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ライブハウスのようにポップアートを等身大に発信する、阿佐ヶ谷のギャラリー「VOID」

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テレ東プラス

2019.4.22

リニューアルして丸1年。中央線・阿佐ヶ谷駅から5分のギャラリー『VOID』。イラストレーターの小田島等さんが、アートディレクターである大澤悠大さんに声をかけたことで始まったアートスペースだ。

ポップカルチャー好きの間でじわじわと広がりを見せる『VOID』については、前回紹介した通りだ。今回は、VOIDの運営を担い、デザイナーとして現在もデザイン業界で第一線を走るお2人に、阿佐ヶ谷とポップカルチャーについて、より深くお話を伺った。

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ロックミュージシャンと、そのファンの関係性に似ている


――改めてギャラリストとしての想いをお聞かせいただきたいのですが......。

大澤悠大(以下、大澤):ギャラリストとして〜ってなにかを語るほど、肩に力は入ってないですよね?

小田島等(以下、小田島):うーん、そうですね。『VOID』みたいなオルタナギャラリーって、いわゆるアートに資産運用としての価値を見出す、欧米型のものとは違いますよね。芸術家とコレクターという関係ではなく、もっと身近なミュージシャンとそのファン、これに近いような関係性を応援するためにあると言えばいいかな。

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――なるほど。

小田島:日本で生まれた"サブカルチャー"という文脈のギャラリーなので。お客さんもいわゆる美術コレクターというよりは、もっとサブカルチャーが好きな人が多いと思います。

大澤:僕もVOIDって、ライブハウスっぽいイメージがあります。

小田島:あ、なるほど。たしかに。

大澤:そうですね。"現代アート"みたいなメジャーとは、ちょっと違いますもんね。

小田島:これぐらいが、僕らとしては等身大ですよね。漫画、イラストレーション、グラフィックデザインなんかは、ロックやダンスミュージックに近いですよね。

大澤:うん。受け手であるお客さんも同じ地平にいる感じがします。僕らももちろん、ギャラリー運営だけじゃなくて、各々作品も作りますし、なんかそういうのが自然とできてる感じがしますよね。

――お客さんとの関係を含めて、フラットなんですね。VOIDをはじめて変わったことはありますか?

小田島:感性がずいぶん豊かになったと思う。

大澤:選択肢が広がったというか、楽になりましたね。ここで店番をしてると、在廊するイラストレーターや、フォトグラファー、いろんな業種の作家さんと密にコミュニケーションできるじゃないですか。

それぞれの悩みやいいところが、だんだんわかってきて。デザイナー業界"だけ"だった視野の狭さがなくなったというか。

――広いフィールドでモノを見られるようになって楽になった?

大澤:そうですね。

小田島:換気がね、できるようになりました。自分の作品へのフィードバックもあるし。勉強になりますよ。

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近所のおじさんが描く美人画にもアドバイスする


――普段、お店番はどなたが?

大澤:スタッフが2人と僕たちです。我々も毎週いますよね?

小田島:うん。スタッフが入ったのは最近ですよ。1年近く自分たちで店番してました。

大澤:近所のおじさんが、「絵を書き出したんだ」って持ってきてくれましたよね(笑)。美人画を描いてて、新しいのを見るたびにちょっとずつ良くなってきてる。

小田島:そうそう、定年になったおじさんが鉛筆持ってやって来たね! 安室奈美恵さんの顔とかを描いてて。たまに来てくれるんですよ。

大澤:おじさんのイラストのインスタ、フォロワー1000人くらいになったらしいですよ。

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――交流を持ちつつ、育ててますね(笑)。

小田島:お客さんとの交流はもちろんですけど、ずっと在廊してると、作家さんの意外な悩みやハッピーな話とか。絵のちょっとした部分の仕上げなどについて裏話が聞けるのはうれしい。

各作家さんのこと十分わかってたつもりだったけど、展示をするにあたってビジョンを聞いたり、色々と手伝ったりしながら「どういう展示にしましょう?」と対話する状況って、本当に面白いんだよね。

個々に物語を持つファンの気持ちに憑依して


――作家さんと並走する感覚なんですね。

小田島:デザインやアートディレクションって、ファン気質というか。僕たち自身が、もともと職業柄、応援団気質なところはあるかもね。

大澤:そうですね。

小田島:「自分たちはブランクな箱である」ってところも似てる気がします。だからデザイナーとギャラリーの相性っていいんじゃないでしょうか。 常に空(カラ)で、どこにでも足が動けるようにしておく。その感じに似ている気がするなと思います。

