• #
  • トップ
  • エンタメ
  • カメラはすべて演劇から学んだ。舞台出身、異色のフォトグラファ...

カメラはすべて演劇から学んだ。舞台出身、異色のフォトグラファー「佐藤瑞季」

エンタメ

テレ東プラス

2018.9.26

photographers_20180926_01_11.jpg


フォトグラファー・佐藤瑞季は「ここではないどこか」に誘う作品をコンセプトのひとつとして撮影している。はじめて作品を見た時、一枚絵としての奥行き、フィクショナルで幻想的な魅力を放つ女性の被写体が目に焼き付いて離れなかった。


photographers_20180926_02.jpg


原色やパステルカラーの色彩を鮮やかに使い分け、淡い自然光で覆うようなイメージを形成することで、ある人にはノスタルジアを、また別の人には見知らぬ土地への憧憬を喚起させる。写実絵画を想起させる作品はいずれも、ぬくもりと慈愛に満ちていた。近年では「ear PAPILLONNER」「KENTO HASHIGUCHI」など、アパレルブランドのコレクションルック、舞台のスチールやデザイン制作を精力的に行っている彼女。今まさに活動の幅を広げる佐藤瑞季の作品とともに、彼女の声をお届けしたい。


クリエイタープロフィール:


photographers_20180926_03.jpg


佐藤瑞季/フォトグラファー。1991年生まれ、新潟県見附市出身。桜美林大学にて演出・役者・宣伝美術を学ぶ。大学卒業後は一般企業に勤めながら、フライヤーなどのデザイン、舞台写真やポートレイト、コレクションルックなどの撮影を行なっている。


[instagram] @mimimi310ki
[Twitter] @mimimi310ki



写真は「見せ場」ではなく、流れゆく瞬間を切り取る


──もともと舞台系の大学で演劇を学んでいたとのことですが、その頃から写真は撮っていたのでしょうか?


photographers_20180926_04.jpg


いえ、一度も撮ったことがなかったんです。もともと演出家を目指してたので、学生時代は経験になるかなと思って舞台に立っていましたし、演出もしていましたが、最終的には夢を諦めることになり、卒業後は一般企業に就職しました。


──社会人になってから写真を始めたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。


宣伝美術(舞台・演劇公演などの販促物を作ること)をやっていた時から、写真を使ったデザインが好きで。社会人になってからもフライヤーやチラシのデザインをやっていたのですが、フォトグラファーの知り合いがいなかったんですね。わざわざ探すよりも自分で撮影してしまった方が早いと思い、社会人2年目に安いカメラを買って撮影を始めたら、そっちに需要が出てきたという(笑)。ソニーのα6000なんですけど、実は今でもずっと使っています。


──誰かに教わったり、教本を読んだりしました?


完全に独学です。昔から絵を描くことが好きで、モノを2次元化、平面化したり、俯瞰で描くことに慣れていたので、それをカメラに落とし込んだイメージですね。加えて、演劇の経験がとても役に立ちました。私は風景だけの写真をほとんど撮りませんが、その構図に動いている人が入ると、シャッターを切るタイミングで写真が全然変わりますよね。私の場合は、そこに演劇的な視点が入っているのだと思います。


──演劇での「見せ場」みたいな瞬間を押さえられるということ?


なんだろう...見せ場とかキメ顔があまり好きではなくて。カメラ目線もそうです。「見せ場」ではなくて、流れ行く瞬間を切り取るイメージかなと。他の人がどういう撮影をされているかは分かりませんが、私はモデルさんと、カメラを通して会話をしたくて。それは言葉じゃなくて、ボディランゲージというか...寝たり、動き回ったり(笑)


photographers_20180926_05.jpg

(写真/花沢美音)


──「写真」を撮影するというよりも、ひとつの場面に自分と相手がいて、その空間にしかない何かを写し出そうとしている?


