「骨粗鬆症と痛風の予防法とは」リウマチ内科医・中山久德先生に相談~「主治医が見つかる診療所」~

10年以上愛されて続けてきた知的エンターテイメントバラエティ「主治医が見つかる診療所」。この番組では、現役で活躍中の医師たちが出演し、医療に関するさまざまな情報を分かりやすく解説してくださいます。


同番組のレギュラー医師に、読者から寄せられた健康情報についてお聞きしている「主治医の小部屋」。今回は、リウマチ内科医の中山久德先生に、女性に多い骨粗鬆症と、男性に多い痛風について相談してみました。


Q:閉経後の女性がなりやすいといわれている骨粗鬆症ですが、近年、働きざかりの男性や子どもでも骨粗鬆症患者が増えているといわれています。罹患するメカニズムと若いうちからできる予防対策について教えてください。


「大人になってからの骨は一見何の変化もないように思われますが、実は古い骨を壊して新しい骨で埋めていくという新陳代謝を常に繰り返しているのです。女性の方では女性ホルモンが骨の壊しすぎを抑えて骨密度を減らさないよう作用しています。しかし、閉経して女性ホルモンが少なくなると、この働きが弱まり骨をどんどん壊していき、新しい骨を作ることが追いつかなくなるため骨がもろくなってしまうんですね。これが骨粗鬆症の原因です」(中山先生、以下同)


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「男性の場合、女性と異なり閉経のような劇的なホルモン変化がないため急激に骨密度が落ちることはありません。ただし男性も50歳ころから徐々にじわじわと骨密度は下がっていきます。骨粗鬆症は女性に多い病気だからと油断していると、男性も70歳を過ぎたあたりから女性よりむしろ骨折率が上回るというデータもあります。
歳を重ねていくと骨はもろくなり骨折しやすくなります。これは健康寿命を短くしてしまう主な原因の一つです。したがって、前もってなるべく骨密度を高くしておく、つまり骨貯金することが大切です。そのため、男性も女性も、若いうちから骨に対する意識を高めて、骨を丈夫にする運動と食事に気を付けていただくのがいいでしょう。


運動では、骨にインパクトを与えるようなもの、太極拳やエアロビクス、がいいと言われています。体にいいとされる水泳は、水の中では骨に負担が掛かかりにくいため、残念ながら骨粗鬆症予防にはあまり効果がありません。
特別な運動をしなくても、日常生活の中で、例えば電車を待っている時間などに、かかとを上げてストンとおろす、この運動をするだけでも効果が期待できます。


食事では、骨を強くするにはカルシウムだと思っている方が多いと思います。確かにカルシウムは骨の材料ではあるのですが、実は腸からの吸収効率はあまりよくないのです。吸収率が高いといわれる牛乳でも、その中のカルシウムの半分程度しか吸収されません。


そのためカルシウムの吸収を高めるビタミンDと併せて摂取することがおすすめです。例えば、きのこや鮭、うなぎなどにビタミンDは多く含まれます。また適度に日光に当たることで皮膚でもビタミンDは作られるのです。ビタミンDは骨を丈夫にするだけでなく転びにくくなる効果があるとも言われています。


他にも、緑黄色野菜や納豆に含まれるビタミンKもいいでしょう。さらに骨のカルシウムの状態を良くするマグネシウムも重要です。また、意外と知られていませんが、骨の体積の半分はコラーゲンからできているのでタンパク質もとても重要です。タンパク質をとらなければ、筋肉だけでなく骨ももろくなってしまうんです」


Q 最近、30代前半の同僚が、まだ若いのに痛風と診断されて飲酒をセーブするようになりました。反面教師でこれを機に私も気をつけたいと思います。一度痛風になったら治らないという噂も聞きます。そもそも一度かかってしまったら治らないのでしょうか?


「痛い病気として有名な痛風ですが、最近では若くても痛風になる方も多く、会社が休みの土曜日などは、私のクリニックにも多くの痛風の患者さんが来られます。


痛風は尿酸値が高い方に起こります。血液中の尿酸が高すぎると関節にこびりついて結晶化してしまいます。この結晶が何かの拍子にぽろっと剥がれ落ちると、体はそれを異物だと判断し、退治しよう!と炎症細胞が集まってこれを攻撃します。これが痛風発作で、ハンマーで殴られたような強い痛みが起こります」


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「痛風発作はしばしば繰り返し起きます。薬を飲んで尿酸値が下がったからもう痛風発作が起きないかというと、決してそんなことはありません。痛風発作を起こしたときにはかえって尿酸値は低いことが多いのです。痛みが落ち着いてまた血液検査をすると、たいてい尿酸値は高くなっています。
痛風発作の痛みは通常1~2週間で収まります。そこで、治療をやめてしまう方が多いのですが、尿酸値の高い状態が続いていた方は、関節に結晶が残っている可能性が高く、その後も痛風発作を起こすことはあり得ます。過去に尿酸値が長期間にわたり高かった人は血液検査での尿酸値が低くなっても関節の尿酸結晶はまだ残っていることが多く、その様子は超音波検査で確認できます。こうした結晶はゆっくり血液の中に吸収されていきますが、それには年単位の時間が必要です。結晶が残っている間は、尿酸値を下げる治療を続けてください」


――痛風にかかる原因や予防法について教えてください。


「脱水症状のときや激しい運動のあと、あるいは深酒のあとの二日酔いの状態のときなどは、痛風発作が起こりやすいです。
尿酸のもとはプリン体ですから、ビールやレバーなど、プリン体を多く含むものの大量摂取は控えたほうがいいでしょう。ではビール以外ならお酒は大丈夫なのかというと、残念ながらアルコールは全般的に尿酸値を高める作用があります。お酒は飲みすぎないこと、そしてお酒を飲むときは、水も一緒に飲むようにしてください。また清涼飲料などに含まれる果糖の摂りすぎも尿酸値を高めますので注意が必要です。


体内で尿酸が作られても、どんどん捨てれば尿酸値の上昇は抑えられます。尿の酸性度が高いと尿酸が溶けにくくなりたまりやすくなるため、尿をアルカリ化しておくとよいです。そのため、野菜や海藻類を普段から多く食べて尿をアルカリ化させましょう。また、牛乳に含まれるカゼインは尿酸を捨てるのに役立つと言われているので、乳製品をとることをおすすめします」


痛みが治まっても、節酒が必要なのですね。正しい予防法を知り実践することは大切です、健康のため日々の生活にアドバイスを役立てていきましょう。中山先生、ありがとうございました。


今回お話を伺った中山先生も出演する「主治医が見つかる診療所」は、毎週木曜夜7時58分から放送中です。次回放送をお楽しみに!レギュラー医師の皆さんの「主治医の小部屋」の特集もまだまだ続きます。

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