森山未來「神戸でアーティストとしてもっと面白く遊びたい」アーティスト・イン・レジデンスへの思い

artiste_20221009_03.JPG「アーティスト・イン・レジデンス神戸(AiRK)」にて

森山「“こうなって欲しい”と僕らが決めすぎると、アーティストの選び方やアーティストがやることも、ある程度予測がつく範囲内にとどまることになる。そうなると神戸の更なるポテンシャルを引き出すどころか、もしかすると狭めてしまいかねない。僕は神戸でアーティストとしてもっと面白く遊びたいし、面白い人たちが集まってきて一緒に遊べるようにしたくて。だからこそ地元の人たちとどういう風に繋がっていくのかというところは、運営側がアーティストごとにデリケートに進めていかなくてはいけないと思います」

「たとえば、町会というコミュニティがとりあえず見やすいので彼らを地元と言ってしまいますが、街には町会に入っていない住人も多くいる。その人たち全てに対しても届けていく責任があるんですよね。アーティストがそれぞれの視点や専門性から街で制作をすることによって、これまで出会うことのなかった新しいコミュニティの人がどんどん遊びに来くると思いますよ。

ちょうど先週、『PARADISE AIR』でも、スペインのバスク州から来たアーティスト4人のオープンスタジオに、バスク州内の町・ビルバオに3年住んでいたという日本人の親子が遊びに来てくれて、スペイン語で楽しくお話していました。そんな光景って、今まで思っていた“地元”と何か違うじゃないですか。JAZZミュージシャン、ジュエリーアーティストが滞在している時、それぞれ違う人が遊びに来るのが面白い。地元の人たちにとっても僕らにとっても楽しい。そういうことをシェアできるといいかなと思います」

artist_20221009_008.jpg千葉県松戸市「PARADISE AIR」バスクのアーティスト滞在時の様子(撮影: 加藤甫)

――松戸にはこれまで500名を超えるアーティストが滞在していますが、生活のサポートはどのように?

「アーティストに対して、『PARADISE AIR』の来歴やコンセプト、これまでの活動内部については丁寧に説明しますが、例えば街の飲み屋については敢えて教えないようにしていたりします(笑)。そうするとアーティストは自然と自分で店を開拓しています。運営している僕たちが知らない店の人ともコミュニケーションをとることから始めて、街なかで新しい繋がりをつくってくれる。コロナ禍で日本人アーティストが滞在するようになって実は『PARADISE AIR』はどうやら僕たちが思っているよりも地元で知られているということがわかりました」

森山「自分もお酒が好きということもありますが、お酒の場でのコミュニケーションは大事だと思っています。田舎を訪ねた時はスナックに行くようにしていて。地元で昔から店をやっているママとしゃべると、一般的な観光情報とは違うその土地のコアなことを聞けたりするので」


――運営資金はどのように調達されていますか?

「当初は、長期的な持続性を考えて家賃収入で得た自分たちの予算を中心に運営していましたが、今は文化庁の助成と松戸市の予算と自己財源の三本柱ですね。複数の財源を得ることによって、国としての国際的な文化的プロジェクトの実施や市としての地域への貢献などそれぞれに責任が生まれます。街を拠点にすることで、年間に60人程のアーティストが国内外からやってきて来て何かしら活動をするわけですが、それがアーティスト個人だけでなく、様々な方向にむけて価値が生まれると思っています。

レジデンスはアーティストを受けいれる側の責任が当然あります。運営側に意思があってできるもの。惰性でやっても仕方がないので、始めた当初から、いつでもやめられるという選択肢を持ち続けています。でも実際のところは、面白い話がどんどんくるのでやりたいことがつきないですね」

森山「僕らは立ち上げて間もないので、財源や運営面を整えながら、これから3年で目指す形にしたい。そこから先は今の時点ではまだわからないです。神戸に集まってくるアーティストたちと、さらに場を開くようなことをしていくかもしれないし…。まずは来年オープンコールができるようにしていきたいと思います」

今回の対談は神戸のAiRKで行われた。個室には森山さんが持ちこんだオブジェが飾られ、ラウンジには閉店したタンゴバーから譲り受けたアンティークの調度品が並ぶ。落ちつきと温かみのある空間だった。おふたりの話をうかがって、新しい表現の思索と実験の場であるアーティスト・イン・レジデンスだからこそ、何をどう発信して記録していくかが大切だと思わされる。日本各地のレジデンスの展示を見ると興味深いものも少なくない。全国のさまざまな土地で滞在制作をするアーティストを広く紹介していく情報サイトがあったらいいのではないか。いろいろな広がりが考えられそうだ。

【プロフィール】
森山未來(もりやま・みらい)
1984年8月20日生まれ。兵庫県神戸市出身。ダンサー/俳優/アーティスト。5歳から様々なジャンルのダンスを学び、15歳の時に舞台デビュー。2013年には文化庁文化交流使としてイスラエルに1年間滞在し、Inbal Pinto&Avshalom Pollak Dance Companyを拠点に活動。映画「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年)、ドラマ・映画「モテキ」(テレビ東京系)、初の海外公演となる舞台「テヅカ TeZukA」(2012年)、大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」(NHK総合)、数々の賞を受賞した映画「アンダードッグ」(2020年)など、出演作多数。また、2021年、「2020年東京オリンピック」開会式にでダンスなどのパフォーマンスを行った。2022年10月15日(土)より、森山未來×中野信子×エラ・ホチルド パフォーマンス公演「FORMULA」を上演(東京・仙台・福岡・大阪・名古屋・高知)。
オフィシャルサイト
Instagram:@ mirai_moriyama_official

「アーティスト・イン・レジデンス神戸(AiRK)」公式サイト
Instagram:@ airk.kobe
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森純平(もり・じゅんぺい)
1985年生まれ。建築家。「PARADISE AIR」ディレクター。東京藝術大学建築科大学院修了。主な活動に遠野オフキャンパス (2015年~)、「八戸市美術館(共同設計=西澤徹夫、浅子佳英)」(2021年)、東京藝術大学美術学部建築科助教(2017年)。たいけん美じゅつ場VIVA基本設計/共同ディレクター(2019年~)など。
Instagram:@junpe1

「PARADISE AIR」公式サイト
Twitter:@paradise__air

森山未來
ヘアメイク/橋本佳奈
スタイリング/MASAYA MIYAZAKI

(森山未來・森純平 撮影/uufoy 取材・文/榊原生織)

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