おっしゃるとおりだと思います。あまり詳しくはないのですが、たとえば映画だと、あるシーンを切り取って、また別の角度から同じ内容のシーンを切り取るという感じだと思うのですが、演劇は編集できませんよね。なので「また同じようなポーズをして」というような提案はしません。


──特別にカメラの技法を学ばなくても、演劇・演出の方法論が活きているということですね。何年か続けていると作風が固まってくると思うのですが、光の使い方と色の差し方がとても印象的だと感じます。


撮影をはじめた当初から、作風というかコンセプトはそのままです。今でも特に何かを変えてはいなくて。メッセージを出そう、といった意識も特にしてはいないのですが、一貫して描きたいものはあります。それが、今回の展示のタイトルである『Utopia』、理想郷ですね。誰でも、幼少期に空想するじゃないですか? 漫画や、アニメを観ていて「この世界いいな」って。現実でも、高速道路に乗っていて街並みを見た時に、行きたいけれど行けないな、と思うことはよくあると思うんです。行きたいけれど、行けない場所。そんな空間を写真で描きたい。


photographers_20180926_06.jpg


──写真を見た時、空想の世界に紛れ込んだような印象を受けたのはそのためだったんですね。


私の写真って「日本で撮影しているの?」って質問がたまに来るんですけど、都心でもよく撮ってるんですよね。なので、撮影する空間のなかにマンションやビルはあるんですけど、上手く入れないようにしています。リアリティを無くすというか。


photographers_20180926_07.jpg


──見る側にも、現実から離れて欲しいという気持ちはあるんですか?


ありますし、「本当の現実ではない空間」が写真の外側で広がっていって欲しいんです。たまにないですか? 絵画でも、その奥の空間が見えてくる瞬間が。そういったものを写真にも欲しいし、求めています。



写真の中に、自分の思い描くユートピアが存在する


──想像力に語りかけるイメージですね。色彩や光については、作品を「佐藤さんの作品」にする大切な要素だと思うのですが、意識はされていますか。


photographers_20180926_08.jpg


色は、ある程度撮影した時に今のレタッチがいいなと思ったんです。微調整は入りますけど、基本的なレタッチは変えていないので、ひとつの色を全部に当てはめています。光については、実は全然意識をしたことがなくて......。レフ板も使ったことがないんですよ。


──舞台って室内で光の調整ができますよね。一方で、佐藤さんの写真は屋外で自然光の中、撮影されているじゃないですか。先ほどおっしゃっていた、舞台で学んだものを写真に当てはめることが、ここに関しては難しいんじゃないかと思っていて。苦労はしませんでした?


以前、作・演出で舞台を作った時に、自分自身が舞台を作りあげることの限界を感じてしまったんです。作りたいと思っているものを、演劇に落とし込む技術がありませんでした。それは「室内」という制約のためでもありましたし、屋外という空間の方が自分には合っている、と思いました。舞台の経験というよりも、もともと存在する空間で作品を作ることで、自分のオリジナリティや感性を出すことができるなと。


──原色やパステルカラーの使い分けが印象的なのですが、服や撮影場所を選ぶ時に色は意識されていますか?


photographers_20180926_09.jpg


基本的に場所を先に選んで、そこに合わせて人や服を選ぶので、最初から色を意識することはほとんど無いです。色が素敵です、とおっしゃっていただくことは多いのですが......空間ありきで、色や光が後からついてくる感じでしょうか。


photographers_20180926_10.jpg


──自分の作品を客観的に見るとどう感じますか?


この世界に行きたいなと思いますね。空間に入りたいなと思います。モデルさんは写真に入れますけど「切り取られた瞬間」を自覚することはできませんよね。私は見られるし、切り取ることはできるけど、空間には入れないんですよ。やや抽象的ですが。ずっと、自分の作り出した空想の中で生きていたい(笑)。



女性ってかわいいだけじゃない。メラメラと燃えたぎる内側を知ってほしい。


──ガーリーな写真を撮られている一方で、女性の持つパワーみたいなものを写真から強く感じます。


強さを感じさせる子が好きなんですよ。例えば、服部奈々ちゃんとか根矢涼香とか。


photographers_20180926_01_11.jpg


かわいい空間にかわいらしいビジュアルの子を入れたら、それで終わりますよね。かわいい空間に対して、強い子を入れたいんですよ。強さが垣間見える被写体の子って、たとえば花のかわいらしさを引き立ててくれるんです。女の子って単に「かわいいだけ」の存在じゃないですからね。


さっきの二人については、この写真を撮るまで、かっこいい写真がほとんどでした。でも、撮影前をする前に一度会った時は、よく笑うかわいらしい子だなと思ったんですね。だったら絶対にかわいくて写真を撮ってやろうと思って(笑)。外見だけでなく、内面を映し出すことも写真の役割なのかなと。


──モデルに撮影のオファーをする時はどう準備されています?


