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テレ東
これからのテレビはどうあるべきか
──伊藤さんは、働き方改革について前向きに捉えてらっしゃるんですね。勝手な印象ですが、テレビの制作者の方々は、働き方改革というものに否定的なのかと……
「確かに現実として、テレビ局がこの法律を守ろうとすると、今と同じ量のコンテンツは輩出できない。これは目に見えてるんですね。でもそこで、ただ文句を言いながら、これまでと同じ働き方をしていたら、どこかに歪みが出て、犠牲者を増やすだけでしょう。誰もそんなこと望んでないですよ。だから今、我々がやるべきことは、働き方の中身そのものを変えることだと思うんです。
もっと言うと、テレビ局は今、働き方改革のおかげで、選択肢を狭めてしまっていると思うんですね。どの局も、働き方改革でこれ以上労力を増やすわけにはいかないから、『これは無理』『これも難しい』と言って、ようやく1本だけ企画が通る、というのが実情で。でも僕は、今こそ選択肢を広げて、いいものもくだらないものも、作れる番組は全部作って、全部出しちゃった方がいいと思っているんです。
テレビは今や、放送と配信の垣根がどんどんなくなってきていて、地上波のテレビの受像機も確実に減ってきていますよね。そんな時代だから、『日曜日の夜8時に放送される新番組を考えよう』なんて発想は、もはや意味がない。つまり、地上波のテレビ局も、ネット配信のことを考えていかなきゃいけないんです。NetflixやAmazonプライム・ビデオ、YouTubeなどが横並びになったときに、テレビ東京は何をやるのか?そのときに選ばれる自信はあるのか?ということを突き付けられているんですよ。
だからこそ今は、たくさん番組を作った方がいいんです。それを働き方改革だと言って、選択肢を狭めてる場合かと。逆に、どうしたらたくさん番組を作れるようになるのか、働き方を改革して考えよう、というのが僕の解釈です。番組2本作るのに精いっぱいのテレビマンが、あと3本作るには、どうしたらいいのか。スタッフの人数を増やすとしたら、どこに配置するのか。『じゃあ、FaceTimeだけで作っちゃおうか』とか『ドローンだけで作りましょう』とかね。制限された中から生まれてくる企画もあるし、まだまだ工夫の余地はあると思うんです。だから、テレビ業界の人間は、一度ちゃんと働き方改革の本質を考えた方がいいんじゃないかなと……やっぱりちょっと話が飛躍しちゃいましたかね(笑)。
ともあれ、これから就職試験を受けようとしている学生の皆さんには、『そのままで大丈夫』と言いたいです。ウソをつかず、素直に正直に。それでもし、目当ての会社に決まらなかったら、縁がなかったと思えばいいんだし。ある程度、気楽に構えてもいいんじゃないかな」
【プロフィール】
伊藤隆行(いとう・たかゆき)
テレビ東京・制作局番組部チーフプロデューサー。1972年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、1995年、テレビ東京に入社。「やりすぎコージー」「モヤモヤさまぁ~ず2」「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」「にちようチャップリン」など数々のバラエティ番組を手がける。著書に『伊藤Pのモヤモヤ仕事術』(集英社新書)。
(取材・文/花房ハジメ)
伊藤Pの新番組「先生、、、どこにいるんですか?~会って、どうしても感謝の言葉を伝えたい。~」(毎週金曜夜6時55分放送)は、10月4日(金)スタート。この番組誕生のきっかけは、3年前、当時小学生だった息子さんのクラスが学級崩壊したこと。「先生も大変だな」と感じ、自身の学生時代の先生に「会いたい」と思ったことから企画したのだそう。
番組では、お世話になった「先生」にもう一度会いたい、という依頼を受け、直接会って感謝を伝える。もしもお亡くなりになっていれば、墓前に手を合わせ近況報告。今までの再会番組にはなかったガチの「生存確認ドキュメント番組」。初回10月4日(金)放送では、赤井英和、神保美喜、津田寛治の先生を探す。
番組ホームページ
「キャリア大学」とは?
ワークショップやそこで働く社員の方々との交流を組み込んだ参加型・体験型授業。サマークラスとして、大学1、2年生向けに各社夏休みに1日開催する。テレビ東京では、ニュースや経済番組がどのように制作されているのか、現場見学やワークショップ、講義などをおくり、番組制作の過程を体感できるプログラムを提供。
詳しくは、キャリア大学HPまで!
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