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YouTuberの次は「プレイリスター」? 音楽コンシェルジュ・ふくりゅうが提案するプレイリスターのすすめ

エンタメ

テレ東プラス

2019.4.19

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ラジカセを愛用していた世代は、カセットテープにお気に入りの曲をダビングして、友人や恋人に『マイ・ベスト』を手渡したことがあるかもしれない。

CDからMD、iTunesでのダウンロード配信に音楽の形式が変わった世代であっても通勤・通学用にお気に入りの曲を集めたプレイリストを作った経験がある方は多いはずだ。

"音楽コンシェルジュ"を名乗り、自身でもSpotify(スポティファイ)公式プレイリスト『キラキラポップ:ジャパン』(14,297フォロワー)を主宰。氷室京介、布袋寅泰、TM NETWORK、小室哲哉、ケツメイシ、そしてボカロ系などのライティングで知られるふくりゅうさんは音楽ストリーミング全盛時代の今を「誰でもメディアになれる時代」だと評します。果たしてそれは一体どういうことなのか。まずは一風変わった肩書きについて話を聞いてみた。

「音楽コンシェルジュ」が語るプレイリスト文化の到来


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――「音楽コンシェルジュ」という肩書きはオリジナルなんですか?

ふくりゅう:そうですね。学生時代から、IT企業による音楽サービスの立ち上げに参加してました。一人ひとりの好みに合わせた音楽をレコメンド提案するサービスをやってみたかったことがきっかけかもしれません。「1 to 1マーケティング」の発想ですね。

でも、どう実現したらいいかはまだわからなかったし、名前もなかった。そんなときにホテルのコンシェルジュという職業を知って。お客さんの要望に合わせて提案して対応するじゃないですか? そのイメージにピンときたんです。

――ずいぶん前から考えられていたんですね。

ふくりゅう:インターネットを介して音楽と関わる仕事をやりたいなぁって漠然と思ってました。当時、まだiTunesやYouTubeなどネット配信系の音楽サービスが出てくる前ですから、ちょっと時代が早すぎたかもしれません。00年代に入って「インターネット発のカルチャーが来る」と言われ出した頃から、コンシェルジュ的な概念も少しずつ認知されていきました。

――大げさかもしれませんが、時代が音楽コンシェルジュの名に追いついたんですね。でもなぜそのような発想に至ったんですか? 単に音楽ライターでも良かったのでは?

ふくりゅう:高校時代、クラブキングの桑原茂一さんが発足した『日本音楽選曲家協会』に感銘を受けたんです。現在も『DICTIONARY / ディクショナリー』というフリーペーパーを発行され、mixcloudで『桑原茂一の PIRATE RADIO』という選曲番組をやられています。僕は学生時代、サッカーやフェンシングばかりやってまして、楽器がまったくできない音楽ファンだったので「選曲することでこんなかっこいいことできるんだ!」って衝撃でした。桑原さんや、その後のDJカルチャーの浸透をみて、音楽を「演る」、「書く」以外にも、「選曲する」こと、つまり今でいうところのプレイリスターに付加価値が生まれるのではと思うようになりました。

プレイリストを発信する人=プレイリスター


――「プレイリスター」も耳慣れない言葉ですが、平たくいうと選曲者ということですか?

ふくりゅう:そうですね。YouTubeで情報発信するとYouTuber、TikTokで発信するとTikTokerっていうのと同じで、プレイリストを作って音楽を情報発信する人をプレイリスターといいます。

定額制音楽ストリーミング・サービス、特にSpotifyに関してはユーザーの50%以上がアルバム単位ではなく、プレイリスト経由で音楽を聴いているんです。数年前までは、「ストリーミング配信がスタートしても、ベテランアーティストの人気の曲しか再生されないだろう」なんて言われたんですけど。実際、Spotifyからいま新しいアーティストがどんどん発掘されている状態です。例えば、Suchmos、あいみょん、King Gnu、RiRi、あっこゴリラ、Superorganismなんかもそうですね。

――ストリーミング配信によって、音楽の聴き方が変わってきたんですね。

ふくりゅう:はい。海外では、すでに影響力あるプレイリスターもいますよ。たとえば、Spotifyに『RapCaviar』というプレイリストがあります。

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ここ数年、海外ではラップミュージックがビルボードチャート上位に入るくらい流行ってるのですが、『RapCaviar』はその火付け役の1つだと言われています。実際にも、『RapCaviar』を担当するエディターは最近、YouTube Musicに引っ張られたことで、ニュースになってました。

つまりこれは「メディア」としての役割をプレイリスト自体が担っている成功例だと思っています。

――なぜ個人の『プレイリスター』がメディアになりうるのでしょうか?

