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あれから18年。江口名人が語る「ロックマンエグゼ」の描いた未来が現実になったワケ

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テレ東プラス

2020.1.17

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Twitterのハッシュタグで「#絶望的だが続編を待ち望んでるゲーム」が話題になり、それに伴って『ロックマンエグゼ』がトレンド入りを果たした。20~30代の男性にとっては、小中学生のころに夢中になった伝説のタイトル。いまでも根強いファンは多いようだ。

なかでも目についたのは、2000年代初頭に発売したゲームながら「ようやく時代が追いついた」というファンの声。『ロックマンエグゼ』は、携帯端末にインストールされたAIと共存しながら、サイバーテロの脅威へと立ち向かうゲームだ。ほかにも現代を先取りしたさまざまな設定が盛り込まれており、確かに未来を言い当てていたようにも見える。

今回は、そんな『ロックマンエグゼ』の今だから語れる舞台裏を、脚本を手掛け、作品のアイコンとしても前線に立った江口名人にインタビュー。なぜこれほど未来を予測できたのかを聞いてみた。

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ちなみに、この日はカプコンの東京支社から、テレビ会議でインタビューを行うことになった。これも「ロックマンエグゼ」で描かれた未来像のひとつだ。

もともとはホラーゲームだった。「綱引きシステム」というボツ案


──まずはロックマンエグゼが生まれた経緯から教えてください。

「じつは当時、"エグゼ"とはかけ離れた、ホラーゲームの企画を進めていたんですよ(笑)。ゲームボーイアドバンスにセンサーをつけて、プレイヤーのビビり度を検知するようなゲームを考えていました。その頃、大阪万博跡にあったエキスポランドで『バイオハザード』のお化け屋敷が開催されていたので、上司がチケットを持ってきて『視察に行ってこい!』と。仕事中なのに遊園地で遊んだのを覚えています」(江口名人)

──エグゼの「え」の字もないですね(笑)。

「そんなある日、急に別企画が立案されまして。当時はちょうどカードゲームなど、"集めて強くなるゲーム"が流行の最先端でした。そこに、弊社の得意なアクションゲームを軸にした収集要素で強くなるゲームを作れないか。そんなふうに、企画が"アクション×カードゲーム"に切り替わったんです」(江口名人)

──「バトルチップ」の原型はカードゲームだったんですね。

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「子どものアクション離れが進んでいたという、時代背景もありましたね。エグゼで意識したのは、アクションゲームが得意な子だけが勝てる構図を崩すこと。「強いチップを集めれば、アクションが苦手でも相手を圧倒できる」という、カードゲームの要素をいかに取り入れるかがカギでした。同じ理由で、引いたチップの組み合わせ次第で逆転できる「プログラムアドバンス」も実装されたんです」(江口名人)

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──なるほど。

「とはいえ、エグゼのバトルシステムが固まるまでには、だいぶ"試行錯誤"があって(笑)。たとえば、当初は「綱引きシステム」というものがありましたね」(江口名人)

──綱引きシステム!?

「製品版のエグゼはHPがゼロになると負けてしまうじゃないですか。けれども綱引きシステムは、相手にダメージを与えるとゲージが増え、逆にダメージを受けるとゲージが減る。そのゲージを押し切るか、タイムアップ時に優勢だったほうが勝利というルールだったんです。ただ、どうしてもテンポの悪さだったりシンプルじゃなかったりと苦労がありました」(江口名人)

──バトルが長引きそうですよね。

「アクション×カードゲームという前例のないゲームを作る以上、バトルシステムも斬新にしなくてはならない。そんなプレッシャーに当時の担当者も悩み続けていたそうですが、最終的には上司から『ややこしいことせんと、ヒットポイントで戦ったらええやん!』とアドバイスされて吹っ切れたと言っていましたね」(江口名人)

未来を予測できた理由は「大喜利」


── "電脳世界"という独自の世界観は、どのように構築されていったのでしょうか?

