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テレ東
10年以上愛されて続けてきた知的エンターテイメントバラエティ「主治医が見つかる診療所」。この番組では、現役で活躍中の医師たちが出演し、医療に関するさまざまな情報を分かりやすく解説してくださいます。
今回の「主治医の小部屋」では、同番組のレギュラー医師の心療内科医・姫野友美先生に健康相談。高齢化が進む日本で、家族の健康を守るためにできることを教えてもらいました。高齢の家族をもつ方は必見です!
Q:実家で一人暮らしをしている80代前半になる母がいます。先日久しぶりに実家へ帰ると、一目見て分かるほど、やせ細っていました。ヘルパーさんの料理や宅配のお弁当で栄養素は足りていると思うのですが、心配です。離れて暮らしている家族が気をつけてあげられることって何かありますか?
「お母さまがやせ細ってしまっているとのこと、ご心配ですよね。
これは、「フレイル」という状態ではないでしょうか。フレイルとは「虚弱」という意味で、いま高齢者の間で非常に問題になっているんです。見た目がやせ細るだけではなく、いろいろな面で弱ってくるんです。フレイルには大きく4つの種類があります。
まず1つは、「オーラル(口腔)フレイル」が考えられます。きちんと栄養をとっているはずなのに身についていないのは、口腔内に問題がある場合があります。例えば、きちんと食事を噛めず、消化できない。そのため、栄養として吸収できず身につかないのです。また、歯周病があると歯が抜けたり、腸内環境が悪くなって栄養の消化吸収が悪くなったりします。まずは口腔内に問題がないか、歯科医に連れていってみてください。
2つ目が「フィジカルフレイル」、体が弱っている状態です。消化液の分泌が少なく消化吸収能力が落ちていることが考えられます。その場合は、胃腸の薬や整腸剤が必要になるので、内科に連れて行ってください。消化吸収ができないと栄養素が体に入らないので、筋肉も細くなり、内臓も弱ってしまい、ますます消化能力が落ちるという悪循環に陥ります。
この場合、サプリメントを利用するのも一つの方法だと思います。例えば、タンパク質をきちんと消化できない場合はアミノ酸で補うなど、いろいろなビタミンやミネラルをサプリメントで摂取するのも効果的だと思います。
食べ物は一度体内で分解してから吸収しなければならないのですが、体が弱るとあまり消化液が出ないので、分解できなくなります。サプリメントはすで栄養素が濃縮され、また、体に吸収されやすい形になっているものが多いので、非常に効率がいいんです。
3つ目が「メンタルコグニティブ(認知)フレイル」。これは精神的に弱った状態です。例えばうつ状態になってしまう。そうすると、いろいろなものに対する興味・関心が薄れ、意欲低下して人と接するのが嫌になり、物忘れや認知機能の低下を招きます。
4つ目が、「ソーシャルフレイル」、つまり社会的なつながりが弱くなってしまうことです。高齢者はどうしても外に出ることが億劫になります。一人だと、食事もあまりしなくなるし、人とも話さなくなり、家に閉じこもりがちになるので筋肉も衰えてきます。
3つ目と4つ目のフレイルの対策としては、やはり外に連れ出すことが大切です。地域には「高齢者センター」や「憩いの家」など、いろいろなサポートや集まりがありますので、そういうものを利用してみてはいかがでしょうか。自治体のホームページを調べてみると良いでしょう。できるだけ社会と接するようにしたほうが、フレイルを防ぐことができます。
このように、痩せているのは単純に食事だけが原因ではなく、さまざまなフレイルが考えられます。
これらのフレイルに該当せず、単純に食事が原因の場合は、好き嫌いなく用意された食事をすべてを食べているのか、見てあげてください。高齢者はタンパク質が不足しがちなので、宅配メニューに卵や豆腐など、タンパク質を一品加えるのもおすすめです」
Q:高齢の両親は外出するのが億劫になってしまったようです。身なりにもあまり構わなくなってしまいました。外に出て軽い運動をしたり、太陽の光を浴びたりしたほうが健康によいのではないかと思うのですが、無理に連れ出すのもかわいそうな気がします。高齢者の健康維持のために家族ができる取り組みを教えてください。
「高齢者は無理やりにでも連れだしたほうがいいでしょう。外部の人と接触しないと、どんどん認知機能が落ちます。先ほど話したように、認知機能が落ちると、体の機能も落ちます。体の機能が落ちるとまた認知機能が落ちていく。悪循環ですよね。体と脳は相関関係にありますので、体を動かすことは脳にもいいんです。
どうしても外に出られない場合は、ヘルパーさんなどに家に来てもらい、会話をするといいでしょう。
できれば外に連れて行き、それを習慣化することが大切です。毎日外に出ていると、出ないと気持ち悪くなるので、習慣的に外に出るようになります。
外に出るためには、誰かに会いに行く、何かを観に行くなど、「目的」を作ってあげることが大事です。目的意識があると、外に出やすくなります。
外に出て日光を浴びることで幸せホルモンの「セロトニン」が増えて気分が良くなります。また、ビタミンDが増えるというメリットもあります。ビタミンDは骨にも重要な成分ですが、他にもたくさん重要な働きをしていて、脳の機能を活発にしたり、動脈硬化やがんの予防にもつながります。また、筋肉を増強する、感染症を予防するなんて効果もあるんですよ。さらに髪の毛やまつ毛も伸びたり、皮膚もきれいになったり、免疫力がアップしたり。日光を浴びることは、老化予防にとても効果的なんです」
―筋力が衰えないように、家の中でもできることもありますか?
「家の中でもできることはたくさんあります。例えば、小さな本の上に登ったり下りたりする。それだけでも、足腰を鍛えることになります。最近はふくらはぎが注目されていますが、ただつま先立ちをするだけでも筋ポンプが鍛えられて血流が良くなり、筋力はアップできます。けがをしないように注意しながら、ぜひ取り入れてみてください」
―家族のために自分にできることが分かりました。姫野先生、ありがとうございました。
「今回お話を伺った姫野先生も出演する「主治医が見つかる診療所」は、毎週木曜夜7時58分から放送中です。今回収録した回は、2018年5月31日(木)に「腸内環境アップSP」をテーマに放送予定。
次回放送をお楽しみに!レギュラー医師の皆さんの「主治医の小部屋」の特集もまだまだ続きます。