【「男はつらいよ」撮影秘話】美保純が明かす渥美清の言葉―コンプレックス救った“寅さんの教え”

【「男はつらいよ」撮影秘話】美保純が明かした渥美清の言葉――コンプレックス救った“寅さんの教え”▲左から、美保純、山田洋次監督、北山雅康

BSテレ東では、土曜は寅さん!映画「男はつらいよ」(毎週土曜 夜6時30分)を放送中!

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月31日(土)、11月1日(日)に12回目となる「寅さんサミット2026」(東京・葛飾区)が開催。往年のファンが集う中、特設ステージに山田洋次監督、タコ社長の娘・朱美役を演じた美保純、「とらや」(第40作から「くるまや」)の店員・三平役を演じた北山雅康が登壇、スペシャルトークショーが行われた。

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澄み渡る青空の下、「おかえり!」の声――12回目を迎えた「寅さんサミット」

3人が登壇すると、会場を埋め尽くしたファンから割れんばかりの大きな拍手が湧き起こり、山田監督は「こんなにたくさんの方が詰めかけてくださって本当に嬉しいです。こうして毎回たくさんの人が来てくださるということは、寅さんの作者として本当にありがたいこと」とコメント。

【「男はつらいよ」撮影秘話】美保純が明かした渥美清の言葉――コンプレックス救った“寅さんの教え”
美保は抜けるような秋空を見上げながら、「今日はよく晴れて、寅さんの映画に出てくる空みたいですよね。凧揚げがよく似合う、“夢のシーン”があった頃の空だなと思ってすごく嬉しくなりました。『朱美、参上いたしました! 朱美、上等!』よろしくお願いいたします!(笑)」と挨拶。北山は「今年もまた柴又に伺うことができて、皆さんと楽しい時間を過ごせるのが本当に幸せです!」と温かい笑顔で呼びかけた。

コロナ禍の頃、気分が落ち込んだ際、柴又の土手を訪れたという美保。
「土手を歩いて、駅前でさくらさんの銅像を見つけて挨拶し、寅さんの銅像を抱きしめて心を温めて帰った」というエピソードを披露すると、山田監督から「今度は純ちゃんの銅像を建てよう!」と提案が。
「えっ、銅像建てます!? ポーズはどうしましょう。初登場の時みたいに、ショートパンツにシャツをインしながら歩いてくるようなポーズがいいですかね?」と美保。

【「男はつらいよ」撮影秘話】美保純が明かした渥美清の言葉――コンプレックス救った“寅さんの教え”

タコ社長の娘・朱美は、第33作『夜霧にむせぶ寅次郎』で初登場。ひどい寝癖に着崩したオレンジ色のトレーナー姿で現れ、強烈なインパクトを放った。
美保が「今見返すと、タコ社長もよく同じようなピンクやオレンジを着てるんですよね。意図せず親子だったんだなって…」と振り返ると、山田監督が朱美の誕生秘話を明かした。
「タコ社長は相当強烈な個性を持った人だから、その娘もかなり個性的で強い人じゃないと釣り合わない。とても良かったよ、あなたの娘さんは。美保純という女優の中から自然とイメージが湧いてきた。芝居の形もすべて」。

現場では、振り返ってはいけないところでアドリブで振り返ったり、ダメと言われるところまで自由にやっていたと語る美保。目立ちすぎる赤い靴下を履いてきて、監督に「脱ぎなさい」と注意されたことも。山田監督は、そんな自由闊達な芝居を愛していたと語る。
「アドリブが必ずしも良いわけではない。でも、この人のアドリブは時々とても素敵なことを言う。それを僕が監督として選ばせてもらった」。
奔放でありながらどこか切なさを抱える朱美…キャラクターの魅力は、こうして育まれていたようだ。

計算された笑いではなく「自然さ」こそが真実の芝居

話題は、昭和を代表する名優、車寅次郎役・渥美清との思い出へ。
「(渥美は)お兄ちゃんのような存在でした。(自分は)変に固まらず芝居ができた。若い頃、私は目が小さいのをすごく気にしていたんです。芸能界でやっていくには目がパッチリしていなきゃいけないんじゃないかって、一生懸命アイラインを太く引いていて。
そうしたら渥美さんが『俺だって目が小さいけれど、芝居をやれてる。芝居は目の大きさじゃないんだよ』と言ってくださった」(美保)。

