新ドラマ『まめとむぎ』誕生裏話!齋藤飛鳥さん・富田望生さんのキャスティング秘話&天王洲スタジオで蘇る過酷なAD時代|太田勇の5分で読めるテレビの裏側日記

テレ東の太田です。今月もP日誌書かせて頂きます。
●「まめとむぎ」発表しました!

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発表しました。 10月クール金曜24時ドラマ『まめとむぎ』、どうぞよろしくお願いいたします。
今回は、この企画が誕生した裏側と、キャスティングにまつわる「本気のドキュメンタリー」を書こうと思います。
ことの始まりは、ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』を観たことでした。観終わったあと、思わず「うーむ」と唸ってしまった。この圧倒的な面白さは、ドラマが良いのか?原作の漫画が良いのか?それとも両方なのか?気になりすぎて確かめたら、答えは「両方」でした。
興奮冷めやらぬまま奥さんに話すと「谷口菜津子先生の作品はどれも面白いよー」と言われ、何冊か読んでみることに。その中で、一際僕の心を引き寄せて離さなかったのが『まめとむぎ』でした。
引っかかったのは、「発酵」というキーワードです。
実は…うろ覚えなのですが、僕自身ずっと前から「発酵」という言葉が好きでした。確か木皿泉さんの小説(たぶん『道草』だったと思います)に出てきたエピソードで、発酵と腐敗についての話がありました。
「人間に役立てば『発酵』で、役立たないなら『腐敗』。それって結局、人間が勝手に決めてるだけじゃん」
みたいな話です。この視点がすごく面白いなと思っていて、いつかドラマのテーマにできないかと長年腹の中で温めていました。
あと、これは個人的な偏見なのですが…僕は「食」がテーマのドラマがちょっと苦手なんです。「美味しいものを食べて、お腹も心も温まってハッピー!」みたいな世界観に、どうにも乗り切れない。「いやいや、人間ってそんな単純じゃないでしょ」と思ってしまう(笑)
でも、そこに「発酵」というテーマが乗っかることで、人間のちょっとドロドロした感情や複雑な人間関係に、ちゃんと理屈が通る気がした。だからこそ「これは作れる!」と確信したんです。
そこからはスピード勝負です。当然、企画を出す前に出版社へ権利確認の連絡を入れます。ただ相手は、あの『じゃあ、あんたが〜』で今をときめく超人気作家の谷口先生。「どうせもうどこかの局に映像化権を取られてるんだろうな…」とダメ元で社内確認を出したら、奇跡的に「まだ空いてます!」と返ってきた。
「よし、急ピッチで進めよう。あとはキャスト次第でGOだ。誰にしよう?」
まめちゃん役は、最初から富田望生さん一択でした。実はこの作品、企画が正式に通る前に原作者の谷口先生とお会いするという、通常ではあり得ない異例のプロセスを踏んでいます。なぜそんなことをしたかというと、あまりに素敵な原作だったため、ドラマ化にあたって「どこを絶対に守るべきか」を事前に直接聞いておきたかったからです。そしたらなんと、谷口先生の口からも「まめちゃんは富田望生さんがいい」とお名前が挙がった。もう運命ですよね。
富田さんとは5年ほど前に『おしゃ家ソムリエおしゃ子!』というドラマでご一緒していて(シーズン2も含めて2回)、彼女のお芝居の実力も、人間としての魅力も熟知していました。オファーを入れると、二つ返事で快諾。まずは1人目のピースがハマりました。
そして、もう1人の主人公・麦ちゃん。夢はファッション編集者で、不倫で人生を全部台無しにしてしまった女の子。「困った顔が愛せる女性がいいな」と考えていた時に、パッと頭に浮かんだのがTBSドラマ『ライオンの隠れ家』で観た齋藤飛鳥さんでした。
ただ、彼女へのオファーはハードルが高いという噂も耳にしていたので、半分ダメ元。ところが「興味はあるが、いくつかの懸念点がある」と連絡をいただき、企画に前向きな状態で一度直接お会いすることになりました。
そして、あの日がやってきます。初対面の日、挨拶もそこそこに、世間話やアイスブレイクのトークなんて一切挟まず、ほぼ「はじめまして」の直後に彼女の口から飛び出したのが、公式コメントにも書いたこの言葉でした。
「太田さんは、本気でこの作品と向き合う覚悟、ありますか?」
まっすぐな瞳でそう問われ、僕は思わず息が止まりました。「私は不器用なので、たくさんの作品に向き合うことができません。だからこそ、やると決めたなら、同じ熱量で本気になってくれる人と作品をつくりたいと思っています」
普通なら「この度はオファーありがとうございます」みたいな挨拶から入って、最近の作品の話を少しして本題へ…という流れじゃないですか。それを全部スキップして、開口一番にこれです。
飛鳥さんはその後も、「やるからにはこういうことはしたくない」「こういうことをしたい」という意志を、すべて自分の口ではっきりと言いました。ここが本当にすごいと思ったポイントです。通常、タレントさんの「これはやりたくない」という条件は、マネージャーさん経由で「事務所の意向」として伝えられることが多い。ご本人が直接言うと「生意気だ」と捉えられるリスクがあるからです。でも、飛鳥さんはリスクを恐れず、自分の言葉で正直に話してくれた。その姿を見て、驚くと同時に「この人は心の底から信頼できる」と強く思いました。
懸念点を一つずつ話し合って払拭し、彼女の信頼を得ることができ、無事に主演を引き受けてもらえることになりました。もちろん今までも毎作品100%の情熱を注いできましたが、あの瞬間、自分の中の「100%」の基準がガツンと跳ね上がりました。
後日行った本読みの現場では、富田望生さんと齋藤飛鳥さんが一瞬で意気投合。年齢は近いですが、俳優としてのキャリアは先輩である富田さんが優しくリードしてくれて、最高の空気感でスタートを切ることができました。
いろんな人の「本気」と「覚悟」が、これでもかと詰まった作品です。 オーバーヒート寸前の熱量でお届けしますので、どうぞご期待ください!