ファンと作家さんの密接度を高める応援をしたい、その架け橋になりたいという気持ちがかねてからありました。だから、そもそも、ギャラリーは向いてましたね。

大澤:今のVOIDは、作家さんとお客さん、それを眺める僕らも、みんなが楽しめる状況ですよね。やまだないとさんの展示のときとか、ファンの方がすごく喜んでて。

小田島:ないとさん、東京初個展だったもんね。


大澤:漫画家さんって、会える機会があまりないので。一緒に飲みながら喋れるなんて超レアなんですよ。だから、すごく感激してる人がたくさんいて、そういうのは見てて嬉しいですよね。

小田島:うん。本当にその作家さんが好きで、思い入れを持つ人たちに、我々も憑依しちゃいますよね。そのうち「いつからファンなんですか?」って一人ずつ、聞き出しちゃったりして(笑)。

大澤:みんなそれぞれのエピソードを持ってますよね。

小田島:やまだないとさんの絵、エロティックじゃないですか。高校時代、お兄ちゃんの部屋へこっそり入り、バレないようにまた戻してた......とか。それぞれの人生に"やまだないと"があるっていう。

――本にできそうですね(笑)。

小田島:「やまだないと」って検索するより、ずいぶんと深いですね。

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大澤:きっとそれぞれの青木(俊直)さんエピソードもあるんだろうなぁ(インタビュー時は青木俊直の個展『PHONIC SISTERS』展示期間だった)。

音楽がなかったら、ここにいないかもね





――青木さんはどういう経緯で展示に?

大澤
:もともとVOIDにはお客さんとしていらしていただいてました。

小田島
:青木さんに思い切って訊いてみたら「全然やりますよー!」と快諾していただけて嬉しかったです。

大澤
:誰にでもとてもフランクな方ですよね。

小田島
:超フランク。学ばねば、と思ったよね。

大澤
:展示にも人柄が現れていると思います。今回は、ジャケットをモチーフにしたり、音楽系の切り口で面白いです。

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小田島
:青木さんも、僕らが音楽好き系だからこういう展示をしてくれたのかな? っていう気もするんです。

大澤:それはあるかもですね。

――(笑)。

小田島:青木さんも相当音楽マニアだったけど、僕らも音楽ないと死んじゃうよね。

大澤:アイデンティティがね......。

小田島:きっと、いないよね。

大澤:うん。ここにいませんね。

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小田島:オープニングパーティーでは、永井博さん、サニーデイ・サービスの曽我部恵一くん、シャムキャッツの夏目(知幸)くん、銀杏BOYZのジャケット描いてる箕浦建太郎さん、音楽ライターの水上徹くんという5人にDJして頂いて。

――音楽情報サイトに掲載されそうなメンバーですね。

大澤:載ったんじゃないかな......。人が凄かったですよね。200人くらい来てて、溢れてましたもんね(笑)。

小田島:ご近所さんから苦情が来てしまいましたよ。

大澤:あれは申し訳なかったですね。

高円寺がロックで、阿佐ヶ谷がジャズ


――小田島さんは阿佐ヶ谷に馴染みはったんですか?

小田島
:高校時代に高円寺の古着屋へ行ってて、その流れで阿佐ヶ谷もたまに散策しましたよ。1988年くらいかな。ずいぶん街並みは変わったけど、良い街なんですよねぇ。

――大澤さんは、VOIDを始める前って阿佐ヶ谷はよく来られました?

大澤
:いや、全然でした。もともと飲み屋とか多いと思ってたんですけど、そんなに来たことなかったです。

――阿佐ヶ谷で、ご近所ギャラリーづきあいみたいなものはあったりしますか?

小田島
:このはす向かいに『TAV GALLERY』っていう現代アート系のギャラリーがありますよ。VOIDとはぜんぜん毛色が違ってハードな現代美術系ですので、ハシゴしたら楽しいかもしれない。

ギャラリーじゃないけど、裏に『コンコ堂』っていう素敵な本屋さんがあって、そこの品揃えが素晴らしいですよ。いつか一緒に何かしましょう、なんて話してて。

大澤
:『コンコ堂』さんも展示とかやってますもんね。

小田島
:あとカフェバーの『Roji』ね。レコード屋さんの『オントエンレコードストア』。
あと、名画座が2つもあって。小西康晴さんがかなり映画観に来てらっしゃるそうです。わりといま、阿佐ヶ谷がアツいですよ。

大澤
:ライブハウスもありますもんね?