考えてみてください。日々更新されていくプレイリスト『RapCaviar』には1,100万人以上のフォロワーがいるんです。これって超巨大メディアといえるでしょう?

今ってレコード会社がお金をかけて宣伝したからといって、簡単に売れる時代ではなくなってきてます。『RapCaviar』の面白いところは、リスナーが聴きたい人気の曲以外にも、「これ絶対いいよ!」という曲を上位に挟み込ませいるところ。そうすると、無名のアーティストでも、いい曲であれば再生回数が増えていきますよね。プレイリストは、メディア以上に新しいアーティストとの「出会いの場」になってきたと言えます。

最近では海外だと、プレイリスト名義で、いろんなアーティストが出演するツアーが生まれていたり。配信サービスの枠を超えて、かつての音楽雑誌並みのパワーを持っているんです。ちなみに担当しているプレイリスト『キラキラポップ:ジャパン』でも夏にイベントを企画しようと妄想しています。

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「プレイリスト」で、誰もが個人メディアになれる


――プレイリストやプレイリスターがフォロワーを持つことで、大きな影響力が生まれるんですね。

ふくりゅう:はい。インターネットが発達していなかった頃は、評論家じゃない一般の音楽ファンは、気になった音源があっても全部は聴けないし、買えなかったじゃないですか? でも、今は定額制音楽サブスクリプション・サービスのおかげで、月額1,000円ぐらいで好きなだけ聴ける。フリーミアムモデルでは広告が入ったりするけど、SpotifyやYouTube Musicは無料でも聴けますから。本当に、時代が変わってきたなと思います。

そうなると、一般の音楽ファンの方だって、自分が好きなアーティストやジャンルに対してはプロの聴き手の人たちより詳しい人がいるはずなんですよ。「自分が好きなジャンルやアーティストを世界中に紹介したい、広めたい」って思いがあるリスナーにとって、プレイリストは表現しやすいツールだと思います。結果、広めるサポートをすることがアーティストの再生回数を増やすファンダムとなるのです。

――なるほど。たしかに、プレイリスト自体は気軽に作れますもんね。

ふくりゅう:現時点だと、やっぱりオフィシャルで作られたプレイリストが、どうしても強いし、人気が高いんですけど......。もちろんそれだけじゃ補いきれない部分があると思っています。僕としては、プロの選曲家たちが発想したプレイリストとは、また違った新しい価値観が生みだされるプレイリストが増えたらいいなって思います。

例えば「10代の音楽好きが聴いてるジャズ」とか、年代とジャンルを掛け合わせることで、個人的に作ったプレイリストにも付加価値が生まれますよね。「60代が選ぶフェス系邦ロック」とか。

――「あいみょんを聴き始めたおじさんが若い世代におすすめしたい懐かしのフォーク」とか?

ふくりゅう:まさに、そうです(笑)。いまの時代「20代がおすすめするスナック向き懐かしのフォーク」だって面白そうじゃないですか? 普段なら聴こうと思わなくても、「そういう人が聴いてるなら聴いてみようかな」って思えるのがプレイリストの面白さなんです。

――あ、調べてみるとSpotifyには「スナックで歌ってみたい曲」とか、一般ユーザーの方がつくったプレイリストが結構あるんですね。

ふくりゅう:そういうプレイリストこそ、一般の音楽好きの方が作るからこそ価値があるというか。

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――評論家の意見より、生の声ですもんね。

ふくりゅう:現場を知るファンの声は貴重ですね。今や僕にとっても、FacebookやTwitterのタイムラインは音楽情報の入手先です。先程も挙げた通り、僕より特定のジャンルに詳しい人がいっぱいいるんですよ。そういう方が紹介してる楽曲を聴いてみて、「いいな」と思ったら、毎週選曲しているSpotify公式プレイリストの『キラキラポップ:ジャパン』に入れさせていただいてます。

