めちゃくちゃ怒っているミスiDファイナリスト・おーえる。ハサミを持った理由は「女の子により良い未来を残したい」

2019.02.01

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女の子らしさという固定概念にとらわれず、一人ひとりの個性に目を向けた新しいアイドルオーディション「ミスiD」。応募者3500名のなかからファイナリストに選ばれたおーえるさんは、女の子のために良い未来を作るために自らを「女の子解放運動家」と名乗る。

「女の子を取り巻く現状を変えたいけれど、私の言葉は届かない」。おーえるさんの抱える怒りと、その根元にあるものについて伺った。

「何考えてるかというと......すごい......怒ってるんですよ」






アイドルオーディションのカメラテストに、ハサミを持って登場した女の子がいる。審査員の前で彼女はおもむろに語り出す。

「何考えてるかというと......すごい......怒ってるんですよ」

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「前仕事をしていたときに......この服着て仕事してたんですけど、」

何度もためらながら、自分のブラウスに刃を入れる。

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「偉い人の横に座ってお酒つがなきゃいけなかったり、いやらしいこと聞かれてそれでも笑って答えなきゃいけなかったり。それがすごく嫌で。でも嫌って両親に言ったり、周りの人に言ったら、うまく交わせとか、もっとちゃんとスルーできるのがいい女だっていうように言われてしまって」

少し切っては手を止めてぽつぽつとしゃべり、また少しずつ切り進める。

「私間違ってるのかなって、ずっと思ってたんですね」

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「最近#MeToo(※)がすごい話題になって。あらためて思ったのは、私やっぱり間違ってないって思うんですよ。私この世界に取り残された以上、27なんですけど、あと数年の人生、いや数年じゃないもっと長い人生、何を残せるかなって思ったら、やっぱりこう、女の子たちに良い未来を残したいなって思うんですよ」

型にはまった「女の子らしさ」にとらわれず、それぞれの個性に目を向けて世に送り出す異色のネオガール・オーディション「ミスiD」。初代グランプリには若い世代に絶大な人気を誇る玉城ティナさんを冠し、その後も稲村亜美さん、水野しずさん、菅本裕子(ゆうこす)さんなど、無二の魅力を持つアイドルが次々に誕生している。

おーえるさんは2018年に開催されたミス「iD2019」において、3500人以上の応募者のなかからファイナリスト98名のうちのひとりに選出された。

「だからミスiDに力を貸してほしくてまたここに来ました。私に力を貸してほしいです。私の言いたいことは以上です」

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授賞式当日。惜しくも受賞を逃したおーえるさんは、それでもほかの受賞者を称えて心からの拍手を送った。

オーディションは終わった。それでもまだ、おーえるさんは怒り続けている。「女の子たちにより良い未来を残す」という彼女の願いは、いまだ叶えられていない。

※#MeToo(ミートゥー)......セクハラや性的暴行の体験をSNS上で告白・共有する際に利用するタグ。及び、このタグを用いた世界的な告発運動。「Me Too」、「#metoo」とも。

怒り続けている、おーえるさんにインタビュー



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――長期間にわたる選考、お疲れ様でした。iD2019、いかがでしたか?

「後悔しかないです! 最終面接でもっとちゃんとしておけばよかった......。(審査員の)吉田豪さんからも『面倒くささばかりが前に出ていて、かわいさと、そのほかのバランスが悪かった』って言われて。私、面倒くさいんですよね。よく言われます。でも自分では自分のこと面倒くさくないし、ちゃんと考えてるからそれでいい。内心『うるせー!』と思ってます」

――「女の子解放運動家」を名乗るようになったきっかけを教えてください。

「そもそもは自分が受けた痴漢の体験ですね。小学4年生のとき、本屋さんにいたらいきなり目隠しされたんです。父さんだと思って振り返ったら知らないおじさんで、怖くなって体が固まっていたら、抱き上げられて連れていかれちゃって」

――あの、これって日本で起こった話ですよね......?

