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バーフバリなど話題作多数のインド映画は他と何が違う?プロが教える「初心者向けインド映画講座」

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テレ東プラス

2018.12.16

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(Photo by T.Matsuoka)

インド映画と聞くと「歌って踊る映画しか作らない」「上映時間が長い」などと言われています。しかし、歌って踊らない映画もあったり、長時間でなかったり、と巷の噂が異なる場合も。ここで改めてインド映画とはなにかを整理整頓しなければ...。ということで今回はインド映画の情報はなんとな~く知っているけれど、詳しくは知らない初心者に向けてインド映画講座を開講。これを読めばインド映画のことがちょっとは分かる......はず。

「様式の特徴」と「産業形態の特徴」が他国と異なるインド映画

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今回の初心者向けのインド映画講座の講師を務めていただけるのは松岡環さん。
1976年からインド映画の紹介と研究をはじめ、インド映画関連の著書を多数、執筆・監修。映画字幕の作成も担当するなど、日本におけるインド映画の第一人者です。

松岡さんによるとインド映画は「様式の特徴」と「産業形態の特徴」の2つが他国の映画と大きく異なるそうです。

インド映画の様式の特徴

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(「きっと、うまくいく」より)

(1)歌と踊りが入るのは当たり前
「歌って踊るシーンが入る、いわゆる『ミュージカル映画』がたくさん製作されています。でも、以前は1作品につき5~8ほどのミュージカルシーンがあったのですが、いまは2、3曲しかない場合も。日本でヒットした『きっと、うまくいく』は2曲だけでしたね。なかにはミュージカルシーンがない映画も作られているんですよ。

ミュージカルシーンが少なくなったとしても、インド人にとって歌は大切なエッセンス。ミュージカルシーンがない場合はBGMとして歌が流れるんです。ミュージカルと聞くと日本では特殊なジャンルに入りますが、インド人からしたら『ミュージカルシーンがないことが不思議。インド人にとって歌と踊りがあることが普通だから』という考えなんです」

(2)「ナヴァ・ラサ」と呼ばれる9つの情感
「色気(ラブロマンス)」「笑い(コメディ)」「哀れ(お涙頂戴)」「勇猛さ(アクション)」「恐怖(スリル)」「驚き(サスペンス)」「増悪(敵役の存在)」「怒り(復讐)」「平安(ハッピーエンド)」

「ナヴァ・ラサ」と呼ばれる上記9つの情感を入れてストーリー展開をするのがインド映画。

「かっこいいヒーローと美しいヒロインがいて、敵役と対立する。ストーリーはスリルとサスペンス、時々お笑いという内容で進み、敵役がヒーローの行く手を妨害するけれど最後はハッピーエンド。こういった筋書きをインド映画は踏襲しており、多種多様な人を満足させる力強さがあります。でもこれって娯楽映画の基本ですよね」

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(「きっと、うまくいく」より)

(3)上映途中に休憩が入る。短い映画だとしても
インド映画の上映時間は長いことで知られています。しかしこれはひと昔前の話だそうです。

「ひと昔前は、1000人規模の映画館で1本の映画を、12時30分開始、15時30分開始、18時30分開始、21時30開始と3時間ごとに上映するスタイルでした。3時間の中身は、上映時間2時間30分、休憩10分、入退場20分。でも91年以降の経済発展をうけて変わってきました。インドのIT産業や自動車産業、バイオ産業等の躍進により、中流階級がお金をもちはじめ、シネコンを常設するショッピングモールが誕生。シネコンって上映開始時間がバラバラでも問題ないでしょ。だから上映時間が2時間30分である必要はなくなり、それで上映時間がだんだんと短くなりました」

上映時間が短くなっても、変わらないものもあります。それが休憩時間。

「休憩時間(インターミッション)は必ず入ります。たとえ上映時間が90分でも休憩はマスト。これは休憩中にスナックを食べたりドリンクを飲んだりしないと気がすまないインド人に気質によるものです。歌舞伎の幕間のような感じでしょうか。映画館としても飲食販売で売上が上がるので外せない習慣なんです」


