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私語厳禁のカフェ「アール座読書館」が現実逃避できるワケとは?

グルメ

テレ東プラス

2019.3.16

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東京・高円寺にある"私語厳禁"のカフェ「アール座読書館」をご存知だろうか。店内はおしゃべり禁止で、スタッフも囁くようなウィスパーボイスで話しかけてくれる。静寂の帳は常に下り、おとぎの世界のような雰囲気のなか読書や考えごとに没頭できる。

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こんなお店を待っていた......!

ごちゃごちゃとした都会の喧騒。それに疲れた人間には、まさにオアシスのような場所である。

一方で、カフェといえば「おしゃべりの場」というイメージもある。それを覆すユニークなコンセプトは、一体どこから生まれたのだろう?

ということで、開店前のアール座読書館に訪問。店主の渡辺さんの"私語"を解禁し、お店を立ち上げたきっかけや、その裏にある現実逃避の哲学(!?)などを聞かせてもらった。

お店を立ち上げたきっかけは「現実逃避の場所作り」

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――渡辺さんはどうして"私語厳禁"のお店を立ち上げようと思ったんでしょう。

「大学を出て働いていたころ、TO DOリストに追われるような毎日に疲れていて。そんな生活から逃げ出すように静かな喫茶店を探していたんですが、東京はそういう場所が全然ないんですよ」

――確かに、どこに行っても喧騒がつきものです。

「『あそこに行けば、日常を忘れて一人の時間に没頭できる』というお店が一軒くらいあってもいいのに、って感じていました。仕事がさらに忙しくなってからは、その思いが一層強まりましたね。この国には"現実逃避"できる場所が必要だ! って」

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――現実逃避、ですか?

「はい。現代の世の中では、皆さん仕事でスケジュールがびっしり詰まっていて、自分と向き合う時間なんて一切ないじゃないですか。課題を一つクリアしては、次の課題を追いかける毎日。それも確かに立派なことですが、それ以外の大切なことに目が向かなくなるリスクもあります。

そんなときに必要なのは、日常から少し距離を置いて、その時間だけでも"まあいいや"って現実を忘れること。それによって『自分はなんでこの仕事をしてるんだっけ?』『自分はこれからどうしたいんだろう?』と、自分の足元を見つめ直せるんです」

――日々の仕事に追われていると、自分の現在地を振り返る時間ってないですね。『現実から逃げちゃいけない』ってプレッシャーもあるから、目先のことばかり考えてしまう。

「現実逃避って、言い換えると"自分を俯瞰すること"だと思います。現実から一歩身を引くことで、今の自分がフラットに映る。だから、自分のお店を立ち上げようと思い立ったとき、現実を離れて心を休める場所にしたいなと。それを突き詰めていった結果、私語厳禁のカフェになったんです」

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言葉ではなく「気」で交流。"私語厳禁"が生んだ不思議なコミュニケーション

――無音の空間も独特の世界観も、現実逃避を実現するために作られているんですね。だとするとやっぱり、お店に来ることで現実の辛さを忘れたり、癒されたりしている人は多いですか?

「だったら嬉しいんですが、どうでしょうね......。お客さまと密に言葉を交わすお店じゃないので、本当のところはわからないです。でも、言葉を交わさない分、店内では『気の交流』が頻繁に行われているんですよ」

――気の交流!?

「はい。たとえば、ちょっと疲れた雰囲気のお客さまに対して、『ゆっくりくつろいでくださいね』という気持ちで接客する。するとお客さまも、ちょっとした気配から『ありがとう』という気持ちを見せてくれる。言葉を交わしているわけじゃないのに、心が通じ合っているような瞬間があるんです」

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――おお......それはこのお店ならではですね。

「それがお会計のときの『また来ます』などの一言で、一気に清算されるんですよ。シンプルな言葉ですけど、お客さまにとってはあえて言わなくても構わない言葉。それを伝えていただけた事実が、『やっぱりこう思ってくれていたんだ!』って一本の糸で繋がるんです」

――すごく素敵な瞬間です。

「だからこそスタッフ一同、気の交流は意識するようにしていて。たとえば、会社帰りの時間帯にいらっしゃったOLさんが、疲れた雰囲気でぼーっと水槽を眺めていたとしますよね。そんなときは、当てずっぽうでもいいから『このお客さまは会社でこんなトラブルがあって、上司の方に怒られて......』みたいに、お店に来店した背景を想像する。そうすると、こちらから『気』の働きかけが自然と生まれるので、気持ちを通わせやすくなるんです」

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誰かの心を知り、誰かに心を伝える「落書き帳」

「お客さまとの交流という意味では、お店に置いている『落書き帳』も長年親しまれています」

――落書き帳?

「はい。いくつかの席にある引き出しを開くと、手のひらサイズのメモ帳が入っています。そこには文章でもイラストでも、お客さまが好きなことを書いていいんです。悩みや葛藤、未来への抱負、なかには恋文のようなものまで。皆さん、普段は内に秘めていることを思い思いに綴っています」

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――こんなにたくさん。2011年から続いているんですね。

「落書き帳を読むために来店されるお客さまも多いんですよ。疲れたとき、人生の道に迷ったとき、同じように悩みを抱えていた誰かの言葉は力になります。落書き帳が、お客さま同士の時間を超えた交流になっているんです」

――今日は、温かくてちょっと不思議なお話を聞かせてもらいました。最後に、今後の展望を教えてください。

「やりたいことは色々とありますが、まずはこのお店を守ること。誰かが現実で疲れたとき、いつでも逃げ込める場所として在り続けたい。ささやかですが、それが一番の願いですね」

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【取材協力】
アール座読書館
住所:東京都杉並区高円寺南3-57-6 2F
営業時間:平日13:30~22:30(L.O 22:00)、土日祝12:00~22:30(L.O 22:00)
定休日:月曜定休(祝日の場合は営業。翌火曜休み)
http://r-books.jugem.jp/

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