セカンド上映も決定!『チェイサーゲームW 水魚の交わり』完結の裏側や、モラハラ夫やストーカーなど強烈な敵でハラハラさせた『産まない女はダメですか?』のキャラクター術|太田勇の5分で読めるテレビの裏側日記

こんにちは。今月のP日誌です。

●『チェイサーゲームW 水魚の交わり』 公開、一旦、終了
映画、公開終わりました。劇場に足を運んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。リピートして観てくださった皆さま本当にありがとうございます。公開前は、2−3回観て頂けたらいいな、くらいに思ってましたが、10回、15回、一番多い方で23回観た、という方もSNSで発見しました。本当に感謝しております。
今後はミニシアターや名画座を中心にセカンド上映が行われます。僕も知らなかったんですが、業界用語で「二番館、三番館」という言葉があるそうです。封切り直後の大きな劇場(一番館)での興行を終えた作品が、時間差でフィルムを“巡業”していく小屋のことだそうです。「映画が街から街へ旅をしていく順番」を表す呼び名なのかなと自分は理解してます。
そして早速、7/3から、kino cinema新宿、シネプラザサントムーン(静岡)、ufotable CINEMA(徳島)で公開して頂けるようです。感謝です。
また、「ドリパス」での投票にも多くの声を寄せていただきました。ドリパスは、観客の「この作品を映画館で観たい」というリクエストが一定数集まると、実際の上映につながる仕組みのサービスです。
この日誌を書いてる時点(6/29)では、ランキングで上位に入り、「上映候補」に加わったようです。本当にありがとうございます。

ドラマのシーズン1から始まり、シーズン2、そして映画へ。『チェイサーゲームW』の物語は、ここでひとつの区切りを迎えます。この作品から学んだことは、とても一行では書ききれませんが、あえてまとめるなら「ひとつの作品が、ここまで大きな熱を持つことがあるのだ」という驚きと喜びでした。画面の片隅の小さな遊びや、尺との戦いのなかでねじ込んだこだわりまで、ちゃんと拾い上げてくれる人がいてくれたこと。その事実が、「制約に負けず、細部まで熱量を注ぎ続ける意味」を改めて教えてくれました。
これから先、別の作品に取り組むときも『チェイサーゲームW』で受け取った熱を、現場に持ち込んでいきたいと思います。応援してくださったすべての方に、改めて感謝します。本当にありがとうございます。

●『産まない女はダメですか? DINKsのトツキトオカ』無事、放送終了
6/22に最終話を迎えました。ご視聴くださった皆さま、本当にありがとうございました。TVerの全話総再生数は2000万回を超え、1話あたりの平均再生数も150万回前後と、「このくらいまで届いたらいいな」と思っていたラインはしっかり超えることができました。特にうれしかったのは、TVerランキングの総合1位を取り続けられたこと。そして、多くのドラマが1話をピークに右肩下がりになっていく中で、この作品は話数を重ねるごとに数字がじわじわ伸びていったことです。継続視聴の強さを、手応えとして感じました。
この作品で自分が一番大きく学んだのは、少しテクニカルな話ですが、「中だるみさせない脚本設計」と「毎話のクリフハンガーの積み方」です。言ってしまえば連ドラの基本なのですが、今まで手探りでやっていたところから、構造として意識的に組み立てる段階に、ようやく片足を突っ込めた気がします。山登りでいえば、まだ一合目あたりですが。これまでは登山道の入り口すら分かっていなかった素人が、「とりあえずこのルートで登るのが良さそうだ」という地図の読み方を少し覚えた、くらいの感覚です。

