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俳優の太賀や菅田将暉なども銭湯好きを公言するなど、実は今20代など若年層の間で銭湯好きが増えているのをご存知でしょうか。『東京銭湯 - TOKYO SENTO -』という都内近郊の銭湯を紹介するWEBメディアで編集長を務める木村衣里さんに銭湯の楽しみ方、銭湯の魅力について、『東京銭湯- TOKYO SENTO -』が経営する「喜楽湯」でお話を聞きました。
ステップ1:自宅近所にお気に入りの銭湯をつくる
――そもそも木村さんが銭湯を好きになったきっかけは?
元々は高円寺に住んでた時に『小杉湯』に通い始めたのがきっかけです。当時私は上京したてで、6畳ワンルームのユニットバス付きの家に住んでいました。お風呂場は大して広くもないし、毎日疲れて帰って気合でシャワーを浴びて死んだように眠る日々。そんなときに銭湯を発見したら、それが最高によくて。最低週に1度は疲れを洗い流すような気分で、通ってましたね。
それとよく一緒に仕事している『Huuuu』というチームがあるんですけど、お風呂好きのメンバーが多いんです。取材や打ち合わせの合間に銭湯に行く、みたいな感じで銭湯が結構身近な存在になっていった気がします。▲「看板猫」のタタミくん。
――じゃあ、銭湯にハマるきっかけはお気に入りの銭湯がすぐ近所にあったから?
まさに。当時はスマホやパソコンに朝から晩まで張り付いて、Twitterを見たり、Facebookを見たり、色んなSNSを徘徊して情報を集める感じだったんです。でも、脱衣所って基本的にスマホが禁止じゃないですか。だから銭湯に入る間って、プチ"デジタルデトックス"じゃないですけど、情報通信機器から遮断されることになるんです。それにお風呂の中にいると、頭が整理されるというか優先順位が付けやすいんです。邪念が消えるから今本当に心配していることや課題を瞬時に理解ができる。そういうことに気がついたのも銭湯好きになった大きな理由ですね。
ステップ2:サウナ → 水風呂の交互浴をマスターする
――木村さんが考える銭湯の楽しみ方って、どんなところにありますか?
交互浴ができることですかね。もう今日は仕事をやり切った!と思ったり、にっちもさっちも行かないと思ったら、『もう店じまい!』と決めて銭湯に行って、交互浴をキメてます。家に帰る頃には体温が良い感じに下がるので、そのままシューンって寝るみたいな暮らしのサイクルに変えてから少しだけ生きやすくなったような気がして。
――交互浴とは?
暖かいお湯やサウナと水風呂を行ったり来たりする入浴法です。仕事に常に追われている人は、自律神経の交感神経が強くなりすぎですが、急速に身体を暖かくしたり冷やすことで、血流が一気に流れて、副交感神経が優位になるんです。
ちなみに先程私が高円寺時代に行った『小杉湯』は、銭湯好きに言わせれば"交互浴"の聖地で。サウナ好きの間でよく"整う"という言葉で形容されますが、これは交互浴を繰り返した後に深いリラックス状態になることで感じられる多幸感のようなものです。
――気をつけるべきことはありますか?
水風呂に入った後に、体を拭いて休憩するか、外気浴しながら少し休むことですね。あまりに繰り返しすぎると、体調を崩しちゃうので程々に楽しむのがいいかと。
ステップ3:整う感覚を体感してみる
――なるほど。ちなみに整った経験は?
はい。あります。銭湯に最初一人で通っていた頃は、それが整うという感覚だと自覚していなかったんですけど。色んなメディアで"整いとは何か"をサウナ好き達が言語化しようと試みていて。私は銭湯やサウナを愛するクリエイター集団「蒸され人」のインタビューがしっくり来ました。「水風呂に入っている時に、皮膚の外側に羽衣をまとった感じになって、どんどん周りの音が消えていって、水の音だけに意識が集中されて、心臓の鼓動で血が巡る感じがわかって、自分の呼気が冷えて出てくる感じ」の先に整いがあるなって、理解したんです。
――おお、詩的な表現ですね。
そうですか。徐々にブラックアウトするのに近いのかもしれないんですけど。冷水後に外気浴をする時間って、外気浴の時は段々と体温を取り戻していくのを感じる儀式みたいな。
――結構スピリチュアルな感じになるんですね。
そう。でもあんまりそういう言葉で語りすぎると怖がられちゃうから、『リフレッシュできるのでもし興味があったら試してみてね』くらいに思っています。
ステップ4:オリジナルの銭湯スタイルを身につける
――ちなみに独自で開発した銭湯の楽しみ方などありますか?
私はまずは身体を洗って、メイクを落とします。その時に頭は洗わないで、サウナがあるところだったら、サウナへ。もしなければ湯船に浸かります。1回目の交互浴の途中でシャンプー、2回目の交互浴の途中でコンディショナー終わり、3回目の交互浴の途中でもう一度身体を洗います。そうすると大体2時間なんですよ。これが個人的に発見したベストな過ごし方ですね。
――2時間。結構長い気もしますが...。
女子はお風呂上がってからが長いですからね。髪乾かしたりとかもあるし。あ、個人的には銭湯上がりにフェイスパックする方がいつもより浸透が良い気がします。
▲喜楽湯は今でも井戸水を使用し、薪で沸かすスタイルを踏襲
――それは女性には嬉しいですね。
はい。だから女性にも銭湯好きを広めたくって。銭湯って、やっぱり一度行くとみんな良いって分かってくれるんですよ。でも1回行くまでのハードルが、多分、まだまだ高いので。最近ようやく銭湯が、若い世代にとって逆に新しいみたいな流れが来ているので。それは東京銭湯の代表の日野さんが4年間時間をかけて、培ってくれた価値観だと思うので、私は裾野を広げていく役割を果たせたらいいなと思いますね。
【取材協力】
喜楽湯
住所:埼玉県川口市川口5-21-6
営業時間:15:00 ~ 23:00 土日のみ 8:00 ~ 12:00もオープン
電話番号:048-258-7689
(プロフィール)
木村衣里(きむらいり)
「東京銭湯 - TOKYO SENTO - 」編集長。
2018年7月に独立し、フリーランスの編集者・ライターに。同時にWebメディア「東京銭湯 - TOKYO SENTO - 」の編集長に就任。フリーランスの編集・ライターのギルド的チーム「Huuuu」にも所属している。全国を飛び回りながらいろんなお風呂にはいるのが好き