【更年期で夫を嫌いになる理由】カウンセラーが教える「正しい夫婦の距離感」とは

夫のちょっとしたしぐさや話し方に無性にイライラしてしまう、子どもが独立して夫婦の時間が増えた途端、一緒にいるのが苦痛になった……。
更年期を迎えた女性たちの間で、密かに、そして深刻に広がっているのが「夫へのストレス・嫌悪感」の悩み。
昔はもっと優しく接することができたのに、こんなに感情的になるなんて、私自身が変わってしまったのではないか――そう自分を責めてしまう女性も少なくない。
このイライラや夫婦関係のギクシャク、実は更年期特有のホルモンバランスの変化と、ライフスタイルの変化が複雑に絡み合っているという。
「テレ東プラス」は、「すまいる相談室」夫婦カウンセラーの北村貴子さんを取材。記者の経験を交えて、更年期に夫が嫌いになる理由、今日から実践できる夫婦の危機の乗り越え方を聞いた。
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感情に振り回されない!夫への接し方
――私事ではありますが、更年期に入り5~6年経ちます。婦人科の先生から「更年期は10年くらい」と聞いたのですが、ここへ来て夫の定年が重なり、最近、夫のちょっとした行動にいちいちイライラしてしまいます。これも更年期の症状なのでしょうか?
「“夫にイライラする”というのは直接的な更年期の症状というよりも、ご自身の心身の調子が崩れていることによるサインだと捉えましょう。更年期はホルモンの影響で、自分自身の心身を維持するだけで精一杯になります。そのため、従来なら受け流せていた夫の言動に対して、受け止める寛容さやキャパシティがなくなっていると言えます。
夫が急に変わったわけではなく、ご自身の“心の余白”がなくなっている状態なのです」
――子どもが家を出て離れて暮らすようになり、夫婦2人の時間が増えた途端にイライラが酷くなったように思います。
「それは、子どもというクッションがなくなったことで、真正面から向き合いすぎてしまっているからです。これまでは子どもに意識が向いていた分、夫への不満が目につきにくかったのですが、ワンクッションがなくなると視線の行き場がすべて夫に向かってしまいます。『眉毛が伸びている』『着ているシャツがだらしない』といった些細なことまで目につきやすくなり、結果として過剰に気になってしまうのは、ごく自然な流れとも言えます」
――職場や友人に対しては感情を抑えられるのに、なぜ夫にだけは激しく感情をぶつけてしまうのでしょう。
「夫はあなたにとって一番近い存在であり、無意識に甘えられる相手だからです。
友人や職場の人の前では、社会的な関係を保つために緊張感を持って感情をコントロールしていますよね。しかし外で気を張っている分、家に帰って緊張が切れると、どうしても一番身近な夫に対して感情の蓋が外れてしまいます。『外面はいいのに家では不機嫌になってしまう』と悩む女性は非常に多く、それだけ家や夫が自分にとって解放される場所だと言えます」
――夫に妻が要望を伝える時、どのような言い方をすれば良いでしょうか。
「アドバイスとしては2通りあります。1つ目は、ネガティブな感情を乗せずに“事実と具体的なリクエストだけ”を淡々と伝える方法です。
『なんでシンクを拭いてくれないの!』と怒るのではなく、『お皿を洗ったらシンクの周りも拭いておいてね』と指示だけ出します。男性は察するのが苦手な方が多いので、直球で具体的に伝えた方が伝わります。
2つ目は、あえて“笑い”に振り切って言う方法です。冗談っぽく明るく伝えることで、お互いに感情的にならずに済みます」
――夫の機嫌を損ねないような工夫はありますか?
「“褒めてから要望を言う”というステップがとても効果的です。男性は単純な面もあるので、否定から入ると一気に心を閉ざしてしまいます。例えば『今日の髪型いいね! でも、もうちょっとこうしたらもっといいかも』というように、まずポジティブな言葉を直球で伝えてから、改善してほしいポイントを添えるのです。子どもに接するときと同じように“持ち上げてから動かす”という気配りを意識すると、関係がスムーズになります」
――自分でも“子どもっぽいな”と思ってしまいますが、イライラした時、「更年期だから仕方ないでしょ!」と、決めゼリフのように言ってしまいます(笑)。
「これは、夫側の男性の度量次第なところがありますね。包容力のある夫なら“更年期なら仕方ないか”と受け止めてくれますが、そうでない場合は“更年期を言い訳にして怒りをぶつけられている”と感じてしまうこともあるかもしれません。
更年期だからと開き直るのではなく、『今ホルモンの影響でどうしても心身がつらいから、少し一人にしてほしい』というように、状況と協力してほしいことをセットにして冷静に伝えると摩擦が減ります」
――夫婦げんかがヒートアップして、ものすごくカーッとなってしまった時はどう対処すればいいのでしょうか。
「その場で白黒つけようとするのをやめて、物理的にその場を離れましょう。トイレやお風呂、自分の部屋などに移動し、タイムアウトを取るのです。感情が高ぶっているときに話し合っても終わりがなく、正解探しになってしまいます。
翌日になると、脳の感情がリセットされて『なんであんなに怒っていたんだろう?』と思えることも多いので、その場で戦わず、1度離れるようにしましょう」

更年期は「夫婦の新しい距離感」を見つけるタイミング
――リモートワークの日や休日など、夫婦で一緒にいるのが苦痛です。どうやって距離を取ればいいですか?
「パーソナルスペースを充実させ、あえて一緒にいすぎないようにすることが大切です。
1日中家にいるからといって、朝昼晩すべてのご飯を一緒に食べる必要はありません。『お昼は別々に食べて、夜だけ一緒にする』というように割り切ってみてください。
お互いに距離感を保つことは、冷たさではなく関係を良好に維持するための知恵です。旅行なども、新婚当時のようにずっと一緒に回ろうとせず、食事だけ一緒に楽しむくらいがちょうどいいと思います。
更年期は、必ず抜ける日がやってきます。今は人生の中の嵐の季節なのだと理解し、過ぎ去るのをじっと待ちましょう。夫との関係に限らず、何事も“80%(時には60%)の力でできれば上出来”と自分を許してあげてください。
更年期における夫へのイライラは、決してあなたが冷酷になったわけでも、夫婦関係が終わったわけでもありません。これまでの夫婦のあり方を見直し、お互いにとって”心地よい距離感を作る時期が来た”というタイミングでもあります。
更年期を抜けると、驚くほど元気になって旅行や趣味を活発に楽しむ女性がたくさんいらっしゃいます。今は無理に頑張らず、自分自身に一番優しくしてあげてください」
【北村貴子 プロフィール】
「すまいる相談室」代表カウンセラー。夫婦問題・離婚カウンセラー、メンタルケア心理士。プラットフォーム型カウンセリングの登録カウンセラーとして離婚相談やDV・モラハラ問題に長年従事し、2019年に独立。現在は横浜市を拠点に、国内外から幅広く相談を受けている。夫婦問題・離婚カウンセリング歴10年以上。精神医療の研究にも取り組んでいる。
(取材・文/チャタレイ中村)
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