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『必死すぎるネコ』のフォトグラファー・沖昌之さんの”人生を激変させた衝撃的なネコ”

ライフ

テレ東プラス

2019.11.3

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巷のネコ好きに大人気の写真集『必死すぎるネコ』。タイトル通り、何かに必死になりすぎているネコたちの、かわいい姿だけを集めた写真集です。その人気からシリーズ展開され、『2020必死すぎるネコ カレンダー』、『必死すぎるネコ 〜前後不覚 篇〜』がリリースされました。

今回は本著のフォトグラファー・沖昌之さんにインタビュー。撮影時のエピソードや人生を変えた衝撃的なネコとの出会いなど、色々と話を伺ってきました。

想像の遥か上をいくネコの奇想天外さ


photo_20191103_01.jpg▲(c) Masayuki Oki

──沖さんの写真集では『必死すぎるネコ』というタイトルが、ネコ好きの心をつかんだのではないかと思います。ネコが必死になるのは、どんなときが多いのでしょうか?

「そうですね、ネコは急に必死になることがあって、例えば目の前にヒモが1週間ぐらい置いてあっても気にしなかったのに、急に夢中になって遊び始めることがあります。『それずいぶん前からあったけど、どうしたん?』と思っちゃいますね(笑)。僕はあくまでネコの日常を撮りたいと思っているのですが、『このネコ、めっちゃ必死やな』とか、『真剣すぎる』とか、ついブツブツ言いながら撮影してしまうんです」

photo_20191103_02.jpg▲(c)Masayuki Oki

──『必死すぎるネコ』の第一弾では、ネコパンチの写真が特に強烈だったのですが。

「あの写真は、叩いているのがメスで、叩かれているのがオスなんです。恋の季節に、オスがメスの後ろをずっと追いかけていたんですけど、『やめてや』みたいな感じでずっと拒まれていました。オスの方は意外と紳士で、メスが毛繕いを始めても飛び掛らずに、じっと待っていて。それをしばらく見ていて『動かないし、終わりかな』と思ったんですけど、急にオスが『なんか我慢できひん』みたいに近付いて行ったんです。『ガッ!』と襲いかかったところに、メスからカウンターを食らって、舌まで出ちゃってましたね(笑)」

photo_20191103_03.jpg▲(c)Masayuki Oki

──想像の上をいきましたね(笑)。次の動きを予測しながら撮影していると思うのですが、驚くような行動も多いのでしょうか?

「多いですね、もう一回撮れるかと言われたら難しいです(笑)。このザリガニの写真もカメラを構える前は、ネコがハサミで挟まれていて『イタタ』みたいな感じだったんです。それでもう一回やるのかなと思って構えていたら、今度は口に咥えていて。しかもカメラ目線(!)なので、『次はちゃんと撮れよ』みたいな感じもあるのかなと(笑)。ザリガニをくわえるとは想像していなかったし、こういう瞬間は偶然じゃないと撮れないなあと思います」

photo_20191103_04.jpg▲(c)Masayuki Oki

──表情も豊かで、人間っぽいなあと思いました。この手すりに掴まったネコの写真も印象的です。

「この子は最初、橋の下が泥だらけでグチャグチャだったので、そこで楽しく遊んでいたんですよ。それで満足して橋に飛び上がったら、嫌いなオスネコが目の前にいて。この表情、すごくバツの悪そうな顔をしているじゃないですか。『お前いたのかよ』みたいな(笑)。例えば、上司と一緒の空間が気まずいからトイレに行ったのに、そこに来られちゃったみたいな感じなのかな。そういう表情が撮れると、この子の心が垣間見れて楽しいんですよね」

──撮影する上での苦労もあったりするのでしょうか?

「苦労はないですね。撮れなくても『ネコに会えただけでラッキー』と思っています。自分の時間を全部ネコに渡して、ネコが飽きるまでお付き合いする感じですね。夢中で撮影していたらすぐに1時間ぐらい経っていたりするので、横で見ている人に『すごく粘っているよね』と言われます」

新しさと面白さを追求した『必死すぎるネコ』の第2弾


photo_20191103_05.jpg▲(c)Masayuki Oki

──第2弾の『必死すぎるネコ 〜前後不覚 篇〜』は、まず表紙の写真のインパクトがすごくて。これってどんな瞬間なんですか?

