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本の虫以前に、”本屋の虫”になってほしいー下北沢「BOOK SHOP TRAVELLER」が考える本屋の醍醐味

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テレ東プラス

2018.10.18

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今年8月、下北沢にオープンした「BOOKSHOP TRAVELLER」。なんでも「観光のついでに本屋に行く」ではなく、「本屋のついでに観光に行く」をモットーに"本屋を紹介する本屋"として開かれた本屋だ。下北沢といえば「本屋B&B」に「クラリスブックス」「古書ビビビ」など個性的なお店が揃うエリアでもある。この本屋がひしめくエリアにお店を開いた背景・理由とは? 本屋自体を紹介するという新しい商いのスタイルを実践するBOOKSHOP TRAVELLER店長・和氣正幸さんに話を聞いた。


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プロフィール:

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(写真/今井駿介)


和氣正幸さん/ライター。1985年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2010年よりサラリーマンを続ける傍らインデペンデントな本屋を事細かにレポートするブログ「本と私の世界」を開設。現在は独立して、「本屋をもっと楽しむポータルサイト BOOKSHOP LOVER」の運営を中心に、"本屋入門"や"小さな本屋のつくり方"などのイベントも開催。"そのほか書評で楽しむ読書コミュニティ・本が好き!"の運営、『PRESIDENT WOMAN VOL.4』への寄稿など本屋と本に関する活動を多岐にわたり行う。著書に『東京 わざわざ行きたい街の本屋さん』(G.B.)、『日本の小さな本屋さん』(エクスナレッジ)、共著で『全国 旅してでも行きたい街の本屋さん』(G.B.)がある。



さながらセレクトショップ。全国の本屋に棚貸しをすることで、本棚を見る面白さを啓蒙する


──和氣さんはこのお店を開店するまでにどんなヒストリーがあるのでしょうか。


まだ会社員だった2010年から「BOOKSHOP LOVER」という全国各地にある本屋を紹介するサイトを立ち上げたんです。2015年に独立してフリーのライターとして活動するまではほそぼそとサイトの運営をやっていました。ある時「下北沢B&B」で編集者の河尻亨一さんを司会に迎えて行う"働くキュレーターラボ"という勉強会に受講生として参加させてもらったときに、ここで知り合った仲間たちがBookshop Loverを見てくれていて。なんだか、自分の知識が役立ったように感じられて。更に力を入れてサイトやブログに打ち込むことになったんです。活動が忙しくなっていくにつれて、独立しても大丈夫だと思いましたし、もっとライターとして本屋を紹介できるようになりたいと思うようになったんです。時をほぼ同じくして、東京の本屋を紹介する「街の本屋さん」の第一冊目を作らないかと出版社さんからお声掛けいただいて。


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ちょうどこの本の第二弾として『全国旅してでも行きたい街の本屋さん』の企画を取材で6月頃まで全国津々浦々の本屋を巡って取材していたんです。それがまぁ、楽しくて楽しくて。丁度取材が終わった頃に、「お店やらない?」ってオーナーさんに話されて。


引き受けた理由としては、ここが本屋としてだけでなく、カフェとしても機能していて。その奥に「Bookshop Traveler」がある。このように複合的な施設になるのであれば、負担も減りますしいけるのかもしれない"と思えたんです。それで、自分のかねてからの活動に紐づけて、"本屋を紹介する本屋"をはじめることにしました


――そもそもそれだけ本屋に惚れ込んだのにはどんな経緯があるのでしょうか?


大学時代に僕は高田馬場の「BOOK OFF」でバイトをしていた経緯があります。本来なら、バイトに本棚を作らせるお店もないと思うのですが、たまたまそこのお店が僕も本棚を作らせてもらえるくらいに緩いところだったんです。その作業が本当に楽しくて楽しくて。だから休日もバイトの棚作りの参考にあなりそうな"いけてる本棚"を求めて、本屋を巡るような学生でした。当時の彼女(今の嫁)に「図書館でよくない?」って言われても「よくない」って言い返していましたよ(笑)。


――全国津々浦々の本屋を紹介するサイトを運営していたにもかかわらず、自分自身のお店をやることに対して抵抗はなかったのでしょうか?


