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人見知りにとって何よりも苦痛なもの、それは人とのコミュニケーション。気の利いたことひとつ言えずに自己嫌悪を覚えることもしばしば。気まずい汗と時間が流れるなか、いつも思ってきました。「自分に何かすごいことができたら場が持つのに」。
そう、マジックとか......!
そこで今回はマジック界のレジェンド・Mr.マリックさんにお願いして、初対面の人とも打ち解けられる超魔術ことマジックを習いに行きました。
一般人から各界の著名人、またマジックを一度も見たことがない民族にまで、多種多様な人たちを驚かし、ショーを盛り上げてきたマリックさん。マジックそのものだけではなく、マジシャンならではの話術や空気作りのテクニックも参考になるものばかりです。いつでもマジックを持ち歩いて、目指せ・円滑なコミュニケーション!
論より証拠。人と打ち解けるマジック、見せてください!
――今日は、「日常でのコミュニケーションで役立つマジック」というテーマでお話をお伺いできればと思います。さっそくですが、今回教えていただけるマジックを披露してくれませんか?
分かりました。......コミュニケーション、30年やってきても難しいなと思います。「コミュニケーション」という言葉そのものを日本人が使い出したのも、30年たってないぐらいじゃないですかね。
外国に行って、言葉が通じなくて困ったところからコミュニケーションって言葉が使われ始めて。それまで日本人同士では「コミュニケーション」という言葉はあまり使われてなかったんですよ。みんな仲良しだったんです。そうでしょ?
――そうですね(あれ? マジックは?)。
僕は二十歳ぐらいの時に海外へ行って、本場のマジックを勉強してたんですよ。英語がしゃべれないのにマジックが好きってだけでね。マジックを見せあうのに言葉はいらないですから。そうして、マジックのホームベースみたいなところに出かけて行っては、マジックが好きな人たちと交流していたんですよ。
その会場にね、現地に住んでらっしゃる日本人がふっと来たりするんですよ。「日本人ですか」っていったら、「日本人です」って言うから。そういうの安心するじゃないですか。
――安心しますね、日本人同士は(マジックは......?)。
そういうときって、日本人だという共通点だけで、初めて会った人でもすぐ友だちになれるんですよ。これは実は、日本人という共通項があったおかげで急に親しくなれたんです。ということは、人間っていうのは、コミュニケーションを取ろうと思ったらまずは共通点探しなんですよ。
海外にいるときなら同じ日本人同士。国内なら例えば、私は岐阜県生まれ。岐阜県生まれの人って東京なかなかいないんですよ。東京で岐阜の人と会うとものすごく親しくなるの。ふっと心を掴める一つの例ですよ。
ね、今日初めて仕事で出会うというのも、これはこれで共通項が生まれてるんです。初対面の人に何をしゃべっていいかわからないときは、共通のなにかひとつを見つけたらいい。例えばほらこうしてね、自分の親指の先をぎゅっとつまめますか?
――はい。
自分の親指を、はい、そうです。親指の先が真っ赤になりますよね?
――なります。赤いです。
なりますよね。こんなに赤いでしょ。これが本当のその人の唇の色なんですよ。それで人間の指って不思議でね、このくらい真っ赤になると親指っていうのは、
取れるんですよ!!
――ぎゃー!!!!!!!!!!!
で、こうやるとまた生えてくるんですよ。
マジックです。ありがとうございました。
(取材スタッフ一同爆笑)
マジックの「驚き」を使って相手を笑わせてみよう!
――(爆笑しながら)完全に不意打ち! すごい、めちゃくちゃシンプルなのに笑っちゃいました!
面白いでしょ? 実はね、人間は驚くと笑う動物なんですよ。赤ちゃんに「いないいないばあ」ってやるじゃない。あれ驚いているんですよね。驚いて笑ってるんです。だから「まずはなんでもいいから笑わせろ」がコミュニケーションのキーワードなんですよ。そして、マジックにはその笑わせる力があるんです。
――実際に笑った後だと、ものすごく説得力があります。
漫才とか落語は、笑う気がないとなかなか笑えないんです。落ち込んでるときにバラエティ番組を見ても、逆に冷めることもありますよね。でも「驚く」っていうのは関係ない。見た人を現実と違う世界へばっと連れて行く力があるんです。それがマジックの面白さです。コミュニケーションのツールとして、最高のものなんですよ。
笑うと急に、笑わせた人に興味を持ってきますから。人を楽しませるイコール笑わせるってことです。笑わせるものひとつ身につけておくといいですよ。今のマジックも指しか使ってないからいつでもできます。
親指が取れるマジック、解説します
――ものすごくシンプルなマジックだとは思うのですが、コツと手順を教えていただけますか。
このマジックをするときには、話術がいります。いきなり指が取れるなんていったってダメですから。まずは「こういうことできる?」とまず訊くんですよ。これは「催眠話法」と言って、相手に同じ動きをさせるテクニックです。
「こういうことできる?」って訊くと相手も「できるわよ」ってくるでしょ? 「やってね」と言っても「なんで?」って否定されてしまいます。そうじゃなくて、「親指こうやってぎゅって掴める?」って質問する。「赤くなりません?」って言ったら相手も「赤くなります」と答える。「それがほんとの自分の唇の色なんですよ」と言って、相手が感心しているタイミングで「それずっとやってると指が抜けるんだよ!」とすかさず!
――ものすごくシンプルなんですけど、本当に驚きました......。
やりかたはまず、右手の人差し指をぎゅっと曲げる。この人差し指の尖端を、左手の親指に見せかけるんです。
左手の本物の親指は内側に曲げて隠しておけばいい。で、「このくらいぎゅーってつまむ赤くなるでしょ」と言いながら、(偽の親指の先を)相手の顔の方に向けて、「うわっ!」と。
で、右手の指で、隠していた左手の親指をぎゅーっと引いて伸ばすんですよ。これで「ああまた生えてきた」って。これで完璧ですよ。
――今回マリックさんが教えてくださるマジックが難しくてできなかったらどうしようかと不安でしたが、あっという間にできました。
いきなりやると「何?」って思われちゃうから、まずはしばらく話をして、何か共通点を見つけてこちらに少し興味を持ってくれたときにやってみたほうがいいですね。で、笑ったらもう友だちですよ。
日本人がコミュニケーション下手だっていうのは、まず相手を笑わせようと思ってないんですよ。真面目な方向に行っちゃって、せっかく出会ってもきちっと挨拶して終わり。なんのコミュニケーションもしないまま別れちゃう。良い人に見られたいとか、そっちの方に気持ちが働いちゃったりね。でも笑うっていうのは心を開くってことですから。ほら、僕たちお互いもう、何しゃべっても大丈夫なんですよ!
――本当にそんな気分です。ありがとうございます!
【プロフィール】
Mr.マリック/プロマジシャン
1988年、伝説のテレビ番組『11PM』(日本テレビ系列)で衝撃的デビューを果たすやいなや、「超魔術」と呼ばれた超絶技巧マジックでお茶の間を席巻。「きてます」、「ハンドパワー」等の流行語を生み出した。その後もテレビやCM、マジックショーなど幅広く活躍し、2019年に活動30周年を迎える。
[Twitter] @Mr31481542
[公式HP] http://www.maric.jp/