保存版:次の台風シーズンに備え、今から買っておくべきグッズと使い方

2019.12.22

typhoon_20191222_00.jpg画像素材:PIXTA

大掃除の準備などで、年末のこの時期によく足を運ぶのがホームセンター。その一角で最近注目されているのが、防災グッズのコーナーです。

今年は台風15号、19号によって東日本に大きな被害が出ました。上陸の直前には養生テープやブルーシートなどが爆発的に売れましたが、これらは台風の備えとして適切だったのでしょうか?

今回は地域コミュニティや企業の災害リスクを診断している、災害リスク評価研究所の松島康生代表に、大型台風への備えについて話を聞いてみました。

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×印に養生テープ......だけでは窓は守れない


最大瞬間風速57.5m/sを記録(※)した台風15号の記憶もあり、台風19号の上陸前には窓ガラスに養生テープを貼る家が増えました。松島さんによると、養生テープは飛散防止の上で一定の効果が期待できるそうです。

※アメダス千葉によるもの。

「ただ、養生テープは正しく貼らないと効果がありません。×印や米印にだけ貼っているケースは、窓ガラスが割れたときに、テープごと窓ガラスが内側に飛んできてしまいます。×印に貼ったテープの上から、さらに窓の周囲を囲むようにテープを縁取って貼ることが大切です」(松島さん)

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ただ、松島さんによると、養生テープを貼るのはあくまで応急対策とのことです。飛散防止の対策としてオススメなのは、専用の飛散防止フィルムを貼ること。防犯対策にもなり、UVカットや防寒対策にもなるので一石三鳥だそうです。リビングのような人の出入りが多い場所、寝室のように無防備な場所、子供やお年寄りの方の生活スペースなどでは、前もって対策をしておくと良いでしょう。

なお、飛散防止の対策としては、やはりシャッターや雨戸を閉めるのが一番有効だそうです。最近の戸建て住宅では2階の窓にシャッターが付いていない家が増えていますが、このような場合は後付けでシャッターを取り付けることもできるそうです。

その上で窓が割れたときのことも考えなければいけません。養生テープや飛散防止フィルムでは、窓が割れた後に吹き込む風は防げません。段ボールや板などをあらかじめ用意して、割れた窓を塞がなければ、強風が家中を吹き荒れてめちゃくちゃになってしまいます。

「窓の外から板で覆えばガラスが割れるのも防げますが、家の環境によっては難しい場合もあると思います。その場合には、内側から段ボールや板を、ガムテープなどで貼り付けることになるでしょう。ただ、ベニヤ板は時間が経つと反ったり割れたりするので、前もって用意するには不向きです。アクリルパネルなど、経年劣化に強い素材を選んでください」(松島さん)

なお、強風で物が飛んでくるのは一般に地上4階くらいまでのため、上層階にお住まいの方は、飛来物によってガラスが飛散するリスクは小さくなるとのことでした。

ベランダに置いている物も安心できない


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風台風の場合、飛散物によって家や車などを傷つけることがあります。法的には過失がない場合、風で飛んだものが他人の所有物を壊しても補償の対象にはなりません。ただ、ご近所づきあいをギクシャクさせる原因になりかねないので、加害者にならないための対策をしておくべきでしょう。

風に飛びそうなものは家に入れるか、紐で縛ってまとめて固定することが、基本的な対策になります。これはベランダの中も例外ではありません。強風がベランダ内ではらんで、軽い物なら吹き飛ばされてしまいます。車はカバーをかけるか屋内駐車場などに避難させ、自転車は柵に縛っておくか、あらかじめ倒しておくとよいでしょう。

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なお、台風19号の時には、千葉県の屋根の被害の印象が強かったせいか、ブルーシートやそれを止めるロープを予防的に買い求める人が増えました。松島さんによると、「必ずしも事前に買う必要はなく、被害が発生してから購入しても遅くはないでしょう。自治体によっては無償で配布する場合もあります」とのこと。ただ、ブルーシートは一部の地域では、台風19号対策として有効でした。これは追ってご紹介します。

土嚢の正しい積み方とは?


