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世界のエンタメ最前線:マック・ミラー、XXXテンタシオンらの訃報から見る「2018年の音楽シーン」総括

エンタメ

テレ東プラス

2018.12.29

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ゲーム、アニメ、漫画、J-POP、アイドルなど、独自のエンターテインメントを生んでいる日本。その一方で世界のエンターテインメント情報が不足していると見る向きも少なくない。ここでは、そうした世界のエンターテインメントの最新動向を、映画・音楽ジャーナリストとして活躍する宇野維正氏をナビゲーターに迎えお届けしたい。今回のテーマは、訃報から見る2018年の音楽シーン。2018年はどんな一年だったのでしょうか?

宇野維正
1970年生まれ。東京都出身。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集部を経て、映画・音楽ジャーナリストとして活動。著書に「1998年の宇多田ヒカル」(新潮社)、「くるりのこと」(新潮社)、「小沢健二の帰還」(岩波書店)、「日本代表とMr.Children」(ソル・メディア)がある。


ホープの死が相次いだ2018年。白人ながらヒップホップコミュニティに愛された重要人物マック・ミラーとは




ポイント
1.各音楽シーンの未来を作るはずだったホープの死が相次いだ2018年
2.若者の鬱など、精神的な問題が表面化している

──2018年も多くのミュージシャンが亡くなりました。

例年のグラミー賞授賞式での追悼コーナーが象徴的ですが、ロックンロール誕生以降のポップミュージックだけでも50年、60年とここまで歴史を重ねてきたわけで、必然的に毎年多くの有名なベテランのミュージシャンが亡くなっていきます。ただ、2018年に顕著だったのは、各シーンのこれからを背負っていくはずだった若いミュージシャンが相次いで亡くなったことです。4月にはEDM界のトップDJだったアヴィーチーが28歳で亡くなり、6月には白人のティーン層を中心に絶大な人気を誇る、エモラップと呼ばれるジャンルで最大のスターだったXXXテンタシオンが20歳で亡くなりました。2月にベルリンの自室で亡くなっているところが発見されたヨハン・ヨハンソンも映画音楽やポスト・クラシカルの未来を担う巨大な才能で、48歳というのは、彼が活動していた音楽の領域をふまえるとあまりにも早すぎる死でした。

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(Photo: Christian Weber)

──そんな中でも、9月に26歳で亡くなったマック・ミラーには、大規模な追悼コンサートが開かれるなど、たくさんのミュージシャンたちからその死を惜しむ声が上がりました。彼がそこまで愛された理由どこにあったんでしょう?

過去にはビースティ・ボーイズやエミネムのような黒人のリスナーからも一目を置かれてきた存在もいましたが、マック・ミラーほどヒップホップのコミュニティに深く属していた白人のラッパーはいなかったと言っていいと思います。15歳の頃に(フリー音源である)ミックステープでデビューして、ミックステープのリリースを重ねることで注目されるようになってきた彼のキャリアは、現在のラップシーンにおける典型的なブレイクの道筋で。その音楽から伝わってくるヒップホップ・カルチャーへの造詣の深さやミュージシャンシップの高さも、同業者から信頼を得てきた大きな理由になっています。

バッシングを受けた元恋人アリアナ・グランデ。感動のアンサーソング「ザンキュー、ネクスト」




──マック・ミラーはラッパー/ミュージシャンとしてはどのような特徴があったのでしょうか?

近年のラップ・ミュージックは、ブラック・ミュージックの歴史の流れにあるヒップホップという枠組を超えて、完全にポップ・ミュージックのメインストリームとして世界的に支持を広げています。そんな中で、マック・ミラーは白人でありながらもブラック・ミュージックのルーツをとても大切にしていて、ヒップホップ・コミュニティの内部と外部を音楽的に繋ぐことができる存在だったという意味でも、稀有なアーティストでした。

──アリアナ・グランデの元カレだったこともあり、アリアナに彼の死の責任を転嫁するバッシングもあったようですが。

亡くなった当初はそうでしたね。それは、好むと好まざるとにかかわらず私生活も一つの売り物になってしまう現在のセレブリティ・カルチャーの負の側面と言えるでしょう。ただ、アリアナ・グランデは自身のニューアルバムを出したばかりだったのに、そのバッシングに対するアンサーソングにもなっている新曲「サンキュー、ネクスト」をリリースして、同曲は全米ナンバーワンの大ヒットとなるだけでなく、各主要メディアから「2018年のベスト・ソング」と大絶賛されることになりました。表現の力によって自分の心に負った傷を癒すだけでなく、世間のノイズを一掃して、自分自身を祝福までしてみせた、アリアナ・グランデの表現者としての誠意とそのタフさには驚かされましたね。




──若いミュージシャンが相次いで亡くなっている。その背景にはどのような問題があるのでしょうか?

XXXテンタシオンは強盗による射殺。マック・ミラーは、昨年11月に亡くなったリル・ピープ同様に薬物のオーバードーズ。アヴィーチーは当初死因は伏せられていましたが、先日、自殺であったことが遺族から発表されました。なので、一概に言うことはできないのですが、いずれのミュージシャンも薬物やアルコールに強く依存していたことは事実として明らかにされています。また、彼らが合法、違法を問わず薬物やアルコールに依存するようになっていった背景には、鬱に代表される精神面におけるトラブルを抱えていたという共通点があります。若者の鬱、薬物やアルコールへの依存、自殺といった問題は、今、海外でとても大きな社会的な関心を集めています。また、リル・ピープやXXXテンタシオンに代表されるエモラップのシーンにおいては、露悪的な表現も含め、それらがリリックにおける一つの主要なテーマにもなっています。社会環境や生活環境は異なるものの、日本の若者にとっても、それらの問題は潜在的に共有しているもののように思います。




それと、今回ここで取り上げたマック・ミラー、そしてXXXテンタシオンは、日本語だけの情報環境にいる人には想像がつかないくらい大きな影響力を持っているアーティストでした。彼らの死は、例えば90年代におけるカート・コバーンの死のように、音楽に限らず今後のポップ・カルチャー全体の方向を左右する、とても重要な意味を持つことになっていくでしょう。同時代のポップ・カルチャーを知るというのは、ただ同時代に何が起こっているかを知るためだけでなく、そのような歴史の先にある未来のカルチャーを理解するためにも必要なことなんです。

※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。

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