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「カードを食べて味見しました」――時価数百万円の高額カードを集めるコレクターとは何者なのか?

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テレ東プラス

2020.4.1

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20~30代の男性たちが子供の頃にハマった、遊戯王やデュエル・マスターズなどのカードゲーム。漫画では「世界に◯枚しかないカード」なんて設定もあったが、それが現実になっているのを知っているだろうか?

今やカードゲームの世界には1枚が数百万円もの値段がつく超高額カードが登場し、それを探し求めるコレクターが実在している。さらには偽造カードを製造して売りさばくという、漫画の悪役さながらの犯罪者も出てきているとか。

今回は、そんな超高額カードを集めるコレクターさんにインタビュー。謎に包まれた入手ルートから資金源まで、知られざるブルジョワ・カードゲームの世界を覗かせてもらった。

海外の投資家が、投資目的でカードをコレクションしている


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こちらはカードゲームYouTuberのしゃまさんが手掛ける、コレクションカード専門店「エルドラード」。ショーケースに整然と陳列された懐かしのカードたちに、思わずテンションが上がる。

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出迎えてくれたのは、しゃまさんと......。

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マリク・イ◯ュタール(※)......ではなく、しゃまさんの知り合いの遊戯王カードコレクター・想い出さん。コレクター向けのコアな情報発信を行うブログ「遊戯王コレクションの世界」の運営者で、その道では有名な方なのだとか。

※漫画「遊戯王」の敵キャラで、作中では想い出さんが手に持っている「千年ロッド」の持ち主。

──よろしくお願いします。さっそくですが、本日は自慢のコレクションの一部を持ってきてくださったそうですね。

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想い出:今日は遊戯王の定番カード3枚を持ってきました。漫画の主人公・武藤遊戯の相棒カード「ブラック・マジシャン」、遊戯のライバル・海馬瀬人の魂のカード「青眼の白龍」、そして遊戯の親友・城之内克也の切り札「真紅眼の黒竜」ですね。

これらは第1期と言って、遊戯王オフィシャルカードゲームの初代シリーズに封入されていたカード。20~30代の男性なら、馴染みのある方も多いのではないでしょうか。

──おお〜、懐かしい! それぞれ、どれくらいの価値があるんですか?

想い出:定価はないので一概には言えませんが、"ブラマジ"と"レッドアイズ"は保存状態が完璧なら2万円、"ブルーアイズ"は3万円くらいですかね。私が買った3年前はどれも4000円くらいでしたが、一気に高騰しています。

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──たった3年で7~8倍に跳ね上がるんですね。

想い出:はい。カードの価値は一気に上がることも多くて、私のコレクションの中だと、購入時は10万円ほどでしたが、現在は推定100万円ほどになっているものもあります。

最近では高騰を見越して、カードを購入する投資家の方も多いんですよ。私の知り合いのコレクターさんでも中国の投資家さん、株のトレーダーさん、銀行マンさんといったお金にゆとりのある方が、コレクション収集と並行して、投資や資産運用のひとつとしてカードを集めています。

──投資家の方がカードコレクターに!? まったく想像していませんでした。

想い出:マジック・ザ・ギャザリングでは「ブラックロータス」という伝説的なカードがあって、完璧な状態だと1800万円くらいで取引されています。

それでも価値は上がり続けていて、最近ではウェブサービスを通じて複数の人間がお金を出し合い、投資商品としてブラックロータスをシェアするようなケースも出てきたんです。

cardgame_20200401_08.jpg▲カードゲームイベント「VABEL」に出展された「ブラックロータス」

──家が買えるじゃないですか......。

想い出:私は普通の会社員なので、最近の高騰にはついていけない部分もあるんですけど。ボーナスをやり繰りしたり、手元のカードを売ったりして、なんとか資金を捻出しています(笑)。

漫画の悪役が現実に? "リアルグールズ"も存在する


想い出:ほかにも今回、こんなカードを持ってきました。

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──これは......外側のイラストが見切れていますね。印刷に失敗したカードでしょうか。

