「3日目に幽霊が憑いた…」山下リオ、自宅でポルターガイスト現象も!映画「遺愛」【公開初日舞台挨拶リポート】
6月19日(金)、映画「遺愛」公開初日舞台挨拶が行われ、主演の山下リオ、共演の小川あん、酒井善三監督(短編映画『カウンセラー』ほか)、テレビ東京・大森時生プロデューサー(「TXQ FICTION」シリーズ)が登壇した。
父の死を機に母の介護を始めた女性の周囲で、次々に起こる異変。
それは、母の抜け殻に入り込んだ“何か”による呪いなのか。
それとも、介護に疲れ追い詰められた女性の心の闇が生んだ虚構なのか……。
舞台挨拶では、4人が「愛と呪い」という挑戦的なテーマについて、撮影の舞台裏などを語った。
▲写真左から、大森時生プロデューサー、小川あん、山下リオ、酒井善三監督
「愛というものが転化していく話。遺された愛がどんな変容を遂げるのか…そこがこの作品の肝」(大森P)
――「母が母ではない何かになってしまったのではないか――」という恐怖を描いた本作。ただ恐ろしいだけではない、現世に残された愛の本当の姿に迫る恐怖映画となっています。
山下さんは、母の介護を続ける中で、常軌を逸していく主人公・佳奈の狂気を見事に体現されました。初日を迎えた今のお気持ちをお聞かせください。
山下「苦しいシーンが多く、大変な現場でした。ただそれ以上に大変だったのが、酒井監督の現場って、すごくスピードが速いんですよ。ワンテイクOKみたいな感じでどんどん進んでいくので、そのスピード感も含めて必死にしがみついて、撮影現場に向かっていました。
個人的にはちょっと霊感的なものがありまして、撮影3日目くらいに“幽霊が憑いたな”と思ったんですよ。クランクアップ後も、家でポルターガイスト現象がありまして。映画の打ち上げで、スチールカメラマンの方に『山下さん、途中で顔が変わりましたよね。3日目ですよね?』と言い当てられて…そんなこともありました(笑)。
いろいろありましたが、こうして初日を迎えることができて、嬉しい気持ちでいっぱいです」
――まさにホラーですね。小川さんは、実家で衝撃的な母の光景を目にする妹・杏里を演じました。
小川「私は最初“ホラー映画かな”と思っていましたが、そんなことはなくて。一つのジャンルに留まらない、濃密な何かがうごめいているのがすごく面白いなと思いました」
山下「あんちゃんもちょっと霊感があるみたいなので、意気投合しました。なるべくして姉妹になったんだなという感じでした」
――すごい現場だったんですね。酒井監督と大森プロデューサーは、これまでもタッグを組んでいますが、今回初めて長編の劇場映画を手掛けました。今の心境を教えてください。
酒井「撮影から1年以上経つので、その間はふわふわした気持ちでしたけど、これで“あっ、成仏したな”という気持ちです(笑)。気が楽になりました」
大森「今思い出したんですけど、山下さんの家で起きたポルターガイスト現象について、最初はみんなで和気あいあいと5、6人で話していたんですよ。でもそのうち、みんな怖くなって、一人また一人といなくなって…。最後は僕が1対1で山下さんの話を聞いていたのを思い出しました(笑)。
当時“これはもう、最後まで撮影できないんじゃないか”という恐怖があったので、今日ここまでこぎ着けて、本当に良かったと思いました」
――山下さん、どんな現象が起きたのでしょう。
山下「ざっくり言うと、モノが勝手に動くみたいなことです。現場では何もなかったのに、私の自宅だけで起きて…。それが非常にストレスフルでした(笑)」
――なるほど…。改めて、現場の様子や監督の演出はいかがでしたか?
山下「いいキャスト・スタッフの方が集まって、すごく集中して撮れたので、現場はとても楽しかったです。私は酒井監督に興味があって…。すごく情報量があるのに、何も渡してくれないもどかしさというか…(笑)。
私の中では、正解を求めたいという気持ちがありましたし、監督の作品意図が欲しいタイプでもあるので、それを教えてほしかったんですけど、監督に『何も考えてないんだよ~』と言われながら、のらりくらりとかわされた感じがあって。
でも決して、演出をしてないわけじゃなくて、信頼してくださっている…そこに大きな愛を感じました。それができる監督さんって、あまりお会いしたことなかったので。
プラス、監督がたまに言う一言が、自分が考えていた方向と違いすぎて(笑)、ワクワクするような現場でした」
――監督は、“のらりくらり作戦”だったのでしょうか?
