世界進出を目指す? マルチプレイヤーズなコントユニット「テニスコート」

「テニスコート」は、神谷圭介、吉田正幸、小出圭祐の3人組コントユニット。武蔵野美術大学在学中の2002年に結成され、近年は俳優、執筆、番組の脚本・演出など、マルチな活躍を見せるなど、コントにとどまらない活動の幅を持っている。
お笑い芸人ではないが、俳優というわけでもない。そんなふわりとした立ち位置に立つ彼らに話を聞いた。
・「花子」
▲左から、吉田正幸、神谷圭介、小出圭祐
大いなる照れ屋が集まってできた「テニスコート」
――テレ東の名物プロデューサー・佐久間さんがテニスコートを激推ししているようですが、出会いを伺ってもいいですか?
神谷圭介(以下、神谷): 僕が『玉田企画』という劇団の公演に、客演として出たときに観てくれて。佐久間さんって、異常にたくさん演劇を観るんですよ。仮病をつかってまで会議を抜け出したりして。
普段、あれだけがっつりメジャーでバラエティを撮ってる人に、テニスコートを観てもらうのは、「大丈夫かな?」って心配に思ったんですけど。演劇好きの方だから、そういう視点で面白がってもらえたのかもしれません。最近は、公演後のトークショーに来てきてもらったりしました。テレビにも引っ張ってくれますね。ちょこっと『ゴッドタン』に出させてもらったり。
テニスコートまで見つけてくるって、佐久間さんのアンテナの張り方がすごいんじゃないですか?
――なるほど! 本当に小劇場からの出会いだったんですね。ちなみに、「テニスコート」というユニット名はどこからきたんですか?
神谷:名前はなんでもよかったんですよね。ただ、意志主張を織り交ぜた名前にしたくないっていう。我々は大いなる照れ屋なので。
当時、サイゼリヤの紙ナプキンをメモがわりに書き出して。その中で残ってたのが、「ハンバーグ」、「バスケットゴール」、「テニスコート」......
1つだけ、「チョメチョメ」? 他の候補とバランスをとったんでしょうね。結局、3票とも「テニスコート」になっていたんですけど。
――公式ホームページ名『テヌス川に陽は落ちて』のテヌス川って、造語ですよね? 公演のタイトルやコントでは造語を多用されるのに、ユニット名は「テニスコート」という普通名詞で。
小出圭祐(以下、小出) :今は公演のことを「テニスコートのコント」っていってるんですけど、昔は「テニスコートコミック」だったね。
神谷:そうだね。10年くらいそうしてたね。
小出:勝手に作ったわけわかんない言葉がたくさんありすぎて、最近はわかりやすくしてて。
神谷:自然と、あったんじゃないですか? 他の部分で変な言葉を使うことで、ユニット名のふつうっぽさと、それもバランスとろうとしてたのかも。
吉田正幸(以下、吉田):やっぱり、目立ちたいから造語を作っちゃうんじゃないのかな......。
小出:公演が決まると、いつも最初にタイトルつけるんですけど、本来は内容あってのタイトルじゃないですか。でも、僕らは内容がないのに、タイトルだけたくさん考えて、「これはこういう印象だな......」ってめちゃくちゃ話し合うんですよ。
神谷:タイトルからコントを考えていくときもあるよね。
小出:最近はそうだね。きっと、キャッチフレーズみたいな感じで、意味はないけど、おもしろそうな言葉を考えるのが好きなんだよ。造語を見て、「これはこうなんじゃないか」って話し合うのが好きだから。
神谷:そういう考察が出てくるタイトルほど、内容も浮かびやすいみたいなところはあるよね。『浮遊牛(ふゆうぎゅう)』なんかもそうでしたよね。最初は絶対ないなって思ったんですけど、だんだん「これだ」って思ってきちゃったんですよね。
別役実さんの本にも、「コントのタイトルに凝った名前をつけるな」って書いてありましたし。シチュエーションからとか。例えば、「おみやげ」みたいな。ここで「斜陽する夕べ」とか、書いても仕方がないから。
「テニスコートのコント」は短編集の小説本
――コントは3人で考えて作られてるんですか?