「そもそも無印版のロックマンって、ロボットじゃないですか。いわば、機械をベースにした世界観なんです。それに対して、"現代のロックマン"を作るとしたらどんなコンセプトになるだろう? そこで思い至ったのが、急速に普及しつつあった『インターネット』という答えでした」(江口名人)

──なるほど、最新のテクノロジーを取り入れ、新しい未来を再構築したわけですね。

「もうひとつ、当時はガラケーの時代だったことも大きく影響しています。いまでは子どもも当たり前にスマホを持っていますが、あの頃のケータイは大人のアイテム。子どもは大人の持ち物に憧れるものですから、それを擬似的に体験する"大人ごっこ"は世界観の軸のひとつになっています。1人1台、ケータイをモデルにした『PET』を持ち歩いているのは、そこから生まれた設定なんですよ」(江口名人)

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──大人ごっこ! 子供心を掴んだカラクリは、そこにあったのか......。

「テーマは『お兄ちゃん世代への背伸び感』。現実でもファンタジーでもない、将来的にありえる世界観を追求しました。難しい用語もわかるようにストーリー構成を組みながら、登場するガジェットもスマートなものにこだわるなど、世界観・シナリオ・ゲーム性・デザインに心を砕きましたね」(江口名人)

──今では誰もが知っているコンピューター用語も、昔はマニアックな知識だったかもしれません。

「主人公の熱斗くんたちが『バグ』『ウイルス』『ネットワーク』『エグゼ』などのコンピューター用語を多用するのも、意図的なものです。大人の使っているよくわからない横文字って、子どもから見たらすごくカッコいいんです。『バグが出た』とか、『ウイルスに感染した』とか、言ってみたいじゃないですか(笑)」(江口名人)

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──そんなロックマンエグゼの世界観ですが、未来を次々と的中させています。誰もがAI入りの端末を持ち歩いているのはもちろんのこと、家電がネットワークで管理されているのもスマートホームの先駆けですよね。なぜこれほど正確に、未来を予測できたのでしょうか。

「拍子抜けされるかもしれませんが、『こんな未来になったらいいな』というテーマで大喜利をして、設定を決めていっただけです(笑)。当時は電子レンジも冷蔵庫もネットに繋がっていませんでしたが、『もしも、家電をオンラインで管理できたらどうなるか』と。ネットワーク社会というコンセプトも良かったですね。『それならこうなる!』と、いろんな大喜利ができました(笑)」(江口名人)

──なんと! てっきり緻密な調査や、有識者へのヒアリングを重ねて作られたのかと思っていました。

「まぁ、『こうなったらいいな』は、テクノロジーを進化させていく根源的な欲求じゃないですか。それに現実が追いついてきているということは、人類はかつて夢見た世界へと近づいているのかもしれません」(江口名人)

ネットの暗部も表現した「裏ネットワーク」


──ロックマンエグゼではネットのリスクも鋭く描かれています。たとえば、悪いナビの集まる「ウラインターネット」など......。

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「あのモチーフは『インターネットの闇』ですね。当時のネットは、アングラ感のあるサイトも多かったですから。CD-ROMを郵送するとゲームをコピーしてもらえるような、正真正銘のダークウェブも存在しました。子どもにとってインターネットは、楽しいだけじゃなく怖いところでもあったと思うんですよ」(江口名人)

──子供にとっては近寄りがたい存在でもあったと。

「でも、お兄ちゃんだけが知っている怪しいサイトなんかもあって、それを見るなと言われるほど、見たくなってしまう子供心もあるじゃないですか。ウラインターネットは、そんなリアルな背伸び感も考えて作ったステージです。最近はSNSの"裏アカ"なんてものもありますから、いま『ロックマンエグゼ』を作ったら、ネットワークの描き方そのものが変わるかもしれませんね。『メイルちゃんに裏アカがバレた!』みたいな(笑)」(江口名人)

──『ロックマンエグゼ2』では、帯広シュンという天才少年がネットで悪い大人に騙されてしまい、サイバー犯罪に手を染めていくのが印象的でした。

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「ネットを通じたコミュニケーションって、当時としてはまったく新しい人間関係のあり方でした。光の部分も影の部分も含めて、『きっとこういうことが起こるんだろうな』という想像をストーリーに乗せていましたね。シュンくんの場合、ネット越しに大人のフリをして部下を動かしていましたが、それを極限まで誇張したら世界の存亡にも関わるんじゃないかと思って、脚本を書いていました」(江口名人)