「日本です。みんな訊くんですよね、『それ本当に日本であったの?』って。でも私が痴漢にあったのは全部日本です。で、途中で警備員さんが気付いて追いかけてくれたんですが、おじさんはそれより自分の欲望を優先させまして。私を下ろして目の前で股間をボロンさせたんです」

――うわ......。

「それでそのときから思うようになったんですよ、『男の人の性って大変だな』って。だって普通逃げるじゃないですか。『そんな正常な行動も取れないおじさんすげえな!』って子どもながらに思いました」

――相当な恐怖体験だったと思うのですが、そこで「すげえな!」なんですね。

「そのあともたくさん痴漢にあいましたし、男の人が怖いという思いもあるんです。でも『怖いな』より『やべえな』っていうほうが強いです。理解しようとしてもできない。男の人は大変だろうなと思うし、同時にものすごく恐ろしくもあります。

また、被害を受けた側の女性が『私にも非がある』と思ってしまうことについてもよく考えるようになりました。これって、日本人特有の感覚だと思うんですよ。

私は小さいころに少しだけ中国で暮らしていて、大学も上海だったんですけれど、ほとんどの女性が痴漢にあったらその場で『やめて』って言うんです。『ふざけんな』と言いながら痴漢相手を叩きのめしているところも見たことがあります。それはまあ、胸をわし掴みにするような露骨な痴漢だったというのもあるんですけど......」

女の子は悪くないのに、私の言葉は響かない



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――卒業してからは何をされていたのですか?

「上海の大学を卒業後、すぐ帰国しました。日系メーカーに総合職で入社して、人事を3年間。でも、お酒を若い女性社員についで欲しいおじさんっているじゃないですか。そういうのがどうしてもしんどくて。『なんでいつもお酒をつがされるんだろう』って。

セクハラもありました。相手は上司だから『仕事を教えてあげる』というていで近付いてくるパターンが多くて、監査室に相談しても『それぐらいのこと』って全然相手にしてくれませんでした」

――それは辛い。

「でも『私はセクハラされてもいいよ』というスタンスの人もいるじゃないですか。関連会社にそういう、おじさんから肩を組まれてもずっとにこにこしている子がいたんです。でもある日その子がぷっつりと会社に来なくなっちゃって。

あとで個人的に、どうしてそうなったのか打ち明けてくれました。『お酒を飲まされて、そしたら取引先のおじさんと寝ちゃってた...』って。でもそのとき彼女は『私も悪かった』と言ったんです。『ボディータッチを許していた自分も悪かった』って。

そうじゃないと、私は思う。同意なしにそういうことをするのはよくないし、酔っ払った女性にそういうことをするのはよくない。そうじゃないですか? それなのに自分が悪いと思ってしまう。それがすごく悲しくて、なんでこんなことになっちゃうんだろうかと思います。どうにかしてこの現状を変えたいのに、今の私の言葉では全然響かない。ブログに書いても誰も読んでいない気がするから、それもむなしい。ひとりで叫んでるような状態です」

――それが、ミスiDへのエントリーにつながるのでしょうか。

「そうです。カメラテストのときもかなりフラストレーションが溜まっていて......。YouTubeの映像のなかに、私の内面の全部が映っていると思います。

私、すごく怒っています。今。どうしたら女の子がそういう被害に遭わなくなるようになるんだろう。どうにもならない現状だからこそ、どうしたらいいのか、悩んでます。ジャーナリストや大学教授のところに話を聞きに行ったりしています。もっと勉強したい。まずは自分のウェブサイトを整備しようと思ってます。でも私サイトの作り方も全然わからないから、知ってる人いたら教えてほしいです(笑)」

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【プロフィール】
おーえる
コラムニスト、エセラッパー、女の子解放運動家。1990年生まれ。上海大学卒業後、大手日系企業に就職するも上司のセクハラやジェンダーを取り巻く差別や偏見に疑問を抱き退職。ラッパーやコラムニストとして活動し、ミスiD2019ファイナリストに選出された。ジェンダーについて語り合う不定期バー「女女苑」の主催を始め、女の子がより良い未来を手に入れるための積極的な取り組みを行っている。
[Twitter] @MC88009062
[Blog] http://unkosinagarayomubunshou.hatenablog.com/
[note] https://note.mu/o_eldayo

【写真提供】
講談社

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