依頼する時は、事前にツイートをすごく読みます。モデルさんと自分の相性の良さを確かめるにはツイッターが一番合っていると思っていて。私とモデルさんの間で一番大事にしていることは距離感なので、距離感を見ている感じです。でも、私の写真の中ではモデルさんが一番じゃないんです。一枚絵として成立させるために作っているので、人物は登場するんだけれど、あくまで登場人物であって、写真の中心ではない。


──佐藤さんの写真のもうひとつの特徴だと思うんですが、セクシュアルな構図なんだけれども、女の子がすごくキュートなんですよね。


photographers_20180926_12.jpg


私が被写体に対して、性的なものを感じていないのと、そう見ていないからですね。男性だったら、どうしても異性の裸や下着姿を見た時に、そういう目で見てしまうこともあるでしょうけど、私はそれがないですから。女性のフォトグラファーさんも下着の撮影などをしていますが、下着の撮影をしてもセクシャルだと感じないのは、たぶん(撮影したのが)女性だからだと思うんですよね。


......あとは言ってしまうと、女性のセクシーさを出している作品というのが得意ではないんですよ。女性はそんなに安くないぞと思っちゃうんですね。なんていうかな、消費されて欲しくないんです。裸になることで簡単に消費されて欲しくない。


はらだ有彩さんという文筆家がいらっしゃって、昔話の女の子を現代風にするとこういう思想だったんじゃないか、といったことを書かれているんですけど(『日本のヤバい女の子』,柏書房)、考え方がすごく好きなんですね。昔話に出てくる女性は「全然理解できないけど、まあこの時代はこういう考えが普通だったんでしょう」という短絡的な考えに陥りがちだけど、はらださんは見事に「生き返らせてる」と思います。一生懸命生きた女の子たちの生き様が垣間見えるんですね。なので、実は内面はメラメラ燃えているんだぞという、その子自身の生き様を出していきたい。


──今回、インスタレーション作品を制作している空間企画と、佐藤さんとのコラボレーションで展示をされるじゃないですか。どういうきっかけで企画がスタートしたんですか?


photographers_20180926_13.jpg


一年くらい前、空間企画さんがフランスのアヴィニョン演劇祭への出展をする時に、フライヤーとスチール写真を頼まれたんですね。その時に、「写真展とかやらないの?」という話になって、「やるんだったら舞台空間でやりたいですね」とお返事してから、今回の企画をやることになりました。あとは、白壁に写真を飾るという企画をやりたくなかった。


──空間企画とコラボすることで、どんなものが生まれるのかという期待はありましたか?


「ユートピア」というさっきの話と......あとは、ディズニーランドみたいになったらいいなって。


──ディズニーランドみたいとは?(笑)


ですよね(笑)。つまり、非現実的なものにしたいということです。ランドに行ったらミッキーの耳を付けてても、誰も「は?」みたいにならないじゃないですか。でも舞浜駅に着くと一気に恥ずかしくなる。そういうことです。


......それと、いくつかのテーマに分かれた展示があるんですね。私の写真に合わせた空間がいくつか点在していて、という感じです。舞台のような空間を作りたかったので、写真が役者だと思っていただければ。あと、舞台って敷居が高いじゃないですか。映画みたいに一ヶ月くらいやっているわけではないし、なんとなく入りにくいし。なので、この展示をきっかけに、舞台に行きやすくなればいいなって思う。舞台ってこんな感じなんだと、少しでも感じて欲しいんです。結局、私の写真の土台はすべて舞台なので、その恩返しをしたいから。


photographers_20180926_14.jpg


舞台空間で体験する写真展のインスタレーション 佐藤瑞季と空間企画のコラボレーション『Utopia』が2018年9月23日(日)~10月8日(月)に、「STUDIO もぐろう」にて開催。


写真展×インスタレーション。2つの要素が同じ空間に集結し、新しい角度での写真展・舞台空間を創り出す。写真展と舞台を同時に体験できるインスタレーション、ぜひ足を運んでみてほしい。詳細は佐藤瑞季のTwitter(https://twitter.com/mimimi310ki)から

※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。

一緒に読まれています!

この記事を共有する

人気の記事POPULAR ARTICLE

    おすすめコンテンツRECOMMEND CONTENTS

    カテゴリ一覧