かたせ梨乃 デビュー50年目で“自認16歳美少女”の怪役に挑む。JO1豆原一成を翻弄する「純愛ゆえの狂気」

【役者魂VOL.7】

大学在学中、CMモデルとしてデビューするや、その端正なルックスと抜群のプロポーションで一躍注目の的に。1978年「大江戸捜査網」(テレ東)で俳優としてのキャリアをスタートさせ、代表作の一つである映画「極道の妻たち」シリーズや「名探偵キャサリン」シリーズ(TBS)など、映画、ドラマの世界で長きにわたって活躍している、俳優・かたせ梨乃。

そんなかたせが、ドラマ「夫婦と16歳~狂気の隣人~」(毎週木曜 深夜24時30分)で演じるのは、“自認16歳美少女”という61歳のおばさん、白石美子だ。
隣に住む、既婚者の年下イケメン・紘(JO1・豆原一成)に恋するあまり、暴走する美子――。デビュー50年目にして、かたせが挑む新境地とは。

「とても難しい役」と語る本作への意気込み、あくなき好奇心と探求心で役者道をまい進する大ベテランの原動力を聞く、その【前編】。

かたせ梨乃 デビュー50年目で“自認16歳美少女”の怪役に挑む。JO1豆原一成を翻弄する「純愛ゆえの狂気」
【動画】SNSで話題!ドラマ「夫婦と16歳~狂気の隣人~」

“自認16歳”の難役に挑む、大ベテランの役作りとキャラクターへの思い


「少年ジャンプ+」でインディーズ連載中の漫画家・ぱんぷきんによる同名作を実写化。7月2日(木)に第1話が放送され、かたせ演じる美子の怪しくもどこか愛らしい様が話題を呼んでいる。

「これまでのキャリアになかったキャラクターですし、新しいチャレンジになる役だと思いました。同時に、とても難しい役だなって」

“自認16歳美少女”――つまりは自分のことを16歳だと認識している61歳の中年女性。回想シーンで若き日の姿を演じるのではなく、双子などの一人二役でもない。いわゆる二重人格ともまた違う難役は、キャリア50年を誇る大ベテランも頭を悩ませたという。

「なぜ難しいかというと、今回、ある種の“三人格”を演じ分けなければならないんですね。俳優の仕事は、例えばAという役であれば、そのAを自分の中に入れて演じますが、それが今回はAの中にBとCがいるような構造なんですよ。一筋縄ではいかない役だし、その分、面白い作品になるだろうなと思いました」

恋した隣人に手料理をおすそ分けするなど、“自認16歳の美少女”として猛アタックを重ねる美子。しかし、周りの目には61歳のおばさんとしか映っていない。
さらには、彼女が脳内で生み出した、自分が理想とする”16歳の美少女”の存在も――。

「美子の心の中の友人であり、よき相談相手でもあるんですけど、これが結構、複雑で……(苦笑)」

理想の16歳美少女姿の白石美子を演じるのは、モデルで俳優の林芽亜里。時には演出上、見た目が61歳である美子が、気持ちも服装もキャピキャピ、“心は16歳の美子”として現れる。
そのためかたせは、先のA、B、C、そのすべてを一人で演じなくてはならない。

「クランクインして間もないですが、今日も監督と相談しました。台本で内容だけ追うと、自分のことを16歳だと思っている女性が引っ越してきて、お隣さんに恋をして……と、わりと単純な話に見えますが、美子は、他人が決して理解できない精神構造によって周りを巻き込んでいくので、本当に難しいです」

ネタバレになるため多くは語れないが、今後は美子のバックボーンや隠された素顔が明かされるため、物語はより複雑な様相を……。予想の上をいく展開に、観る側はきっと驚くはずだ。

「なぜ、彼女が16歳という年齢にこだわるのか? 戻りたがっているのか――。
紘くん(豆原)を好きになるのも、16歳の思い出が関わっていますし、ターニングポイントではないけれど、だからこそ、その年に戻りたいのかなって思うんですよ。そこに多くの女性視聴者は共感できるだろうし、物語の一つの軸になっていくのではないでしょうか」

紘役を演じるのは、かたせとともにW主演を務め、地上波の連続ドラマで初主演を飾るJO1の豆原一成。紘は誰にでも優しく真面目ではあるものの、優柔不断な性格が災いし、美子にロックオンされてしまう。美子の“純愛ゆえの狂気”に翻弄される姿に、世の男性陣は戦慄するだろう。