「この子は文化住宅のようなところによくいて、僕が行くと階段から降りて来てくれるんです。2階が閉鎖されているので、上の階に行かないように紐やテープが張ってあるんですけど、張ってある紐に顔を擦り付けて匂い付けをすることがあって。しかも、紐が目にかかった状態で止まったりするんです。この時はそれだけじゃなくて、止まった状態から前にグッと押し出してきたので、なんか目隠ししているような(笑)。自分の中ではとても気に入っている写真ですね」

photo_20191103_06.jpg▲(c)Masayuki Oki

──今まで沢山の写真を撮影されているので、写真を選びも大変だと思うのですが、どんな基準で選んでいるのですか?

「前回もそうですが、信頼できる2人のスタッフと一緒に写真を選んでいます。まず、木村伊兵衛賞を受賞した『うめめ』(著者・梅佳代)を担当した、アートディレクターの山下リサさん。写真の選定からアートディレクションまで、トータルでお願いしています。それに加えて、猫を見るのが専門の編集者の小林裕子さん。2人には、もっとアクが強いような、必死すぎることがもっと強調されるようなカットを入れたいと伝えました。前作に続き、バチバチ意見を突き合わせて作っていますね(笑)。可愛いだけじゃなくて何かを感じさせるような、そういう絶妙な落とし所を考えてもらっているので、この2人に作ってもらってダメなら、僕の写真がダメなんだろうなと思います」

※木村伊兵衛写真賞......新人を対象とし、著名な写真家を数多く輩出している事から、「写真界の芥川賞」と呼ばれることもある写真の賞。

──内容について、悩んだ部分もあったりするのでしょうか?

「前作が気に入ってくれた人は、今回の第2弾にさらに期待している部分があると思うので、どうすれば新しさと面白さを感じてもらえるのか悩みました。『前と一緒』とは思われたくないので、推敲を重ねて、最終的には自信を持って『面白い!』と言えるものになっていると思います」

photo_20191103_07.jpg▲(c)Masayuki Oki

──特に注目して欲しいポイントは?

「写真集はSNSなどとは違って見開きのページで構成されているので、2枚の写真が合わさった『組』としての面白さがあると思うんです。例えば、何かを覗いている見開きの2枚の写真が載っていても、片方は『隙間』を覗いていて、もう一方は『お尻』を覗いているとか。同じびっくりでも、『セミ』にびっくりしているのと、『ネコ』にびっくりしているのとか。他にも、めっちゃ逃げているのと、めっちゃ怒っている写真を並べたりもしています。そういうところも楽しんでもらえたら嬉しいですね」

写真嫌いをフォトグラファーに変えた『ぶさにゃん先輩。』


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──沖さんは、元々写真が嫌いだったとお聞きしたのですが?

「はい、撮られるのがかなりイヤでした。大学生の頃にはインスタントカメラの『写るんです』が全盛期で、自分が撮った後に『沖くんも撮ってあげるよ』と言われる定番のやり取りがあったんです。それがものすごくイヤで、極力カメラに近づかないでおこうと思っていましたし、写真を撮ることも避けていました(笑)」

──そんな沖さんが、なぜフォトグラファーに?

「30歳のときに神戸から上京してブティックで働くようになったんですけど、そこの社長が写真をすごく大事にしている人でした。ブログに商品の写真を沢山あげていて、『沖くんもブログのために写真を撮りなさいよ』と言われたのがきっかけですね。最初は仕事で嫌々撮っていたのですが、下手でもカメラやレンズのおかげでたまに綺麗に撮れるときがあったんです。それで嬉しくなっちゃって、イルミネーションとか風景も趣味で撮るようになりました。『良い写真だね』と社長に褒めてもらえることもあったし、そういうのが嬉しかったんですよね。僕、調子に乗りやすいんですよ(笑)」

photo_20191103_09.jpg▲(c)Masayuki Oki

──ネコを撮影するようになったきっかけは?