神谷:そうですね。各々で案を出し合って、出てきた構成を持ってかえって、またこうかもああかもって話し合って、また整理して、考えてくるっていうのを繰り返す感じで。
――タイトルになったコントを中心に組んでいく感じでしょうか。
神谷:むしろ、タイトルがコントになったのは、ここ3公演くらいですね? わりと最後の方に、「やらなきゃな」みたいな感じで作り始めます。こんな変な名前をつけておいて触れないのもなって。
タイトルをコントにしようとすると、1本目がすごい長くなっちゃって。「1本目でこのボリュームはちょっと......」ってまた話し合ったり、見やすくする作業はしつつなんですけど。
最近の公演は、短編集だけど、ボリュームのあるタイトルにもなった話1つがあって、あと何本かあるみたいな、本のような構成になってるような気がしますね。
結成16年。メンバーの新しい側面に、いまだに驚く
――そういえば、取材前に「テニスコート」のウィキペディアをのぞいてみました。"テニスコート(ユニット) 日本の演劇ユニットである"。"お笑いタレント・コメディアンに関連した書きかけの項目です"となっていて。
吉田:困らせてるね。
神谷:お笑いタレント......ではないですよね?
吉田:うん。
――みなさん、それぞれで舞台に出られていることもあるので、俳優さんというカテゴリでしょうか。
神谷:どっちかっていうとそういうことに、しようとしています。でも、テニスコート全員で方向性をすり合わせたことはないですね。
――各メンバーで違う可能性があるんですね。
吉田:そうですね。僕は俳優として呼ばれたら、全力で。全力でやります。
神谷:あ、呼ばれたら行くんだ? あ、そうなんだ。
――「根性あります!」という。
神谷:そういう感じの人じゃないよね。
――(笑)。
▲ 「根性あります!」と力む吉田さん。
吉田:でもほら、この間の収録だって、僕、人一倍やってたでしょ?
神谷:やってた。僕らは、収録中にお互いはじめての側面を見るわけですよ。「こういうふうに頑張るの?」って。
――現場で初めてですか? 大学時代からのお知り合いですよね?
神谷:はい。でも、カメラがあって大人に囲まれて、みたいなの、今まであんまりなかったので。
吉田:しかも、台本がなくてさ、初めてのバラエティっぽい感じだったじゃん。
神谷:そう、クイズ番組的な体を装って、それぞれでクイズに答えるみたいな企画があったんですね。もう、未知数ですよ。クイズなので、台本が本当になかったんですけど。
吉田くんは、とにかく元気を出してたよね?
吉田:たぶん、オンエアー上は一言も喋ってないと思うんだけど、すごい楽しかったんだよね。
神谷:そっか、楽しかったんだ。「イエーーイ!!!」って言ってたよね。
小出:イエーイは台本にあったからね。
神谷:台本にあったからか。あれが求められたことに対して全力ってことなんだね。
客演として、テニスコート以外の舞台に3人で出たときに、よそでやってる2人をみたんですけど、それもやっぱり、意外な側面があって。
小出さんは小出さんで、そこはもう変えようがないんだなって思ったりしました。
小出:成長があったよ。
神谷:あったの?
吉田:うちのお母さんが、「小出くん上手くなった」って言ってたよ。
――(笑)。
神谷:観にきてたの? そうなの?
吉田:最近は観にきてるらしくて、「小出くん上手くなった」って。
神谷:とだけ、言ったの?
吉田:お母さんがお父さんに言って、お父さんから僕に。
神谷:なんなの、それ? でも、じゃあ嘘じゃないね。
小出:上手くなってるのか......。
神谷:どういうことなの? 噛まなくなったってことなの?
小出:いや、噛んでたけど......。
一同:(笑)。
神谷:そういうところではない何かに成長を感じるんでしょうね。
最近小出さんそんなに噛まなくなってて、でも、噛むことを当然としてた昔からのお客さんからすると、結構それを待ってるみたいなところあるって。
吉田:よくないお客さんだね......。
神谷:ギリギリで歩いてる感じをみて、緊張感を楽しんでるみたいです。
媒体が変わっても、中心にはコントがある
――雑誌のコラムを拝読したときに、「読み物なのにちゃんとコントだ!」って感動しました。コラムも3人で作っているんですか?
神谷:昔、学校の外でもコントをやりたくて、そのとっかかりになればいいと思って始めたフリーペーパーがあったんですけど、そのやり方ですね。紙面上でも、なんとなくコントに見えるような文章を書いてました。
だから、作り方自体はコントと同じです。1号目じゃ、ママチャリの名前をたくさん集めたよね。
――え?