小田島
:小箱のクラブもある。隣は高円寺だしね。考えたら名画座が2つもあるってすごいですよ。にわかに文化のセンターになって来ている説。阿佐ヶ谷は不思議な町ですよ。

――ホットスポットというよりは、じわじわっと。

大澤:流行りもせず、廃りもせず。

小田島:吉祥寺も近いし。吉祥寺にアップリンクできましたからね。あと、渋谷や笹塚まで行くバスがあるんですよ。

――特にVOIDは大通りに面していて、来やすいです。

小田島:阿佐ヶ谷駅の北口からまっすぐ、歩いて5分。

大澤:「VOIDに来るために初めて阿佐ヶ谷に来ました」というお客さんも多いんです。

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小田島:阿佐ヶ谷のこと、「綺麗な町だね」ってみなさん仰りますね。高円寺がロックで、阿佐ヶ谷がジャズって感じなのかな。阿佐ヶ谷はジャズフェステイバルも盛んですし。

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小さなVOIDから、大きな文化の循環を


――2年目のVOIDは、どういう展開になりそうですか?

小田島:実はもうかなり先まで予定が埋まっちゃってるんじゃなかったっけね?

大澤:スケジュールが埋まってないと怖くて、どんどん埋めちゃいましたね。

――(笑)。

小田島:これからかぁ......どうでしょうね? 僕たちとしては、VOIDって箱にカラーをつけたいわけてもなくて。外から見たら、カラーみたいなものを感じるみたいだけど。

大澤:あるみたいですね。言われたことありました。

小田島:カラーとか、そういうことを意識しちゃうと、よろしくない気がします。

――VOIDは、あくまで"ブランク"な箱なんですね。ポップな作風の展示が多い気がしますが、それは意識的ですか?

小田島:自分たちが好きな作家さんをお呼びした結果、そうなったんでしょうね。やっぱり、ポップな芸術が身近であり、等身大なんでしょうね。

そもそも、ポップって一口に言うと軽そうに見えますけど、その本質は深いですよね。白根ゆたんぽさんなんかは、作品に対する姿勢とか展示方法とか、一見すると簡略な様子ですけど、絵を貼るピン一つ、サインするペン一つにしてもゆたんぽさんがこだわっていて。ゆたんぽさんが長年磨いてきた審美眼とスキルの総決算。そういう人が軽快に東京のポップの最前線を駆けっているんですよ。そいうのを間近で観れて実は驚いています。

大澤:ゆたんぽさんは、見せ方もすごいですよね。この間、展示があった神保(賢志)さんは、ももクロのイラストだったり、漫画っぽいタッチの方なんです。SNSとかにあげていた絵も、実物を見ると、さらに、めちゃくちゃ綺麗で、すごい仕事が丁寧。そういうところに魂を感じるというか(笑)。

本当に、表面的なところだけじゃなくて、しっかり根がある上でつくってるのがわかると、ポップなことを努力しながらやってるんだなってすごく感じられて......いいですよね。

小田島:その作家さんそれぞれ独自の、弛まざるものがありますね。

――猥雑さや軽さを魂で内包してこそのポップなんですね。ギャラリーって、絵を買う場所でもありますよね。

小田島:VOIDは本当に......吹けば飛ぶような規模でやっているのですが、愛してやまないヴィジュアル文化への恩返しになればいいなと思いますね。

大澤:そうですね。僕たち自身も、展示によく行ったりしますから。それで得られる喜びを自分たちでもやってるって感じですよね。

小田島:はい。小さなVOIDから、恩返しと共に大きな文化の循環を。という気概で行きたいですね。今後ともVOIDをよろしくお願いいたします。

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【店舗情報】
住所:杉並区阿佐谷北1丁目28−8 芙蓉 コーポ 102
電話:03-6427-9898
営業時間:【日〜木】15:00 - 20:00 【金〜土】15:00 - 21:00(展示期間のみオープン)
定休日:月曜定休
http://void2014.jp/

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