想い出:ややニッチですが、こういった"エラーカード"にも希少価値がついています。特に遊戯王においては、日本版のエラーカードは価値が高くて。例えば、このエラーカードが仮に日本版であれば、エラーの種類や程度などを考えると、私なら予算10万円ちょっとの設定でお札を握りしめて交渉に向かいますね。やっぱり国内の工場のほうが仕事も丁寧なので、日本版のエラーカードはほとんど出回らないんですよ。

ちなみに......これは片方が偽造品なんです。判別できますか?

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──えっ。全然わからないです。

想い出:偽物はトラップカード(紫色)の方です。

製造工程を理解していれば見極めるのは簡単で、カードって基本的に「アンカットシート」と呼ばれる巨大なシートに大量のカードを印刷し、それを裁断機でカットして作るんです。つまり機械で切り取るので、切り目は直線的になるはずなんですが、このカードの外枠は微妙に歪んでいる。だから、人の手で作られた偽物だとわかったんです。

──なるほど。

でも、私がこのカードを購入したのは駆け出しの頃で、偽物だと気づけませんでした。2万5千円もしたので、高い勉強代でしたね(笑)。

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──それにしても、まるで高級ブランドのバッグみたいに、偽物のカードが存在するなんて驚きました。

想い出:遊戯王の漫画に、偽物のカードを製造して売りさばく「グールズ」という犯罪者集団が登場するのをご存知でしょうか。実は今、"リアルグールズ"のような存在が現実に暗躍しているんです。

──ええっ!?

想い出:本物そっくりのカードを作って、コレクターに高額で販売する連中ですよ。私が知る限りでもすでに2件、逮捕者が出ています。ほかにも仲間同士でグルになってカードを購入し合い、相場を吊り上げるようなケースもあって。

──偽物を摑まされたとして、見極められるものなのでしょうか。

想い出:ほとんどは肉眼で見ればわかりますが、中には本物と見分けがつかないくらい精巧に作られたものもありますね。ただ、私の場合、触ったら紙質でわかります。

特に遊戯王の第1期のカードは、現在の技術では再現できない紙質で作られています。その感触を指で覚えているので、偽物には騙されません。

cardgame_20200401_13.jpg▲海外版「暗黒騎士ガイア」の本物のエラーカード。名前が「LAST TURN」になっている。

──す、すごい。ほかに、偽物を判別する方法はあるのでしょうか?

想い出:あとは、文字のフォントが正規品と異なっていたりとか......。真贋(しんがん)判定の基準を増やせればと思って、味を確かめたこともありますね。

──(......?)

想い出:カードの材質が違うなら味も違うんじゃないかと思って、カードを食べてみたことがあるんですよ。そしたら案の定、インクの風味が違っていて。あとは食感ですね。硬かったり柔らかかったり、材質によってこれも違いが顕著です。

cardgame_20200401_14.jpg▲「舐めるだけじゃダメ。やっぱり噛まないと」などと、わけのわからないことを言っており......。

──あの、ひとついいですか。カードを食べるのはヤバイです。

想い出:はは、さすがに私以外、やる人はいないですね! 漫画「NARUTO」のキャラクターで大蛇丸っているじゃないですか。忍術を研究するために人体解剖をする......それに近い発想ですよ。よく考えたらカードが傷つくので、現在は食べるのを封印しているんですけどね!(笑)

高額カードはいかにして取引されているのか?


──わ、話題を変えましょう。こういった高額カードって、どのように市場へと出回り、売買されているんでしょうか。

想い出:最も一般的な入手ルートは、やはりカードショップさん。高額カードの入荷情報などを見て、実店舗で購入するパターンですね。あとはTwitterで個人のコレクターとやり取りしたり、eBayなどのオークションサイトで落札することもあります。

コアなコレクターになると、狙っているカードの持ち主を"特定"して、直接交渉することもあります。

──特定!?

