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「日本に住む」ことを選んだ外国人にスポットをあてる「ワタシが日本に住む理由」(毎週月曜夜9時~)。伝統文化や伝統工芸、四季折々の光景、和食の味、日本人の性格など、日本人が気づかないニッポンの魅力を、彼らの生活ぶりとあわせて紹介します。
5月14日(月)の放送には、カナダ・トロント出身で日本在住28年のアンドリュー・デュアーさん(56歳)が登場しました。デュアーさんが日本に来た目的はなんと「紙飛行機」。「紙飛行機は日本の大切な文化の一つ」だと熱く語り、故郷の仕事を捨ててまで来日したデュアーさんは、今も岐阜県で紙飛行機を飛ばす日々を送っています。
日本と紙飛行機への思いを募らせて来日
1961年にトロントで生まれたデュアーさんは、10歳の時に誕生日プレゼントとして父親から紙飛行機の本をもらいました。それは第1回国際紙飛行機大会の記録を集めた本。その大会では日本人の二宮康明氏が優勝しており、「二宮さんの紙飛行機だけ、ほかの紙飛行機と全然違う」「ほかは折り紙だったけど、二宮さんのは切り紙だった」とデュアーさんは振り返りつつ、当時の衝撃を語ります。
すぐに二宮さんにファンレターを出すと、二宮さんから紙飛行機の本がデュアーさんに送られてきました。それは紙飛行機の型紙を集めた本でページを切り取って使えるようになっていましたが、切り取ることが惜しかったデュアーさんは、自分で用意した紙に型を写して紙飛行機を作っていたとか。その型紙の本は今でも大切に保管してあります。
大学に進学すると、デュアーさんは川端康成の小説「雪国」と出会い、日本の純文学にも興味を持つようになります。「描写や文章が美しい。翻訳を通してもキレイ」と、日本文学の魅力を語るデュアーさん。1985年には日本にいるカナダ人の教授を頼って初来日も果たしました。
帰国後、トロント市の図書館で司書として働き始めたデュアーさんですが、1年ほどで仕事を辞めて再来日。今度は慶應義塾大学へ留学して図書館情報学を学ぶことに。その時の心境を「紙飛行機は投げたらいずれ地面に着く。でもチャンスという上昇気流を捉えたらそれにのって上へ行けるかもしれない」と、紙飛行機に例えて話してくれました。
再来日したデュアーさんは福島県の大学で働く機会を得て、2001年には同僚の女性と結婚して子どもにも恵まれました。その後、子どもたちの英語教育のことを考えて、家族そろってカナダへ帰国。ところが、すぐにデュアーさんの胸中には「日本へ戻りたい」という気持ちが沸き起こってきます。
紙飛行機や日本文学に触れる機会も少なくなってしまい、「自分のやりたいことがカナダではできない」と感じたデュアーさんはまたもや日本行きを決意。一度ならず二度までも、故郷の仕事を捨てて日本に住むことをデュアーさんは選んだのです。決め手となったのはやっぱり「紙飛行機ができる場所に住みたい」という熱い思いでした。
紙飛行機が似合う風景の中で、家族と送る幸せな暮らし
2013年に日本へ戻ってきたデュアーさんは、現在は東海第一幼稚園の園長先生として働いていて、園児たちといっしょに紙飛行機を飛ばす日もあるとか。また、東海学院大学では図書館情報学の教授も務めています。
岐阜市の街並みを歩きながら、桜並木や芝生の広場を見つけては紙飛行機を飛ばすデュアーさん。「日本の風景には桜があって山があって海があって...紙飛行機が似合う風景がたくさんある」と語ります。
3年前に新築したマイホームは決して豪華ではありませんが、「紙飛行機を飛ばしたり飾ったりできるように」というデュアーさんのこだわりを凝縮。部屋の天井には30年間作ってきた自作の紙飛行機が1000機以上も吊るしてあります。
番組の終盤、地元の美濃和紙で紙飛行機を作ったデュアーさんは長良川の河原へ向かいます。「日本の好きな風景」について尋ねられると、「長良川のような美しい自然の中で、紙飛行機を飛ばして浮かす風景」だと胸の内を告白。大空に向かって紙飛行機を飛ばすデュアーさんは、まるで少年のような笑顔を浮かべていました。