酒井「いえ、本音です。ただ僕の場合、昔から“黙っていても何か考えていそう”と思われるタイプで(笑)。
今回は役者の皆さんが素晴らしくて、僕はただ見ているだけ、むしろ邪魔になる要素を取り除くことだけを考えていれば良かった。なのでいつも現場に行って、山下さんと小川さんのお芝居を見るのが楽しみでした」
大森「酒井さんは、やっぱり“考えている”と本当に思います。ただひたすら“考えていない”という主張を繰り返すばかりなので、らちが明かない(笑)。間違いない監督だと思っています」
――そして監督、試写を見たライターや著名人の方から「粘り気のある不快感と絶望に満ちている」「見た後に息苦しさが残る…おすすめです」「愛の解釈で、この映画は恐ろしく姿を変える」と大絶賛のコメントが届いています。
酒井「ありがたい限りですね。そんなに暗いことをやっているつもりはなかったんですけど、皆さんにそうおっしゃっていただけて嬉しいです」
――大森さんと酒井監督が本作の企画を進めていく際、「遺愛」というタイトルを含めて、そこにはどんな意図がありましたか。
大森「酒井さんとは、ずっと映画をご一緒したいという思いがありました。雑談ベースで話をする中で、家族という関係性…他人ではないけど違う人間だという、どこか割り切れない関係性というのはかなり不気味なものがあるなと。僕はずっとそう思っていたんです。酒井さんとそういう話をしながら、本作が出来上がりました。
タイトルは酒井さんが案として出してくださったんですけど、映画を見ていただいたら分かるように、愛というものが転化していく話なので、その遺された愛がどんな変容を遂げるのか…そこがこの作品の肝かなと思っています」
――最後に、これから作品を見ていただく皆様にメッセージをお願いします。
酒井「ホラー映画なので怖がっていただけたら嬉しいですし、怖くなくても楽しめるポイントが見つかって、“見て良かったな”と思っていただけたら嬉しいです」
大森「怖いかどうかよく分からないですが、陰険な映画ではあると思うので、ぜひご覧ください」
小川「アトラクションのように、ただ目を向けているだけで何かがうごめいている感覚が味わえると思うので、ぜひ目を凝らして楽しんでください」
山下「介護という日常的なものの中に感じられる非日常…。陰湿な気分になると思いますが、それを楽しむのも面白いのかなと。
今回の作品は、ホラー映画だとは思っていなくて、人間の摂理のようなものを感じられる作品になっているんじゃないかなと思います。見た人によって、『これは呪いの映画だ』『愛の映画だ』など、真逆の感想も生まれるのではないかと。皆さんがいろいろなことを話し合うきっかけになれば嬉しいです」

【STORY】
実家で母の介護を続けていた藤井佳奈(山下リオ)が、ある日、妹・杏里(小川あん)のもとを訪ねてくる。佳奈は血色が悪くやつれた様子で、自分たちの母が“もう母ではない、何かになってしまった”ことを告げる。
父の死を機に実家に戻り、献身的に母の介護を続けていた佳奈。だが彼女は、話しかけてもほとんど無反応で、食べ物をこぼし、部屋を散らかし、ときに突然噛みついてくる母に対して次第に苛立ちを募らせ、疲弊していく。
そんななか、佳奈の周囲で不幸な出来事が立て続けに起こり、彼女はその原因が母――今はもう母ではない“何か”――による呪いだと考えるようになる。
そしてその呪いの次の標的は、一家と懇意の精神科医・熊谷(マキタスポーツ)、さらに、次は杏里の息子・勇太の番なのだと。
果たして、佳奈が言うように本当に呪いが存在し、家族に危険が迫っているのか。それとも、介護に疲れ心身ともに限界に達した彼女が生み出した偽りの真実なのか。
佳奈と共に母の暮らす実家へと向かった杏里は、そこで驚くべき光景を目にする。