円井わん「画がつながらないかと…」ドラマ「ストレンジ」撮影秘話明かす
【動画】円井わん主演「地縛者」を配信中!
「テレ東プラス」では、第3話「地縛者」主演・円井わんにインタビュー。
希有な現場エピソードはもちろん、朝ドラ出演を経て得た役者としての進化、デビュー10周年を迎えた円井の次なる野望まで、話を聞いた。

異世界を日常に溶け込ませる演技への挑戦
――まずは、オファーを受けた時の感想を教えてください。
「大変な作品になると思ったので、最初はかなり悩みました。でも、伊藤潤二さんの作品は、俳優ならみんなやりたいと思うはず。“いい機会をいただけた”といううれしさもあったので、『頑張ります』と覚悟の上で臨みました」
――大変な作品になる――その意味は?
「“伊藤潤二先生の世界観を壊したくない”という気持ちが大きかったです。あと、ホラー作品って、やっぱり大変なんですよ。本当に怪奇現象が起きますし。
さらに今回、ファンタジーすぎて想像がつかないというところが一番大きかったと思います。原作漫画も読んでいたので、“うわっ、これどうやって撮るんだろう”と」
――ちなみに今回、怪奇現象は……?
「たぶんなかったと思います(笑)」
――作品の魅力をどこに感じましたか?
「絵のテイストも魅力ではありますが、悪夢や日常でふと思うことを具現化して漫画に落とし込んでいるような気がします。あまり日本のドラマでは描かれないことが集約されているので、それを演じるのは楽しいだろうなと思いました。
今回、監督ともいろいろお話をして、ファンタジーになりすぎない塩梅を探りながら撮っていくのが、すごく面白かったです」
――実際に現場に入ってみて、いかがでしたか?
「なるほど……という感じでした。道端に地縛者(特定の場所に立ち尽くしたまま動かなくなる人々)がいるシーンを撮りましたが、思ったよりも普通というか。
実際にはあり得ないことですが、“もしかしたら別の世界線で本当に起きているんじゃないか”と思ってしまうくらい、日常に溶け込んでいたんです。その日から想像できるようになって、お芝居もしやすくなりました」
――円井さんが演じる浅野結衣は少し陰のある役ですが、どのようにアプローチしましたか?
「ちょっと暗いけど、一本強い芯がある。私は普段、そのままの声で演じるようにしていますが、浅野に関しては声を高く設定しました。“あまりハキハキ喋る子じゃないだろうな”と思ったので、ゆっくりと喋るようにして。
私自身は適当な性格ですが(笑)、浅野は家もきれいだし、絶対に適当な人じゃない。自分とはまったく違うからこそ新鮮でしたし、彼女の芯の強さに救われた部分もありました」
――現場で印象的だったエピソードを聞かせてください。
「福山翔大さんが(地縛者として)ずっと同じポーズで固まっているので、パンプアップし始めちゃって(笑)。『こうすると筋肉痛になっちゃうな』『こっちのほうが楽だわ』と、力を入れる位置を変えながら楽しんでいるのが面白かったです。夕方頃になるとムキムキになって、“画がつながらないのでは?”と思うほどでした(笑)」
朝ドラ「ばけばけ」で原点回帰
――連続テレビ小説「ばけばけ」(NHK 2025年)では、主人公(演:髙石あかり)の親友役を演じ、大きな話題を呼びました。ご自身の中で、何か変化は?
「すごく良い作品に出会ったと思っていますが、特別に変わったことはないんです。ただ朝ドラを通して、役の固定観念みたいなものがなくなったというのはあります。“こう見えるようにしよう”と、役を作り上げることはしなくていい。ただその人を生きるだけでいいんだと思うようになりました」
――なぜ、そのような考え方に行きついたのでしょうか。
「私は、元々そういうタイプだったはずなんです。でも、たくさんの現場でいろいろな監督と出会って、無意識下に悩んでいたと思うんですよね。本当はこう演じたいと思っていても、『分かりやすくして』と言われると、すごく迷ってしまって。
でも、『ばけばけ』のプロデューサーさんや監督さんは『その場を生きてください』とおっしゃる方々で、役者みんながそこに乗っかっていた。波長が合う人たちが集まった現場だったからこそ、いろいろな化学反応が起きたと思いますし、私自身も自分のスタンスに戻ることができたと思っています」
――円井さんは、以前モキュメンタリーの制作にも携わっていましたが、その魅力をどこに感じていますか?