「最近、フェミニンな男性ってわりと多いと思うんですけど、豆原くんはスポーツが得意で、どことなく土や海の香りを感じさせる野生児というか……“男の子!”という感じ(笑)。心の奥に熱いものを感じますし、ガッツもあって頼もしいです。
飾らない雰囲気も紘くんと合っているから、今後どんな表情を見せてくれるのか、私も楽しみにしています」

かたせ梨乃 デビュー50年目で“自認16歳美少女”の怪役に挑む。JO1豆原一成を翻弄する「純愛ゆえの狂気」

時代劇で培った確かな土台――変化する時代を楽しむ「飽くなき挑戦心」


キャリア50年。豆原をはじめ、若手共演者が大半を占める現場も増えてきたが、「それはそれで楽しみしかない」と、常に“今”を見つめている。

「今回は、監督やすべてのキャストを含めて私が一番年上の現場になりますが、毎日楽しいですね。配信もあるし、ドラマの作り方も以前と変わってきてはいるけど、昔のやり方ばかりがいいとも思わないし、今は今でいいところはたくさんあります。
何より新しいことにチャレンジしたい。“今を楽しまなきゃ”と思っているので、喜びしかないです」

「今回のように、年齢を超えて、幅広く演じられる役に出会えることが嬉しい」とも。
貪欲に全力で役に取り組む姿勢は、デビューした頃と変わらない。

「『大江戸捜査網』で俳優デビューして、当時は20歳くらいでした。今は、ワンクールがだいたい3カ月と短いけど、当時は1年間やっていて、それに4年近く出させていただいたのが良かった。
毎週撮影現場で勉強ができて、立ち回り(殺陣)、着物の着付けや所作にしても、周りの先輩方やお師匠さん方が、何もかも教えてくださって……。
始めのうちは全然できなかったから、里見浩太朗さんや松方弘樹さん、お上手な先輩方の立ち回りやお芝居を見ていました。見るものすべてが新鮮で楽しくて、自分の撮影が終わってもずっと撮影所にいたくらい。

その点、今の若い人たちは大変かもしれない。全部自分で覚えてやらなきゃいけないから。じっくりと学んだり教わったりできるほど、長く続く作品がほとんどないんだもの。そういう意味で私は、時代や環境に恵まれていたと思います」

これまで関わってきた人たちへの感謝も忘れない。「デビューして早々に時代劇をやれたことは、その後のキャリアで大いに役立った」と、俳優人生を振り返る。

「10年くらい経って、『女無宿人 半身のお紺』(1991年 テレ東)で主演した時も、『大江戸捜査網』で学んだ立ち回りや所作が生かされました。体で覚えたことって忘れないじゃないですか。特に着物の着こなしなんかは、場数を踏まないと難しいのよ。

銀座のママ役をやった『女帝』(テレビ朝日)とか、その後も着物を着る役をたくさんいただきましたし、これは時代劇に限らずですけど、ご縁や出会いは大切。そこで学んだことは必ず次のお仕事につながると思っています」

2019年にスタートした、土曜ゴールデン「あさこ・梨乃の5万円旅」(テレ東)も、縁あって動き始め、瞬く間に人気旅バラエティーの仲間入りを果たした。「今ではライフワークのようなもの」と、笑顔で語る。

「もう7年経つのかな? 最初の出演者は、(高橋)真麻ちゃんと(いとう)あさこちゃんと3人でした。卒業した学校が全員一緒で、私とあさこちゃんが13歳差、真麻は二回りも干支が違う24歳差。みんな同窓ということで、“一緒に旅に出てみよう”というのが始まりなんですよ。

ところが、真麻ちゃんが途中で結婚して、お子さんが生まれたことで泊まりのロケに出られなくなってしまったんですよね。それで今はゲストの方をお呼びして、一緒に旅をするという形になりました」

3人とも、東京の超名門校、雙葉出身。年齢は違えど、小中高と12年間を同じ学び舎で過ごした者同士だからこそ、あうんのやりとりが生まれている。
旅番組の舞台裏やターニングポイント、役者としての原動力は、7月6日(月)昼12時に公開する【後編】で!

【かたせ梨乃 プロフィール】
1957年5月8日生まれ。東京都出身。大学在学中にモデルとし活動し、1978年、『大江戸捜査網』で俳優デビュー。
1986年の映画『極道の妻たち』への出演をきっかけに、『吉原炎上』『肉体の門』などの名作映画、ドラマ『名探偵キャサリン』シリーズなど、数々のヒット作で圧倒的な存在感を放つ。
近年は『あさこ・梨乃の5万円旅』など、バラエティー番組でも大活躍。多才な魅力で、長年ファンを魅了し続けている。

(取材・文/橋本達典)
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