──これも今となっては、リアルで起きても不思議ではない話ですよね。

「ただ、これは単にネットのリスクへと警鐘を鳴らしたかったわけじゃなくて。初代エグゼの販促ポスターに書いた『ボクらはつながっている』というキャッチコピーの通り、シリーズのテーマは人と人との繋がり。たとえネットを介していても、そこにいるのは生身の人間です。『人と会ったら挨拶しよう!』みたいな、"子どもたちにこう育ってほしい"という思いをストレートに描きました」(江口名人)

──ナビを「Siri」のようなAIアシスタントではなく、命あるパートナーにしたのも、それが理由でしょうか。

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「そうですね。主人と召使いのような関係ではなく、友達やパートナーとして共生する関係を意識しました。ロックマンの人格は、熱斗くんの双子の兄である彩斗くんでもありますから、家族としても寄り添う存在。また、命の重みを描く上で、人間では表現しにくい描写をナビに引き受けてもらいました。ナビは敵とのバトルに負けた場合、データが"デリート"されてしまうんです。漫画版のロックマンエグゼも、その要素はうまく活かされています」(江口名人)

──それは、どのようなシーンでしょうか?

「たとえば、熱斗くんのクラスメイトであるデカオのナビ・ガッツマンが、デリートされてしまう回があります。ガッツマンはバックアップデータで復活したものの、デカオは『バックアップで蘇ったガッツマンは、あのときのガッツマンじゃない』と悲しむんですよ。このように、人間で描写すると子どもにはヘビーになりすぎる要素を、ナビを通じて伝えられたのではないでしょうか」(江口名人)

「最後に判断するのは君たち」


──話を伺っていると、テクノロジーと向き合うヒントのようなものを感じます。『ロックマンエグゼ4』では、ラスボスのデューオが人類を悪だと判断した場合、地球を滅ぼすというストーリーでした。いまで言うところのAI終末論に近いですよね。

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「『4』はもともと『ダークチップ』というシステムからスタートしていて、善悪論がテーマでした。ダークチップとは、ゲーム内に登場する違法バトルチップで、めちゃくちゃ強力な反面、使ったら最大HPが減るリスクもある。使用するかしないかの判断はプレイヤーに委ねており、子どもたちに善悪を問いかける仕組みになっています。ここで伝えたかったのは、『ネットワークは使い方次第』ということ。誰もが心に悪の部分を持っていますが、それとどう向き合うのか。デューオはあくまでも裁定者であって、『最後に判断するのは君たち』という幕引きにしています。当然、正しい判断をしてねという思いを込めて」(江口名人)

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──便利な世の中になるほど、考えなくてはならないテーマですね。『ロックマンエグゼ』の世界と現実がリンクしていくなか、江口名人の目に現代はどう映っているのでしょうか。

「僕はまだまだインターネット黎明期だと感じています。技術的には大きく進歩しましたが、技術に対して人間のほうが追いついていない印象です。たとえば、SNSで匿名性を利用して悪口を書いたり、逆に正義を振りかざして集団で個人を叩いたり。インターネットに本当の意味での『人と人との繋がり』が根付いてきたら、ネット社会も次の時代に進むのかなと思いますね」(江口名人)

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累計3,500万本を超え、世界中で愛される「ロックマン」。伝説のレプリロイド「ゼロ」が活躍する「ロックマン ゼロ」シリーズと、ライブメタルとの出会いをきっかけに少年/少女の壮大な物語が描かれる「ロックマン ゼクス」シリーズの6作品を収録した『ロックマン ゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション』が、2020年2月27日(木)に新登場!どちらもロックマンの遺伝子を受け継ぐ歯ごたえのある難易度はもちろん、重厚なストーリーを楽しむことができる2Dアクションゲームだ。

公式サイト

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