最近だと、『キラキラポップ:ジャパン』が僕のパブリックイメージにもなりつつあって。アーティストやスタッフの方からの売り込みがあったり、音楽ファンの方がイチオシのキラキラポップなテイストの楽曲を「これいいですよ」って教えてくれたり、自分の範疇以上にいろんな情報が入ってくるようになりました。情報って、発信することでより集まるんです。

ラジオ世代こそ、いざ「プレイリスト」


――知らない曲もレコメンドされて流れてくるっていう点では、プレイリストは、ラジオ好きな人たちにこそ、馴染みやすい文化かもしれませんね。

ふくりゅう:そうですね。ちなみにラジオ番組がやっているプレイリストも結構ありますよ。ラジオやテレビとストリーミングサービスって、ものすごく相性いいと思うんですね。プレイリストで補いきれない情報はラジオで解説したり、ブログやオンラインサロンで説明していったり。いろんな可能性がありますよね。それこそ、ダイノジがSpotifyでやっているプレイリスト『DJダイノジの「これで一緒に踊りたい」』は楽曲解説をトークで紹介していたり、新しい試みをやられています。とてもオススメです。

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https://open.spotify.com/user/spotify/playlist/37i9dQZF1DX6EtG1KfRxo8?si=ohli_IiBQzyUX9z844XnwQ

――ラジオやテレビドラマなどで、さっき流れてた曲が知りたいって需要もありますよね。

ふくりゅう:LINE MUSICのデイリーチャートは、世の中の動き反映してるんです。よくドラマなどで曲がかかったらバズるじゃないですか。テレビで取り上げられた瞬間、YouTubeの再生回数が増えたり、TwitterやTikTokでバズったり。そういう動きがチャートで可視化されて、「今なにが流行っているのか」をリアルタイムにチェックできる。

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――すごい! 便利ですね。

ふくりゅう:なにから聴いていいかわかんないときは、LINE MUSICのデイリーチャートを聴くのもおすすめです。あとは、いろんなストリーミングサイトの「ニューリリース」を片っ端から聴いてみたりするのもいいですね。先入観なく聴いて、自分の好みを探っていくことも楽しみの1つなんですよね。自分の指標ができたら、自分好みのプレイリストを作りたくなると思います。

プレイリスターが増えればメディアが増える


――今、実際「プレイリスター」が影響力を増している時代になってきて。これからの日本の音楽業界はどうなっていくと思いますか?

ふくりゅう:Spotifyにおけるプレイリストって、デイリーやウイークリーで選曲が変わるなど回転が早いからテキストでのレビューや紹介はしないんです。アーカイブもしないですし。だから、もっと知りたいときに、ラジオや雑誌でプレイリストを解説という、かつてと手に取る順序が逆になっていくかもしれませんね。もちろん、ラジオや雑誌メディア、音楽評論家の方がプレイリストを運用される例も増えています。

実際、音楽コンシェルジュって、時間をかければ誰でもできることな気がするんです。選曲という音楽の楽しみ方がプレイリスターという言葉で浸透していけば、プレイリストを作る人が増えて、個による音楽メディアがもっともっと増えていく。例えば、人気プレイリスターによるプレイリストにどれだけリストインしているかが、人気の指標データとなる時代が来るかもしれません。楽しみですよね。

かつては、音楽メディアがおすすめを啓蒙していたが、今はSNSなどを通じて音楽そのものが聴き手/選曲者によって提案される時代に。プレイリストは、音楽文化を未来につなぐ橋渡し的な役割を果たすようになるのかもしれません。次回、ふくりゅうさんにプレイリスターのなり方を5ステップでお伺いしてみました。

【プロフィール】
ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)。定額制音楽ストリーミング・サービスで、公式プレイリストの選曲を任されるプロ・プレイリスター。Yahoo!ニュースやJ-WAVEなどで、音楽について書いたり喋ったりすることも。Spotify公式プレイリスト『キラキラポップ:ジャパン』をサブミッションメディアとして主宰。毎週火曜日に更新している。著書に『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』〈ダイヤモンド社〉など。

@fukuryu_76

『キラキラポップ:ジャパン』

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