少し具体的に話すと、敵(悪役)を3人作ることで、毎話のクリフハンガーと気になる展開を作りやすくできたように思います。3人の敵とは、モラハラ夫の哲也(浅香航大さん)と、毒母の愛子(西田尚美さん)と、初恋ストーカーの沙也香(秋元真夏さん)です。
例えばクリフハンガーで言うと、
1話 哲也、ヤバい奴とわかる(避妊具に穴を開ける)
2話 哲也、ケーキを叩き壊す 「産まないなんて許さない…!」
3話 愛子、毒母全開で「子どもは堕ろしなさい」。アサ(宮澤エマさん)、包丁を持って刺そうとする。
4話 沙也香、アサと対面。アサの通う産婦人科で働いていたことがわかる。
5話 哲也、「避妊具に穴を開けていた」とアサに告白する。
6話 哲也、沙也香を階段から突き飛ばす。
……
みたいに、3人も敵がいると、順繰りでいけるんだな、と思いました。
原作から改変させて頂いた点もあります。たとえば3話の愛子ですが、原作ではアサが「産みたくない」と言い続けて、愛子が「産みなさい」と言うんです。これを脚本打ちの時に、監督が「これ、昨日まで「産め」って言っていた人が、突然「産むな」って言うほうが怖くないですか?」と言ったのがきっかけでした。真逆のアイデアを出してくださった監督もすごいですし、改変に応じてくださった原作の北実知先生にも感謝です。
この経験を、次の作品ではもう少し精度高く還元できればと思っています。

●新たな現場が始まりました
目下、撮影中です。6/15にクランクインしました。10月クールの作品です。連ドラだと放送1〜2か月前に撮り始めることが多いのですが、今作はかなりの早撮り。その理由のひとつは……夏を避けるためです。もう今の8月は、普通に外で働ける暑さではないですからね。とはいえ、6月は6月で梅雨の洗礼がある。どちらを取るかと言われれば、まだ真夏よりはマシかな、という判断です。

さて、今回のドラマの現場写真です。

○○○○|太田勇の5分で読めるテレビの裏側日記

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都内のとある居酒屋で撮影をさせていただいています。正式発表のあとに「原作との見比べ写真」をお見せしたいのですが、とにかく原作とそっくりの店なんです。あまりにイメージ通りだったので、原作者の先生に「ここ、ご存じでした?」と聞いてしまったくらい。ロケ地としては100点満点、最高のロケーションです。

唯一の悩みは、撮影スペースの確保です。お店としては、雰囲気も含めて“ちょうどいい広さ”なんですが、そこにカメラや照明、美術、小道具が入ると、一気にパンパンになる。居酒屋としてリアルに「女子2人で切り盛り」するにはぴったりのサイズなのに、「ドラマの撮影隊」が入るには、ちょっと足りない。ここが難しいところです。(実際この居酒屋さんは女性2人で切り盛りしています)
「じゃあ、もっと広い居酒屋で撮れば?」というのが、真っ当な発想だと思います。でも、それをやると今度はリアリティが崩れる。店が広くなれば当然、厨房も広くなるし、例えばコンロの数も増える。そうすると画面から「いやいや、これは2人で回せる規模じゃないでしょ」とバレてしまうんです。撮影スペースを確保しつつ、カメラワークで“狭く見せる”ことも理屈としてはできますが、どうしてもどこかに「大型店っぽさ」がにじむ。
「じゃあ、いっそセットを組めば?」という案もあります。テレ東深夜にそんな予算はない、という現実的な事情はさておき、仮に組めたとしても、今度は別の問題が出てきます。セットはどうしても「撮りやすさ優先」で設計されるので、カメラの引きジリ、照明の置く場所、役者の導線が良くなる一方で、「本当にここで商売している店の雑味」が抜けてしまう。美術さんが“汚し”を入れてくれても、ビンテージ加工の新しい洋服と同じで、「それっぽさ」は出ても、本当に何年も使われた物の説得力とは微妙に違う。

たとえば、店先のこの木、少し色あせた「営業中」の札。

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これらは全部、実際のお店のものです。日々の風雨にさらされてきた時間が、そのまま画面に写り込む。こういう「説明できない蓄積」は、セットではなかなか再現できません。
面白いのは、お店の構造上「撮影的には欠点」に見える部分が、思わぬアイデアを生んでくれることです。ここにカメラが入らないから、じゃあこう切り取ろう。ここに照明が立てられないから、じゃああえて暗さを活かそう。普通に考えればデメリットでしかない条件が、結果として作品のトーンや画の個性を決めてくれる。そういう意味で、多少の不便も含めて「リアルに営業している店」を使うことは、やっぱり強いな、と思わされます。