「会社の休憩時間中に寄った公園で、あるネコに出会ったんです。エキゾチックショートみたいに少しつぶれた顔で、渦を巻いたようなアメリカンショート柄で。外で暮らしているネコは痩せている子が多いと思っていたんですけど、その子はかなりふくよかで真逆のイメージでした。『なんで家ネコより太っているんだろう』とか、『普段は何しているんだろう』とか、どんどん興味が湧いてきたんです。僕の好きなタイプはロシアンブルーなどの綺麗な顔のネコで、タイプではなかったんですけど、どうしようもなく気になっちゃって。それが、後に写真集も出させてもらった『ぶさにゃん先輩。』です」

──写真で拝見しましたが、独特の魅力を放っていますよね。沖さんが付けた『ぶさにゃん先輩。』というネーミングも、妙にしっくりきているというか(笑)

「マイペースでいつも寝ているんですが、めちゃくちゃアピール上手なんです。朝ご飯は同じところで、3人くらいからもらいますから。ご飯をもらえそうな空気を察すると、今まで寝ていたのにのそのそと起きてきて、走るわけでもなく(本人は走っているんでしょうけど)、お腹をたぷんたぷん揺らしながら、ぐわーっと来るんです!『普段そんな動きしないやろ』っていうぐらいのスピードで駆け寄って来て、そういう必死さがたまらなく可愛いんですよ。ご飯をもらえそうな人の近くで爪を研いでみたり、近くでお腹を見せたりもするので、『ご飯をあげたいな』と思うんでしょうね。だから家ネコよりも太っているんです(笑)」

──ネコはそういうことをサラッと出来るのが可愛いですよね。

「それまで『ネコはプライドが高い』とか、そういう固定概念で見ていたんですけど、『ぶさにゃん先輩。』はご飯をもらうことに純粋で、『ご飯を欲しい』としっかり表現するんです。その姿を見て、生きることを大事にしていると感じたし、『もっと素直に生きた方が良いのかも』と思うようになりました。そういう意味でも、僕にとっての先輩ですよね(笑)」

photo_20191103_10.jpg▲(c) Masayuki Oki

──その後、会社を辞めてネコ写真家になったのも、「ぶさにゃん先輩。」の影響が大きいのでしょうか?

「そうですね、元々ネコは好きでしたが、『ぶさにゃん先輩。』に出会っていなかったら、ネコ写真家にはなっていないと思います。仕事の延長線上で写真を撮るだけだったし、自分の好きなネコを撮ろうという気持ちの余裕がなかったですね。そこからネコの撮影に没頭して、写真をInstagramでアップしたら、びっくりするぐらい反響がありました。海外の人から『こんな猫見たことない!』というお世辞みたいな言葉をもらったりしたので、またその気になっちゃって(笑)。でも、自分の写真で世界中の誰かがテンション上がるというのは、とても良いことだと思うんですよね。だって、毎日2〜3枚の写真をアップすることで、少なくとも世界中の2〜3人が喜んでくれるわけじゃないですか。それを続けていけば毎日誰かが喜んでくれるような気がしたので、写真はそれから毎日アップするようにしています」

──沖さんの写真を見るのを楽しみにしている方は多いと思います。実は他の動物も撮りたいなど、思ったりしたことは?

「実は最近、上野動物園のパンダを撮りに行ったのですが、全然良い写真が撮れなくて。パンダは可愛いと思うのですが、撮った後で『一番可愛いのはどれですか?』と言われたときに自信を持って言えないんです。全部可愛い気もするし、全部可愛くない気もするから、たぶん撮れないんだなあと感じました。やっぱり(ネコ以外に)浮気できないなと(笑)」

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『必死すぎるネコ 〜前後不覚 篇〜』
出版社:辰巳出版
著者:沖昌之

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【プロフィール】
沖昌之
猫写真家。1978年神戸生まれ。家電の営業マンからアパレルのカメラマン兼販売員に転身。初恋のネコ「ぶさにゃん先輩。」の導きにより2015年に独立。猫専門誌『猫びより』(辰巳出版)の「必死すぎるネコ」など連載多数。『ぶさにゃん』(新潮社)、『残念すぎるネコ』(大和書房)、『明日はきっとうまくいく』(朝日新聞出版)、『にゃんこ相撲』(大空出版)など著書多数。2017年刊行の代表作『必死すぎるネコ』(辰巳出版)は5万部突破のベストセラーに。

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