プロが教える、手っ取り早くインド映画を理解するための4作品

急速な成長を続けるインド経済。2019年秋にユニクロがインド初出店することを発表するなど、進出を目論む企業があとを絶ちません。一層の注目を浴びるインドには、日本と異なる文化や習慣があります。そういったカルチャーギャップを学ぶ最適な教科書が映画なんです。
「インド映画はインドのあらゆる側面をみせてくれます」と語るのはインド映画研究の第一人者である松岡環さん。今回は松岡さんにインドを学べる映画4本を紹介していただきました。この4本を観ておけばインドが分かる...はず!
「バーフバリ 伝説誕生」「バーフバリ 王の凱旋」

「『バーフバリ 伝説誕生』『バーフバリ 王の凱旋』の2部作からなる、3世代に渡る数奇な運命を描いた空前絶後のファンタジー英雄譚。私は『伝説誕生』の主人公が滝にのぼるシーンをみて、やられた!と思いました。ものすごいCG映像が雄大さを物語っていましたよね」
「ストーリーは古代インドの叙事詩『マハーバーラタ』を元にしており、インド文化の根源もここで学べます。インド映画は『ナヴァ・ラサ』と呼ばれる9つの情感を作中に込めて作ることを基礎としています。この作品はこういった基礎を踏襲しつつ、ハリウッド映画並みの最新CG映像も入れ込まれ、古きよきインド文化と最先端技術が融合したまさに現代のインドを体現した作品といえますね」
「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」

「インド映画といえば歌と踊りが織り込まれたミュージカル映画というイメージが先行すると思いますが、経済発展を続けるなかでインド映画の形態が変わってきました。実は歌と踊りのない映画も作られているんですよ。そんな時代の中でこの作品は最後の"歌と踊りの優れた作品"です」
「輪廻転生というインドらしいストーリーに加え、インド映画のスーパースター、シャー・ルク・カーンと人気女優ディーピカー・パードゥコーンが輝いている。インド映画業界はスターシステムが確立しており、国民はスターが大好き。人気者が主演する作品を見ることでインド人の好みを知ることもできます」
「きっと、うまくいく」

「エリート大学に入学した3人のインド人学生の友情物語です。とにかく脚本が素晴らしい。監督、うまい!としか言えないですね。これまでインドの人気作は恋愛や出世といった問題を扱うことが多かったんですが、本作は教育、貧困、階級といった現代インドが抱える問題をきちんと描いている。しかも笑える。ラストのどんでん返しも気持ちよかったですね」
「私、ラストの湖のシーンが大好きで、美しいんですよ。日本でもヒットしましたが、歌と踊りのシーンが2曲しかない(通常は5~8曲ある)というインド映画っぽくない作りをしたことも日本国民に受け入れられた要因かもしれませんね」
「家族の四季」

「舞台となるのは、実業家ラーイチャンド家。仲違いしてしまった家族が関係を修復するまでの軌跡を描いた壮大なファミリードラマです。インド人にとって家族はなによりも大切なものであり、世界の中心。家族からコミュニティができ、コミュニティから州ができ、州が集まって国ができ、愛国心が生まれる。家族を中心にして自分の世界を広げているんです」
「本作のお父さんもよかったですね。お父さんは当初、長男が連れてきた結婚相手の女性に対して『家柄に問題がある』と受け入れなかったんですよ。でも最後、それまで従順だったお母さんに自分の間違いを指摘され、人柄で判断することが家族の幸せになると気づき、その女性を家族として受け入れました。家族の幸せのために自分を改めたところにインド人がいかに家族を大切にしているかが分かりますね」
女性賛歌の作品がどんどん作られている
経済発展をうけてインド社会はどんどん変化しており、映画もそれに従って変わってきていると松岡さんは語ります。
「これまでインドでは女性は不当な扱いを受けていましたが、女性を大切にしよう、女性は偉大なんだっていう作品がどんどん作られています。安価な生理用ナプキンの製造・販売に奔走した男性を描く『パッドマン 5億人の女性を救った男』は、妻を大切に思う気持ちを全女性に広げた男性の話で、まさに女性賛歌と言っていい作品です」

(「パッドマン 5億人の女性を救った男」)
抱腹絶倒のストーリー、きらびやかなミュージカルシーン、華やかなスターなど見どころもたっぷりありますが、時代の声を如実に反映するインド映画の移り変わりも楽しめるインド映画。どの映画を何を見ようかな~、と悩んだらインド映画にしてみては?
【プロフィール】
松岡環(まつおか・たまき)
1949年兵庫県生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学)のインド・パキスタン語科卒業。1976年よりインド映画の紹介と研究を開始。インド映画研究の先駆者であり、第一人者でもある。 インド映画を中心とするアジア映画を、執筆や講座等を通じて紹介する活動も行っている。字幕担当映画に『ムトゥ 踊るマハラジャ』『パッドマン 5億人の女性を救った男』など。 著書に『アジア・映画の都』(めこん)、監修・編集に『インド映画完全ガイド マサラムービーから新感覚インド映画へ』(世界文化社)など。
ブログ「アジア映画巡礼」https://blog.goo.ne.jp/cinemaasia
【画像提供】
『パッドマン 5億人の女性を救った男』
12月7日(金)TOHOシネマズシャンテほかにてロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント