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『ざんねんないきもの事典』の動物学者に、人間の”ざんねんなところ”を聞いてみた

ライフ

テレ東プラス

2019.7.27

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シリーズ累計300万部を突破した『ざんねんないきもの事典』。小学生の人気投票(小学生がえらぶ!"こどもの本"総選挙)で第1位を獲得し、数多くのテレビ番組で取り上げられ、さらにはアニメ化されるなど、幅広い世代から人気を集めてきた。その待望の最新作『おもしろい! 進化のふしぎ もっとざんねんないきもの事典』が、6月27日に発売された。

本作の監修をつとめた今泉忠明さんは、フィールドワークの経験が豊富で、動物の生態についての知識がズバ抜けている動物学者。今回はシリーズを通してのテーマになっている「動物の進化」について、残念なエピソードとともに話を聞いてきた。

人間も"ざんねんないきもの"


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――「ざんねんないきもの事典」シリーズの大ヒットをどのように感じていらっしゃいますか?

「驚きですね。子どもたちはゲームにばかり興味があって、文字をもう読まなくなった感じがしていましたので。子どもの読者がどのぐらいいるかは正確には分からないですが、かなりの割合の子どもたちが、この本を読んでくれているようです。内容が面白ければ、子どもも本を読んでくれるんですね」

――本を読むことは、ほかの動物と比べて優れた点ではないかと思います。

「文字を使って知識を共有できることは、人間の大きな強みだと思います。当然ながら動物の世界には文字がないので、知識がバラバラです。人間は本を読むだけで色々なことを吸収できるので、急速に文化が発展したのではないでしょうか」

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――逆に人間という動物の"ざんねんな"ところを教えてください。

「ざんねんなところだらけですね(笑)。まず、転ぶことが多いです。他の動物では滅多に見ないですね。これは言うまでもなく二足歩行が原因で、追突されたときなどに転びやすくなっています。それに、知能が発達しているといっても、人間はあえて悪いことから目を背けることがありますよね。例えば、温暖化対策とか。一説には人間が最も頭を使っていたのは、6,000年前ぐらいだったそうですよ。今はその頃の発明や技術に依存して暮らしているような印象ですね。せっかくの脳が生かしきれていないのでもったいないですが、それもまた人間らしさだと思います」

――それもまた人間だと。「ざんねんないきもの事典」シリーズには児童書にありがちな教訓が入っていないので、読みやすかった気がしました。

「普通は進化はすごいとか、みんな頑張れというメッセージになりがちだと思うのですが、このシリーズではほとんど書かれていません。メインは進化の落ちこぼれの話です(笑)子どもたちは頑張れと言われないから、安心するんじゃないですかね」

子どもと大人で面白いと思うエピソードは全く違う!


――今泉先生がお気に入りの"ざんねんな"動物はなんですか?

「クスッと笑えるものが好きですね。監修しているなかで、『正直これはウケるかなぁ?』というものもありましたが、全般的に面白いと思います。色々な動物が記憶に残っていますが、『チンパンジー』なんかはいいんじゃないですかね。自分で自分をくすぐって笑うんですよ。ただ、子どもに聞くと、意外なものが面白いということもあります」

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――それはどんな動物でしょうか?

「この前ある子どもに聞いたら、"ミドリムシは暗い場所に入るとパニックになる"というエピソードが面白いと話していました。ほかにも、"バクはゴシゴシされると寝てしまう"という話が好きな子もいます。子どもの視点は大人と違いますし、受け取り方が様々なので、もっと色々な動物を出した方が良いかもしれませんね」

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――最新作(第4弾)で特に"ざんねんな"動物を教えてください!

「少し前に番組で紹介して好評だったのはセイウチです。セイウチは暖かくなると体がピンク色になって、寒くなると青白くなります。これを子どものうちに覚えておくと、生物の体の仕組みを学ぶ時に役立ちます。これは、ほとんどの哺乳類に共通しているのですが、暑くなると体内の熱を発散しようと血管が広がるんです。人間も暑いと顔が赤くなって、寒くなると青くなりますよね。その極端な例がセイウチというわけです」

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――なるほど、セイウチにも人間と似たところがあるんですね。

「そうなんです。さらに人間に似ているのがオランウータンですね。オランウータンの子どもは、人間のようにお母さんのベッドに入ります。7~8歳までお母さんと一緒に暮らしていて、その間にベッド作りを練習するのですが、そのうちにお兄さんぶって自分で作ったベッドで寝ようとするんです。ところが、夜中に雷が鳴ったりすると、お母さんのところにすっ飛んでいきます(笑)。人間の子どもみたいで可愛らしいですよね」

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進化の先には絶滅が待っている!?


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――本シリーズで書かれている"ざんねんな"特徴は、進化なのでしょうか?

「動物の進化と退化は裏表で、進化すると同時に退化が起こります。本シリーズでは、その退化の部分に光を当てています。例えば、ものすごく早く走れるようになっても、牙がなくなってしまうとか、呼吸がしにくくなるとか。必ず何かを犠牲にしているわけです。そのため、どんな環境にも対応できるいきものはいません。車を例に考えていただくと分かりやすいのですが、スピードを速くするには車体を軽くする必要があります。でも、そうすると事故が起こったときの安全性が低下しますよね。それと同じようなことが、進化の過程で起きているわけです」

――進化や退化が進んでいくと、そのいきものが絶滅することもあるのでしょうか?

「そうですね、絶滅する要因にもなります。例えば、恐竜はどんどん巨大化していきましたが、その進化の先は行き止まりでした。つまり、進化が行きついた先に、絶滅が待っていたわけですね。そのきっかけとして分かりやすいのが環境の変化で、ガラッと変わると多くのいきものが絶滅してしまいます。環境の急激な変化に対応できるのは、微生物などの原始的ないきものですね」

――環境が大きく変化する時期は、いつ頃なのか分かっているのでしょうか?

「地球では今までに大きな絶滅が5回あり、恐竜の絶滅が最後です。第6回目の絶滅については、その時期はもうすぐだと言われています。近年の温暖化はその前兆なのではないかと。これが止められないと、かなりまずいですね。ただ、繁栄していた動物がいなくなると、空いたスペースにマッチすべく、新たな動物が進化して繁殖していきます。例えば、温暖化で北極圏の生き物がみんないなくなれば、そこで新たに進化する動物が増えていくと考えられます」

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――この本を読んで、進化のことについても考えていきたいですね。最後に、読者へのメッセージをお願いします。

「本を読んで知識を蓄えたら、動物園や野原に出かけて、今度は自分の目でそれを確かめてみてください。その繰り返しが大事なことで、本物の動物を見て、観察して色々と考えを巡らせるのが良いと思います」

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【プロフィール】
今泉忠明
1944年東京都生まれ。東京水産大学(現 東京海洋大学)卒業。国立科学博物館で哺乳類の分類学・生態学を学ぶ。文部省(現 文部科学省)の国際生物学事業計画(IBP)調査、環境庁(現 環境省)のイリオモテヤマネコの生態調査などに参加する。トウホクノウサギやニホンカワウソの生態、富士山の動物相、トガリネズミをはじめとする小形哺乳類の生態、行動などを調査している。上野動物園の動物解説員を経て、「ねこの博物館」(静岡県伊東市)館長。

【取材協力】
株式会社 高橋書店
住所:東京都文京区音羽1-26-1
電話番号:03-3943-4525(代表)
https://www.takahashishoten.co.jp/

※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。

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