥さんのワンオペ期です。申し訳ないです。というか、自分だったら発狂してます。
●今月のオススメエンタメ
1,ドラマ『銀河の一票』
先月も、今クールのドラマを色々オススメさせて頂きましたが、後半戦、僕の中で『銀河の一票』がアタマ一つ抜けてきました。選挙モノとか政治モノのドラマって今までもありましたけど、大抵の場合、NHKドラマみたいにすごい難しい感じに振るか、逆にリアリティのないエンタメショーの二極のイメージでした。それが、ちょうどいい温度です。リアリティありつつ、エンタメとして楽しめて、先も気になるし、程よく学びもある、みたいな。あとはタイトルがいいですよね。 『銀河の一票』って、スナックのママの名前だけど、夢の広がるタイトルですよね。こういうタイトルのつけ方が自分の引き出しにないんで、いいなーと思います。
2,ドラマ『リボーン 〜最後のヒーロー〜』
毎週楽しみで観てます。おそらくタイムリープのルールを突き詰めていくと色々、おかしいとこはあるんでしょうけど、勢いで楽しめます。高橋一生さんってコメディもお上手なんですね。エンドの宮本浩次さんのテーマ曲もそうですし、「最後のヒーロー」というタイトルもそうなんですけど、昭和感もいいんですよね。冷酷無比な社長ですら、昭和感があることで、憎めない悪人に見えるんです。そしてやっぱり、「誰が主人公の背中を押したのか?」という謎があるんで、常にほのかに緊張感が走ってるのもいいです。
3,ドラマ『対決』
こちらはもう放送が終わりました。NHK BSプレミアムドラマ枠の作品で、自分はU-NEXTでまとめて観ました。実際にあった医学部入試の女子一括減点問題をモチーフにしたドラマです。それだけでなく、医局内のセクハラや「名誉男性」と呼ばれる立場の女性たちも描く骨太なテーマなんですけど、これもしっかりエンタメ。社会派だけど説教臭くなくて、女性たちが理不尽に向かっていく姿に胸が熱くなります。
松本若菜さん演じる新聞記者と、鈴木保奈美さん演じる大学理事の対決だけじゃなく、新聞社や医大という“男社会”そのものとの闘いにもなっていて、「今年一番のドラマ」と書いている感想も見かけました。
個人的には、最終話で、鈴木保奈美さん演じる理事の自宅で、松本若菜さんと対峙するシーンがあるんですけど、10分以上の長い“家での二人芝居”なのに、まったく飽きずに見られました。 普通に考えると、2人座りの会話シーンでここまで尺を取るのは怖くて、5分が限界と考えそうですけど、そこに至るまでの積み上げがちゃんとしていると、ああやって長尺でも引っ張れるんだなと気付かされました。視聴者の感想でも「あのリビングの対話だけで全てを回収した」「あの場面のために5話分があった」と書かれていて、脚本と役者の力の合わせ技を見せつけられた感じです。「演出は誰なんだろう?」と気になったら、池田千尋監督でした。テレ東だと『40までにしたい10のこと』や『初恋ざらり』の監督などもしてくださっている、自分の好きな監督です。
今月も自分の拙い文章を最後まで読んでくださり、ありがとうございました!