 

●天王洲スタジオと、25年前の「命のテープ」
『まめとむぎ』関連の仕事で、久しぶりに天王洲スタジオへ行ってきました。

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天王洲スタジオに来ると、25年経った今でも鮮明に思い出してしまう景色があります。そう、入社1年目、ADとして揉まれまくっていたあの大変すぎた日々です。
当時僕が配属されたのは、モーニング娘。さんとキャイ〜ンさんがMCを務める『MUSIX!』という音楽バラエティ番組でした。業界に入って一番最初に痛感したのは、「都市伝説じゃなく、本当に人間って完全徹夜するんだ…」ということ(笑)
入社前は「徹夜と言っても、どうせ途中でうまいこと休んでるんでしょ?」なんて高をくくっていたのですが、甘かった。本当に完徹でした。
初期の頃は、夜中3時まで神谷町の制作フロアで必死に準備をし、4時にタクシーで天王洲スタジオへ移動。急いで現場セッティングをして、なんとか5時に作業終了。しかし、朝7時からは「技打ち(技術打ち合わせ)」が控えています。空き時間はわずか2時間。会社のシャワーを浴びて、うとうとと目をつむったらもう朝の7時。
……ただ、今思えば「2時間も休憩があった」のは、まだ平和な時期でした。
番組の視聴率が芳しくなくなり、「テコ入れ策だ!」と様々な新企画が同時並行で走り出すと、現場の狂気はさらに加速します。準備が押しに押して天王洲スタジオに着くのが朝6時ギリギリ。大急ぎで準備をして、7時の技打ちに間に合うかどうかという限界集落状態。そうなると、当然シャワーを浴びる時間すらありません。
あまりの怒涛さに、当時の準備移動も現場からの帰りも、当然のように毎回タクシーでした。なので、恥ずかしながら入社7年目くらいまで「天王洲アイル駅」という駅を使ったことがなかったほどです。
「毎回タクシー移動」なんて聞くと一見優雅に思えるかもしれませんが、実態は真逆の極限労働です。収録で使い終わったHD(ハイビジョン)テープを何十本も持ち運ぶのですが、これが笑えないくらい重い。VHSテープの比じゃない重量なんです。
しかも、当時はデータのバックアップなんてできなかったんで、そのテープが「世界で唯一の本番素材=命」です。先輩から「お前は死んでもいいから、テープだけは絶対に失くすなよ」と、笑えないトーンで本気で釘を刺されていたくらいです。
夜22時くらいに収録が終わって撤収が終わるのが24時、ようやく25時過ぎに編集所へその重い命のテープを届ける。運がよければ翌日は午後から出勤ですが、編集スケジュールと重なると、そのまま編集室に缶詰め。そうなると二徹になり、三徹になる。その二徹、三徹も本当に寝れないやつです。
恐ろしい時代です。たぶん人間の防衛本能で、途中のどこかで気を失うように1〜2時間寝ていたんだと思います。
でも同時に、あの頃特有の「キラキラした熱気」も強く覚えています。
当時はモーニング娘。が社会現象レベルの大人気。テレ東の『ASAYAN』出身ということもあり、当時のテレ東に出てくれる唯一と言ってもいい超ド級のトップスターでした。当時、若者だった僕からすると、演歌界のレジェンド・北島三郎さんとお仕事をするよりも、モーニング娘。と仕事をしている方が学生時代の友人たちから羨ましがられたものです。
そして、僕自身は天王洲スタジオができてから入社した世代なのですが、先輩方から聞く「昔のテレ東話」も印象的でした。 天王洲ができる前のテレ東のスタジオは、どこも狭くて古くて、良くも悪くも「ザ・ローカル局」という佇まいだったそうです。それがこの天王洲スタジオという巨大な拠点ができたことで、先輩たちが「これでようやく他キー局と肩を並べられた!」と誇らしげに手応えを感じていた……そんな熱い時代のバトンを、僕ら若手も受け取っていたんだなとしみじみ感じます。
そんな過酷で、狂気的で、でも確かに熱かった記憶が天王洲の風に吹かれると走馬灯のように蘇ってくるわけです。
あの地獄のAD時代に比べたら、どんな大変な現場も乗り越えられる気がしてくるから不思議です(笑)25年分の情熱を胸に、今回の『まめとむぎ』も最高の作品に仕上げていきます!