もちろん、もうひとつの悩みは現場ベースです。(機材置き場)
店内にベースを置くスペースがないので、どうしても外に出さざるを得ない。つまり、雨が降ったら悲惨だし、暑くなっても悲惨です(笑)。ただ、この場所は近くに神田明神もあって、なんとなく気の流れがいいです。いわゆる“ドンツキ”にあるので車の通りもほとんどなく、撮影そのものはしやすいです。制約とご利益が同居しているようなロケーションです。
居酒屋として“ちょうどいい狭さ”と、撮影現場としての“不便さ”。この矛盾の中で、どうやって画と段取りを組んでいくか。そんな綱引きも含めて、今作の現場はなかなかスリリングで楽しいです。

●『ファイア・ドーム』 辻村深月(小学館)
今月のオススメのエンタメは、小説です。
辻村深月の最新長編『ファイア・ドーム』が、とんでもない作品でした。上下巻を読み終えたとき、「久々に“物語の力”で殴られた」と素直に思いました。
舞台は北陸の地方都市。25年前に起きた百貨店受付嬢誘拐殺人事件と、その前日に起きた少年失踪事件。そして現在の小学生行方不明事件。この3つの出来事が、噂と報道と記憶によって複雑に絡まり合いながら、少しずつ1つの線につながっていきます。
何をどう書けばいいかわからないくらい圧倒されました。もう本当に絶対読んでほしいので、ネタバレしないように書きます。
この小説には、明確な感動ポイントが2つあります。ひとつは、少年たちの頑張り。“事件を消費する側”の大人たちとは対照的に、子どもたちは目の前の友達を「噂の材料」ではなく「1人の人」として救いに行くんです。
もうひとつは、過去の誘拐事件に関わる娘が、自分の命を顧みずある行動をとるんです。そこも感動です。言いたいけど言えないです。
あとはとにかく「謎の多さ・展開の速さ・犯人の多さ」が圧倒的です。それぞれの事件に「実際の犯人」と「噂が作り上げた犯人」がいて、その誤解と決めつけが、親世代から子ども世代へと連鎖していく構図になっているのが本当にうまい。

25年前の誘拐殺人
同時期の少年ひき逃げ事件
現在の小学生失踪事件
それぞれの事件に直接の犯人/噂での「犯人」がいて、それが世代をまたいで影響し合う構図です。
主人公のひとりの若い女性教師・美冬は、失踪直前の対応ミスと、彼女がいた鍼灸院が「エステ」と誤報されたことでネット炎上し、「関与しているのでは」と噂の“犯人”にされてしまう。(ここはまだ序盤なのでネタバレ許してください!)
光汰朗(行方不明になった小学生)の父親や家族にも、過去の事件との因縁をめぐる疑いの目が向けられる。
下巻に入ると、ここから一気にギアが上がる。過去と現在をまたぐ形で、「性犯罪加害者の大人」「学校の●●先生」「過去の事件の関係者」、そして「犯人の子どもたち」まで、さまざまなレイヤーの“犯罪”と“その影響”が次々と明らかになっていきます。ひとつの事件にひとりの犯人、という単純な構図ではなく、いろんな大人の小さな卑怯さや見て見ぬふりが積み重なった結果として、いま目の前の子どもたちの危機がある。その全体像が見えたとき、「サスペンスとして面白い」を飛び越えて、ちょっと言葉を失うレベルでした。

上下巻あわせて900ページ以上あるのに、まったく苦にならないどころか、ページをめくる手が止まらない。僕は久しぶりに紙で買ったんで、上巻が終わりそうな時は下巻も一緒に持ち歩いてて、その帰りに長男のお迎えもいって、ランドセルを渡されて、肩が外れて腕がちぎれそうになって、翌日、てもみん1時間(1時間1万円以上します!)行く羽目になりましたけど、それでもまだお釣りがくるくらい充実した読書体験でした。

今月も僕の拙い文章を最後まで読んでくださってありがとうございました!

※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。
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