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では、台風19号のような雨台風の場合、用意しておくべき物はなんでしょうか。真っ先に思いつくのは土嚢ですが、これは浸水に対して一定の効果があるそうです。ただ、この積み方にもポイントがあります。

「玄関からの水の進入を防ぐには、ドアとそのサッシの隙間を隈なく埋めることが大切です。このとき、土をパンパンに詰めると、土嚢が床やドアの形に添わずに隙間ができるので、少し緩めにしておくとよいでしょう」(松島さん)

なお、ブルーシートをドアの前に敷いておけば、その上から土嚢を積むことで、密閉性を高めることができます。最近ではごみ袋などに水を詰めた"水嚢"が注目されていますが、密閉性が悪いので、「ドア前に敷いたブルーシートの重しとして使うのが良い」とのことでした。

土嚢に土を詰めて、それを積み上げるには、かなりの時間と労力が必要になります。このため、土嚢を積む場合には、前もって"土嚢袋"と"砂"を準備しておくことが大切です。ハザードマップで1メートルの浸水が予想されるからといって、土嚢を1メートル積むのは現実的とはいえないでしょう。

なお、水嚢は下水の逆流を防ぐためにも利用されているようです。ただ、トイレについては既に水圧がかかった状態のため、そこを水嚢で塞ぐというのは、あまり効果的ではないと松島さんは話しています。

「逆流を防ぐということでは、台所や洗面台、洗濯機の排水口などの方が重要でしょう。ただ、シンクや洗面台の排水口を水嚢で塞いでも、あまり意味がない場合があります。そこからつながっているパイプが、排水口に挿し込んであるだけだと、パイプと排水口の隙間から下水が溢れてしまいますので。このような場合はパイプを抜いて、タオルを入れたビニール袋などで排水口を詰める必要があるでしょう」(松島さん)

ちなみに、下水の逆流を防ぐ必要があるのは、1階までの話とのこと。マンションの上層階や、一戸建てでも2階以上については、そこまで気にする必要は無いとのことでした。

床下浸水は"ドアに土嚢"だけでは防げない!?


一戸建てに住む方の多くは火災保険に加入していることでしょう。台風の被害が予想される場合には、そこに水災や風災のオプションが入っているか、改めて確認しておきたいところです。

なお、一般的に保険で補償されるのは床上浸水からで、床下浸水では保険がおりません。そのため、台風被害が予測される際には、床下浸水を防ぐことが第一の目的となります。では、玄関を土嚢で塞げば、床下浸水までなら防げるのでしょうか?

「床まであるような大きな窓も、土嚢などで塞ぐ必要があります。シャッターでは浸水は防げません。さらに、古い家には床下換気口が空いているので、ここも塞ぎます。私の家では床下換気口に上から板を当てて、コーキング材(※)で隙間を埋めています」(松島さん)

※気密性や防水性を目的とした、隙間や目地を塞ぐ充填材料

ただ、比較的に新しい家の場合、どうしても浸水が防げない場所があるそうです。それが、コンクリートなどの基礎と、その上に乗る木材の土台との隙間。実は最近の住宅では基礎に通気口を空けるのではなく、基礎と土台の間に隙間を空けて、そこを通気口として利用しているそうです。その上からカバーが付いているので、多くの人はその存在に気づいていません。

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「実は今この部分をラップのようなもので家一周覆うことで、浸水を防ぐ実証実験を計画しています。増水のピークは数時間ぐらいで、後は水が引いていくので、この間だけでも家に入る水の量を減らせるのではないかと思うのです」(松島さん)

なお、浸水対策としてはL字型に立てかける止水版や門型のパネル板もありますが、これは寸法を合わせてオーダーメイドすれば、窓枠や地下駐車場の入り口などを塞ぐような使い方ができるそうです。坂道に沿って上から水が流れてくるような場所では、その流れを変えるために設置するのも有効とのことでした。

台風によって起きる二次被害も考えた備えを


台風15号では強風によって電線や電柱が被害にあい、各地で停電が起きました。雨台風でも変電設備などが浸水する可能性がありますが、どちらかといえば風台風の方が停電の可能性は高くなります。さらに、今回の武蔵小杉のケースのように、マンションの電源室が被害を受けて、電気が使えなくなる場合もあるでしょう。

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停電すればエレベーターが使えなくなりますし、大規模な場合は携帯電話の基地局も機能しなくなります。子供やご年配の方がいる家庭では、このような事態も想定したうえで、避難すべきかなどを検討する必要があると松島さんは話しています。

「災害の危険度は家族構成によっても変わります。例えば、ハザードマップを見て床上浸水が想定されるなら、子供を連れてでも早い段階で避難所に行くか、家の2階に避難するかなどを、前もって決めておくことも大切です」(松島さん)

最近では異常気象が相次いでいます。来年を安心して過ごすためにも、今から備えをしておきたいところです。

【取材協力】
災害リスク評価研究所

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