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Twitterで大論争、故人を送る「おくりびと」として働く納棺師の仕事観

ライフ

テレ東プラス

2019.9.5

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2008年に公開された映画『おくりびと』をきっかけに、注目を浴びた「納棺師」という職業。故人を送り出すために行われる、納棺の儀式を担当するのが仕事ですが、国家資格があるわけではなく、プロとしてのスタンスも人によって異なるようです。

今年7月、とある納棺師のツイートが話題を呼びました。

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この投稿には11.8万件のいいね、2.9万件のリツイート(2019年8月下旬現在)があり、大きな論争が巻き起こりました。

投稿者は納棺師を育てるスクール「おくりびとアカデミー」の代表であり、業界を牽引する納棺師の木村光希さん。この道一筋10年の木村さんに、今回は納棺師の仕事内容やプロとしての価値観を伺いました。

納棺師は「納棺の儀式」を担当する専門家


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──木村さんは、納棺師だったお父様の影響で納棺師になることを決めたそうですね。具体的なキッカケは何でしたか?

中学2年生のとき、ひいおばあちゃんが亡くなり、そのときに父が納棺師として働く姿を初めて見て、かっこいいなと思いました。その日を境に納棺師になることを決めて、大学在学中に父親の会社で納棺師の仕事を始めました。

──映画『おくりびと』で納棺師という存在に注目が集まりましたが、その業務の内容について教えてください。

納棺師は葬儀会社から依頼を受けて、下請けとして業務を遂行するのが一般的です。現場で担当するのは、納棺の儀式と呼ばれる1時間ほどの作業。ご挨拶をしたあと、ご遺体の死後硬直を解き、着替え、お顔そり、メイク、髪の毛のセットを行い、最後にご遺族と一緒にご遺体を棺の中に収めるのが一連の流れです。

ただ、個人的には下請け専門として断片的に一部の作業を請け負うのではなく、お通夜からお葬式までのすべてをご一緒できるのが納棺師の理想の働き的ではないかと感じていました。そんな思いから、2015年に葬儀会社のディパーチャーズ・ジャパンを立ち上げ、お通夜から葬儀、告別式までをすべてプロデュースさせていただいています。

──ディパーチャーズ・ジャパンでプロデュースするお葬式は、どのように作り上げるのでしょうか?

亡くなった方とご遺族にとって、最後のお別れのシーンがより良いお別れになるよう心を尽くします。亡くなった方が、生前どんなことが好きで、どんなことを大切に生きていたのかを伺い、祭壇や棺に収める小物などに工夫を凝らします。例えば、旅行が好きな方であれば、旅行の思い出の写真やその方が好きな土地のアイテムを棺に収めたり、旅行をイメージさせるアイテムを祭壇に飾ったり。"その方らしさ"を式に反映させていますね。

仕事の対価は5年後、10年後に返ってくることもある


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──納棺師として働くにあたり、どのようなスキルが必要になるのでしょうか?

まずは、納棺の儀式を行うための技術力が求められます。儀式をプロデュースするにあたり、亡くなった方の扱い方や着付け、メイクのスキル、さらに宗教的な知識も必要です。また、空間を作り上げるには、コミュニケーション能力も欠かせません。ご遺族の中にはひどく緊張されている方もいらっしゃいますので、「お足元を崩していただいて、途中でお手洗いに行かれても大丈夫ですよ」などとお声がけをして、不安や緊張を解いていきます。

そして、最後に心配り。大切な方を亡くされたご遺族は、喪失体験により不安、悲しみ、孤独、無力感などの感情を抱えています。一人の人間として、プロの納棺師として、どのようにご遺族に寄り添っていくかを一人ひとりが考えながら、業務にあたる必要があります。

──「心配り」のスキルを磨くのは難しさが伴うと思いますが、おくりびとアカデミーでは、どのようにご指導をされていますか?

当アカデミーにいらっしゃる生徒さんは、身近な方を亡くした原体験がある方が多いんです。そのとき担当した納棺師を通して、この仕事をしたいという思いが芽生えたという話をよく聞きます。

だから、最初からご遺族の気持ちに寄り添いやすいという一面はあると思いますが、面談の際に「別れ方は十人十色で、やるせなくなるようなつらい別れの現場もある」という事実は、ありのままに伝えます。

そのうえで入所を決めてくれた生徒さんたちは、グリーフケア(※)の授業を通して死生観を養っていきます。この授業では、喪失体験を経験した方の心理的影響、身体的影響を理論的に学びつつ、自身の喪失体験や同級生の喪失体験を共有することで死生観を磨いていきます。

※グリーフケア:死別を経験し、喪失と立ち直りとの間で感情が揺れ不安定になっている状態の人に、さりげなく寄り添い、援助すること。

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──納棺師として10年余り勤務されている木村さんは、日頃どのようなやりがいを感じていますか?

現場でのやりがいで言うと、一つはご遺体を美しい状態に仕上げられたとき。これは職人的な達成感に近い感覚です。もう一つ大きいのは、ご遺族からの感謝の声と前向きな変化ですね。例えば、「最後にこんなにキレイにしてくれて、ありがとう」などとお声をかけていただいたり、納棺の儀式を終えたあとでご遺族の表情が明るくなったり。そうした様子が、何よりも大きな手応えになっています。

こういったご遺族からの反応が、やりがいという対価になっているのは事実ですが、それをすぐに得ようとしてはいけないという思いもあります。その場で反応が出ない人もたくさんいて、5年後、10年後に返ってくることもある。それでいいと思っています。

現場に「涙」は必要ないけれど、ありのままの感情は否定しない


──少し前に木村さんのツイート(冒頭で紹介済)で、非常に反響があった投稿がありましたよね。

この投稿には、「プロだから泣いてはいけない」という意見と、「プロだけど人間らしくいてほしい」という意見があり、賛否が生まれたことによって大きな反響がありました。私自身は基本的に仕事場に涙は必要ないと思っています。でも、感情が揺さぶられて自然と涙が出てしまうことってあるじゃないですか。スッとこぼれ出た涙を「プロじゃない」と否定されるぐらいなら、私はプロじゃなくていいなと思ったんですよね。

投稿には書いていませんでしたが、亡くなった方というのが一緒に仕事をしていた納棺師の仲間で、彼は急死されたんです。そういった背景もありました。

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──そんなご事情があったんですね。「プロとしてのスタンス」は線引きが難しいところだと思いますが、個人の価値観に委ねられるところなのかもしれませんね。

私は、死と向き合う場面であっても笑顔で臨むこともあります。大事なのは、自分なりに想いを込めて仕事をすること。泣くか、泣かないかでプロかどうかは決まらない。私はそう思っています。

生徒たちにも伝えていますが、おくりびとアカデミーとして大切にしている"軸"さえ持っていてくれれば、それぞれのスタンスややり方があっていいと思っています。同じ軸を持った納棺師の同志が増えて、日本中、世界中に「最後の良いお別れ」が浸透していけば、より良い社会になると私は信じています。

【取材協力】
木村光希
株式会社おくりびとアカデミー ディパーチャーズ・ジャパン株式会社代表取締役、納棺師。
株式会社おくりびとアカデミー 公式HP
ディパーチャーズ・ジャパン株式会社 公式HP
木村光希Twitter
木村光希Facebook

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