インド映画の産業の特徴

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(Photo by T.Matsuoka)

(1)年間の映画製作本数が世界一
年間の映画製作本数が世界一のインド。2015年は1907本が製作され、2位のナイジェリア(997本)と900本近くの差がありました。

(2)多言語製作であり複数の映画製作中心地がある
「インドは多言語国家です。そのため言語によって映画産業の中心地は異なります。最もマーケットの大きい業界はボリウッド。ここはムンバイを中心都市とするヒンディー語映画を作るところ。チェンナイで製作されるタミル語の映画業界はコリウッド、ハイデラバードで製作されるテルグ語の映画業界はトリウッドと呼ばれています。そのほかにもカンナダ語、マラーティー語など41言語の映画が作られているんですよ!」

このように各映画業界が何百本もの映画を製作するため、インドは世界一の映画製作国になったのです。

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(Photo by T.Matsuoka)

(3)映画は強大な影響力を持つ
「エンタメ業界やメディアにおける映画の影響力は強大です。テレビでは映画情報が溢れ、音楽ランキングは劇中歌が独占する。映画はインド人に多大な影響を与えているんです。インドでは映画マーケットは大きくなりつづけ、斜陽になることは想像できませんね」

(4)自国映画の占有率が高く、ハリウッド映画はあまり観ない
「2015年のインド国内で鑑賞された映画のうち93%は自国作品でした。日本は54.9%なので、いかに占有率が高いかが分かります。インドの方にハリウッド映画は観ないのかと聞いたところ『ハリウッド映画は私たちの心情に沿わない。登場人物の感情もストーリーもドライなので共感できないんです』といわれたことがあります。インド人の琴線に触れる作品はインド映画なんですよね。だからこそ高い占有率になるんだと思います」

(5)海外に輸出されている
「世界各国にインド映画は輸出されています。実は全米興行収入トップ10に入ることもあるんですよ。特に東南アジアでは人気。なぜ世界中で支持されているかというと、『ナヴァ・ラサ』を基本とした普遍的な娯楽要素があるから。揺るぎない面白さに世界中の人々が魅力されているのだと思います」

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ところ変われば形態も異なる。
インドと日本では映画の在り方が大きく異なりますね。
最後に松岡さんにインド映画の魅力をお伺いしました。

「心躍るミュージカルシーンがあり、あらゆる人を満足させる娯楽要素があり、華やかなスターもいる。見終わったあとの幸福感・充足感はなにより素晴らしい。インド映画はインド社会のあらゆる側面を表現しており、インドを知ることもできます。この機会にぜひインド映画に触れてみてくださいね」

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(インドを代表する映画スター、アミターブ・バッチャンの若き日の写真。Photo by T.Matsuoka)

【プロフィール】
松岡環(まつおか・たまき)
1949年兵庫県生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学)のインド・パキスタン語科卒業。1976年よりインド映画の紹介と研究を開始。インド映画研究の先駆者であり、第一人者でもある。 インド映画を中心とするアジア映画を、執筆や講座等を通じて紹介する活動も行っている。字幕担当映画に『ムトゥ 踊るマハラジャ』『パッドマン 5億人の女性を救った男』など。 著書に『アジア・映画の都』(めこん)、監修・編集に『インド映画完全ガイド マサラムービーから新感覚インド映画へ』(世界文化社)など。
ブログ「アジア映画巡礼」https://blog.goo.ne.jp/cinemaasia

【参照元】
・「Central Board of Film Certification」(中央映画検定局)
https://www.cbfcindia.gov.in/main/
・『インド映画完全ガイド マサラムービーから新感覚インド映画へ』(世界文化社)

【画像提供】
「きっと、うまくいく」(DVD&Blu-ray好評発売中)
価格:DVD は4,200円 +税、Blu-rayは5200円+税
発売・販売元:ハピネット
(C)Vidhu Vinod Chopra Production 2009.All rights reserved

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