神谷:ママチャリって実は車種名があるんですよ。
小出:「ファットキャット」とか。
神谷:いろんなママチャリの車種名をメモって回ったんです。
――駐輪場でですか? めちゃくちゃ怪しいですね。
吉田:「ファットキャット」は安いから普及してたね。
神谷:「フィフスアベニュー」とかね。なんか、格好よくしようとしてくるんですよね。形はどれも変わらないんですけど。そういうのを集めて、集めてきたものを出し合って、紙面上で話す、みたいなスタイルでした。
――執筆含めて、コントあってのマルチな活動なんですね。
神谷:そうですね。媒体が変わってもそういうイメージです。
テニスコートは"無意識"がおもしろい
――最近の公演では、演出と構成にポテンシャル聡さんという方が入られていますが、テニスコートだけで作る公演とは違いますか?
神谷:僕らが今更お互いで指摘しても刺さりづらいじゃないですか。1人引いてみてくれる人がいるのは助かりますね。公演ごとに、つぶさにみてくれて「ここはもっとこうした方がいいですね」とか、「こうするとよくなりますね」っていってもらえると、ぎゅっと上手くなるよね。「ちゃんとしてる人が入った!」っていう。
小出:役割として、判断してくれる人がいるといいよね。みんな舞台に出てると見れないから。ポテンシャル聡さんはお笑いの人だしさ。
神谷:芸人さんのやり方でいったら当たり前のロジックでも、僕らは知らないことがたくさんあって。自分たちじゃ意識的じゃなかったことを、知れるのがすごくいいなと思ってるところです。
ポテンシャル聡のポテンシャルは、人のポテンシャルを引き出すところにあるようなので。
野望を問うもしばしの沈黙。世界のテニスコートになる日も近いのか?
――そろそろ時間なので、締めの質問をします。野望はありますか?
一同:(沈黙)。
吉田:......めちゃくちゃありますね。
神谷:本当に? もし本当にめちゃくちゃあったならすぐ言えるよ?
吉田:......めちゃくちゃあるとだけ書いてください。
神谷:すぐには出ないけどね。
――小出さんはいかがですか?
吉田:小出くんは、「英語喋りたい」って言ってた。
神谷:それ野望? 英会話ってことなのか、世界進出なのか。
小出:世界進出......。やっぱり、世界のマーケットに通用する、コンテンツ。とか言って......
神谷:声が小さいよ。語尾逃げてるし、笑ってんじゃん。
でも、世界のマーケットでいうと、海外のコメディアンが作った映画の『ブリグズビー・ベア』とか面白かったよね。
小出:そうそう、アメリカのね。コメディやってた感じが残りつつ、映画を撮ってて。そういう、コントをやってることが活かされた何かがやりたいな。
吉田:この前、ドイツに進出した『左右』ってバンドの子に、「海外でやんないんすか?」って言われてたんだけど。「絶対通用しますよ」って。
いま、その気になってる。
神谷:それ言われただけで?
小出 だってそれは音楽じゃん。
吉田:でも出来る限り、でっかく言ってた方が、実現率半分でもすごくならない?
神谷:そうねぇ......。
小出:世界......。
――野望は、世界進出だと。
神谷:世界ってどこなんですか?
吉田:モンティ・パイソン*1とかさ、世界でやってるじゃん。
小出:でもあれさ、全部ドイツ語でやってたよ。ドイツに呼ばれたときは、ぜんぶドイツ語でやれるの人たちなのが、モンティ・パイソンたちだよ。
神谷:相当学歴高いよね。
吉田:...地道に僕らは公演を頑張るべきですね。ぜんぜん、アジアでも。
神谷:タイは?
小出:タイ語?
吉田:それなら僕の地元・新小岩でやろうよ。幼馴染から広げていくから。
新小岩から新たに始まるテニスコートの世界進出計画に、目が離せない1年になりそうだ。精力的に単独公演「テニスコートのコント」を開催しているので、そちらも要チェックしてほしい。
*1...モンティ・パイソン:60〜70年代にイギリスで活躍したコメディグループ。メンバーは医師や弁護士資格所有者で構成される超インテリ軍団。シュールで不条理、ニヒルは笑いは、テニスコートと通ずる?
【プロフィール】
テニスコート/神谷圭介、小出圭祐、吉田正幸の3名からなるコントグループ。「テニスコートのコント」と題した自主公演を開催する他、書籍・雑誌などにイラストや文章の提供も行う。2016年よりNHK Eテレ「シャキーン!」に構成作家として参加。
Twitter:@tennis_court
【公演情報】
テアトロコントvol.35 / 4月26日(金)27日(土)
会場:ユーロライブ
立川流 あたらしい会8/4月29日(月・祝)
会場:お江戸日本橋亭