そうですね。自分としてはお店を自分が運営すると、様々なお店にいけなくなってしまう。だから、正直どうしようかなって悩みました。でも、お店は基本的にカフェと併設で、週4くらいでもOKという話だったので、じゃあやるかと。でもせっかく自分が本屋をやるなら、「とにかく本屋に行け」って言いたいじゃないですか。だから旅行代理店みたいな役割を自分に見出したんです。


――本屋が本屋を宣伝するというのは、一見矛盾するようですが...(笑)。


いや、全然そんなことはなくって。そもそも"本屋によって、置かれている本のセレクトが個性が違う"ってことを認識している人はあんまり多くないんですよ。だから「BOOKSHOP LOVER」の活動を通じて知り合った本屋に、棚貸しをしている
んです。今25店舗くらいに貸していて。これから彼らに1日店主みたいなことをやってもらえたら嬉しいなぁとも考えています。


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"カフェ巡り"くらい"本屋巡り"をポップなものにしたい


──本棚に惚れ込んだのには、どんな理由があるのですか?


本屋の本棚って、ジャンルごとに関連する本が隣に置かれているから、隣にあるものを読めば知識が連なっていくじゃないですか。背表紙のタイトルだけでも色んなことを教えてくれますよね。僕の場合、たとえば"自然科学"や"建築"といった自分が得意じゃないジャンルの棚に遭遇すればするほどテンションがあがってしまって(笑)。「自分が知らない世界がこんなにも広がってるんだ!」ってことに興奮を覚えてしまうんです。


――無知の知、ってやつですね。本棚を見ると、その本屋の思想が出るものなんでしょうか?


いや、誤解している人も多いかもですが、そんな単純なものではないんです。。それは街の本屋はお客さんとのコミュニケーションで成り立っているから。


個人書店は棚で思想を語らない。きちんとその街の人・お店に足を運ぶお客さんが求めることに、反応していく。それでも、選んでいるのが個人である以上、どこかしらに店主の思想は表れているんです。これってすごいことじゃないですか?


千駄木の『往来堂書店』の初代店長が "文脈棚"という言葉を作ったのですが、、「往来堂書店」自体も別に棚で思想を語ってない。むしろ千駄木という街に往来する人が求めることに反応している。そんなふうにして、足を運ぶ人の求める知識に紐付いたところで街の本屋は成り立ってるんですよね。


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全国から集められた個性的な本屋(イベント出店のみの店も含む)の品々


だからまずはそのことを知ってほしい。本を沢山読んで博識な人は世の中に沢山いるし、本の深みにはまらせるのは本屋の役割。本屋をやっておきながら矛盾するようですが、僕がやりたいのはそれよりもっと前の段階なんです。だから全国の本屋への橋渡しをするような人になりたいなって。相談してくれれば、お店の紹介もしたいし、アテンドツアーもしたいくらいです。


――本屋への愛をすごい情熱で語ってくださいますよね。それだけ本屋の楽しみ方をもっと知ってほしいんですね。


そうですね。僕の野心としては、本屋というもの自体をもっとキャッチーでポップなものに見せたいという気持ちが強くて。たとえば、デートで「カフェ巡り」っていうと「おしゃれ!」「行きたい!」って人も多いのに、「本屋巡り」というと「え、何言ってんの?」って反応になってしまうじゃないですか(笑)。それを変えていきたい。あなたの街にもこんなにも個性的なお店があるんだよということを知ってもらいたい。そうすれば個性的な個人商店が残っていくのかなって、希望的観測を持ってるんですよ。

BOOKSHOP TRAVELER
住所:東京都世田谷区北沢2丁目26−7アパートメントストア1F
営業時間:木~日 12:00〜20:00
[Facebook]https://www.facebook.com/BookshopTraveller/
[Twitter]https://twitter.com/Bst_BSL

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