●9月13日『チェイサーゲームW 水魚の交わり』 ドリパス特別上映&舞台挨拶決定!
9月13日(日)、映画『チェイサーゲーム W』が「ドリパス」経由でスクリーンへと帰ってきます!ファンの皆さんの熱いリクエストと応援のおかげで、大画面での特別上映が決定いたしました。本当にありがとうございます。
劇場という特別な空間で、もう一度『CGW』を皆さんと共有できる機会をいただけたことに、心から感謝の気持ちでいっぱいです。
そして当日は、上映に併せて舞台挨拶をさせていただきます!
登壇するのは、なんと「僕と柴原P」という初めての組み合わせ。実はこの柴原Pこそ、幹事会社のサイバーコネクトツー(CC2)様と僕を一番最初に引き合わせてくれた“超・重要人物”であり、すべての始まりを作ってくれた張本人でもあります。
作品の立ち上げ当初の裏話や、CC2さんとの出会いのエピソード、そして今だから話せる『CGW』への思いなど、この2人だからこそ語れるディープなトークをたっぷりお届けする予定です。
スクリーンで作品を観られるだけでも最高ですが、当日は僕たちの感謝の気持ちを直接皆さんに言葉でお伝えできるのを、今から楽しみにしています。
ぜひ劇場へお越しください!お待ちしております!

●今月のオススメエンタメ:話題の映画『ちいかわ』
話題の映画『ちいかわ』を観てきました。元々「ちいかわ」という作品がポップな見た目に反してダークな世界観を持っていることは知っていたので、展開そのものへの驚きはありませんでしたが……いやあ、エンタメとしての完成度がとにかく凄かった!
あの鮮やかなオチや、劇中に流れる楽曲のどこか不穏で不気味な空気感。さらに島の住民たちの絶妙なモブ感の表現など、細部までこだわり抜かれていて感心しきりでした。
あと、食事シーンの細かさには原作同様めちゃくちゃ笑わされました。油そば風の食べ物をすすっているカウンターの脇にちゃんとソースが置いてあるリアリティとか、登場人物の「島二郎」の存在感も最高です。大声で「なっ!」と叫ぶ豪快さや語彙のシンプルさも含めて、不器用だけど頼りになる“強い良い人”の描写が見事でした。
可愛らしさと狂気が同居する極上の映画体験でした。まだ観ていない方はぜひ劇場へ!
今月も拙い文章を最後まで読んで頂きありがとうございます。

※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。
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