想い出:たとえば、大会の優勝者に贈られた限定カードを探すとしたら、当時の雑誌とかを調べるんですよ。昔の媒体って大会の優勝者の実名が掲載されていることも多かったので、そこからFacebookを見つけて本人に話を聞いたり、ウェブ上に残っている取引の記録を辿ったりして、カードの行方を芋づる式に追っていきます。

すると、どこかで情報が途切れて、最終所有者と思われる人が見つかる。こうして交渉を持ちかけるんです。

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──もう探偵の仕事ですね。想い出さんご自身も、そうやってカードを入手したことがあるのでしょうか。

想い出:カードを入手したことはないですが、先ほどの偽造品の出どころを推理したことはありますね。

──そんなことができるんですか?

想い出:説明した通り、このカードは誰かがアンカットシートをエラーカードに見せかけてカットしたものです。ただ、気になったのがこのカード、よく見ると黒いテープを剥がしたような跡があるんですよ。普通、アンカットシートにこんな黒いテープのような跡はつかないはずなので。

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想い出:そこで思い出したのが、海外の大会の賞品としてアンカットシートが配布されたという話。「もしかしたらそのシート、黒いテープで額縁などに貼られていたんじゃないか?」と閃きました。調べてみると、実際にそのシートに同じカードが印刷されていて、黒いテープで貼り付けられていたんです。

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──つまり、そのシートを入手した誰かが偽物を作ったと。名推理すぎる!

想い出:ほかにも、ずっと謎に包まれていた「トライホーン・ドラゴン」というカードの流通枚数を暴いたこともあります。"東京ドーム事件"って、知っていますか?

──わからないです。

想い出:1999年の夏、遊戯王の全国大会が東京ドームで行われたんですよ。ただ、その日は予想外の混雑にオペレーションが追いつかず、大会が途中で中止になってしまった。それで、同年の冬に大会が再開催されたんです。

この大会の参加者約1万2000人に配布されることになっていたのが、「トライホーン・ドラゴン」でした。ですが、冬の大会だけで配布されたのか、中止になった夏の大会でも配布されたのかが、長年わからなくて。

そんな中、私が入手したのが、冬の大会の参加者に送られた招待状。そこには「今回ご案内の皆様には、8月26日の大会ご参加の方にお渡しする予定でありましたカード(トライホーン・ドラゴン)をお送りさせていただきます」という一文が記載されていたんです。これにより流通枚数が1万枚であることが判明し、相場も高騰しました。

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──おお......。それは見つけた瞬間、めちゃくちゃ盛り上がりそうですね。

想い出:その日は少し高めのクラフトビールと、普段は食べない高級なおつまみを買って、ひとりで乾杯しました(笑)。コレクターはカードを収集するだけじゃなく、こうやって研究したり発見したりするのも楽しさのひとつなんです。

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──夢中になる理由が少しわかった気がします。最後に改めて、カードをコレクションすることの魅力について教えてください!

想い出:コレクターになる動機は人それぞれだと思いますが、私の場合は「昔やり残したことを、大人になって実現する」という意味合いが大きいですね。

子供の頃、憧れのレアカードって、滅多に手に入らなかったじゃないですか。親からもらった300円のお小遣いを握りしめて、当たってくれと祈りながらブースターパックを買うんですが、なかなか当たらない。だからレアカードを持っている子供は、それだけでヒーローだったんです。

でも、大人になった今、そんな憧れのカードたちを自分の意思で入手できるようになった。カードをコレクションするのは、純粋な子供心なんですよ。まあ、私はちょっとこじらせて、カードを食べるようになってしまいましたけどね(笑)。

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投資家が参入し、リアルグールズが登場。時には探偵のごとき手際で、憧れの1枚を探し求める。予想の遥か上をいくカードコレクターの世界には、"ブルジョワ"の一言では言い表せない魅力が詰まっている。

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