「モキュメンタリーは、もっと数が増えてもいいと思っています。何がいいって、分かりやすくないのがいいですよね。リアルなのか、そうじゃないのか。
テレ東さんの『イシナガキクエを探しています』も見ましたが、キャストの皆さんがうまいので“えっ、マジなのか?”と(笑)。一方で、芝居をする立場からすると、めちゃくちゃ実力を試されるなと思います。
また『ばけばけ』の話になってしまいますが、あかりちゃんと2人で会話するシーンを撮っていた時、リアルすぎて撮影が止まったことがありました。アドリブを入れながらお芝居をしていたら、突然カットがかかって『ごめんなさい、お芝居でしたか?』って(笑)。
あかりちゃんは本当に天才だと思いますし、私はそういう境界があやふやなお芝居が好きなんです」
――今までのお仕事の中で、「これはしびれた!」という方との出会いがあれば教えてください。
「いろいろありますが、中でも印象に残っているのは、竹原ピストルさんです。すごく腰が低い方で、そのピュアさに感動するほどでした。カットがかかってOKが出る度に、自分が映っていなくてもガッツポーズをするんですよ(笑)。
ピストルさんは『毎回“これがラストかもしれない”と思いながら、お芝居の仕事をやっている』とおっしゃっていて、こんなに謙虚な人は見たことがないなと、人間性にしびれました。
やっぱりアーティスト活動もされている方は、面白い人が多いですよね。アイナ・ジ・エンドさんもそうですが、ステキな感性に大きな刺激を受けました」

役者の枠を超え、企画・脚本へ挑む理由
――デビュー10周年を迎えましたが、振り返ってみていかがですか。
「すごく充実していました。コロナ禍もありましたが、自分の中では、毎年毎年、レベルアップしていたなという感覚です」
――スランプや壁にぶつかった経験は?
「2024年くらいに、気持ちが落ちたことはありました。いろいろなことが重なって、自分が置かれている環境の変化についていけなかったんです。
いろいろな場面で壁はあるけど、“まぁ~しゃあない”みたいな(笑)。もちろん落ち込むことはありますけど、絶対にどうにかなるので、“時間が解決してくれる”というスタンスでいるようにしています」
――過去のインタビューで「夢は海外進出」とおっしゃっていましたが、今もその思いは変わりませんか?
「もちろん参加できるならしたいですけど、今は海外との合作も増えているので、逆に興味が薄れたかもしれません。私はひねくれ者なので、みんなやり始めたなと(笑)。
それよりも、日本のドラマや映画界をもっと盛り上げられたらいいなと思っています」
――出演映画のクラウドファンディングを立ち上げるなど、円井さんの熱意や行動に「演劇界全体を良くしていきたい」というエネルギーを感じます。
「みんながちゃんと意見できるような現場にしたいという思いはあります。まだ形にはなっていませんが、友達と企画から脚本まで進めている作品があるんです。
話し合いをする中でみんなの意見が合致したのは、“衣装やさまざまなことに、もっと役者が関わってもいいよね?”ということ。そういう意見交換は仲間同士でもよくしていますし、役者業だけでなく、これからもいろいろチャレンジをしていけたらいいなと思っています」
【プロフィール】円井わん(まるい・わん)1998年1月3日、大阪府出身。2016年から俳優活動をスター トさせ、17年に『獣道』で映画デビュー。 映画『KONTORA-コントラ』(21年)、『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらな い』(22年)では主演を務める。
ドラマではNHK連続テレビ小説『虎に翼』(24年)、TBS系連続ドラ マ『不適切にもほどがある!』(24年)、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』(25~26年)、TBS日曜劇場 『GIFT』( 26年)など数々の話題作に出演。
【第3話「地縛者」をTVerで配信中!】
民間ボランティア団体「青空の会」に所属する浅野結衣(円井わん)。日本各地では、特定の場所に立ち尽くしたまま動かなくなる人々―通称“地縛者”が急増していた。結衣は地縛者たちの支援を続ける中で、彼らが過去に強い思い入れや愛着を持つ場所に縛られているのではないかと考え始める。やがて身近な人までもが地縛者となり、結衣はその原因を追うことに。そして、結衣自身の過去とも繋がる衝撃の事実が明らかになっていく。
(取材・文/nakamura omame)