渥美は美保に、視線の動きを実際に見せながら教えてくれたという。
山田監督は深く頷きながら、「渥美さんの小さな目が、ふっと潤んだり、キラッと輝いたりする。悲しい表現も目だけでできる。ものすごく表現が豊かなんです。映画館の大きなスクリーンを見るとき、観客はだいたい俳優の“目”を見ている。だからこそ、目で何を語れるかが重要」とコメントした。

【「男はつらいよ」撮影秘話】美保純が明かした渥美清の言葉――コンプレックス救った“寅さんの教え”

さらに第36作『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』のエピソードへ。夫婦げんかの末、家出した朱美を寅さんが迎えに行き、道ですれ違う名シーンについて語られた。
「朱美が田中隆三さん演じる男性と歩いている時、マドンナ(栗原小巻)を連れた寅さんとバッタリ会って、お互い“よそゆきの顔”ですれ違うんですけど、あの白々しい空気感が最高でした」と美保。そしてその撮影の合間、渥美に「お前、今ちょっと芝居を若ぶってるな」と指摘されたことがあったという。
美保が「君は十分若いんだから、普通に階段を上ればいい。女優として“ちょっとでも若く見せたい”といういやらしい部分が出ていたんでしょうね(笑)」と打ち明けると、「“そのままの君で十分魅力的なんだよ”と言ってくれたんだな」と山田監督。
この渥美の助言は、後の美保の役者人生において大きな影響を与えたという。

また劇中、寅さんが一人暮らしの男の部屋を訪ねた際、畳に上がって「お前の部屋はざらざらするな!」と足の裏を気にするシーンがあり、美保が「あれってアドリブですよね?」と問うと、山田監督が芝居の本質について語る一幕が。
「あれは、笑わせようとか、面白い芝居をしようと思って言ったんじゃないんだよ。(部屋に上がった瞬間、足の裏で感じて)自然に出てきた言葉なんだよね。役者がよく言うアドリブとはずいぶん違うんだね。もっとこう自然なんだな」。
この言葉に美保も共鳴。日々の何気ない生活や“俳優ではない何者でもない自分”を大切にすることこそが、嘘のない芝居をするための土台になる――役者としての神髄が垣間見えた瞬間だった。

第50作の秘話――山田洋次監督が寅さんに託した「平和への祈り」

 【「男はつらいよ」撮影秘話】美保純が明かした渥美清の言葉――コンプレックス救った“寅さんの教え”

シリーズ50作目となる映画『お帰り 寅さん』では、美保と北山の共演が実現。
「私は第40作から参加させていただいたので、朱美さんとはすれ違いでした。50作目で初めて茶の間に上がることができて、朱美さんの隣に座れたんですよ」と北山。
しかし、しんみりとした法要のシーンの合間も、美保が隣で「まだ終わんないの?」と小声でアドリブを仕掛けてきたそうで、北山は「おかしくておかしくて…でも楽しかったです」と語り、会場は笑いに包まれた。

さらに第50作では、青年になった朱美のやんちゃ息子が登場し、あおられた三平が「お前何言うてんねん、アホか!」とたしなめる下町らしい名場面も。タコ社長から朱美へ、そしてその息子へと受け継がれるやんちゃさと人間味に触れ、美保と北山は納得した表情に。

最後は、ファンに向けたメッセージが送られた。
「全国のイベントで皆さんからいただく温かい寅さん愛に、いつも元気をいただいています。こうして柴又で監督の隣に座れたことに心から感謝しています」(北山)、「柴又の駅前に、朱美がヤンキー座りでたこ焼きを食べている銅像が立つ日を夢見ています(笑)。また土手を歩きに来ます」(美保)。

【「男はつらいよ」撮影秘話】美保純が明かした渥美清の言葉――コンプレックス救った“寅さんの教え”

そして最後にマイクを握った山田監督は、会場の空を静かに見上げ、
「今日、純ちゃんや北山くんが楽しそうに話している間、僕はずっと柴又の空を眺めていました。今日は本当に綺麗な青い空です。その下で、黄色い旗や黄色い風船が揺れている。ブルーとイエローのコントラストを見て、ふと気づいたのがウクライナの国旗です。今、彼らは非常に苦しい戦いを強いられている。考えたら、寅さんという主人公は、自分が騒動の原因でありながら、誰よりも争いを嫌う人間だったんじゃないかな。寅さんが今生きていたら、きっとウクライナをはじめ世界中が平和であればいいと願うであろう…ふとそんなことを思いました。今日は平和を象徴するような気持ちのいい日、寅さんサミットを楽しんでください」と語り、トークショーを締めた。

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