【更年期離婚の罠】「一人になりたい」は夫婦破綻のサインではない?専門家が明かす“決断前の見極めポイント”

子どもが独立し、夫婦2人きりの生活に戻った更年期世代。「夫と同じ空気を吸うのも嫌」「いっそ離婚して解放されたい」と、離婚願望を抱く女性も。
しかし、その「離婚したい」という感情は、本当に夫婦関係の破綻によるものなのか――。
「テレ東プラス」は、「すまいる相談室」の北村貴子さんを取材。数々の夫婦カウンセリングを行ってきた専門家に、更年期に急いで離婚を決断しない方がいい理由と、後悔しないための見極めポイントを聞いた。
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50代以降の経済面・健康面のリスクを冷静に計算する
――更年期に入ってから夫へのストレスが限界で、毎日のように「離婚したい!」と悶々と考えてしまいます。このタイミングでの離婚は危険ですか?
「更年期真っただ中での即決は、一度立ち止まることを強くおすすめします。今感じている『離婚したい』という感情は、本当に夫と別れたいのか、それとも、家事や人間関係の重圧から、いったん一人になって休みたいだけなのかを整理する必要があるからです。
更年期は心身のエネルギーが落ちており、人間は疲れているとポジティブよりもネガティブな思考に引きずられやすくなります。自分の状態が悪いことで冷静な判断力が低下している可能性があるため、衝動的に白黒つけるのはとても危険です」
――夫と別れたいのではなく、夫婦関係を休みたいだけの場合、離婚以外にどんな選択肢がありますか?
「家庭内別居や一時的な別居を試してみるのが効果的です。例えば、実家に少し帰ったり、ウィークリーマンションを1カ月ほど借りて一人暮らしの時間を体験してみるのも良いでしょう。資金的に難しければ、同じ家の中で生活リズムをずらし、寝る間際だけ顔を合わせるようにしたり、居住スペースを分ける工夫もできます。
離婚という最終手段を選択する前に、まずは物理的な距離を置いて一息つく時間を作ることが大切です」
――衝動的に熟年離婚を選んでしまい、後から後悔するケースもあるのでしょうか。
「一番多いのは、経済面と体調面の現実に直面するケースです。一人になった方が楽と思って離婚したものの、50代からの再就職は想像以上にハードルが高く、収入面で苦しむ専業主婦の方は少なくありません。
また、更年期以降は自分自身の病気や体調不良、さらには親の介護問題なども重なります。夫がいることで得られていた経済的・精神的な安全網を失ってから“こんなはずじゃなかった”と後悔する方も一定数いらっしゃいます」
――自分の離婚願望が更年期による一時的な爆発なのか、本当に夫婦関係が破綻しているのか見極める方法は?
「夫婦の歴史を過去に遡って俯瞰してみることが有効です。私のカウンセリングでもよく行うのですが、“いつ頃までは関係が良かったか”“夫に対する不満は更年期以前からあった問題か”を整理していきます。昔から根深い問題があって長年考えてきた結論なら引き止めませんが、更年期に入って突然『無理!』となった場合は、ホルモンバランスによる一時的な感情の爆発である可能性が高いです。年表のように夫婦の過去を振り返ることで冷静になれます」
熟年離婚を決断する前に…「3つの処方箋」とは?
――それでは、夫婦で穏やかにやり過ごすために、日頃から意識できる心構えがあれば教えてください。
「実は、そうした日頃の心構えは、夫婦関係においてとても大切です。実践しやすい『心の3カ条』を持つことをおすすめします」
1. 人(夫や妻)を変えようとしない
2. 白黒つけようとしない(正解探しをしない)
3. 生活のペースをどちらかに寄せようとしない
「街で見かける穏やかな熟年夫婦は、お互いに相手を変えることを諦め、良い意味で手放して受け入れています。ファイティングポーズをとって戦おうとせず、適度な諦めと寛容さを持つことが自分自身を楽にしてくれます」
――お互いへのストレスを和らげるために、日々の生活の中でできる工夫もあるのでしょうか。
「自分のパーソナルスペースや好きな時間を充実させることです。趣味や推し活、パートなどで外に意識を向けると、家庭内の些細なことが気にならなくなります。
特に女性の場合、暇な時間があると、どうしても視線が夫に向かい、余計な不満を膨らませてしまいがちです。自分の状態を整えることに主眼を置き、推し活などで良いエネルギーを補充しましょう」
――昭和時代に流行った某台所洗剤のCMのように(笑)、更年期を通り抜けた先に、明るい夫婦関係が待っているのでしょうか。
「更年期の嵐を抜け、ホルモンバランスや自律神経が整ってくると、驚くほど心が丸くなり穏やかになる女性がたくさんいらっしゃいます。あれほど嫌だった夫に対しても、やがて“お互い様だな”と思えるようになり、会話が少なくてもそっと寄り添っていられるような、落ち着いた熟年夫婦の形にシフトしていくことができます。
今はまさに人生の踏ん張りどころ。焦って答えを出さず、自分を労りながら乗り越えていってください」
【北村貴子 プロフィール】
「すまいる相談室」代表カウンセラー。夫婦問題・離婚カウンセラー、メンタルケア心理士。プラットフォーム型カウンセリングの登録カウンセラーとして離婚相談やDV・モラハラ問題に長年従事し、2019年に独立。現在は横浜市を拠点に、国内外から幅広く相談を受けている。夫婦問題・離婚カウンセリング歴10年以上。精神医療の研究にも取り組んでいる。
(取材・文/蓮池由美子)